『ヴァンパイア・アカデミー』:2014、アメリカ&イギリス&ルーマニア
オレゴン州に住む高校生のローズ・ハサウェイは、自動車事故の夢で目を覚ました。彼女は隣の部屋へ行き、リサ・ドラゴミールを起こす。リサはローズと同じ夢を見ており、「ごめん、また感じた?あの夜以来、貴方が私に入る。慣れないわ。変な感じ」と漏らす。ローズは「そろそろ自覚してよ。私たち、変なんてもんじゃない」と言う。リサはオレゴン州に溶け込むために勉強中で、「学園から逃げて、また1年足らずよ。事故からは2年」と口にする。
ローズが「立ち止まったら負け。アンタを守ることしか考えてない」と言うと、「みんな忘れてるわよ。まだ追われてると思ってるの?」とリサは告げる。リサが苦しそうな様子を見せたので、ローズは自分の血を吸わせた。ガーディアンらしき男たちを窓の外に見つけたローズは、リサを連れて外へ出た。ローズは男たちを倒してカナダへ逃げようとするが、ディミトリ・ベリコフが現れて聖ウラジミール学園へ戻るよう促す。彼女はディミトリに戦いを挑むが、あえなく敗北した。
リサは伝統ある吸血鬼「モロイ」の王族で、ローズはディミトリたちと同じダンピールだ。モロイと人間のハーフであり、モロイを守るために命も捧げるガーディアンだ。ローズたちが学園に戻ると守衛の姿は無く、いきなり凶暴な吸血鬼たちが襲い掛かって来た。それは邪悪な吸血鬼のストリゴイで、ローズは実物を見たのが初めてだった。ディミトリは教師仲間のスピリドンたちと共にストリゴイを退治し、ローズとリサを学園に入れた。
聖ウラジミール学園はモロイとダンピールの通う学校であり、通常の授業以外にダンピールは格闘術、モロイには魔法を学ぶ。モロイには12の王家があり、その中から選ばれたタチアナ女王が現在の君主を務めている。リサが逃げ出してガーディアン見習いのローズが手助けしたのは、前例の無い出来事だ。キロワ校長は「どう罰すればいいのか分からない」と言いながらも、ローズを厳しく叱責する。そこへリサの叔父である学務部長のヴィクトル・ダシュコフが現れ、寛大な措置をキロワに求めた。
ヴィクトルは病気で衰弱しており、ダシュコフから君主を出すことは出来ない状態にある。次に君主となるのは、両親を事故で亡くしてドラゴミール家の王位継承者となったリサの可能性もあった。キロワはローズを売血女と罵るが、ディミトリは「ローズはリサが何を考えているか感じ取ることが出来る」と説明する。リサに魔法で操られたキロワは、課外活動を禁じた上でローズを赦した。ローズとリサが好感を抱いていた教官のカルプは、学園を辞めていた。
学園生活に戻ったリサは、女子生徒のミアと取り巻きから攻撃の対象にされる。ミアが交際しているアーロンは、リサの元カレだ。ミアが口汚く罵っても、リサは冷静に受け流した。ローズは仲間のメイソンたちと再会し、格闘訓練に復帰した。リサが避難場所と決めている教会へ行くと、生徒のクリスチャンが現れた。リサと同期したローズは、その様子を離れた場所から見ていた。クリスチャンは両親が自らストリゴイになることを選んでおり、ローズはリサに「離れて」と言うが、もちろん聞こえていない。しかしクリスチャンは外での生活を訪ねただけで、リサに危害を加えることは無かった。
ローズは血を補給する時間になったリサと合流し、モロイのカフェテリアのような場所へ行く。吸血鬼の本やショーが好きな人間が自らの意思で「フィーダー」となり、モロイに血を供給しているのだ。上限は一年間で、そこを出る時には記憶を書き換えられている。ローズはディミトリの娘で情報通のナタリーと会い、学園の生徒たちについて尋ねる。その結果、彼女はミアが王族とつるんでいること、ジェシーは性格が悪いが未だに学園で一番の人気であること、その友人であるレイにナタリーが惚れていることを知った。
生徒たちが聖堂で説法を受けている最中、外で小さな爆発が起きた。ローズやリサたちが外に出ると、ミアが壁に「去らなければ死ぬ」という血文字が記されていた。嘲笑するミアを見つけたローズは、彼女の仕業だと確信する。またリサと同期したローズは、吊り下げられた猫の死骸を彼女が発見したことを知る。ミアは授業中、教師のマイズナーに見つかるようにメモを回そうとする。彼女の狙い通りにメモを取り上げたマイズナーは、「リサは外の世界でローズをフィーダーとして使っていた」と書かれたメモを読み上げた。
タチアナが急に学園を訪れ、大勢の生徒が集まる前でリサを呼び出した。彼女はリサを糾弾し、反論を拒絶した。ローズとナタリーがリサの部屋に入ると、壁に血文字が記されていた。ローズはナタリーに血を舐めさせ、複数のモロイの仕業だと知る。そこへ戻って来たリサは、犯人を突き止める意思を強い態度で示した。クリスチャンの影響を受けていると感じたローズは彼と会い、リサに近付かないよう要求する。「俺は心配なだけだ」とクリスチャンは言うが、ローズは「リサはアンタをストーカーだと思ってる」と嘘をついた。
またリサと同期したローズは、彼女が「強制」の能力でミア以外の生徒たちを操っていることを知る。ナタリーはミアのパソコンを盗み、ローズに渡した。パソコンを調べたローズとナタリーは、ミアがリサの亡き兄であるアンドレと交際していた事実を知った。アンドレはプレイボーイとして有名だが、ミアは本気だったため、ドラゴミール家を憎んでいたのだ。
ローズはメイソンから、ジェシーとレイが手首に包帯をしていたことを聞かされる。ローズはミアも包帯をしていると知るが、先に校長室を調べることにした。校長室からカルプのディスクを盗み出したローズは、彼女が何かに怯えていたことを知る。リサはアーロンを操り、ヨリを戻した。さらに彼女はカミーラも操ってパーティーに参加し、魔法の力を見せ付ける。ローズは呆れて「もう付き合ってらんない」と吐き捨てると、リサは「この数週間でミアは破滅。もう怖い物なんて無い」と口にした。
ローズ、リサ、ナタリーはサイハウンドに追われ、慌てて逃げ出した。リサは放置されているリュックを発見するが、その中には愛猫であるオスカーの死骸が詰め込まれていた。リサはオスカーを蘇生させようとするが気を失い、その腕には幾つもの切り傷が生じる。それを見たローズは、カルプから「力を使うほどリサは危険になる。私と同じように、彼女も狙われる。ストリゴイは関係ない」と言われたことを思い出す。カルプは強制の力を使い、リサを学園から逃がすようローズに指示したのだった。
ローズはキロワやヴィクトルたちに、そのことを話す。リサが蘇生の力を持っているのか問われたローズは、「死んだら無理。息があれば救える」と答えた。ローズはキロワに、カルプのビデオの続きを見せるよう求めた。キロワは「何の証拠も無い」と突っぱねようとするが、ディミトリが説得する。カルプはローズとリサが逃亡した後、苦しみから逃れるためにストリゴイへと変貌していた。カルプは脱走し、今も行方は分かっていない。
ディミトリから「聖ウラジーミルが力になってくれる」と助言されたローズは、教会へ赴いた。ローズは教会にいたクリスチャンと共にローズは書物を調べ、リサが一つのエレメントに特化しないことで聖ウラジーミルと同じ特別な力を会得したことを知った。ローズとリサはクリスチャンのことがきっかけで、激しい言い争いになった。しかしローズの怪我をリサが治したことで、2人は仲直りする。2人は事件の犯人を突き止める目的を抱き、学園のダンス・パーティーに参加する…。監督はマーク・ウォーターズ、原作はリシェル・ミード、脚本はダニエル・ウォーターズ、製作はディーパック・ナヤール&マイケル・プレガー&ドン・マーフィー&スーザン・モントフォード、共同製作はジリアン・デフレーン&コーリー・キャプラン&ニコール・パワー&ヴラド・ポーネスキュー、製作総指揮はスチュアート・フォード&ボブ・ワインスタイン&ハーヴェイ・ワインスタイン&マーク・ウォーターズ&ダニエル・ウォーターズ&ジェシカ・タッチンスキー、共同製作総指揮はデヴィッド・ノートン、撮影はトニー・ピアース=ロバーツ、美術はフランク・ウォルシュ、編集はクリス・ギル、衣装はルース・マイヤーズ、音楽はロルフ・ケント、音楽監修はハワード・パー。
出演はゾーイ・ドゥイッチ、ルーシー・フライ、ガブリエル・バーン、オルガ・キュリレンコ、ジョエリー・リチャードソン、ダニーラ・コズロフスキー、ドミニク・シャーウッド、キャメロン・モナハン、サミ・ゲイル、サラ・ハイランド、クレア・フォイ、アシュリー・チャールズ、エドワード・ホルクロフト、クリス・メイソン、ベン・ピール、ドミニク・ティッパー、ブロンテ・ノーマン=テレル、ラモン・ティカラム、ハリー・ブラッドショー、シェリー・ロングワース、ロリー・フレック=バーン、アレンサンダー・アバドジス、エリザベス・コンボイ、ライアン・プレスコット、キャメロン・ハリス他。
アメリカで大人気となったリシェル・ミードのヤングアダルト小説を基にした作品。
監督は『ミーン・ガールズ』『スパイダーウィックの謎』のマーク・ウォーターズ、脚本は『ハドソン・ホーク』『バットマン リターンズ』のダニエル・ウォーターズ。
ローズをゾーイ・ドゥイッチ、リサをルーシー・フライ、ヴィクトルをガブリエル・バーン、キロワをオルガ・キュリレンコ、タチアナをジョエリー・リチャードソン、ディミトリをダニーラ・コズロフスキー、クリスチャンをドミニク・シャーウッド、メイソンをキャメロン・モナハン、ミアをサミ・ゲイル、ナタリーをサラ・ハイランド、カルプをクレア・フォイが演じている。原作は全6巻であり、当然のことながら映画版もシリーズ化を想定して製作されている。
だから1作目は、あくまでもシリーズの入門編としての内容に留まっている。「こういう世界観ですよ、こういう人間関係ですよ、こういうテイストですよ」ということを紹介して、観客にシリーズを理解してもらうための入り口だ。
色んなことが解決されないままで終わるし、多くの謎や疑問が残されたままになる。
そんなに大きな出来事は起きず、「物語が本格的に盛り上がって行くのは次回以降ですよ」という形になっている。それは裏を返せば、「単独の映画として見た場合の満足度が低くなる」ということでもある。
この1本だけでは話が何も解決していないし、用意されている設定からすると盛り上がりが今一つってことになるからだ。
多くの観客が「今後は盛り上がるはずだから、次回以降に期待しよう」と割り切って観賞してくれれば、単独の映画としての満足度が低い仕上がりであっても、何とかなったかもしれない。
しかし興行的に大コケしたってことは、そういう優しい観客は少なかったってことだろう。この映画、「ダンピール」「フィーダー」「モロイ」「ストリゴイ」「ノーヴィス」など、他の作品には見られない独自の用語が多く用意されている。そういった用語に関連して、多くの設定も用意されている。
ファンタジー作品で独自の設定を多く用意するというのは、それだけ世界観に厚みを与えたり面白くしたりする可能性があるので、一概に欠点とは言えないだろう。ただし、この映画における大きな難点になっていることは間違いない。
独自の用語や設定が多いことが難点になる理由は簡単で、「それを説明するために多くの時間を必要とする」ってことだ。
もちろん原作の読者からすれば「今さら説明する必要なんて無い」ということばかりだろうが、邦画(特にアニメ)で良くある「テレビ版を見ていない人は置いていきますよ」という一見さんを無視した作りだと、興行的に失敗することは目に見えている。
だから、時間が掛かることが大きなリスクだと分かっていたとしても、説明を省くことは出来ないのだ。ただし本作品は、そういう用語や設定の説明に多くの時間を費やしていない。後述するが、簡単にナレーションで処理して終わらせている。
それで一見さんの観客に把握してもらおうってのは、なかなか虫のいい話だ。
ただし、実は「説明する事柄が多い」とか、「その説明を簡単に片付けている」とか、そういうことが一番の問題ではない。
もっと大きな問題は、独自の用語や設定を説明している意味が乏しいってことだ。
この映画、そういう要素の大半を排除しても、ほぼ支障なく成立する内容なのである。っていうかさ、そもそも「モロイ」ってのはヴァンパイアの種族だし、「ダンピール」ってのはモロイ(つまりヴァンパイア)と人間のハーフ、「フィーダー」は人間ってことだ。
だから独自の用語を使っているだけで、実は設定としては良くあるモノなのよね。
原作がヤング・アダルト小説だから仕方が無いのかもしれないが、とにかく物語が陳腐だ。
ザックリ言っちゃうと『トワイライト』シリーズと『ハリー・ポッター』シリーズを混ぜたような話で、「学園を舞台にした吸血鬼モノ(もちろん恋愛要素有り)」ってな感じである。冒頭、悪夢を見たローズとリサが会話を交わし、どうやら学園から1年前に逃げて来たらしいことが示される。
後で彼女たちは学園に連れ戻されるのだが、「ヒロインが学園に入って色んなことを知るようになっていく」という手順をスッ飛ばして、いきなり「学園から逃亡して1年後」という入り方をしているわけだ。
リサが血を吸うトコで「彼女が吸血鬼」と分かる形にしてあることも含め、導入部としては意外性があると言えなくも無い。
ただし、それがプラスに働いているかと言えば、答えはノーだ。
それは謎めいた導入によって興味を引き付けるという効果よりも、「無駄に分かりにくいし妙に慌ただしい」というマイナスの方が遥かに大きい。ローズがディミトリに負けた後、彼女のナレーションによって「リサは伝統ある吸血鬼、モロイの王族。モロイはコウモリに変身したり、棺桶で寝たりしない。太陽光には弱いけど、わずかならOK」「ローズはディミトリたちと同じダンピール。モロイを守るガーディアン。
モロイと人間のハーフで、モロイを守るために命も捧げる」といったことが説明される。
そういうのは話を進めながら説明する形にした方が頭に入りやすいと思うんだけど、ナレーションで一気に片付けようとするわけだ。
学園に到着して戦いが起きた後も、ローズの語りが入って「ストリゴイは夜にしか出て来ない邪悪な吸血鬼で、白銀の杭でしか殺せない。
ガーディアンより遥かに強く、ストリゴイにされることもある」「モロイは水、地、火、風の中から一つのエレメントに特化して魔法を学ぶ」「モロイには政府があり、12の王家から君主が選ばれる」といったことが説明される。
何しろ「何も知らないヒロインが学園に入学して云々」という形じゃないので、「ヒロインと共に観客が情報を得て学習する」という形が取れないのだ。いきなり「リサとローズが学園を逃げて1年後」から始めたもんだから、こっちが何も知らない状態なのに、どんどん話が進むという状態が続いてしまう。
そしてリサやローズが当たり前に知っている設定やら登場人物やら人間関係やらを、後から観客が知らされるという形になるわけだ。
その方法が成功しているかと言えば、答えはノーだ。
後から入る説明は、観客に理解してもらうために充分とは言い難い。むしろ、それによって謎が増えるケースもある。そもそも、なぜリサが逃げ出そうとしたのかが分からない。
ローズは「ここにいた方が危険だと感じた」と言っているけど、そんなのは何の説明にもならない。「なぜ学園にいたら危険だと感じたのか」を説明しないと、腑に落ちる答えにならない。
そして、そのためには、「まずローズが学園に入り、モロイやダンピールについて知識を得て、そこでの授業や生活に少しずつ順応して」という手順を踏み、それから「ここにいたら危険だと感じたリサと共に逃げ出す」という流れにした方が得策だろう。
「カルプに操られていたので、なぜ危険かはローズも知らない」ってのが後で分かるけど、それも含めて「なんだかなあ」って感じなのよね。っていうか、そもそも逃げ出す手順を排除すれば、無駄にややこしい導入部になることも避けられたわけで。
「ローズとリサが学園から逃亡していたがディミトリに捕まって連れ戻される」という入り方をすることの意味を考えた時に、それほど重要性が高いとも思えない。
「リサが学園に危険を感じている」というだけに留めておけば、学園から物語をスタートさせることが出来る。
それでも「ローズとリサが既に知っていることを後から観客が知らされる」という部分は多くなっただろう。しかし、この映画に比べれば、遥かにスッキリとした導入部になったはずだ。
それだけでも、随分と印象は変わる。導入部で「ローズとリサが危険を感じて逃げていた」とか「ストリゴイが襲って来る」とか「リサが次期君主の可能性を秘めている」といった設定が説明されるので、そこからは「君主の座を巡る陰謀」とか「ストリゴイとの戦い」といったことが軸になるのかと思いきや、「若者たちの学園生活」が描かれる。
ヴァンパイアがどうとか、君主がどうとか、そんな要素は脇へ追いやられている。
そもそも本作品における吸血鬼は「たまに血を吸う」という以外、ほとんど人間と同じなのだ。
だから「血に飢える」という部分を隠してしまえば、ほぼ「どこにでもある高校生たちの学園生活」と似たようなモノになる。しばらく経過すると、「リサが血文字や猫の惨殺死体という嫌がらせを受ける」という出来事が描かれ、その犯人を捜す展開に入っていく。
わざわざ説明しなくても分かるかもしれないが、「嫌がらせの犯人捜し」という話は「ヴァンパイアやガーディアンが云々」という設定を全て排除しても成立する。そして単に成立するというだけでなく、「期待させたスケールとの落差」という問題もある。
それなりにスケールのデカい話を期待させておいて、嫌がらせの犯人捜しって、どんだけ話が小さいのかと。
犯人のやった行為はリサへの嫌がらせに過ぎず、殺人でさえ無いのよ。ストリゴイの襲撃とか、まるで関係が無いのだ。ようするに、この映画は吸血鬼関連の設定を持ち込んでいるものの、やっていることは基本的に青春学園物なのだ。
ただチャラチャラしている若者たちがノンビリした雰囲気の中で軽いノリのエピソードを消化するだけではなく(猫の死体が吊るされるまでは、そういう危惧さえ感じられた)、一応はミステリーとしての要素が持ち込まれている。
しかし、「学園ミステリー」として割り切ったとしても、そこの面白味も薄い。
犯人は「最初からローズが疑っていた奴」と「観客がいかにも怪しいと序盤で感じる奴」だし。面倒だから完全ネタバレを書くけど、落書きの犯人はミアで、猫を殺した犯人はヴィクトルだ。
ミアの動機は言わずもがなだが、問題はヴィクトルだ。リサを怖がらせても、何の意味も無いはずだからだ。もしも「次期君主候補から排除したい」ってことなら、殺さなきゃダメだし。
で、彼の動機だが、それは「病気を治してもらいたい」というモノだ。
あまり上手く説明できているとは言えないが、リサには治癒能力がある。だから猫の死骸を用意し、その治癒能力を確かめようとしたのだ。
一応は筋が通っているけど、今一つスッキリしない「解決篇」になっている。あらすじでは触れなかったが、「ローズがジェシーとエロエロなことをしようとするけど、噛み付かれるのは拒絶する」とか、「ローズは連れ戻そうとしたディミトリを責めていたのに、いつのまにか彼に惚れている」とか、「メイソンはローズに片思いしているが、まるで相手にされていない」といった恋愛の要素も含まれている。
しかし、それらは映画の面白さではなく陳腐さに繋がっているだけだ。
何しろ、リサが誰かに拉致されて危機に陥ったと知ったローズは助けを求めるためにディミトリを訪ねたのに、エロい気持ちになってセックスを始めようとするんだぜ。
それは「魔法によって操られていた」ってことなんだけど、そういう事情を含めて考えても、やはり陳腐だ。
ただ、そもそも軸になるべき部分がシオシオのパーなので、他で何をやっても厳しいのよね。そんなわけで、この映画は酷評を浴びて興行的にも大失敗に終わった。
シリーズ化を想定して製作されているので映画のラストは「続編ありき」という形にしてあるが、惨敗したことで2作目は難しい状況に陥った。
続編の製作を引き受けてくれる出資者が見つからないので、プロデューサー陣はクラウドファンディングで予算を集めようと考えた。
しかし、どうやら原作ファンからもそっぽを向かれたようで、目標には程遠い金額しか集まらなかった。
ってなわけで、続編の企画は完全に潰れたのであった。(観賞日:2016年8月1日)