『俺たちは天使じゃない』:1989、アメリカ

1935年、カナダ国境近くの刑務所にいる囚人ネッドとジムは、所長や看守から酷い扱いを受けていた。ある日、2人は死刑囚ボビーの脱獄計画に巻き込まれ、寒空の中を脱走する。逃げる途中でブレアという老婦人に怪しまれた2人は、直前に見た看板に書かれていた聖書の言葉を引用したことから、神父だと勘違いされてしまう。
ネッドとジムは、ブレアの住む国境の町へやって来た。その町には宗教界を代表するブラウン神父とライリー神父が来訪することになっており、2人はその神父達だと勘違いされる。これを利用し、ネッドとジムは神父のフリをして国境を超えようと考える。
だが、聾唖者の娘を持つモリーと知り合ったネッドが彼女に付きまとわれ、脱出計画は失敗する。やがて刑務所からの追っ手が、警官と共に大挙して町に現れる。ネッドとジムは、聖母マリア像をカナダへ渡す宗教行事に紛れて国境を超えようとする…。

監督はニール・ジョーダン、脚本はデヴィット・マメット、製作はアート・リンソン、共同製作はフレッド・C・カルーソ、製作総指揮はロバート・デ・ニーロ、撮影はフィリップ・ラズロ、編集はミック・オーズリー&ヨーク・ヴァン・ウィーク、美術はウォルフ・クロージャー、衣装はテオーニ・V・アルドリッジ、音楽はジョージ・フェントン。
出演はロバート・デ・ニーロ、ショーン・ペン、デミ・ムーア、ジェームズ・ルッソ、ホイト・アクストン、ブルーノ・カービー、レイ・マッカナリー、ウォレス・ショーン、ジョン・C・ライリー、ジェイ・ブレイズー、ケン・ブヘイ、エリザベス・ローレンス、ビル・マードック、ジェシカ・ジッケルス、フランク・C・ターナー、マシュー・ウォーカー、シーラ・メギル、ショーン・ホイ、ロイド・ベリー他。


ロバート・デ・ニーロが製作総指揮を務めた作品。ネッドをデ・ニーロ、ジムをショーン・ペン、モリーをデミ・ムーアが演じている。ハンフリー・ボガード、アルド・レイ、ピーター・ユスティノフが出演した1955年の同名作品のリメイクだが、ストーリーは全く違う。

ネッドとジムは、神父のフリをして周囲の目を誤魔化そうとしているはず。それにしては、神父に成り済まそうとする努力がほとんど見えてこない。2人は平気で汚い言葉を使い、平気で人を罵倒する。そんなの、怪しんでくれと言っているようなものだ。

例えば適当にコマーシャルのキャッチコピーを使ったら、勝手に勘違いされて感動されてしまうとか、神父に見せ掛けるために苦労する様子を膨らませて、面白さを生み出すことは多いに可能だったはず。
コメディとして作られているはずなのに、「悪党が神父になりすます」という使える部分を、全く笑いに生かしきれていない。

ネッドとジムが、次第に善意に目覚めていくのかと思ったら、そういうわけでもない。最初から最後まで、2人とも中身は変わらない。
ネッドはずっと逃げるコトだけを考えているし、最後まで悪党のままだ。一方のジムは、最初から宗教に対する興味を抱いている。せっかく宗教に触れさせているのに、それによる2人の変化は無い。

幼さが残るショーン・ペンの存在は、この作品で唯一にも思える光を放っている。彼が民衆に演説する場面は唐突で無理があるが、この映画のハイライトにふさわしい。
しかし、相棒のロバート・デ・ニーロの、大げさな表情とギクシャクして場違いじみたコメディアン的演技は、この映画をつまらなくするのに充分な力を持っている。

 

*ポンコツ映画愛護協会