『ウォッチメン』:2009、アメリカ

ソ連が軍事演習や核実験を繰り返す中、アメリカ合衆国大統領のニクソンは対応を迫られていた。ジョン・マクラフリンが司会を務めるテレビ番組では、パット・ブキャナンとエレナー・クリフトが意見を求められた。ブキャナンは「ソ連がアメリカを攻撃する確率はゼロだ。我が国には歩く核抑止力であるドクター・マンハッタンがいる」と言い、クリフトは「ソ連が核実験を行うのはマンハッタンに脅威を感じているからかも」と述べた。
高層アパートで番組を見ていたエドワード・ブレイクは、侵入者に気付いた。彼は侵入者と戦うが殺害され、強化ガラスの窓を突き破って地上へ落とされた。現場検証に来たファイン刑事とギャラガー刑事は、ブレイクが大統領と並んでいる写真を見つけ、自分たちでは手に負えない事件だと感じた。事件を知ったロールシャッハはブレイクの部屋に侵入し、彼がミニッツメンの元メンバーであるコメディアンだと知った。1985年10月12日のことである。
ナイトオウル二世だったダン・ドライバーグは、初代ナイトオウルのホリス・メイソンを訪ねていた。メイソンはドライバーグに、始まりはギャングだったことを話す。ギャングが覆面姿で強盗を繰り返すようになり、それを知った警官が「マスクを被って法を超えたことをしよう」と考えた。その行動に新聞が気付いて取り上げ、彼らはヒーローになった。1940年に結成されたミニッツメンのメンバーは、ナイトオウル、ダラー・ビル、モスマン、キャプテン・メトロポリス、フーデッド・ジャスティス、シルク・スペクター、シルエット、そしてコメディアンだ。
メイソンはドライバーグに、「我々の時代は簡単だった。後を継いだ君たちは、ニクソンのキーン条例によって引退に追い込まれた」と話す。ドライバーグはメイソンの暮らす自動車修理工場を出て、自宅へ戻った。するとロールシャッハが待ち受けており、コメディアンの死を知らせた。コメディアンは1977年以降、政府の仕事に就いて南米の共産主義政権を倒していた。政治絡みの殺しではないかと推測するドライバーグに、ロールシャッハは「あるいは誰かがヒーロー狩りを始めたか」と述べた。
ロールシャッハが自伝の中でコメディアンを非難したメイソンに疑いの目を向けると、ドライバーグは「そんな考えは捨てろ」と説いた。「俺たち全員が標的だ。これは報復だ」とロールシャッハが言うと、彼は「君は正体を知られていない。引退して普通の人生を送れ」と告げる。するとロールシャッハは「今のお前の生き方が普通か?お前は周囲と同化している」と述べ、その場を後にした。ドライバーグの家には、まだ以前のコスチュームが置いてあった。
ミニッツメンと後を継いだヒーローたちの中で、正体を明かしたのはメイソンと元オジマンディアスのエイドリアン・ヴェイトだけだ。ヴェイトはオジマンディアスを商品化して事業を起こし、大成功を収めている。取材を受けた彼は、「我が社は収益をマンハッタンに投資し、南極の施設を拡張して安価な核エネルギーを開発している。無限の資源を作り出せば、冷戦は終わる」と自信を見せた。ドライバーグはヴェイトを訪ねてコメディアンの死を伝え、「ロールシャッハはヒーロー狩りと言っている。君は正体を知られているから警告に来た」と告げる。ヴェイトは「もっと恐れるべきことがある。ソ連が核で攻撃したら、ジョンが99%を止めても1%で地球は死滅する。ドクター・マンハッタンにも限界がある」と述べた。
ナイトオウルは工場を経営し、初代シルク・スペクターは介護施設に入っている。ダラー・ビルとシルエットは殺され、モスマンは精神病院に収容されている。残るドクター・マンハッタン(ジョン)とシルク・スペクター二世(ローリー)は、ロックフェラー軍事研究所にいる。ロールシャッハは研究所に潜入し、2人と会う。ローリーは本名で呼ぶよう求め、犯人探しの協力を求められたジョンは「何者かの妨害で未来が透視できない」と告げた。
ロールシャッハはジョンに、犯人の目的が何なのか教えるよう詰め寄った。ジョンはロールシャッハへの不快感を示し、彼を研究所の外へテレポートさせた。ジョンはローリーに、「君は私を食事に誘いたいが、私は外出できない。だから君はダニエルを誘う。旧友に慰めてもらえ」と告げる。ローリーはドライバーグを誘ってレストランへ出掛け、「ジョンは手を打たないと近い内に核戦争が起きると。でも、私には分からない。彼が見ている宇宙も理解不能よ。彼がどんどん遠くなっていく」と漏らした。
ブレイクの葬儀の日、ローリーは母であるサリーの元を訪れた。サリーはブレイクについて、「彼もやっとオチが付いた」と軽く笑う。ローリーが「あんなことされて?」と訊くと、彼女は「物事は変わるの。あれが起きたのは40年も前よ。過去は忌まわしいことさえ明るく輝くの」と述べた。ブレイクはミニッツメンとして活躍していた頃、抵抗するサリーに暴力を振るってレイプしようとしたことがあった。そこへフーデッド・ジャスティスが駆け付け、ブレイクを殴り付けた。
葬儀に参列したジョンは、ベトナム戦争に勝利した直後の出来事を思い出した。ブレイクは現地の女性を妊娠させ、冷たく捨てようとしていた。腹を立てた女性がナイフを持ち出すと、ブレイクは無慈悲に射殺した。ヴェイトも過去を回想する。ウォッチメンの最初の会合で彼が「リーダーがいれば世界を救える」と主張すると、ブレイクはバカにする態度を示した。ドライバーグも回想する。ウォッチメン撲滅を訴える大規模なデモが起きた時、ブレイクは楽しそうに市民を殴ったり発砲したりして一掃した。ドライバーグが止めに入ると、彼は笑顔を浮かべて「アメリカン・ドリームを実現したのさ、この光景がそうだ」と告げた。
ロールシャッハはコメディアンの宿敵だったモーロックが葬儀に参列しているのを目撃し、疑いを抱いた。彼はモーロックの家へ乗り込み、暴力を振るって脅しを掛けた。モーロックはブレイクが死ぬ前に訪ねて来たこと、泣きながら「お前もリストに載っている。ジョンの恋人のジェイニーもだ」と言っていたことを語った。ジョンは分身を使ったセックスでローリーを喜ばせようとするが、怒りを買ってしまう。ジョンが「君だけが世界との繋がりだ」と言うと、ローリーは「そんな責任は負いたくないわ」と拒絶した。
ローリーはジョンの元を去り、ドライバーグの家を訪れた。ジョンはテレビ番組に出演して観客からの質問に答える。ダグ・ロスという男は、ジョンと関わった人々が癌で死んでいることを指摘した。彼は元恋人のジェイニーも癌で余命半年だと話し、「本人に聞くといい」と告げて彼女を会場へ招き入れた。ジェイニーはジョンに、「貴方が全てだった。事故の後も全てを捧げたのに。地獄に落ちるがいい」と憎しみの言葉を浴びせた。
記者たちに詰め寄られたジョンは、火星へテレポートした。かつてジョンは物理学者のジェイニーや親友のウォーリーと共に、研究所で働いていた。ジョンは施設で起きた事故によって変貌し、政府の指示を受けて破壊力を示した。彼はニクソンの要請でベトナムへ出向き、戦争を勝利に導いた。彼はジェイニーの愛が永遠に続かないと感じ、ローリーとの交際を始めた。それを知ったジェイニーは、「私が年を取ったから?」と荒れた。火星へ逃げたジョンは、人類と関わることに辟易した。
ソ連はアフガン国境へ戦車部隊を移動させ、アメリカの出方を窺う。ニクソンは先制攻撃を決意し、2人だけジョンを待つことにした。ヴェイトは産業界のリーダーであるアイアコッカたちから、無料での新エネルギー提供を思い留まるよう要求された。ヴェイトは冷淡に拒否し、「貴方たち全員よりも私の財力が大きい。それを考慮して決断を下すといい」と述べた。そこへ銃を持ったチェスという男が現れ、ヴェイトたちに向けて発砲した。アイアコッカたちが撃たれる中、ヴェイトはチェスを捕まえて黒幕の正体を白状させようとする。だが、チェスは青酸カリのカプセルを飲んで自害してしまった。
ロールシャッハはチェスの勤務先がピラミッド宅配社だと知り、そこから年金を貰っているモーロックに疑いの目を向ける。しかし彼がアパートへ乗り込むと、モーロックは何者かに殺されていた。警官隊に包囲されたロールシャッハは罠だと気付き、逃亡を図った。しかし警官隊に捕まり、マスクを剥がされてウォルター・コヴァックスという本名と素顔が公表された。刑務所にはロールシャッハに恨みを抱く囚人たちが大勢おり、彼は命を狙われた。
ローリーはドライバーグの家を訪れ、彼が開発したアーチーという乗り物を見せてもらった。彼女は「ジョンの目に私は見えていない」と言い、ドライバーグをセックスに誘った。ドライバーグが「怯えるのに疲れた。コスチュームにも怯えていたが、必要だと思ってきた」と口にする。ローリーは彼に、「私もよ。全てを忘れてアーチーで飛びましょう」と告げる。2人はヒーローのコスチュームを着てアーチーに登場し、火災が発生しているビルへ赴いた。取り残されている人々を救助した後、ドライバーグは「世界大戦が目前だ」とローリーに告げて肌を重ね合った…。

監督はザック・スナイダー、原作はデイヴ・ギボンズ、脚本はデヴィッド・ヘイター&アレックス・ツェー、製作はローレンス・ゴードン&ロイド・レヴィン&デボラ・スナイダー 製作総指揮はハーバート・W・ゲインズ トーマス・タル、共同製作はウェズリー・コーラー、撮影はラリー・フォン、美術はアレックス・マクダウェル、編集はウィリアム・ホイ、衣装はマイケル・ウィルキンソン、視覚効果監修はジョン・“DJ”・デジャルダン、音楽はタイラー・ベイツ。
出演はマリン・アッカーマン、ビリー・クラダップ、マシュー・グード、カーラ・グギーノ、ジャッキー・アール・ヘイリー、ジェフリー・ディーン・モーガン、パトリック・ウィルソン、マット・フルーワー、スティーヴン・マクハッティー、ローラ・メネル、ロブ・ラベル、ゲイリー・ヒューストン、ジェームズ・マイケル・コナー、メアリー・アン・バーガー、ジョン・ショウ、ロバート・ウィスデン、ジェリー・ワッサーマン、ドン・トンプソン、フランク・ノヴァク、ショーン・アレン、ギャリー・チョーク、ロン・ファスラー、ステファニー・ベルディング、マイケル・コプサ、ウィリアム・テイラー、クリス・バーンズ、マルコム・スコット他。


同名の大人気グラフィック・ノベルを基にした作品。
原作者として表記されるのはイラストを手掛けたデイヴ・ギボンズのみだが、物語を担当したのはアラン・ムーア。
監督は『ドーン・オブ・ザ・デッド』『300<スリーハンドレッド>』のザック・スナイダー。脚本は『X-メン』『スコーピオン・キング』のデヴィッド・ヘイターと、これが劇場作品デビューとなるアレックス・ツェーの共同。
ローリーをマリン・アッカーマン、ジョンをビリー・クラダップ、ヴェイトをマシュー・グード、サリーをカーラ・グギーノ、ロールシャッハをジャッキー・アール・ヘイリー、ブレイクをジェフリー・ディーン・モーガン、ドライバーグをパトリック・ウィルソン、モーロックをマット・フルーワー、メイソンをスティーヴン・マクハッティー、ジェイニーをローラ・メネルが演じている。

一言で言えば、「一見さんが付いていくのは不可能に近い映画」である。
オープニング・クレジットでミニッツメンの結成から今までの経緯で起きた出来事の断片が幾つか示されるが、それだけで世界観を理解できる人は皆無だろう。
ロールシャッハやメイソンたちも幾つかの情報は喋っているが、その程度では全く足りない。
また、大勢のスーパーヒーローが登場して、それぞれに本名でも呼ばれたりするので、全員の顔と名前を把握するだけでも大変だ。

なぜドクター・マンハッタンだけが異様な姿なのか、なぜロールシャッハだけは今も活動しているのか、なぜ市民はウォッチメン撲滅を訴えるようになったのか、なぜニクソンがヒーローを禁じるようになったのか、など分からないことや分かりにくいことが幾つも出て来る。
ジョンに関しては「不幸な事故で超人的な能力を授かった」という簡単な説明があるが、まるで足りていない。
ハッキリ言って、この映画に登場するヒーローって、その1人だけで1本の映画を作らなきゃいけないぐらいの基本設定があるのよね。

なぜブレイクがイカれた野郎になったのかも、まるで分からない。
最初からイカれた野郎だったのかもしれないが、だとすれば根本的にヒーローとして不適格なはずで。それなのに、なぜミニッツメンのメンバーとして認められていたのか。
サリーをレイプしようとする事件まで起こしているのに、その後も普通にミニッツメンの仲間として活動できているのは、どういうことなのか。
この映画におけるヒーローの定義がサッパリ分からない。

強盗団に襲われたドライバーグとローリーが、全員を叩きのめすというアクションシーンがある。ブレイクが犯人に殺されるシーンの後、最初に用意されている格闘シーンだ。
しかし、「元ヒーローが悪党を退治する」という状況にも関わらず、そこに高揚感は全く無い。それどころか、「そんなシーンは要らないだろ」と思ってしまうぐらいだ。
ヒーローの話なのに悪党を倒すシーンが邪魔だと思えるんだから、もはやヒーロー映画としては機能していない。
雰囲気が陰気だとか重厚だとかいうだけでなく、多くのヒーローは登場するものの、これはヒーロー映画じゃないのだ。

どうやら原作の内容を全て盛り込もうとしているようだが、どう考えても無謀だろう。
かつてワーナー・ブラザーズやプロデューサーのローレンス・ゴードンから監督のオファーを受けたテリー・ギリアムは、2時間や2時間30分の映画に仕上げることは望ましくないと考えて降板している。彼はゴードンに、映画ではなくテレビのミニシリーズで製作するべきではないかと提言している。
ギリアムの考えは正しかったのだ。
っていうか、テリー・ギリアムが断念した作品を、ザック・スナイダーが高品質の映画に仕上げることなんて出来るわけがない。
ザック・スナイダーって、ものすごく過大評価されていると私は思っているのよね。

原作のファンだったザック・スナイダーは、「他の人が撮ってメチャクチャにされるぐらいなら」という思いで監督を引き受けたらしい。
なので本人としても、実は「1本の長編映画として仕上げるのは難しい作業だ」と思っていたのかもしれない。
ただ、それならそれで、ともかく「無駄を省いて削り落とす」「大事な部分だけ抽出する」という作業に神経を使うべきだったのだ。
それなのに、なまじ原作が好きだったからか、「あれも使いたい、これも欲しい」と欲張り過ぎて、163分の上映時間でも処理能力が追い付いていない。

まず本作品で要らないのは、恋愛の要素である。
「要らない」と断言してしまったが、もちろん盛り込んだ上で他の要素と上手く絡み合い、ちゃんと使いこなせていれば何の問題も無い。
しかし前述したように、この映画の場合は色んなトコを削り落とさなきゃ全てを処理することが不可能なのだ。だから恋愛の話が出て来る度に、「要らないなあ、邪魔だなあ」と感じてしまうのだ。
ローリーとドライバーグとジョンの三角関係とか、サリーとブレイクの関係とか、心底から「どうでもいいわ」と言いたくなる。

過去のシーンも、全てカットでいいんじゃないか。
ブレイクが過去にやらかした悪行を丁寧に描写しているけど、それがドラマの厚みに貢献しているとは全く思わない。現在のシーンだけで構成し、過去に起きた出来事に関しては台詞で言及するだけでも充分だ。
どうせ過去のシーンの大半は、訴えようとするテーマを不恰好に説明しているだけなんだし。
そこに限らず、この映画って大半が説明のための手順になっちゃってるのよね。

ジョンの回想シーンによって、彼がドクター・マンハッタンになった出来事や今までの経緯がザックリと描かれる。
それによって事情は明らかになる一方で、ジョンがグダグダと喋って説明するのが疎ましいという問題は起きている。メリットとデメリットを天秤に掛けると、後者の方が重い。
ロールシャッハが警察に捕まると、彼の幼少時代や冷徹な「ロールシャッハ」になったきっかけの出来事が語りによる進行で描かれる。
でも、そこに来て急に彼のキャラを掘り下げても、「何がしたいのか」と言いたくなるだけだ。

ドライバーグとローリーは「怯えるのに疲れた。コスチュームにも怯えていたが、必要だと思ってきた」「私もよ。全てを忘れてアーチーで飛びましょう」という会話を交わした後、コスチュームに着替えてアーチーに乗り込む。
単に「気分転換でアーチーに乗ろう」という意味だと思っていたらコスチュームに着替えるので、どういうことなのかと思っていたら火災現場へ赴いて人々を救助する。
つまり、「スーパーヒーローの活動を復活させる」ってことなんだけど、あの会話からは全く読み取れなかったぞ。
そもそも、活動を再開する理由も良く分からない。そう決意させるようなきっかけなんて、何も見当たらなかったぞ。

火災現場から人々を救助した後、ドライバーグは「世界大戦は目前だ」と言ってローリーとセックスする。
だけど世界大戦が目前に迫っていると感じているのなら、呑気にセックスしている場合じゃないだろ。迅速に行動を起こすべきでしょ。
どうであれ、そこで濡れ場を用意する必然性なんて全く無い。C級アクション映画みたいなノリになっちゃってるぞ。
濡れ場に限らず、ローリーの出生の秘密なんかも含め、「そういうのってヒーローが今回の問題に対峙する話と全く無関係だよね」と言いたくなるんだよな。

ザックリと言ってしまえば、これはスーパーヒーロー物の笑えないパロディーである。
ジャンル分けをするなら、表面的にはミステリーという枠に入るだろう。「犯人は誰なのか、動機は何なのか」というフーダニット&ハウダニットのミステリーだ。
ただ、ロールシャッハが序盤に「これはヒーロー狩りだ」と言うが、殺されるのは冒頭のコメディアンとヴィランのモーロックだけ。「次々にヒーローが殺されていく」という展開は無い。また、「様々な手掛かりを集めてピースを組み合わせ、真相に辿り着く」という謎解きの醍醐味も満足に味わうことは難しい。
おまけに、そのミステリーという形式さえ、テーマやメッセージを訴えるための箱に過ぎないのだ。

重厚なテーマを持ち込むことが、絶対にダメだとは言わない。
流れの中で自然に滲み出て来たり、見終わった後で静かに伝わって来たりするのであれば、それほど気にならなかっただろう。
しかし実際は、クドクドと説明して声高にアピールしているので、「そんなことよりストーリーやドラマとしての面白さを見せてくれよ」と言いたくなる。
こっちは政治家や評論家の退屈な講釈を聞きたいわけじゃなくて、娯楽映画を見たいんだからさ。

この作品はスーパーヒーローを徹底的に貶め、矮小化し、否定している。スーパーヒーローに対する愛やリスペクトなど、この映画には微塵も感じられない。
スーパーヒーローを描きたいのではなく、描きたいことのためにスーパーヒーローを利用しているだけなので、そのような気持ちなど無くても平気なのだ。
だからヒーローであるはずの連中が、ほとんどヒーローらしい行動を起こさずウジウジと悩んだり、無駄に暴れたり、陰謀を企てたりする。
終盤に入ると高揚感もカタルシスも無い戦い繰り広げ、愚かしい話し合いを経て一応は問題を解決する。しかしクズっぷりを堂々とさらけ出し、モヤモヤかイライラを突き付けて映画は終わりを迎える。

(観賞日:2018年1月23日)

 

*ポンコツ映画愛護協会