『コルドロン』:1985、アメリカ

プリデインという国には、かつて神々でさえ恐れる邪悪な王が住んでいた。捕らえられた王は、生きたまま溶けた鉄の中に投げ込まれた。 すると封じ込められた彼の悪霊はブラック・コルドロン、つまり黒い鉄壷の形になって固まった。それ以来、ブラック・コルドロンは邪悪 な人間に探し出されるのを待っている。もし悪人がコルドロンを入手すれば、不死身の軍隊を生み出すことが出来る。そして世界の支配者 になることも出来るのだ。
ある田舎に、ドルベンという老人と弟子のターラン少年が住んでいた。ターランは兵士として戦争で活躍することを夢見ているが、実際は ヘン・ウェンという豚の世話をさせられている。英雄になりたいターランは、「なぜ豚の世話ばかりなのか」と不満タラタラだ。「必要 なのはチャンスだ、その時が来れば勇者になれるさ」と彼は苛立ちを吐露し、木の棒で動物たちを脅かした。
ドルベンはターランに、「ヘン・ウェンは特別な豚だ」と告げた。体を洗ってもらっていたヘン・ウェンは、急に興奮して暴れ出した。 すぐにドルベンは、ヘン・ウェンを室内に入れるようターランに命じた。ドルベンは水の入った盃を用意し、「まだ、この子の力を試した ことは無い。だが、今は必要だ。これからやることは、絶対に人に話してはならない」とターランに告げた。
ドルベンはヘン・ウェンの顔を水面に突っ込ませ、「何がお前を悩ますのだ」と尋ねた。すると水面にはホーンド・キングの影が浮かんだ 。ドルベンは、ホーンド・キングがブラック・コルドロンを捜していること、ヘン・ウェンの能力を彼が察知したことを知った。彼は ターランに「今すぐヘン・ウェンを森の隠れ家へ連れて行け。ワシが迎えに行くまでは隠しておけ。ホーンド・キングはヘン・ウェンの 能力を知った。その能力を使って彼がブラック・コロドロンを見つけたら一大事だ」と述べた。
森を歩いていたターランは、ヘン・ウェンを見失ってしまった。捜していると、森の住人ガーギと遭遇した。リンゴを奪われたターランは 木の枝を構え、「返さないとヒドい目に遭わせるぞ」と脅した。ガーギはリンゴを一口かじってから返した。ヘン・ウェンを見なかったか 尋ねると、ガーギは「知らない」と言う。しかしターランが立ち去ろうとすると、リンゴが欲しいガーギは「そいつを見たよ。友達だから 案内する」と言い出した。
どこからかヘン・ウェンの怖がるような声が聞こえて来た。ガーギは即座に逃げ出した。ターランが声のする方向へ行くと、ヘン・ウェン が2匹のドラゴンに襲われていた。ヘン・ウェンはターランの目の前でドラゴンに連れ去られた。後を追うと、ドラゴンは怪しげな城へ 入っていった。そこへガーギが現れ、「あの城はヤバい、やめといた方がいい」と警告する。ターランは怯えるガーギを「君は友達じゃ ない、ただの臆病者さ」と罵り、一人で城へ向かった。
城に潜入したターランは、ある窓から下を覗いた。すると広間があり、大勢のならず者たちが飲んだり食べたりしていた。そこへ彼らの ボスであるホーンド・キングが現われると、手下の小さな怪物クリーパーはベン・ウェンを連れて来させた。ホーンド・キングは液体の 入った盃を用意し、ヘン・ウェンに「コルドロンのありかを見せろ」と要求した。
ヘン・ウェンはそっぽを向いていると、子分が脅しを掛けた。ターランは「やめろ」と叫んで窓から転落し、子分に捕まった。ホーンド・ キングは「コルドロンのありかを教えさせろ、出来なければ豚を殺す」と脅した。ターランに頼まれ、ヘン・ウェンは盃に顔を浸した。 映し出される絵を見ようと、ホーンド・キングが近寄った。怯えたターランは盃を踏んでしまい、入っていた液体がホーンド・キングの顔 に飛び散った。ホーンド・キングが怯んだ隙に、ターランはヘン・ウェンを連れて広間から逃走した。
堀を見つけたターランは「泳げ」と告げ、ヘン・ウェンを投げ込んだ。兵士に捕まったターランは、地下牢に放り込まれた。無力な自分を 嘆いて泣いていると、床の石が外れて地下から1人の少女が現れた。それは地下牢に捕まっている魔法使いのエロウィー姫だった。彼女は 光の球を出現させ、ターランを導いて地下道を進んだ。その途中にあった埋葬室には、城を築いた王様が眠っていた。王様の剣を見つけた ターランは、それを手に取った。
ターランとエロウィーは、吟遊詩人のフルーダーがスパイと間違えられて捕まり、拷問室に閉じ込められているのを目撃した。2人は フルーダーを助け出すが、直後に子分たちが「地下牢の奴らが逃げた」と騒ぎ出した。エロウィーたちとはぐれたターランは兵士に発見 され、慌てて剣を抜く。すると、その剣の力におののいた兵士は逃げ出した。別の兵士が来るが、ターランは剣の力で撃退した。ターラン はエロウィーたちと合流し、城から逃げ出した。
森に入ったターランが得意げにしていたので、エロウィーは「何よ偉そうに。命からがら逃げ出してきたくせに」と告げる。2人は険悪な 雰囲気になるが、すぐに仲直りした。そこへガーギが現れたので、ターランは追い払おうとする。するとガーギは「豚の足跡を見た。案内 する」と言い出した。彼の案内で泉の近くへ行くと、豚の足跡があった。刹那、一行は泉に飲み込まれた。
ターランたちは泉の中で、妖精の王様アイデルリグと家来たちに遭遇した。彼らの話によって、ヘン・ウェンが妖精の国に迷い込んだこと が判明した。アイデルリグは家来のドーリに「豚を連れて来い」と命じた。ヘン・ウェンが現れた後、アイデルリグはターランたちに 「ブラック・コルドロンはモーヴァに隠してある」と言う。ターランは「ブラック・コルドロンを先に見つけて破壊すれば、ホーンド・ キングの勢いは止まる」と口にした。アイデルリグはドーリに、道案内を命じた。
ターランはヘン・ウェンを家まで妖精たちに送ってもらい、エロウィーたちと共にモーヴァの沼地へワープした。一軒家に到着した彼らは 、手分けしてブラック・コルドロンの捜索を開始した。すると、室内に隠れていた無数のカエルが飛び出した。ドーリは「あれは元々は 人間だった」と告げた。ガーギは鉄の壷が幾つも置いてある場所を見つけた。そこへ「誰かがカエルを盗んだね」という声がして、住人で ある3人の魔女オルドゥー、オルエン、オルゴがやって来た。
「お前たちをカエルに変えて食べてやる」と威嚇され、ターランたちはいそいそと逃げ出そうとする。フルーダーはオルエンに気に入られ 、抱き締められた。オルゴーがカエルに変身させると、すぐにオルエンが魔法を解いた。ターランは剣を構え、「ブラック・コルドロンを 出せ」と要求した。剣が気に入ったオルドゥーは、「それとブラック・コルドロンを交換しよう」と持ち掛けた。
ターランが交換を拒否すると、フルーダーが自分のハープとの交換を提案するが、相手にされない。ガーギは食べかけのリンゴを見せるが 、奪われただけだった。ターランは仕方なく、剣を差し出した。すると魔女たちは家を消し、地面からブラック・コルドロンを出現させた 。魔女たちは「それは壊せないのさ。悪の力を閉じ込めることは出来るが、誰にも破壊できない」と言う。
ターランが「じゃあ、それでいいよ。どうやれば悪の力を閉じ込められるの?」と尋ねると、魔女たちは「生きている者が自分の意思で 飛び込めば封印できるが、二度と出られない」と告げて姿を消した。夜になり、ドーリはターランたちの前から去った。直後、ドラゴンと ホーンド・キングの子分たちが現われると、ガーギは一目散に逃げ出した。ターランたちは捕まった。
ターランたちは城に連行され、拘束された。その目の前で、ホーンド・キングは兵士の骸骨をブラック・コルドロンに放り込んだ。すると ブラック・コルドロンから炎が湧き立ち、城で骸骨となっていた兵士たちは不死身の軍団として復活した。不死身の軍団は城外へ向かって 歩き出し、ホーンド・キングは高らかに笑う。ガーギが城に侵入し、ターランたちの縄を解いた。ターランはブラック・コルドロンに 飛び込もうとするが、ガーギが制止した。その直後、ガーギはブラック・コルドロンへとダイブした…。

監督はテッド・バーマン&リチャード・リッチ、原作はロイド・アリグザンダー、原案は デヴィッド・ジョナス&ヴァンス・ゲリー&テッド・バーマン&リチャード・リッチ&アル・ウィルソン&ロイ・モリタ&ピーター・ ヤング&アート・スティーヴンス&ジョー・ヘイル、製作はジョー・ヘイル、製作総指揮はロン・ミラー、 キャラクター・デザインはアンドレアス・デジャマイク・ブルーグ&フィル・ニッベリンク&アル・ウィルソン&デヴィッド・ジョナス、 音楽はエルマー・バーンスタイン、音楽監修はジェイ・ロートン。
声の出演はグラント・バーズリー、スーザン・シェリダン、ジョン・ハート、フレディー・ジョーンズ、ナイジェル・ホーソーン、フィル ・フォンダカロ、イーダ・レイス・メリン、アデル・マリス=モレイ、ビリー・ヘイズ、アーサー・マレット、ジョン・バイナー、 リンゼイ・リッチ、ブランドン・コール、グレゴリー・レヴィンソン他。


ロイド・アリグザンダーの児童向けファンタジー小説『プリデイン物語』全5部作の第1巻『タランと角の王』と第2巻『タランと黒い 魔法の釜』を原作とするディズニーのディズニーの長編アニメーション映画。
ディズニーの長編アニメとしては初めてPGレートに指定された。
ターランの声をグラント・バーズリー、エロウィーをスーザン・シェリダン、ホーンド・キングをジョン・ハート、ドルベンを フレディー・ジョーンズ、フルーダーをナイジェル・ホーソーンが担当している。
ディズニーの大失敗作として、一部では良く知られている作品だ。
内容がポンコツというだけでなく、興行的にもコケた。

ディズニーの長編アニメーション映画で、「THE END」の文字で終幕しないのは本作品が初めてだ。
また、クロージング・クレジットがあるのも1951年の『ふしぎの国のアリス』以来のことだ。
ただし『ふしぎの国のアリス』ではオープニング・クレジットも表示され、クロージング・クレジットはキャスト表記のみだった。
今回はオープニング・クレジットが無く、全スタッフとキャストがクロージング・クレジットで表記される。
なお、今回はミュージカル・シーンが全く無いし、歌が流れることも無い。

冒頭、「邪悪な王様の霊はブラック・コルドロンに閉じ込められた。ブラック・コルドロンは邪悪な人間に探し出されるのを待っている」 などと説明が入る。
それなのに、なぜ邦題を『ブラック・コルドロン』じゃなくて『コルドロン』にしたのか。
配給した東宝のセンスは理解に苦しむものがある。
『ブラック』を外したところで、そんなに大きな効果が見込めるものなのか。

序盤、ドルベンは「ホーンド・キングめ、何を企んでいる」「ホーンド・キングが戻ったら火傷どころでは済まないぞ」などと言っている が、それが何者かは教えてくれない。
ターランもそれを聞いているが、「ホーンド・キングって?」とは質問しない。どうやら彼も知っている設定のようだ。
だけど、こっちには全く伝わらない。
ホーンド・キングってのは、その世界において、どういう位置付けのキャラなんだよ。
もうちょっと分かるように説明してくれよ。

ターランは「必要なのはチャンスだ、その時が来れば勇者になれるさ」と言うが、せいぜい木の棒で豚やアヒルやヤギを怖がらせる だけ。
「ターラン様には誰も叶わない」と言うが、ヤギに反撃されて泥だらけになる情けなさ。
森でも「ホーンド・キングだってへっちゃらさ」と言い、勇者として崇められる妄想に浸っている間にヘン・ウェンを見失ってしまう。
ドジでバカなガキである。

最初に「口だけ番長」として主人公が登場したのなら、「生意気な少年が、実際に危機に直面すると何も出来なかったが、冒険の中で成長 し、本物の勇者になる」というのが、ベタではあるが、いかにもディズニーらしい健全で真っ当なヒロイック・ファンタジーの筋道 だろう。
ところが、なぜか今回、ディズニーはワケの分からないところでチャレンジ精神を見せている。
主人公は全く共感を誘わず、いけ好かない野郎なのだ。
そして最後まで口だけ番長のままで全く成長せず、ほとんど活躍しないのだ。

とにかく主人公が頼りない奴で、全く活躍しないというのが、最も致命的な欠陥だろう。
ディズニーとしては「これを見ている平凡な子供たち、ごく普通の子供たちでも、世界を救うことが出来るんだよ」というメッセージを 込めているつもりなのかもしれないが、だとしたら考え方が完全に間違っている。
ここで描く主人公は、「ごく平凡で何の取り得も無いけれど、悪を倒すために勇気を振り絞り、懸命に頑張ってキッチリと役目を果たす 少年」という設定にすべきだったのだ。

ヘン・ウェンがドラゴンに連れ去られた後、あっさりとターランは城を発見する。
城へ向かう道のりにも、何の苦労も待ち受けていない。
見つけた時点では随分と距離があるように見えたが、すぐに到着している。
壁をよじ登る時も、全くピンチは無い。
時間的に全く余裕が無いからなのか、とにかくサクサクと、どんどん先へ進めていく。
だからといって、テンポが小気味良いわけではない。

ホーンド・キングに捕まったターランとヘン・ウェンは逃げ出すが、その経緯が「ホーンド・キングが不用意に盃へ近付き、ビビった ターランが盃を踏んだら液体(熱湯?)がホーンド・キングの顔に飛び散り、その間に逃げる」という間の抜けたモノだ。
ホーンド・キング、アホすぎるぞ。
ターランも狙って液体を浴びせたわけじゃなく、偶然に過ぎないし。
で、逃げ出したと思ったら、すぐにターランは捕まる。
逃げてから捕まるまで、なんと早いことか。

ターランが地下牢に入れられると、エロウィーが床下から現われる。
どういう地下牢なんだよ、それは。
っていうかエロウィーは魔法使いなんだから、さっさと逃げ出せそうなものだが。
「ここは嫌い、ネズミがいるから」と言うが、それも魔法で何とかならないのか。
彼女は光の球に案内させて地下道を進むが、そんな能力があって、逃げ出す意志もあるのなら、なぜ今まで捕まっていたんだよ。

その後、エロウィーが魔法使いとしての力を発揮して活躍するのかというと、全く活躍しない。
何しろ、魔法を一度も使わないのだ。
どんなピンチに陥っても、全く魔法を使わない。使ったのは、光の球だけだ。
その光の球も、もし無かったとしても、全く話に影響は及ぼさない。
もう一人のメンバーであるフルーダーは、ただ怯えているばかりで、何の役にも立たない。

兵士に襲われたターランが王様の剣を抜くと、兵士はビビって逃げ出す。
それはターランの力ではなく、剣がスゴいだけなのに、彼は浮かれる。調子に乗ってエロウィーに「来て、出してあげる」と言う。
次の兵士を倒した時、エロウィーは「剣のおかげね」と言うが、その通りだ。
それでも例えば「ターランの勇気や使命感に剣が応えて力を発揮した」というのなら納得できるが、ただのヘタレが偶然に スゴい剣を持っただけだ。
しかもターランはフルーダーが襲われているのに助けず、さっさと逃げ出す薄情な奴だ。

エロウィーは姫様なのに、なぜか裁縫が得意で、フルーダーの敗れたズボンを縫っている。
その後、ターランとエロウィーの「みんなを城から助けただろ」「魔法の剣のおかげでしょ」「ふん、君みたいな女の子に何が分かる?」 という言い争いが始まるが、どう考えても姫様の方が正しい。
でも、2人はすぐに仲直りする。
なんだよ、その無意味にしかなっていないケンカは。
で、そこから「ターランが剣の力に頼らずに頑張ろうとする」という展開になるのかというと、ならない。

泉に飲み込まれると、妖精たちが登場する。
そこは妖精たちが動き回るのを見物しているだけで、冒険としての面白さは全く無い。そこから「妖精たちの国を旅して、様々なピンチを くぐり抜け、ようやくヘン・ウェンを見つけ出す」という展開など無い。あっさりとヘン・ウェンがやって来る。
で、さっさとヘン・ウェンは家に帰される。
ヘン・ウェンの能力を巡る話だったのに、そんなキャラを後半に入るとカヤの外に置いてしまう始末。
なんせブラック・コルドロンのありかを妖精が知っているので、もはやヘン・ウェンの存在価値が無いのだ。
何だよ、その計算能力の低すぎる構成は。

しかも、モーヴァへ到着するまでの冒険も無い。「ありゃ、モーヴァに着いたよ」と、ドーリが言うと、いつの間にか到着している。
そこでは魔女が登場するが、「人間をカエルに変身させる」という能力設定も、フルーダーが瞬間的にカエルになっているだけなので、 まるで無意味なモノになっている。
で、そこで1分半ぐらい遊ばせておいて、ようやくターランが剣を構えて「ブラック・コルドロンを出せ」と要求する。
さっさとやれよ、そんなこと。なんで、しばらくフルーダーを放っておくんだよ。

そのシーンでは、ターランの手から離れた剣が、魔女が浮遊させたヤカンやお皿や炊飯ジャーなどを勝手に斬っている。
つまり、「ターランが剣に選ばれたわけではない」というレベルではなく、人間が持って戦う必要さえ無いのだ。
自分で勝手に戦う能力もあるのだ。
そうなると、もはやターランの存在価値など皆無だ。
その剣さえあれば、ホーンド・キングだって倒せそうだぞ。

「ブラック・コルドロンは壊せないのさ。悪の力を閉じ込めることは出来るが、誰にも破壊できない」と魔女たちが言うと、ターランは 「じゃあ、それでいいよ」と、あっさり口にする。
おいおい、そこはターランがショックを受けるなり、「何か方法があるはずだ」と考えたり、そういう展開に行くべきじゃないのか。
大体、魔女がすぐに「悪の力を閉じ込めることは出来る」と、別の選択肢を安易に用意しているのも、どうなのよ。

骸骨兵士たちが不死身の軍団として復活すると、もうターランたちはすっかり諦めて死を覚悟している。
おいおい、もうちょっと頑張れよ。
その後、ガーギが来て3人の縄を解くと、ようやくターランはブラック・コルドロンに飛び込もうという勇気を見せている。
ところがガーギが制止して自分が飛び込んでしまうので、そこでもターランは何の仕事もやっていない。

ガーギがブラック・コルドロンに飛び込んだことによって、せっかく復活した不死身の軍団は、わずか3分程度で死亡する。
そのガーギの自己犠牲の精神は、そこに至るドラマ描写が薄いために全く心を打たないのだが、さらにダメ押しとして、ターランが「まだ ガーギを助けられるかもしれない」と言い出し、ブラック・コルドロンに近寄ろうとするのだ。
そういうセリフがあるってことは、「ああ、ガーギは助かるんだな」とバレバレだ。
すぐに助け出されると分かったら、ガーギの行動も軽いモノとしか写らない。

前半、剣を使ったターランが「自分が活躍した」と思い込むというバカな展開があったが、それでも剣が重要なアイテムとして登場した ことは確かだ。
ところが魔女に剣を奪われてしまい、肝心のクライマックスでは、剣を携帯していない。
それが例えば「それまで剣の力に助けられていたターランが、ここぞという時は自分の力で解決する」という形であれば、まだ理解 できる。
しかし、そもそも剣を持っていないので、使おうにも使えないという状態なのだ。
もし持っていたら、間違いなくターランは剣に頼っていただろう。
っていうか、たぶん勝手に剣が動いてホーンド・キングと戦っていただろう。

剣の無いターランがどうやってホーンド・キングを倒すのかというと、答えは「何もしない内に、勝手にホーンド・キングが自滅する」と いうものだ。
ブラック・コルドロンの圧倒的なパワーに吸い込まれるのだ。
アホすぎるだろ、その展開は。
つまり、ターランが自分の力で敵と戦う、悪を駆逐するというシーンは、最後まで一度も登場しないのだ。

そうそう、ガーギだけど、全てが終わった後にフルーダーが魔女たちに交換を要求すると、ブラック・コルドロンの中から解放されている 。
魔女たちって、そんなに強い力の持ち主なのかよ。
だったらホーンド・キングより、こいつらの方が強いだろ。
裏を返せば、ホーンド・キングはそんなに強敵じゃないってことになるぞ。
まあ実際、すげえマヌケな形で最期を迎えているしなあ。

(観賞日:2010年5月30日)

 

*ポンコツ映画愛護協会