『がんばれ!ベアーズ大旋風』:1978、アメリカ
ベアーズの面々はトビーの家に集まり、テレビを見ていた。すると日本のリトルリーグの優勝チームが番組で取り上げられ、シミズ監督がインタビューを受けていた。シミズはアメリカのジュニアリーグに試合を申し込んだが、財政難や教育上の懸念を理由に断られていた。ベアーズは翌朝のモーニングショーに出演し、アメリカ代表として日本に遠征したい意向を語った。朝まで酒を飲んでいたプロモーターのマーヴィンは目を覚まし、助手のマージーに電話を掛けて言付けが無かったかどうか尋ねる。マージーはラスベガスのルイからルーレットの借金を返済するよう要求されたこと、テレビ局から企画が没になったことを彼に伝えた。
ベアーズがスポンサーを募集していることを知ったマーヴィンは「そんなに甘くないぞ」と馬鹿にするが、ヒット企画になるかもしれないと思い直す。そこで彼はルイに会い、「ベアーズの企画をテレビ局に持ち込んだら衛星中継したいと言ってる。必ず儲かる」と10万ドルの投資を持ち掛けた。しかしルイは相手にせず、先に借金を返せと告げた。マーヴィンはベアーズのティリヤードと電話で話し、メンバーをレストランに招待した。彼は遠征資金が用意できていると嘘をつき、契約書にサインさせた。マーヴィンは9人しか連れて行かないつもりだったが、アーメッドは幼い弟のムスターファを同行させると主張した。
マーヴィンとベアーズが日本に到着すると、空港ではシミズと日本の優勝チームが出迎えに来ていた。エンゲルバーグは日本チームの1人の発言に腹を立てて掴み掛かり、マーヴィンが慌てて仲裁に入った。マーヴィンはホテルに泊まるつもりだったが、ティリヤードが日本の情緒を味わうために旅館を予約していた。椅子もベッドも無いため、マーヴィンは不満を見せた。宣伝のために練習試合が実施されることになり、マーヴィンは日米対抗空手大会で来日しているテレビ局ディレクターのジェリーを球場へ呼んだ。マーヴィンは嘘を吹き込んで衛星中継を売り込むが、ベアーズはミスの連続で大敗を喫してしまう。ジェリーは「上に話してみるが、あんな負け方をしたら誰も見たいと思わない」とマーヴィンに言い、球場を後にした。
街へ遊びに出掛けたケリーは和服姿のアリカという女性を目撃し、後を追い回した。ケリーが「君は芸者なんだろ。芸者は何でも出来るんだろ」と言うと、アリカは「芸者じゃありません」と腹を立てて走り去る。彼女は地下鉄に乗り込んで逃げようとするが、ケリーは執拗に追い掛けた。アリカが家に着くと、ケリーは「もう電車が無いからホテルに戻れないよ。泊めてくれよ」と食い下がる。ユリカは拒否するがケリーに好意を持ったらしく、「名前を教えて」と頼まれると笑顔で教えた。
旅館から支払いを求められたマーヴィンだが、クレジットカードが使えない状態になっていた。ベアーズはマーヴィンが無一文だと知り、激しく抗議する。マーヴィンはベアーズを連れて旅館から逃げ出そうとするが、従業員に見つかってしまった。マーヴィンはテレビ局幹部のエディーと話を付けるため、空手大会の会場へ出向いた。するとプロレスラーのアントニオ猪木が拍手と共に登場し、続いてアメリカのコンタクト空手王者であるミーン・ボーンズ・ボーディーンが現れた。2人は試合前のデモンストレーションを行い、対抗心を剥き出しにする。ミーン・ボーンズは3枚のブロックを頭突きで割ろうとするが、意識を失って昏倒してしまった。
試合は1時間後に迫っており、責任者を務めるテレビ局ディレクターは対応に追われる。それを見たマーヴィンは彼に声を掛け、「ウチのキラー・ザ・グレートが代役を務める」と持ち掛けた。彼は千ドルの臨時報酬を持ち掛け、太った白人に声を掛けてマスクマンとして出場させることにした。しかし猪木が「名のある相手でなければ試合をしない」と言っていることをディレクターに聞かされ、マーヴィンは説得に赴いた。彼は「怖いのか」と猪木を挑発し、試合を承諾させた。
激怒する猪木が暴れる様子を見た白人が怖がって逃げ出したため、マーヴィンは覆面を被ってリングに上がる。しかし全く戦えず、一方的に技を受け続ける。ムスターファは「監督が殺されちゃう」と叫び、リングに乱入してマーヴィンを助けようとする。さらにベアーズのメンバーも乱入し、猪木に飛び掛かった。この乱入劇は大きな話題となり、ベアーズは多くのマスコミに取り上げられた。マーヴィンとベアーズは日本チームと共に新幹線で移動するが、ケリーは同行せずにアリカとデートする。ベアーズと日本チームは観光地を巡りながら、すっかり仲良くなった。
宣伝活動に積極的なマーヴィンに対して、シミズは「子供の野球なのに大げさだ」と苦言を呈する。「一人でも多くの野球ファンに見てもらいたいんだ」とマーヴィンは言うが、シミズは金儲けが目的だと悟っていた。「俺を軽蔑してるだろう。だが最後のチャンスなんだ」とマーヴィンが訴えると、シミズは笑顔を浮かべた。シミズは日本チームを率いてオールスター家族対抗歌合戦に出場し、見事に優勝した。さらに日本チームの1人は、テレビのコマーシャルにも出演した。ケリーはアリカとデートし、キスを交わした。しかしパチンコ店を経営するアリカの父は、ケリーとの交際に反対する…。監督はジョン・ベリー、脚本はビル・ランカスター、製作はマイケル・リッチー、共同製作はビル・ランカスター、製作協力はテリー・カー、撮影はジーン・ポリト&岡崎宏三、編集はリチャード・A・ハリス、美術はウォルター・スコット・ハーンドン、音楽はポール・チハラ。
出演はトニー・カーティス、ジャッキー・アール・ヘイリー、若山富三郎、アントニオ猪木、石原初音、ジョージ・ワイナー、ロニー・チャップマン、マシュー・ダグラス・アントン、エリン・ブラント、ジョージ・ゴンザレス、ブレット・マークス、デヴィッド・ポロック、デヴッド・スタンバウ、ジェフリー・ルイス・スター、スクーディー・ソーントン、エイブラハム・アンガー、ディック・バトン、レジス・フィルビン、萩本欽一、ヒュー・ギリン、ロバート・ソレルス、クラレンス・バーンズ他。
シリーズ第3作。
監督は『虎の谷』『愛しのクローディン』のジョン・ベリー。脚本には1作目のビル・ランカスターが復帰している。
ビデオ化の際は『がんばれ!ベアーズ大旋風 -日本遠征-』という邦題になった。
ベアーズのメンバーは、ケリー役のジャッキー・アール・ヘイリー、アーメッド役のエリン・ブラント、ミゲル役のジョージ・ゴンザレス、ジミー役のブレット・マークス、ルディー役のデヴィッド・ポロック、トビー役のデヴッド・スタンバウが1作目からのレギュラー。
エンゲルバーグ役のジェフリー・ルイス・スターは、前作からの続投。このシリーズは作品ごとに主演俳優が違っていて、1作目はウォルター・マッソー、2作目はウィリアム・ディヴェインだった。
そして今回は、マーヴィン役で『手錠のまゝの脱獄』『お熱いのがお好き』のトニー・カーティスが参加している。
1作目から2作目は「ランクが落ちたな」と感じたが、今回は再び引き上げてきたね。
他に、シミズを若山富三郎、アリカを石原初音、テレビ局のディレクターをジョージ・ワイナー、ルイをロニー・チャップマン、ティリヤードをマシュー・ダグラス・アントンが演じている。他に、プロレスラーのアントニオ猪木、元フィギュアスケート選手で現スケート解説者のディック・バトン、コメディアンの萩本欽一が、本人役で出演している。
アリカの父親役は天津敏。アンクレジットだが、旅館の番頭は大泉滉で、オールスター家族対抗歌合戦のシーンではジェリー藤尾と若原一郎も出演している。
スタッフとしては、澤井信一郎が監督補佐として参加している。
撮影監督のジーン・ポリトがジョン・ベリーと衝突して帰国したため、途中からは岡崎宏三が担当している。「ベアーズが日本へ行こうとしている」というトコから話は始まるが、これは3作目のために用意された設定ではない。
2作目の段階で「ヒューストンのチームと対戦し、試合に勝った方が日本に遠征する」という設定があったのだ。その試合にベアーズは勝っているので、そこからの続きってことだ。
1作目が日本で大ヒットしたことを受けて、日本でのロケが実現したのだ。
東映東京撮影所が全面的に協力し、全編の約9割が日本で撮影されている。ただ、どうやら日本へ行くスケジュールを取れなかった面々もいたようで、前作に出演していたベアーズのメンバーからは5名が離脱している。
前作で新加入したカーメンについては、1作だけの使い捨てでも別にいいとしよう。
ただ、ベアーズの頭脳であるオギルヴィーや、小柄だが扱いは大きかったタナー、前作では怪我で遠征に参加できなかったルーパス、アギラー兄弟の兄であるホセが抜けたのは、かなりの痛手と言っていいんじゃないか。
そもそも前作の時点で、監督のウォルター・マッソーとエースのテイタム・オニールが抜けたことによる大きなダメージがあったわけだが、そこに追い打ちを掛ける形となっている。前作では序盤にカーメンという新メンバーが加わったが、そこには「ケリーが新メンバーのカーメンを仲間に紹介する」という手順が用意されていた。決してカーメンの使い方が上手かったとは言えないが、少なくとも紹介するための手順は踏んでいた。
ところが今回の新加入であるティリヤードに関しては、最初からメンバーとして当たり前のように登場している。それどころかマーヴィンが最初に電話を掛けてアポを取った相手がティリヤードだが、彼が「僕ですよ」と言っても「いや誰だよ」とツッコミを入れたくなる。
ちなみにティリヤードは、前作までのオギルヴィーと同じような役割を担当しているようだ。
ただ、彼を含めても8人なので「9人」とマーヴィンが言った時に困惑してしまうが、どうやらエイブという少年も新メンバーとして加わっているようだ。まるで気付かなかったわ。日本を舞台にした作品では「あるある」だが、この映画でも日本に関する描写はデタラメの連続だ。
しかし、それがポンコツ映画としてのセールスポイントになるほど、面白いわけではない。
アントニオ猪木の扱いは適当で、空手家のようなデモンストレーションをさせられている。さらに試合のシーンでは、乱入したベアーズのメンバーに襲われるという役回りを引き受けている。
最初は次々に投げ飛ばすが、最終的にはムスターファのセカンドロープからのダイブを股間に受けて苦悶するという情けない扱いである。ただ、アントニオ猪木の扱いが云々ってことよりも、マーヴィンが空手大会の会場へ行くとベアーズが無関係になるってことの方が遥かに問題だ。
そこが終われば再びベアーズは出て来るが、あくまでも「試合の見物」ってだけだ。
で、そこから「マーヴィンがアントニオ猪木と試合をしてベアーズが乱入する」というエピソードになると、ようやくベアーズをメインで動かす意識が見える。
ただし、もはや野球から完全に外れている。その後には新幹線で移動しているが、これは宣伝活動の一環であり、ただ「日本チームと仲良くなる」ってのが描かれるだけ。
そこからオールスター家族対抗歌合戦やコマーシャル撮影のシーンになるが、これに参加するのは日本チーム。つまり、ベアーズは完全にカヤの外へ置かれているのだ。
もはや野球から離れただけでなく、ベアーズからも離れているってわけだ。
そもそも野球から離れたエピソードが続く時点で大いに問題ではあるが、せめてベアーズはメインに据えておけよ。残り30分ぐらいになっても、まだベアーズが物語の中心から外れている時間が長い。
ケリーには恋愛劇が用意されているが、これも野球に何の関係も無いエピソードだ。アリカの父親が、日本チームの監督ってわけでもないしね。しかも、それも大して膨らませるわけではなく、マーヴィンを追うシーンも多い。
前2作とは違い、ビリングトップの大人はチームの監督じゃなくてフリーのプロモーターなので、彼を描いてもベアーズに繋がるとは限らない。
なぜか終盤に入ると彼が監督になっているけど、これは無理があるし。最後は「マーヴィンが改心して銭ゲバ精神を捨てる」という着地があるけど、そこに向けたドラマなんて皆無に等しいし。(観賞日:2019年10月12日)
第1回スティンカーズ最悪映画賞(1978年)
ノミネート:作品賞
1978年スティンカーズ最悪映画賞
受賞:【最悪の続編】部門
ノミネート:【最悪の助演男優】部門[ジャッキー・アール・ハーレイ]
受賞:【最悪のグループ】部門[ベアーズ]
ノミネート:【最も痛々しくて笑えないコメディー】部門