『ウィッチマウンテン/地図から消された山』:2009、アメリカ

宇宙から正体不明の物体が地球へと急降下し、軍は政府特殊機関のヘンリー・バーク司令官を呼び出した。バークは部下のマシスンやカーソン、ポープたちを引き連れ、物体の墜落地点に向かった。現場を確認したバークは、警戒区域を広げて封鎖するよう命じた。一方、ラスベガスでタクシー運転手をしているジャック・ブルーノは、学者のアレックス・フリードマンをプラネット・ハリウッドまで送る。アレックスは地球外生命体に関する講演を行うことを告げるが、ジャックは異星人の存在など全く信じていなかった。
翌朝、カーソンは墜落現場から採取した2種類の足型を分析し、人と同じように二足歩行する生命体が迅速に移動したことをバークに報告した。バークは彼に、周辺の監視カメラの映像を調べるよう命じた。一方、ジャックはウルフが率いる犯罪組織のフランクとマーティーに呼び止められた。かつてジャックは優れた運転技術を買われ、ウルフの下で働いていた。復帰するよう要求されたジャックは拒絶し、脅しを掛けるフランクたちを殴り付けた。パトカーが来たので、彼らは立ち去った。
タクシーを走らせたジャックは、いつの間にか後部座席に少年と少女が乗っていたので驚いた。少年は「僕はセス、こっちは妹のサラ」と自己紹介し、大金を差し出す。「一刻も早く目的地に到着しなければならない」とセスが言うので、ジャックは困惑しながらも承諾した。彼が行き先を尋ねると、セスは位置を知るための機械を取り出し、緯度と経度を説明する。しかし全く分からないジャックは、サラが指差した「あっちの方向」へタクシーを向かわせた。
政府特殊機関は周辺の監視カメラを調べ、異星人2名が若者の服を盗んだこと、ツアーバスでラスベガスへ向かったことを突き止めた。ラスベガスのカメラを調べると、2人がカードを使わず、機械に触れもせずにATMから金を引き出したことが分かった。ジャックは兄妹が家出だと確信し、小言を口にした。サラは焦った様子で、追跡者がいることを知らせる。「後ろに車はいない」とジャックが告げた直後、猛スピードで迫る3台の車がバックミラーに写った。
セスは「スピードを計算すると、1分以内に追い付かれる」と緊張した面持ちで告げるが、ジャックは「先に行かせればいい」と軽く言う。しかし3台はタクシーを包囲し、車体をぶつけて来た。運転しているのがウルフの手下たちと確信したジャックは、巧みな運転で2台を蹴散らす。だが、それは政府特殊機関の車だった。残り1台が追って来るので、セスはサラの制止を聞かずに行動を起こす。ジャックに気付かれないように特殊能力で外へ出ると、追って来る車に体を激突させてクラッシュさせたのだ。
サラは特殊能力を使い、タクシーのブレーキを掛けてバックさせた。セスはジャックに気付かれないようにタクシーへ戻り、出発するよう促した。ジャックはバールを手に取ってタクシーを降り、車に乗っていたバークたちに「フランクたちの話は断った」と凄んだ。バークが「君は特殊な状況下にある」と言っても、腹を立てているジャックは耳を貸さずにタクシーへ戻った。バークはジャックの身許を洗うようマシスンたちに命じ、ヘリを手配することにした。
ジャックは兄妹の指示に従い、荒れた大地の中に建つ古い小屋の前でタクシーを停めた。「空き家のようだが」とジャックが言うと、サラは「大丈夫よ。すぐに家族と再会できる」と述べた。ジャックが料金の支払いを求めると、2人は持っていた札束を渡して車を降りた。あまりにも高額なので、ジャックは小屋へと消えた2人に呼び掛けた。中から大きな音がしたので、気になったジャックは小屋に入った。すると兄妹は隠れるように座っており、「ここに来たら危険だ、すぐにタクシーへ戻った方がいい」と警告した。
機械で座標を調べていたセスは、サラと共に冷蔵庫の奥にある隠し通路へと足を踏み入れた。ジャックが後を追って地下通路を進むと、植物が生い茂る密林の空間に出た。サラは地面から生えている謎の物体に手を突っ込み、小さな装置を取り出した。彼女はジャックに、「これを探しに来たの」と言う。「他にも探している奴は?上の部屋が荒らされていた」とジャックが話すと、セスは「他にも探している奴はいる。だから先に見つける必要があった」と述べた。
何者かが地下へ来たことを察知したジャックは、兄妹に逃げるよう指示した。ジャックはサイボーグのような格好をした暗殺者に殴り掛かるが、反撃を受けて吹き飛ばされた。暗殺者が密林に火を放つ中、ジャックは兄妹と合流して逃げ出そうとする。暗殺者が兄妹を襲撃したので、ジャックは飛び掛かった。ジャックが投げ飛ばされるが、サラが火球を操って暗殺者を攻撃した。ジャックたちは地下通路を脱出しようとするが、セスが怪我を負った。ジャックはセスを背負い、サラと共に小屋の外へ出た。
暗殺者が周辺で爆発を起こす中、ジャックたちはタクシーで逃亡する。すぐに回復したセスは、「肝心なのは、ここから離れることだ」と告げた。タクシーを停めて事情説明を求めるジャックに、セスは「求めている情報は君たちの理解を超えている」と言う。暗殺者が光る小型機を飛ばしてタクシーを爆破しようとするので、慌ててジャックは逃走する。兄妹はジャックに、装置を狙う暗殺者がサイフォンという名前であること、標的を始末するよう訓練されていることを説明した。
トンネルに隠れて小型機の追跡を撒いたジャックは、警戒しながら線路の上を移動する。しかし再び攻撃を受け、正面からは列車が迫って来た。ジャックは間一髪で衝突を回避し、トンネルに入った列車は大爆発を起こした。一方、特殊機関はジャックについて調査し、少年院への出入りを繰り返していたこと、カーレースで才能を発揮していたこと、16歳の時に両親を交通事故で亡くしたこと、ベガスでウルフの運転手をやっていたこと、2年前に窃盗で逮捕されたこと、出所してからは更生していることを知った。ジャックのタクシーには追跡装置が付いていたが28分前から探知不能で、最後にいたのが線路の上であることも分かった。
サラは「彼は信用できない」と言うセスに反発し、自分たちが地球外から来たことをジャックに明かした。ジャックが全く信用しないので、サラは証拠として念動力を披露した。ストーニー・クリークという町に到着し、修理工のエディーにタクシーを直してもらおうとする。エディーは「営業時間外だ」と断るが、サラから「お金を渡すしかない」と言われたジャックが札束を見せると態度を変えた。ボロボロのタクシーを見たエディーは呆れるが、ジャックは1時間で修理してほしいと頼んだ。
ジャックは兄妹を連れて、カントリー・レストランに入った。サラはジャックの心を読み取り、彼が裏口から出て町から逃げようと思っていることを指摘した。タクシー会社を経営するドミニクがジャックに電話を掛けたので、バークたちは3人の居場所を掴んだ。ジャックは兄妹に、「俺じゃなくてNASAや政府に頼った方がいい」と告げる。サラは「貴方に見放されたら任務を果たせない」と言うが、「俺じゃ頼りにならない」とジャックは述べた。
バークはジャックに電話を掛け、兄妹の引き渡しを要求した。バークは特殊部隊にレストランを包囲させ、「2人を連れ出せ。協力すれば犯罪歴は抹消してやる」とジャックに告げた。ジャックは「5分で出て来い」という要求を了承するが、バークは信用せず、部隊に店の出口を固めさせた。ジャックは店にいた保安官のアンソニーに、武装した連中がいることを伝えた。ジャックが兄妹を連れて隠れていると、アンソニーは店に入って来たバークを足止めした。
バークは部下たちに命じ、銃を構えさせる。しかしアンソニーの助手たちが、すぐに銃を向けた。ウェイトレスのティナは、ジャックと兄妹を裏口から脱出させた。猛犬がジャックに吠えるが、サラには懐いた。3人は修理工場へ戻り、まだ完全には直っていないタクシーに乗り込んだ。サラが衝撃波で特殊機関の車を全て故障させ、ジャックはタクシーを走らせる。サラがタクシーを停めると、バークの腕を噛んで発砲を阻止した犬が乗り込んで来た。
町を脱出すると、セスはジャックに「追って来た連中の作戦基地へ連れて行ってほしい。僕らが星に帰らなければ、地球の人間は全て死ぬことになる。彼らに宇宙船を奪われた」と告げた。ジャックは拒否し、「ベガスに戻って君たちを降ろす」と告げる。サラは彼の心を読み、アレックスが協力してくれると考えていることを知った。ベガスに戻ったジャックは、兄妹を連れてアレックスの講演会場へ向かう。その様子を目撃したフランクは、組織に報告した。
アレックスは科学的な見地から地球外生命体についての講演を行おうとしていたが、聴衆はにアブダクションやミステリー・サークルのことを盲目的に信じている面々ばかりだった。それらの質問をアレックスが拒否すると、聴衆は会場を出て行った。ジャックはアレックスの元へ行き、事情を説明する。しかしアレックスは、兄妹が宇宙人であることを全く信じなかった。サラは念動力でアレックスのパソコンを操り、セスは小屋から持ち出した装置を起動させた。室内に宇宙空間が広がると、アレックスはジャックの話を信じた。
兄妹はアレックスに、三千光年の彼方からワープを使って来たこと、母星が大気汚染のせいで危機に陥っていること、地球が自分たちの住環境に適していると知ったリーダーが侵略を目論んでいることを語る。しかし科学者である兄妹の両親を含め、大半の人々がリーダーの計画には反対していた。両親の研究により、植物再生で大気汚染を緩和させる方法が判明した。しかし政府は地球侵略を目論んでおり、その方針を翻すには実験結果が必要だった。
兄妹が小屋から持ち出したのは記憶装置で、そこには母星を救って地球侵略を防ぐための証拠が入っていた。両親が侵略に反対して軍に捕まったため、兄妹が代わりに地球へ来たのだ。サイフォンは軍が作った戦士で、兄妹を殺すために送り込まれていた。一刻も早く宇宙船を見つけ出す必要性を感じたアレックスは、ジャックをドナルド・ハーラン博士に会わせる。ハーランは政府陰謀説を声高に主張しており以前のアレックスとは大きく意見の異なる宇宙研究者だった。
アレックスはハーランに「兄妹が宇宙船の墜落を目撃した」と嘘をつき、情報が入っていないか尋ねた。「政府の工作員が宇宙船を回収しているはずだ」とセスが言うと、ハーランは衛星画像を確認した。助手のマットとロイドは宇宙船が持ち込まれた場所について、声を揃えて「ウィッチマウンテン」と告げた。それは政府の秘密軍事施設で、厳重に警備されているとハーランは話す。ジャックたちは彼から地図と航空写真を受け取り、ウィッチマウンテンへ向かおうとする。だが、プラネット・ハリウッドにはバークたちが現れ、ジャックたちを捜索する。さらにサイフォンも現れる中、ジャックたちは何とか逃げ出した…。

監督はアンディ・フィックマン、原作はアレグサンダー・ケイ、原案はマット・ロペス、脚本はマット・ロペス&マーク・ボンバック、製作はアンドリュー・ガン、製作総指揮はマリオ・イスコヴィッチ&アン・マリー・サンダーリン、製作協力はエイミー・ステンフテネイゲル、撮影はグレッグ・ガーディナー、編集はデヴィッド・レニー、美術はデヴィッド・J・ボンバ、衣装はジュヌヴィエーヴ・ティレル、特殊キャラクター効果デザイン&創作はアレック・ギリス&トム・ウッドラフJr.、音楽はトレヴァー・ラビン、音楽監修はリサ・ブラウン。
主演はドウェイン・ジョンソン、共演はアナソフィア・ロブ、カーラ・グギーノ、キアラン・ハインズ、アレクサンダー・ルドウィグ、ゲイリー・マーシャル、トム・エヴェレット・スコット、クリストファー・マークエット、ビリー・ブラウン、キム・リチャーズ、アイク・アイゼンマン、チーチ・マリン、トム・ウッドラフJr.、ジョン・ダフ、ボブ・コハー、ケヴィン・クリスティー、ボブ・クレンデニン、サム・ウルフソン、ブライアン・フォーゲル、ロバート・トーチ、ジョン・カッサー、ベス・ケネディー、ジョナサン・スレイヴィン、ハリー・S・マーフィー他。


1975年の『星の国から来た仲間』をリメイクしたディズニー映画。
監督は『アメリカン・ピーチパイ』『ゲーム・プラン』のアンディー・フィックマン。
『ゲーム・プラン』で主演を務めたドウェイン・ジョンソンが、ジャックを演じている。
サラをアナソフィア・ロブ、アレックスをカーラ・グギーノ、バークをキアラン・ハインズ、セスをアレクサンダー・ルドウィグ、マハーランを映画監督のゲイリー・マーシャル、マシスンをトム・エヴェレット・スコット、ポープをクリストファー・マークエット、カーソンをビリー・ブラウン、エディーをチーチ・マリンが演じている。
オリジナル版の妹を演じたキム・リチャーズがティナ役で、兄を演じたアイク・アイゼンマンがアンソニー役で出演している。

オリジナル版の兄妹は孤児院で暮らしており、自分たちが宇宙人であることを終盤まで知らなかった。
しかしリメイク版では最初から兄妹の正体が明らかで、2人も自覚しており、魔法の山へ向かう目的も分かっている。
そこをミステリーにしなかったのは、それよりも「追い掛けられるアクション」としての色合いを濃くしたかったからだろう。そして、そういうテイストを強めたからこそ、兄妹の協力者というポジションでドウェイン・ジョンソンを起用したわけだ。
っていうか、ひょっとすると先にドウェイン・ジョンソンありきで、彼の主演に合わせてアクション色の強い脚色にしたのかもしれないけど。

もちろんドウェイン・ジョンソンの主演作なので、アクション風味を強くするのは別に構わない。っていうか、そうすべきだ。
ただし、それにしてもネタを割るのが早すぎやしないか。
最初に異星人に関する様々な映像を出して、謎の物体が墜落するのを描いて、宇宙人が飛来したことが明らかになっている。だからサラとセスが登場した段階で、2人が宇宙人なのもバレバレだ。その直後には2人がベガスに行ってタクシーを拾ったことも、監視カメラの映像で明示される。
最初からネタを割っちゃってるんだよね。

だけどさ、せめてジャックが兄妹と遭遇した時には、まだ2人の正体が全く分からない状態にしておく方がいいよ。
っていうか、それ以降も、しばらくは2人の正体を隠したまま進めた方がいい。その方が、物語に面白味が出るはずだよ。
アクション寄りにするためとは言え、簡単にネタを割るのは、あまりにも勿体無い。っていうかさ、しばらく2人の正体を隠したまま進めても、そのせいでアクション風味が弱まるとは思えないし。
しばらく隠したままでアクション映画にすることは、充分に可能だぞ。どうせジャックが兄妹から正体について知らされるのは、30分を過ぎた辺りなんだし。
ってことは、最初に2人の正体をバレバレにしているのは、ただ単に話を雑に作っているだけってことじゃないのか。

サラとセスはジャックに「危険だから小屋に来てはいけない、タクシーに戻るべきだ」と言っており、それどころかセスに関しては「誰も信用してはいけない」とまで言っている。それなのに、なぜジャックが近くにいる状況で冷蔵庫の地下通路を開き、付いて来るのも許しているのか。
サラは「助けようとしてくれている」と思っているので、セスも彼女に同調したのかもしれない。だとすれば心変わりが早すぎるが、そこを甘受するにしても、サラも「これ以上は関わらないで」と言っているんだから、まずはジャックを追い出すべきでしょ。
その気になりゃ特殊能力で何とでも出来るはずなのに、なぜ地下へ付いて来るのを認めちゃってるのか。
で、光から逃亡した後でセスは「彼は信用できない」と言ってるけど、まだそんな感覚なのかよ。信用できないなら、なぜ地下へ付いて来るのを許したんだよ。行動がメチャクチャだろ。信用できない奴に、なんで大切な装置を取り出すところを見せてるんだよ。

兄妹を乗せた段階では、ジャックは不機嫌そうな様子だったし、家出だと思い込んでいた。そんなジャックだが、まだ正体も目的も全く分からない状態で、兄妹を心配して助けようとしている。
正体や目的が分かると、2人に関わるのは命に危険に及ぶ行為だってことも明白になるのだが、それでもジャックは全面的に協力する。
何か借りがあるわけでもなく、例えば「亡くした子供たちを思い出す」といった要素も無いのに、ジャックが命懸けで兄妹を助けるってのは、普通なら「動機が希薄」ということになるだろう。
だが、そこはドウェイン・ジョンソンの起用が大当たりで、「ザ・ロック様だったら、そういう時に全力で助けるだろうな」という説得力になるのだ。
もちろん、そこだけに頼っているというのは、脚本や演出に力が不足しているってことではあるのだが。

しかし、ジャックが兄妹を命懸けで助けるのは受け入れるとしても、「そもそも兄妹がジャックに頼る必要性が無いんじゃないか」という疑問は残る。
サラには念動力とテレパシー、セスには「体の分子の密度を自由自在に変えて物体をすり抜けたり、衝撃を跳ね返したり出来る」という能力がある。そもそも、そういう超能力だけで「2人は宇宙人である」という根拠にしているのはどうかという気がしないでもないが、それを受け入れるにしても、「そういう能力があればジャックがいなくても大丈夫じゃないか?」と思ってしまう。
実際、ピンチに陥った際、ほとんどのケースでは兄妹の超能力によって回避しているのだ。
一応、「移動手段としてジャックを使う」とか、「後半に入って麻酔弾で兄妹が捕まった際にはジャックとアレックスが助けに行く」という部分で、ジャックの必要性を出してはいる。
ただ、兄妹に弱点らしい弱点も無いし、ジャックが「2人は子供だ」ということで守ってあげようという強い気持ちを見せても、「むしろアンタの方が助けてもらっている部分が多いんじゃないか」と思っちゃうのよね。

この手の映画では政府や軍が悪者扱いされるのがセオリーだが、「それにしても」と思うぐらいバークたちは分かりやすい悪党キャラになっている。
相手が異星人というだけで問答無用で捕まえようとして、そのためなら容赦なく荒っぽい手口を使う。
それは昔から使われてきた「宇宙人映画における政府や軍の動かし方」の定型ではあるんだけど、裏を返せば「何の捻りも無くて古臭い」ってことだ。
まあねえ、ある意味では「いかにもディズニー映画らしい」ってことではあるけど。

ただ、ベタベタの悪党キャラなのは甘受するにしても、たまに引っ掛かる動かし方をしている箇所があるんだよな。
例えばレストランを包囲したバークが取り引きを持ち掛け、ジャックが5分で出て行くことを了承したのに「信用できない」ってことで店に乗り込むシーン。
どうせ信用しないのなら、最初から取り引きを持ち掛ける必要なんて無いでしょ。むしろ電話なんか掛けないで、不意打ちで突入した方がいいでしょ。
しかも、特殊部隊を突っ込ませるのかと思ったらテメエが店に乗り込むってのも、マヌケに思えるし。

それと、レストランのシーンでアンソニーがバークたちを足止めし、ティナがジャックと兄妹を裏口から脱出させるってのは、ちょっと違和感があるんだよなあ。
なんでアンソニーとティナが、出会ったばかりのジャックたちに対して、そこまで協力的なのかと。
そりゃあ、「オリジナル版で兄妹を演じていた俳優たちだから」ってことが分かれば、キャラの動かし方として理解できる部分はある。だけど脚本だけで捉えると、なかなかの不自然さでしょ。
そこで2人を全面的な協力者にするのなら、いっそのこと「彼らも宇宙人」ということを匂わせて、オリジナル版の続編っぽい要素を持ち込んでも良かったんじゃないかと思ったりするんだけどね。

謎の物体が地球に飛来した夜、ジャックがアレックスをタクシーでプラネット・ハリウッドまで送り届ける様子も描かれる。
話の流れを考えると、その夜の内にジャックを登場させる必要は無いし、むしろ翌日に初登場させた方がスムーズだ。しかし、そこでアレックスと絡ませておかないと、「兄妹を救うためにジャックがアレックスを頼る」という展開に繋げることが出来ないという事情があるのだ。
そこでアレックスを登場させておかないと、ジャックは兄妹を乗せてベガスを離れるので、もう絡ませるチャンスが無いんだよね。
アレックスがジャックに「地球外生命体の研究をしていて、講演を行う」と喋る不自然な会話シーンがあるのも、そういう進行上の都合があるからだ。そこでアレックスの職業を説明しておかないと、困った時にジャックが彼女のことをも思い浮かべられないからね。
というわけで、とどのつまり、後の都合を考えて序盤の構成を作ったものの、結局は不自然さが否めない仕上がりになったったことだ。

後半、兄妹は地球へ来た理由を説明するのだが、そこには大きな問題点が含まれている。
兄妹は「両親の研究により、植物再生で大気汚染を緩和させ、母星を救う方法が判明した。しかし政府は、住むのに適した地球侵略を目論んでいる。その方針を翻すには実験結果が必要で、それが入っている装置を取りに来た。両親は侵略に反対して捕まったので自分たちが来た」と説明する。
だが、植物再生で大気汚染を緩和する方法を見つけた両親を軍が捕まえるぐらいなんだから、実験結果を見つけても意味が無いんじゃないか。
それがあったとしても、政府は地球侵略を目論むんじゃないかと思うぞ。侵略に反対した両親を捕まえるような政府なんだからさ。

もう1つの疑問は、「実験結果の入っている記憶装置が、なぜ地球の小屋にあるのか」ってことだ。
しかも小屋には隠し通路があって、地下の密林の変な植物にアクセサリーをかざすと中から記憶装置を取り出す仕掛けになっている。
兄妹は「両親が地球で実験した」と説明しているから、その時に使った小屋なんだろう。
だけど、なぜ小屋の地下に密林を作って実験しているのか。
環境が完璧に一致しているわけではないはずなんだから、母星で実験しないと正しい結果は得られないんじゃないのか。そもそも、正しいかどうかは別にしても、わざわざ母星を離れて地球で実験する意味が分からん。

しかも、地球で実験するのはいいとしても、大切な記憶装置を地球に残したまま帰還しちゃダメだろ。
っていうか、地球に残すだけでなく、面倒な手続きを踏まなきゃ入手できないように隠してあるってことは、それが奪われる危険があると思っていたってことでしょ。
ってことは、それを奪おうとするような軍や政府が相手なんだから、仮に実験結果が明らかになったところで、絶対に地球侵略は遂行されるだろ。
その方針を撤回させるなんて無理だろ。政府が暗殺者を送り込んで兄妹を殺そうとしているぐらいなんだし。

(観賞日:2014年11月27日)

 

*ポンコツ映画愛護協会