『ウーマン・イン・レッド』:1984、アメリカ

サンフランシスコで市役所の広報管理課に勤務するセオドア・ピアースは、妻ディディとの間に子供を儲け、平穏な暮らしを送っている。そんなある日、彼は駐車場で赤いドレスの女性シャーロットを見掛け、一目惚れしてしまった。
市役所を訪れたシャーロットを目撃したセオドアは、電話を掛けて彼女に食事に誘った。ところが、セオドアは気付いていなかったが、電話を受けたのは同僚のミルナーだった。やがてセオドアは、ミルナーから嫌がらせを受けることになる。
シャーロットが乗馬クラブに通っていると知ったセオドアは、クラブに通い詰めるようになる。ようやく彼女と出会ったセオドアだが、ろくに話も出来なかった。しかし後日、シャーロットと再会したセオドアは、強引にデートの約束を取り付ける。
デート当日、シャーロットはモデルの仕事でロサンゼルスを離れられなくなってしまった。彼女に誘われたセオドアは飛行機に乗り込むが、濃霧のためにサンディエゴに着陸してしまう。セオドアは改めてシャーロットとデートすることになったのだが…。
監督&脚本はジーン・ワイルダー、原案はジャン=ルー・ダバディー&イヴ・ロベール、製作はヴィクター・ドレイ、製作協力はスーザン・ラスキン&ザヴィエル・ゲリン、製作総指揮はジャック・フロスト・サンダース、撮影はフレッド・シュラー、編集はクリストファー・グリーンバリー、美術はデヴィッド・L・スナイダー、衣装はルース・マイヤーズ、音楽はジョン・モリス。
主演はジーン・ワイルダー、チャールズ・グローディン、ジョゼフ・ボローニャ、ジュディス・アイヴィー、マイケル・ハドルストン、ケリー・ルブロック、ギルダ・ラドナー、カイル・T・ヘフナー、マイケル・ゾレック、ビリー・ベック、カイラ・ステンペル、ロビン・イグニコ、ヴァイオラ・ケイツ・スティンプソン、ダニー・ウェルズ、バディ・シルバーマン、モニカ・パーカー、アーネスト・ハラダ他。


1976年のフランス映画『Un elephant ca trompe enormement』をリメイクした作品。ちなみにオリジナル版の脚本家ジャン=ルー・ダバディーは、日本でスポーツの評論家やキャスターとして活動しているフローラン・ダバディー氏の父親だ。
ジーン・ワイルダーが主演・監督・脚本の3役を務めている。シャーロットをケリー・ルブロック、セオドアの友人バディをチャールズ・グローディンが演じている。
スティーヴィー・ワンダーの主題歌『I Just Call to Say I Love You(心の愛)』がヒットした。

例えば友人ジョーの浮気を知った彼の妻が家出して、ジョーが「あの女は許さない」と言って暴れる。
例えばセオドアに逃げられたミルナーが、彼への嫌がらせを繰り返す。
とてもコメディーとは思えないそれらの展開の、どこにも笑いは見つからない。

盲目のフリをしたバディが、“セオドアとは全く無関係な場所で”暴れまくる様子を挿入されても、ちっとも笑えない。
シャーロット(実はミルナー)を食事に誘ってから実際に食事をするまでに寄り道して時間を費やされても、無駄な時間稼ぎにしか思えない。

シャーロットの車のボンネットに飛び乗って、強引にデートの約束を取り付けようとするセオドア。
ディーディーの胸を急にわしづかみにして、平然としている娘の友人。
そんな人々の様子を見せられて、いったいどうやって笑えというのだろうか。

例えばセオドアが間違えてミルナーを食事に誘うエピソードからは、互いに勘違いしている2人のズレた会話や、誤解を解こうとするセオドアの慌てぶりなどから、多くの笑いを作れる可能性がある。
しかし、そういった方向には全く進もうとしない。

スティーヴイー・ワンダー&ディオンヌ・ワーウィックの歌を織り込んだり、普通のロマンティック・ストーリーのようなシーンを織り込んだりしつつ、たまに思い出したように、申し訳程度に笑いを入れようとする。
ただし、クスリとも笑えない。

セオドアが無闇やたらとハッスルする様子、すなわちジーン・ワイルダーのオーヴァーアクトで、必死に沈み切っている作品のテンションを上げようとしている。
だが、それは主人公が作品から浮き上がり、完全に空回りするという結果になっている。

笑いから逃げているだけでなく、マトモにストーリーを展開させようという意識さえ感じられない。
シャーロットに妻のことを知られないようにするドタバタ劇や、妻に浮気を知られないようにするドタバタ劇も無い。
スティーヴィー・ワンダーの主題歌が、ただ虚しく響くだけ。

 

*ポンコツ映画愛護協会