『コンティニュー』:2020、アメリカ

トライ139。アパートで女と寝ていたロイ・パルヴァーは起床した途端、ナタを持った刺客に襲われた。しかし何度も体験しているロイは相手の動きを把握しており、軽く始末した。別の刺客がヘリコプターで窓に近付いて銃撃するが、これもロイは軽く倒した。部屋が爆発する前にロイは窓から飛び出し、トラックの荷台をクッション代わりに着地した。彼が通り掛かった男の車を奪うと、刺客のエスメレルダとパムが車でやって来た。ロイは車で逃走を図るが、バスが来ることを忘れていた。彼はバスと激突し、命を落とした。
トライ79。ロイはナタの刺客を倒すが、ヘリコプターからの銃撃を浴びて死んだ。トライ37。爆発する部屋から脱出した彼は、バムの銃撃で死んだ。トライ69。ロイはエスカレーターで移動中、女殺し屋の観音に首を切られて死んだ。トライ88はスーパーマーケットの駐車場でカブームに爆破させられ、トライ93はロイ2号に殺された。トライ104はドイツ人の双子を倒した直後、観音に殺された。トライ48の時、ロイは公衆電話でダイナウ社の研究所に連絡して元妻のジェマ・ウェルズを呼んでもらおうとする。電話に出たクライヴ・ヴェンター大佐は、ロイが元デルタフォースの大尉だと知っていた。ヴェンターは「彼女は実験中の事故で死んだ」と言うが、ロイは嘘だと確信した。電話を切ったロイは、ドイツ人の双子に殺された。
トライ140。ロイはエスメレルダとパムの車を銃撃し、爆発させて去った。彼は中華カフェへ出向いて店長のジェイクと話し、酒を煽った。民間企業の安全保障専門家のデイヴと会話を交わすのも、剣術の女性王者であるダイ・フェンがテーブル席に来るのも、何度も見た光景だった。12時47分まで、その店でロイは酒を飲んだ。他の場所に行っても必ず殺されるため、彼は行き詰まっていた。12時47分になると殺し屋が勢揃いし、一斉に銃撃してロイを始末した。
殺されるループが起きる前日、ロイは研究所を訪れた。彼は警備員として雇ってもらうため、履歴書を持参していた。ジェマは制服を着るからと説明し、体の寸法を測った。ヴェンターは監視カメラを通して、その様子を観察していた。夫婦には11歳のジョーという息子がいてジェマが引き取っていた。ロイはジェマに、「君のことは諦めたが、息子まで手放したくない」と告げる。ダイナウ社の警備責任者のブレットが来て「部外者は立ち入り禁止です」と言うと、ジェマはヴェンターの許可を得ていると話す。「これを渡しに来ただけだ」とロイが履歴書を見せると、ブレットは「募集してません」と述べた。
ジェマは「すぐ行くから」とブレットを立ち去らせ、ロイに「私が募集してる。普通の警備とは違うの」と説明した。ヴェンターはロイを警戒し、ブレットに「軍歴を調べて、偽りが無ければ追跡しろ」と指示した。ジェマは「髪を直す」と嘘をつき、ロイの頭髪を採取した。彼女は数日前に誕生日プレゼントを送ったと言い、確認するよう促した。ブレットが呼びに来ると、ジェマはロイの耳元で「覚えておいて。オシリス」と囁いた。
ジェマはヴェンターの元へ行き、「スビンドルは?」と問われて「少し遅れています」と返答した。ヴェンターは例え話をした後、「二度と客を招くな」とジェマに命じた。ロイはガブリエルが営むバーに繰り出し、歯科衛生士のアリスと酒を飲んだ。そこへジェマから電話が入り、ロイは「大変なことをするかもしれない。マズい事態になったら、強い貴方になって」と告げられる。ジェマは「助けが要る」と口にするが、通話を盗聴していたヴェンターが回線を遮断した。ロイはジェマの言葉が気になりつつも、アリスを部屋に連れ込んでセックスした。そして翌朝を迎え、ナタの殺し屋に襲われてループが始まったのだ。
トライ141。ナタの殺し屋を始末したロイはジェマの言葉を思い出し、誕生日プレゼントを確認した。包みを開けると『イセトとオシリス』という本が入っていたが、読もうとしてヘリコプターの刺客に殺された。トライ142。ロイはエスメラルダたちに追われている車内で本を開こうとするが、バスに激突して死んだ。トライ143。ロイは盗んだ車にターボチャージャーが付いていることを知って作動させるが、道の出口を見逃してジェイクの中華カフェに行けなくなった。
トライ51。ロイは殺し屋のスマイリーに殺された。トライ144。ロイは『イセトとオシリス』を読むため、地下広場へ赴いた。本を開くと「イセトはエジプトの聖職者で死者を守る存在」「オシリスの体は敵に14分割され、国中にばら撒かれた」などと書いてあったが、ロイはジェマが何を伝えようとしているのか全く理解できなかった。ジョーを目撃した彼は後を追い、eスポーツ大会の会場に入った。ジョーに声を掛けたロイは、一緒に食事をしようと誘った。
建物の外に出たロイは、ジェマの死をジョーに伝えようとする。その時、彼は時刻が12時50分を回っていることに気付いた。彼は地下広場やeスポーツ大会の会場が金属で囲まれていたことを思い出し、自分が追跡されているのだと理解した。そこへ殺し屋たちが勢揃いし、彼は一斉射撃で命を落とした。ロイはナタの殺し屋を脅して追跡装置の場所を教えよう脅すが、拒否されたので始末した。ロイはジェイクのバーでトイレに入り、追跡装置の隠し場所を探すが見つからなかった。
ロイはデイヴに、「お前なら追跡装置をどこに付ける?」と尋ねた。「歯だ」という答えを聞いたロイは、アリスが歯の治療をした時に埋め込んだのだと悟る。彼はペンチで歯を抜いてデイヴに確認してもらい、追跡装置を発見した。そこへロイ2号が現れ、ロイを射殺した。トライ145。ロイはアリスを脅し、追跡装置を入れたのがブレットだと聞き出した。彼は追跡装置を廃墟に捨て、おびき寄せられたパムに拳銃を向けた。パムが黒幕の正体を白状しなかったので、ロイは射殺した。
ロイは殺し屋を一掃し、カブームに電話を掛けて来たブレットに「ヴェンターを殺しに行く」と通告した。彼は車でダイナウ社への突入を試みるが壁に激突し、ブレットに射殺された。トライ146では車ごと壁を飛び越えるが、やはりブレットに射殺された。トライ147でロイはロイ2号を始末し、彼に成り済ましてダイナウ社に侵入した。しかしエレベーターでIDがアクセス拒否され、同乗していた警備員に殺害された。トライ148では警備員を殺すが、エレベーターの外で待ち受けていたブレットと警備隊に始末された。トライ149でもロイは警備員を殺した後、またエレベーターの外で待ち受けていたブレットと警備隊に始末された。
ロイはトライ150で警備隊を始末するが、観音に殺された。トライ156まで連続して、彼は観音を突破することが出来ないままだった。156で観音に腹を刺されたロイの前に、ヴェンターがブレットを伴って現れた。ヴェンターはロイにオシリス・スビンドルという兵器のことを語り、止めを刺した。ロイはジェマがヴェンターを止めるため、自分をオシリス・スビンドルに入れたのだと理解した。彼はトライ157でダイの元へ行き、剣の使い方を教えてほしいと頼んだ。ロイは殺される度にダイの元で修業を積み、少しずつ剣術の腕前が上達していく。そしてトライ200、ついにロイは観音とブレットを始末してヴェンターと対峙する…。

監督はジョー・カーナハン、原案はクリス・ボーレイ&エディー・ボーレイ、脚本はクリス・ボーレイ&エディー・ボーレイ&ジョー・カーナハン、製作はジョー・カーナハン&フランク・グリロ&ランドール・エメット&ジョージ・ファーラ、製作総指揮はティム・サリヴァン&アレックス・エッカート&テッド・フォックス&ミッチ・ロウ&クリステル・コナン&ナディーン・ルケ&アンダース・エルデン&ジュールス・デイリー&アリアンヌ・フレイザー&デルフィーネ・ペリエ&ヘンリー・ウィンタースターン&チャールズ・オウティー&ロバート・ジョーンズ&テッド・ファーンズワース&メドウ・ウィリアムズ&スウェン・テメル、共同製作はマイケル・J・ウラン&アラナ・クロウ&ジェイソン・ヘルマン&パドライク・マッキンリー、共同製作総指揮はアーメン・K・ケヴォーキアン、撮影はフアン・ミゲル・アスピロス、美術はジョン・ビリングトン、編集はケヴィン・ヘイル、衣装はジェイナ・マンスブリッジ、視覚効果監修はマナカ・シルバ、音楽はクリントン・ショーター、音楽監修はアシュリー・ウォルドロン。
出演はフランク・グリロ、メル・ギブソン、ナオミ・ワッツ、ミシェル・ヨー、アナベル・ウォーリス、ケン・チョン、ウィル・サッソ、セリーナ・ロー、メドウ・ウィリアムズ、マチルド・オリヴィエ、ロブ・グロンコウスキー、ショーン・マッキニー、リオ・グリロ、アルミダ・ロペズ、バスター・リーヴス、エリック・エステバリ、クイントン・“ランペイジ”・ジャクソン、ラシャド・エヴァンス、ジョー・クニェゼヴィッチ、アダム・サイモン、メラニー・キラン、トム・デューアー、アーロン・ビールナー、トラヴィス・ゴメス他。


『THE GREY 凍える太陽 The Grey』『クレイジー・ドライブ』のジョー・カーナハンが監督を務めた作品。
脚本は『オープン・グレイヴ 感染』のクリス・ボーレイ&エディー・ボーレイ。
ロイをフランク・グリロ、ヴェンターをメル・ギブソン、ジェマをナオミ・ワッツ、ダイをミシェル・ヨー、アリスをアナベル・ウォーリス、ジェイクをケン・チョン、ブレットをウィル・サッソ、観音をセリーナ・ロー、パムをメドウ・ウィリアムズが演じている。

トライ79でロイはヘリコプターの男に撃ち殺されているが、37では部屋から脱出できている。69と48でも外にいるから、無事に脱出できたってことだよね。ヘリコプターの男だけでなく、エスメレルダとパムからも逃げ延びたってことだよね。
それは整合性が取れていないだろ。そりゃあ、敵の動きを全て記憶して対応できるとは限らないけど、それにしてもデタラメだろ。
っていうか、そもそも殺されて復活した時点で、前回の体験を全て覚えている前提で話を進めているけど、そこのルールもフワフワしているんだよね。
あと、起きた直後から次々に殺し屋が来るってことは、前回の経験を振り返って対応策を練る時間は無いはずだよね。そう考えると、むしろ37回目で無事に窓から脱出できているってのは、すんげえ早過ぎないか。

トライ140のロイは、バーで酒を飲んで諦めている。だけど、こっちは他の選択肢を見せてもらっていないから、諦めるのが早すぎると感じるぞ。
あと、エスメレルダとパムを車ごと爆破したはずなのに、なんでパムは無傷でバーに来ているんだよ。
そもそも、そこに殺し屋が勢揃いするのも変だろ。それまでのトライでは双子を除けば単独で襲って来たのに、そこだけ全員集合するのは不自然極まりない。
あと、ロイが「もう100回は聞いた」とジェイクに言うシーンがあるけど、トライ140で100回も聞いているのは整合性が取れないだろ。

テンポだけは悪くなかった序盤だが、ループが始まる前日のシーンに入ると、一気にモタ付いてしまう。
研究所のシーンを入れることで話に変化を付けるのも、そこでチェンジ・オブ・ペースを持ち込むのも、構成として間違っているとは 思わない。ただ、あまりにも無駄話が多すぎる。ジェマがロイに話し掛けるセリフは、もっと削ぎ落とした方がいい。
極端なことを言うと、「誕生日プレゼントを確認して」「オシリスという言葉を覚えておいて」という2つだけで目的は果たせるんだし。ヴェンターがジェマに話す内容も、要領を得ないことばかりで時間の無駄にしか思えないし。
あと、ずっとロイ視点で話を進めているんだから、ヴェンターがジェマを呼んで話すシーンは排除した方がいいだろ。

前日のシーンを挟み、トライ141に入る。そこでロイが死亡したら続けてトライ142で、次はトライ143。
だったら次は144かと思いきや、トライ51。
そのタイミングで、今さら51まで戻る意図がサッパリ分からない。
もう研究所の前日パートは描いているんだから、それ以降は時系列順で進めればいいだろうに。
わざわざ変なタイミングで挟むぐらいだから、スマイリーというキャラや彼に殺されるシーンが重要な意味を持っているのかというと、そんなことは全く無いんだし。

ロイは追跡装置を囮にしてパムを始末した後、他の殺し屋も一掃する。
でもパムはともかく、他の殺し屋も追跡装置を外しただけで全滅させられるのは、どういう理屈なのかサッパリ分からない。
あまり細かいことをゴチャゴチャ考えず、勢いだけで突破しようという類の作品なんだろうなあとは思うのよ。ただ、SFとして用意している仕掛けに対して、あまりにもディティールが粗すぎるんだよね。
頭を空っぽにして見るべきなのかもしれないけど、色んな事が引っ掛かっちゃうのよ。

トライ156でヴェンターが喋り始めた時、ロイの「このスピーチを奴は丸暗記してる。毎回、フレーズが全く同じだ」という語りが入る(ここまで触れていなかったが、この映画はロイの語りによって進行される)。
しかし、少なくともトライ153までは、観音の攻撃で即死しているので、ヴェンターが来たことさえ知らなかったはず。
トライ154と155は省略されているので、その時は即死せずにヴェンターのスピーチを聞いたってことなのか。そう解釈すれば筋は通るけど、無駄な引っ掛かりを生んでるだけだ。
そこはトライ156でヴェンターが初めて登場し、ロイがスピーチを聞いたという形でもいいだろ。「このスピーチを奴は丸暗記してる。毎回、フレーズが全く同じだ」という語りを排除すれば、それで話は成立するんだから。

ジェマの意図を悟ったロイは、ダイから剣術の修行を受けて観音と戦う。
ロイと観音の戦いはソード・アクションだが、ここだけ明らかにテイストが違っていると感じる。
そういうのをやりたかったのなら、もう「タイムループの中でロイが修行を積み、中華アクションの能力が上達していく」というトコに振り切った方が良かったんじゃないかと。
中途半端にクンフー的なアクション要素を強調するパートを用意しているのが、欲張り過ぎて話を上手くまとめ切れていないという印象に繋がっている。

ロイが観音とブレットを始末してヴェンターを追い詰めたら、あとはラスト向けて畳み掛ければいいはずだ。しかし上映時間を考えると、まだまだ充分すぎるほどの尺が残っている。
なので、どうするのかと思ったら、「ロイがヴェンターを殺そうとしている間にジョーが殺害されている」という展開。
ちなみに、誰が殺したのかは不明だし、ヴェンターがジョーを殺す意味も不明。それだけでなく、「スピンドル反応が長く続くと世界が破滅する」ってことで、世界の破滅が起きる。
すっかりやる気を失ったロイは、ループが繰り返される中で何度も無抵抗のまま殺され続ける。

そんな手順を経て、ようやく「ロイがやる気を取り戻す」という展開に移るのだが、「めんどくせえなあ」と心の叫びが出てしまった。
もう「ループが繰り返される」という構成で得られる面白さなんて、とっくに失われているのに、まだ続けるのかと。
しかも、息子を救うために行動するのかと思ったら、「世界の破滅まで息子と過ごす」という時間が用意される。その後、ようやく「ジェマを救うために行動する」という展開になる。
そこまで色んな細工を施すぐらいだから、せめて最後は綺麗に片付けてくれるのかと思ったら、それも無いのよ。
「俺たちの戦いはこれからだ」みたいな感じで、完全に投げっ放しなのだった。

(観賞日:2022年12月9日)

 

*ポンコツ映画愛護協会