『ウォークラフト』:2016、アメリカ&中国&カナダ&日本

オークの世界は死に掛けており、新天地を見つける必要に迫られていた。フロストウルフ族のデュロタンや妊娠している妻のドラカ、仲間のオーグリムたちが集会場へ行くと、ブラックロック氏族のブラックハンドなど様々な種族が来ていた。ハーフ・オークのガローナは奴隷として捕まり、鎖で繋がれていた。ホードを率いる魔法使いのグルダンは、オークとは異なる種族の面々を何人も捕獲していた。1人の母親は「子供だけは助けてほしい」と懇願するが、グルダンは容赦しなかった。
グルダンは集まった面々に、「我が魔法の燃料は命だ。捕まえた連中を使って先遣隊を送る。アライアンスは弱い。あちらに着いたら、奴らを燃料にする。向こうでゲートを作り、我らホードの全員があちらに行く」と語った。グルダンは邪悪な緑の魔法「フェル」を使い、アライアンスへのゲートを開いた。グルダンたちはゲートを抜け、アライアンスの世界に入った。ドラカは産気付いて苦しみ、グルダンが男児を抱き上げた。彼は近くにいた鹿を殺して男児に力を与え、「ホードに戦士が産まれた」と軍団に告げた。
ヒューマンの司令官であるローサーはアイアンフォージを訪れ、ドワーフ王のマグニと会っていた。そこへ連絡が届き、マグニはローサーに「国へ戻れ。誰かがヒューマンの軍勢を襲った。お前の王が呼んでいる」と述べた。アゼロスへ戻った彼は、兵舎で遺体を調べていた男が捕まったと聞く。それは元ガーディアン見習いのカドガーで、ローサーが詰問すると「遺体には襲撃の情報が残っています」と告げた。カドガーは遺体を調べると、ガーディアンを呼ぶよう要請した。
ローサーは「メディヴを呼べるのは国王だけだ」と言い、カドガーを連れてレイン王の元へ赴いた。カドガーは闇の力が強くなっていることを話し、南東に煙が上がっていることを知ると一刻も早くガーディアンを呼ぶよう求めた。ローサーの息子であるカランは、国王を警護する騎士団に所属していた。ローサーは妹のタリア王妃と2人になると、「カランをひいきにするな」と告げた。レインがローサーを率いて最後にカラザンを訪れたのは6年前で、それ以降は何の連絡も無かった。
レインはメディヴを召喚することを決定し、ローサーとカドガーを派遣した。ローサーたちがカラザンに到着すると、召使いのモロエスが出迎えた。ローサーはカドガーを書庫に残してメディヴの部屋へ向かい、レインが呼んでいることを話した。メディヴはフェルについて、「唯一無二の魔法であり、アゼロスには存在しなかったはずだ」と告げた。ローサーたちは城に戻り、武装した大きく凶暴なモンスターがヒューマンを襲っていることをレインはメディヴに説明した。
ローサーたちは軍勢を率いて馬に乗り、エルウィン・フォレストに向かった。オークたちに襲われた軍勢は必死に戦うが、全く歯が立たず次々に殺される。カランも殺されそうになるがローサーが助け、「敵は大きい。頭を使え」と指示した。メディヴが魔法を使って多くのオークを倒すと、生き残ったデュロタンやブラックハンドたちは退却した。メディヴはカドガーに、「彼らをストーム・ウィンドへ送れ。私はカラザンに戻る」と告げて姿を消した。
デュロタンは逃亡する途中、ガローナの鎖を切断してやった。ローサーは敵を追い掛け、オークの1人を捕まえた。カドガーはガローナと遭遇し、彼女を魔法で取り押さえた。檻に入れたオークが暴れてガローナに襲い掛かったので、ローサーが始末した。人間の言葉が分かるガローナを、ローサーはレインの元へ連行した。ガローナは自分はオーク族であること、別世界から来たこと、魔術の力でゲートを使ったこと、大勢のヒューマンが力を使うため捕まっていることを語った。「奴らに会わせろ」とローサーが要求するとガローナは拒否する姿勢を見せ、脅されても強気な態度を崩さなかった。レインは彼女に、「君らを襲うつもりは無い。この世界が守れれば、それでいい。協力すれば自由をやろう」と持ち掛けた。
ブラックハンドはグルダンの元に戻り、「我らホードに腰抜けなど要らぬ。習わしに従え」と告げられる。ブラックハンドが死を選ぼうとすると、デュロタンが仲裁に入った。デュロタンは「我らは戦った。奴らの魔法使いはフェルを使ったのだ」と主張するが、グルダンは全く認めようとしなかった。逆らうつもりかと問われたデュロタンは、「そんなつもりは無いが、フェルは滅びの魔術だ。使う度に大勢が死ぬ」と意見した。
ガローナは牢に収監され、タリアが毛布とスープを差し入れた。タリアはガローナに、「今夜も村が襲われた。起きなくてもいい悲劇だわ 。ここで私たちは、違う種族とも仲良く暮らしてきた。ここで自由に生きていいのよ」と語り掛けた。カドガーは書物を調べ、「アロダイに尋ねよ」という言葉に着目した。翌朝、デュロタンはオーグリムに、「ここは昔の故郷と同じだ。グルダンが魔法を使う度に、土地が死んだ。ここで移住しても同じことだ。グルダンを止めなければ」と語る。「俺たちだけでは倒せないだろう」とオーグリムが言うと、デュロタンは「人間と組めば、きっとやれる」と告げた。
ローサーやカドガーたちはガローナを連れて、城を出発する。一行は野営することになり、ローサーは最初の見張りをカドガーに任せた。母が火あぶりになったことをガローナが語ると、カドガーは6歳でキリン・トアに差し出されてから家族に会っていないこと、それは名誉なのに逃げ出したことを話した。翌朝、ガローナは一行をゲートに見える場所に案内し、先遣隊しか来ていないことを教えた。ローサーは騎士のカロスにガローナとカドガーへストームウィンドまで連れ帰るよう指示し、騎士のヴァリスを連れて移動した。
直後にデュロタンが現れてカドガーを取り押さえ、ガローナに「天に届く黒い山がある。そこへ族長を連れて来い。グルダンの魔法は全てに死をもたらす。奴を止めなければ」と語った。ガローナが「私が戻ったら仲間に受け入れて」と言うと、彼は「ここの方が安全だ。彼らと一緒にいろ」と告げて去った。レインはアライアンスの会合を開くが、エルフやドワーフは協力して戦うことを拒否した。ローサーは戦いで負傷したカランから、他の騎士たちが生きたまま連行されたことを聞いた。
ガローナの申し入れを知ったローサーは罠だと疑うが、タリアは彼女を信じて護身用に短剣を渡した。カドガーが部屋に戻ると、メディヴが来ていた。彼はカドガーが独自に調べたフェルに関する絵の数々を見ると、「私がガーディアンだ。お前は違う」と憤慨して全て燃やす。メディヴは「何に立ち向かっているかを、お前は知らない。フェルは私に任せろ」と言い、カドガーが調べていた書物を持ち去った。カドガーは自分が持っていて燃やされずに済んだ絵をローサーに見せ、こちら側からオーク族は招かれたのだと説明した。
レインは騎士団を率いて黒い山へ行き、ローサーやフロストウルフ族の仲間たちと会う。その様子を、崖の上からメディヴが眺めていた。デュロタンはレインに、「種族を救うために、グルダンを倒す必要がある太陽が2度昇った後、捕まえた人間がゲートを開くため使われる。人間がキャンプを襲ってグルダンの部下を引き付ければ、我らが奴を倒す」と語る。彼が捕虜を守ると約束したので、レインは協力を承諾しようとする。しかし密会の情報は洩れており、ホードのペオンたちが襲い掛かってきた。
ローサーたちが戦う中、メディヴは魔法を使う。しかし魔法のせいでローサーたちは行く手を遮られ、ホード軍の前に取り残されたカランが殺された。ガローナやカドガーたちは倒れているメディヴを発見し、カラザンへ連れて行く。メディヴを魔力の泉に入れたカドガーは、その目にフェルの光を見て驚愕した。デュロタンはドラカの元へ戻り、赤ん坊を連れて脱出するよう指示する。そこへブラックハンドが来て「裏切ったな」と凄むと、デュロタンは「誇りを持って生きているだけだ」と言う。ブラックハンドが「時代は変わった。我らは全てフェルの燃料だ」と告げると、グルカは「望みはあるわ。子供たちよ」と口にした。
「これ以上、無駄に命を奪わせるな」とブラックハンドに言われたデュロタンは、自分の服従と引き換えに仲間は助けるよう頼む。グルカが赤ん坊の名を尋ねると、デュロタンは「ゴエルだ」と告げた。意識を取り戻したメディヴは、傍らで見守っていたガローナから状況を聞く。ガローナがローサーに惹かれていると見抜いた彼は、「若い頃の私は疎外感があり、旅に出た。その途中で強く気高き者たちと会い、1人の女性が私を愛してくれた。共に歩む運命では無かったが、分かったことがある。愛を手に入れたければ、地の果てまでも探しに行く覚悟が必要だ」と語った。
メディヴは「ローサーの元へ行け」と言い、魔法を使ってガローナを転送した。グルダンは自身の計画に疑念を抱き始めたオーグリムに、「お前にフェルを授けよう」と持ち掛けた。するとオーグリムは、「デュロタンは種族にフェルは悪だと吹き込んでいる。まず種族を集め、連れて来る。仲間の前でフェルを授けてくれ。力を見せて納得させる」と述べた。ガローナは息子を失ったローサーに声を掛け、憐みの眼差しを向けて体を近付けた。
ペオンはグルダンの命令を受けてフロストウルフ族のテントを次々に燃やし、部下たちに「弱い者は捕まえろ。強い者は殺せ」と命じる。オーグリムはドラカの元へ行き、「長い時間は稼げないが、息子と逃げろ」と告げた。カドガーはキリン・トアへ行き、アーク評議会に「メディヴが倒れたのです。フェルに毒されています。ダーク・ポータルを御存知ですか。アロダイとは何ですか」とすると評議長は、アロダイがガーディアンより昔から国を守っている庇護者だと教えた。
カドガーは最後の力を使ったアロダイに呼ばれ、「メディヴは裏切りました。フェルに支配されたのです。彼を止めなければ、この世界は滅びます」と告げられる。「僕に何をしろと?」とカドガーが訊くと、アロダイは「分かるはずですよ。仲間を信じなさい。そうすれば、この世界を救えます。これだけは覚えておいて。光から闇が生まれ、闇から光が差す」と話して姿を消した。メディヴはモロエスの前で、「済まない。どうやら私はオーク族を呼び込んでしまったようだ。他に何をしたか覚えていない。私が今まで守って来た物を破壊した。フェルは制御できない」と漏らす。彼はフェルの支配下に落ち、モロエスの命を奪い取った。
レインは戦略会議を開いて守備を重視した軍の配置を決めるが、ローサーは「優先すべきはゲート開けさせないことです」とゲートの破壊を主張する。そこへメディヴが現れると、レインは意見を求めた。メディヴが「デュロタンと協力すればゲートは破壊できる」と総攻撃を提案すると、ローサーは「残りの軍では足りない」と反対する。ローサーが「近頃の貴方は不安定だし、必要な時に現れない」と言うと、メディヴはカランの死について「兵士としては未熟だったのに、君が戦場へ送り出した」と冷たく告げる。激昂してメディヴに詰め寄ろうとしたローサーは取り押さえられ、レインは「頭が冷えるまで牢に入れておけ。使い物にならん」と部下に命じた…。

監督はダンカン・ジョーンズ、脚本はチャールズ・リーヴィット&ダンカン・ジョーンズ、製作はチャールズ・ローヴェン&アレックス・ガートナー&トーマス・タル&ジョン・ジャシュニ&スチュアート・フェネガン、製作総指揮はジリアン・シェア&ブレント・オコナー&ラ・ペイカン&エドワード・チェン&チャン・シム&ワン・チョンレイ&マイケル・モーヘイム&ポール・サムズ、共同製作はクリス・メッツェン&ニック・カーペンター&ロブ・パーボ&レベッカ・スティール・ローヴェン、撮影はサイモン・ダガン、美術はギャヴィン・ボッケ、編集はポール・ハーシュ、衣装はメイエス・C・ルベオ、視覚効果監修はビル・ウエスタンホーファー、視覚効果監修はジェフ・ホワイト&ジェイソン・スミス、アニメーション監修はハル・ヒッケル、視覚効果プロデューサーはマーク・ソーパー、音楽はラミン・ジャヴァディー。
出演はトラヴィス・フィメル、ポーラ・パットン、ベン・フォスター、ドミニク・クーパー、ダニエル・ウー、トビー・ケベル、ベン・シュネッツァー、ロブ・カジンスキー、クランシー・ブラウン、ルース・ネッガ、アンナ・ギャルヴィン、カラム・キース・レニー、バークリー・ダフィールド、ライアン・ロビンズ、ディーン・レッドマン、グレン・エニス、テリー・ノタリー、エレナ・ウォーリッツァー、マイケル・アダムスウェイト、アンナ・ヴァン・フート、カラン・マルヴェイ、エイドリアン・マクモラン、カイル・ライドアウト、マイケル・アントナコス、エリザベス・ローゼン、パトリック・サボンギ、ケント・オコナー、ウェズリー・マッキネス他。


ブリザード・エンターテイメントのコンピューターゲーム「Warcraft」シリーズを基にした作品。
監督は『月に囚われた男』『ミッション:8ミニッツ』のダンカン・ジョーンズ。
脚本は『ブラッド・ダイヤモンド』『白鯨との闘い』のチャールズ・リーヴィットとダンカン・ジョーンズ監督による共同。
ローサーをトラヴィス・フィメル、ガローナをポーラ・パットン、メディヴをベン・フォスター、レインをドミニク・クーパー、グルダンをダニエル・ウー、デュロタンをトビー・ケベル、カドガーをベン・シュネッツァー、オーグリムをロブ・カジンスキー、ブラックハンドをクランシー・ブラウン、タリアをルース・ネッガが演じている。
アンクレジットだが、アロディーをグレン・クローズが演じている。

ローサーは登場した時にドワーフ王と会っているが、何の用事で訪れているのかは良く分からない。
人間の部隊が襲われた情報を聞くのは、アイアンフォージじゃない場所でも全く変わりは無い。
もしも「ローサーは種族を問わず、分け隔てなく接する」ってことを示す狙いがあったとしても全く足りていないし、他の人間が異なる種族を嫌悪したり差別したりする様子は描かれていないので効果は無い。
ともかく、ここでローサーとドワーフが会っていることは、後の展開に何の影響も無い。

デュロタンはアライアンスの世界へ移動した直後から、赤ん坊を抱いた母親を拉致するブラックハンドの行動に疑念を示している。
なので、目的のために容赦なく人間を惨殺するような悪党キャラじゃないことは分かる。っていうか、それは最初に語り手として登場した時から、もう分かり切っている。
ただ、そうは言っても、「デュロタンを止めるために人間と手を組もう」と言い出すのは、ちょっと展開として拙速じゃないかと感じる。
そこまでに、色んな手順を省略しているように思えるのよね。

まず最初に、デュロタンが他のオークと同様、「リーダーのデュロタンを信じている」という状態があった方が望ましい。
ただ、それには「集まった時点で大勢のヒューマンが捕まっており、フェルの犠牲となる」という状況があるので、なかなか難しいモノがある。
だけど、その後のデュロタンの言動から考えると、この段階で「グルダンは間違っている」と感じなきゃいけないはずなんだよね。何しろ、何の罪も無い人々を邪悪な魔法のために殺しているんだから。
だけど、そういう様子は全く見えないのよね。

そこは置いておくとして、少なくとも「デュロタンへの疑念が高まって行く」という手順は必要になるだろう。しかし、そこも充分に描写されているとは言い難い。
さらに問題なのは、「対立関係にあるヒューマンを信じ、手を組もうと考える」という部分だ。
彼がそう決意するまでにヒューマンと絡んだのは、エルウィン・フォレストでの戦いだけだ。そして戦いと言っているぐらいだから、そこでは敵対する関係にあり、互いに大勢を殺したり殺されたりしている。
そんな関係性でしかヒューマンと接触していないのに、なぜ「ヒューマンと手を組もう」と思えるのか。

そもそも、デュロタンのヒューマンに対する最初の印象がどういうモノなのか、それも良く分からないんだよね。
「決して悪い奴らではないけど、自分たちが生きるために仕方なく襲う」ってことなら、「ゲートを通って彼らの元へ向かう」という計画が決まった時点で、もっと「本当にいいのか」という疑問や苦悩を見せておくべきだろう。
この映画は「オークを悪玉に見せないように」という意識を持って作られているものの、そのための作業が足りていない。

オークが別世界の住人であるならば、なぜ人間とオークのハーフであるガローナが存在するのか。
彼女だけが人間の言語を話せるのに、ローサーやカドガーたちが誰も不思議に思わず、そこを追及しようとしないのも不自然。
また、ガローナがハーフ・オークなら、以前にもゲートを使ってオークがアライアンスの世界へ来たり、その逆だったりという出来事があったはず。
それなら、その出来事を調べることでオークの侵攻を防ぐ参考にしようと考える奴がいてもおかしくないのに、誰も考えないんだよね。
カドカーなんかは知恵の働く男という設定なのに、そういうトコは都合良く抜けてるんだよな。

ゲートを目にしたローサーはカロスに「2人をストームウィンドに」と告げ、ヴィリスを伴って移動する。なので、てっきりゲートに接近して何かするのかと思ったら、何も無かったようだ。
シーンが切り替わって再びローサーが登場すると、城に戻ってレインに「オークはゲートを作り、種族全員を連れて来ます」と報告している。
だったら何のために移動したのかというと、「デュロタンがガローナに接触する」という状況を作るための下手な御都合主義だ。
しかも、そんな強引な手を使っているけど、まだ「カロスはどうしたんだよ。なんでデュロタンはカドガーを捕まえただけでガローナと話せているんだよ」というツッコミが成立する状態になっているし。

後半に入ると、ローサーとガローナが惹かれ合う展開が待ち受けている。2人が出会った時から、「ここでロマンスを作るんだろうな」と思っていたし、ある意味では予定調和と言える。
ただ、そのロマンスを納得させるためのドラマが、これっぽっちも描かれていないのだ。
メディヴが「ガローナはローサーに惹かれている」と指摘した時に、「段取りとしては分かるけど、どの辺りから惚れていたのか」ってことが全く見えない。そのための描写なんて、まるで無かったぞ。
しかも、まだガローナの方は「惚れてるよね」という指摘があるけど、ローサーが彼女に惚れている様子なんて皆無だったでしょうに。

メディヴはフェルに支配されてダークサイドに堕ちるのだが、ってことはホード側だけじゃなくて、アライアンスの魔法もフェルなのね。
だとすれば燃料は命のはずだけど、メディヴは魔法を使う時も人を生贄にしていないよね。あと、緑の光も出ていないよね。
あと、フェルがメディヴを支配して闇堕ちさせたとすれば、グルダンが邪悪なのもフェルのせいなのか。グルダンがフェルと無関係で邪悪だとすると、今度は「メディヴがフェルのせいで邪悪化した」ってのは設定が上手く整理されていないと感じるぞ。

あと、メディヴはフェルのせいでオークを呼び込んだという設定なんだけど、そんなことをする理由はサッパリ分からんぞ。
自分でオークを呼び込んでおいて、その一部は魔法で退治するんだから、そのキテレツなマッチポンプは何なのかと。
その辺りは、フェルの定義がボンヤリしていて分かりにくいってのが原因なんだよね。
そこだけじゃなく、ゲームをやっていれば全て理解できるのかもしれないけど、初心者からすると説明不足を感じる箇所が幾つもある。
例えばホードやアライアンスってのも当たり前のように使っているけど、それが具体的に何を示す言葉なのかは教えてくれないし。

終盤、デュロタンは何とかグルダンを止めようと、彼に決闘を要求する。しかしグルダンはフェルを使い、彼を始末する。それを見ていたオーグリムが「あの悪魔に従うのか。俺は嫌だ。真のオークに従う」と言うと、数名のオークが彼に追従しようとする。
しかしグルダンがフェルでそいつらを制圧すると、全てのオークが反抗する気持ちを完全に失う。
そうなると、デュロタンは完全なる「無駄死に」だよね。オーグリムの「俺は真のオークに従う」という呼び掛けも、まるで無意味だよね。
そんな手順、なんで作ったのかと。

牢に収監されたローサーは、会いに来たガローナに「メディヴを信じるな」と警告する。
だけどメディヴはレインやガローナに同行して総攻撃に出陣するわけではなく、カラザンへ戻っているのよね。
つまりメディヴがレインの軍勢を動かすわけじゃないので、ガローナへの警告は何の意味も無いってことになる。
それと、ローサーとカドガーはメディヴを止めるために行動し、レインやガローナたちはホードと対峙するってことでクライマックスの戦いが2つに分かれているのは上手くないなあ。メディヴがホードと結託しているならともかく、そういうわけでもないし。

アライアンスとホードの戦いも、すんげえモヤモヤする形なんだよなあ。
レインはホードに包囲され、ガローナに「私を殺せばオーク族の英雄だ。生き延びてオークと人間の懸け橋となれ」と告げる。そしてガローナはレインを殺し、オーク族から英雄として迎えられる。そこへローサーが駆け付けると、ブラックハンドがタイマンを要求する。
それまでは全軍が入り乱れて戦っていたのに、そこで急にタイマンが成立するのは不自然だ。
で、ローサーが勝つとグルダンが「殺せ」と言うのだが、オークの習わしに従ってタイマンを認めるよう告げる。「無視すれば誰も従わない。ホードは離脱する。戦争はこれからです」と彼女が説くとグルダンは渋々ながら承諾し、ローサーは去る。
つまり「戦いはこれからだ」ってトコで終わるんだけど、かなり強引に区切りを付けているとしか思えんよ。

(観賞日:2018年11月10日)

 

*ポンコツ映画愛護協会