『ヴァンパイア 最期の聖戦』:1998、アメリカ

人間を襲うヴァンパイア集団に対抗するため、バチカンは密かに退治チームを組織して世界中に派遣していた。ジャック・クロウが率いるアメリカ・チームはニューメキシコ州に向かい、農家に潜んでいたヴァンパイア集団を退治する。
その夜、モーテルに娼婦を呼んで盛り上がっていたジャック達は、魔鬼のヴァレックに襲撃される。生き残ったジャックとモントーヤは、ヴァレックに噛み付かれた娼婦カトリーナを連れて逃亡する。ヴァンパイアに噛まれた人間は、2日後にテレパシーでヴァンパイアと通じる。それを利用して、ヴァレックの居場所を見つけようと考えたのだ。
アルバ枢機卿に会ったジャックは、ヨーロッパ・チームが全滅したことを聞かされる。アルバはチームの再編成とアダム神父の同行を指示するが、ジャックは再編成を拒否する。一方、ホテルで待機していたモントーヤは、飛び降りようとしたカトリーナを連れ戻そうとして噛み付かれるが、そのことをジャックには内緒にする。
ヴァレックは魔鬼の仲間を増やし、田舎町でモリーナ神父を襲撃した。ジャックはアダム神父から、ヴァレックがモリーナ神父の持っていた黒い十字架を使い、儀式を行って昼でもウゴキマワレルになろうと企んでいることを聞き出す。ジャック達はヴァレック率いるヴァンパイア集団の退治に取りかかるが、その途中で日が沈んでしまう…。

監督はジョン・カーペンター、原作はジョン・スティークリー、脚本はドン・ジャコビー、製作はサンディー・キング、共同製作はドン・ ジャコビー、製作総指揮はバー・ポッター、撮影はゲイリー・B・キッブ、編集はエドワード・A・ウォーズチルカ、美術はトーマス・A ・ウォルシュ、衣装はロビン・マイケル・ブッシュ、特殊メイク・アップ効果はロバート・カーツマン&グレゴリー・ニコテロ&ハワード ・バーガー、音楽はジョン・カーペンター。
出演はジェームズ・ウッズ、ダニエル・ボールドウィン、シェリル・リー、トーマス・イアン・グリフィス、マクシミリアン・シェル、 ティム・ギニー、グレゴリー・シエラ、マーク・ブーン・ジュニア、ケイリー=ヒロユキ・タガワ、トーマス・ロザレス、ヘンリー ・キンジ、デヴィッド・ロウデン、クラーク・コールマン、マーク・シヴァートセン、ジョン・ファーロング、アンジェリカ・カルデ ロン・トーレス他。


ジョン・スティークリーの原作『ヴァンパイヤ・ハンターズ』を映像化した、西部劇タッチの吸血鬼退治ムーヴィー。
ジャックをジェームズ・ウッズ、モントーヤをダニエル・ボールドウィン、カトリーナをシェリル・リー、ヴァレックをトーマス・イアン・グリフィスが演じている。
また、フランク・ダラボンが“ビューイックの男”として顔を見せている。

音楽はいつもの通りジョン・“ベンベン節”・カーペンター監督が担当しているが、今回はスティーヴ・クロッパーやドナルド・“ダック”・ダンといったブルース・ブラザーズにも参加していた面々を含むスタジオ・ミュージシャンを起用し、カントリー&ブルースを聞かせてくれる。
ただし、それによってカーペンターらしさは少し弱くなっている。
ボウガンや変形の槍などを片手に退治チームのメンバーが並んで農家に向かうという、序盤のシーンにはカッコ良さがある。今回のジョン・カーペンターは、ホラー監督としてではなく、アクション監督としての手腕を発揮している。

ヴァンパイヤ退治の方法が、かなり独特だ。
圧力式の穴開け機でドアを開け、ヴァンパイヤに銃を撃ちまくり、ボウガンや槍で突き刺し、車に繋いだワイヤーで外に引きずり出すと、ヴァンパイヤが発火して死ぬ。
残酷だが、どこかマヌケな感じもある。
黒焦げになって死んだヴァンパイヤのシャレコウベを、車のボンネットに並べるという趣味の悪さ。
何人もの娼婦をモーテルに集めてドンチャン騒ぎをするバカっぷり。
退治チームの連中の、あまりオツムのよろしくなさそうな様子がイイ。

ジャックとモントーヤは、全く無関係の人間を銃で脅して車を奪い取る。モントーヤはカトリーナを裸にしてベッドに縛り付け、ジャックはアダムを殴り倒して「そっちの趣味だろ、気持ち良かったか?」と尋ねる。
そのワルっぽさがイイ。

ただし、この作品は、とにかくシナリオがダメ。
まず、「カトリーナがテレパシーでヴァレックと通じる」という設定が、邪魔な存在になっている。
「テレパシーで通じる」という部分を何度も見せるために、チンタラした展開を生み出してしまっている。
そもそも、このカトリーナという女の存在自体、邪魔に思えてしまう。
彼女とモントーヤのドラマを描き始めると、見事に中だるみが始まる。
モントーヤとカトリーナの恋愛だって、作品を盛り上げる要素として絶対に必要だったとも思えないし。

この作品で面白いのは、何よりも「バカバカしいけどカッコイイ」というアクションシーンなのだ。
しかし、最初にヴァンパイヤ退治&ヴァレック襲撃という2つのアクションシーンを見せた後、かなり長い間、アクションシーンが出て来なくなってしまう。
それは前述のように、「ジャック達がカトリーナのテレパシーを使ってヴァレックの行方を探す」という形になっているからだ。
そのため、ジャックがヴァレックと再び顔を会わせることは、なんと終盤になるまで無いのだ。
ということは、せっかくワルのカッコ良さを見せているヴァレックの登場シーンも少なくなる。

それよりも、単純に「ヴァレックがジャックの命を再び狙ってくる」とか、とにかく「ジャックがヴァレックが何度か戦う」という形にすべきだ。もしもヴァレックを終盤まで再登場させないのなら、彼の手下でも登場させて、その手下とジャックを戦わせるというコトでも構わない。
何にせよ、もっとジャックに戦いを行わせるべきだ。

中盤、土の中からヴァンパイヤが次々に出てきて、並んで歩き始めるシーンは、かなりビジュアル的に面白い。
そのテンションを維持するためには、そのままアクションに雪崩れ込むべきだろう。
しかし、残念ながらテンションはすぐに落ちる。
結局、ヴァレックのモーテル襲撃までに、この作品は大半のエナジーを使い切ってしまうのだ。
そこで見られたテンションは、2度と戻ってくることは無い。
しかも、カーペンターらしいキレキレっぷりが弱くて、普通のB級ムービーに近いモノになっている。
ヴァチカンの秘密とか、モントーヤとカトリーナの恋愛とか、そんなのは極端に言えば、どうでもいい。
ひたすらハンターとヴァンパイヤのバトルを描くことに集中した方が、ジョン・カーペンターのB級バカ魂は存分に発揮されたと思うのだが。


第21回スティンカーズ最悪映画賞

受賞:【最悪の助演男優】部門[ダニエル・ボールドウィン]

 

*ポンコツ映画愛護協会