『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』:2017、フランス

西暦2150年以降、アルファ宇宙ステーションの人間たちは、多くの異星人と交流するようになった。そんな中、アルファが質量の限界に達したため、中央委員会は地球の重力圏外に放出することを決定した。400年後、惑星ミュール。パール人が平穏に暮らしていると、突如として上空で立て続けに謎の爆発が起きた。次々に宇宙船が墜落し、パール人の皇帝たちは様子を見に行く。すると新たに巨大な宇宙船が墜落し、皇帝たちは被害を避けるため扉を封鎖した。周囲を調べていた王女は外に取り残され、爆風に晒された。
惑星ミュールで起きた出来事は、全て連邦捜査官のヴァレリアン少佐が見ていた夢だった。彼は相棒のローレリーヌ軍曹を口説くが、冷淡にあしらわれた。ヴァレリアンは大勢の女性と関係があることをローレリーヌに指摘され、「彼女たちは何でもない。俺の心は君の物だ」と釈明した。「責任を取るのを怖がってる。認めたら?」と言われた彼は、「任務に就いて9年間、文句なしの記録だ。名誉勲章は7つ。相棒を亡くしたことも無い」と主張した。
ヴァレリアンは搭乗している宇宙船イントルーダーのAIであるアレックスに自分の脳内を調べさせ、先程の映像が誰かによって送られた物だと知った。ヴァレリアンとローレリーヌがイントルーダーで惑星キリアンへ向かっていると、国務大臣からの通信が入った。大臣はコンバーターを回収してアルファへ向かう任務を説明し、詳細はギブソン隊長に尋ねるよう指示した。キリアンに着陸したヴァレリアンとローレリーヌは兵士たちと合流し、バスに乗り込んだ。
ギブソンは2人に、ビッグ・マーケットで容疑者の店へ行くことを説明した。クーパー軍曹と組むよう言われたヴァレリアンは、「俺が組むのは相棒だけだ」と告げた。ギブソンは彼の言葉を無視すると、ローレリーヌには受け渡し場所へ行くよう指示した。マーケットに到着すると、バスを降りたヴァレリアンはローレリーヌに結婚を申し込む。ローレリーヌが呆れて「笑えない」と言うと、彼は「真面目に言ってるんだ」と口にした。ローレリーヌは軽く笑い、彼の頬にキスをしてバスに戻った。
マーケットに入ったヴァレリアンは、ガイドのタジートが先導するツアーに付いて行った。途中で離脱した彼は、容疑者である宇宙海賊のアイゴン・サイラスが営む店を見つけてギブソンに知らせた。潜入していたクーパーと合流したヴァレリアンは、必要な道具を受け取った。パール人のツーリとマートリはマーケットでサイラスの店へ赴き、頼んでおいたコンバーターを見せてもらう。ツーリは代金のパールを差し出すが、サイラスは取引を拒否するような態度を見せた。
ツーリとマートリが銃を構えると、サイラスを護衛する部下も一斉に銃を向けた。「コンバーターが必要だ。大義のために戦っている」とツーリが言うと、サイラスは銃を構えた。ヴァレリアンは遠隔操作でサイラスに銃を突き付け、「連邦のミュール・コンバーターを盗んだと告発されている」と語る。ローレリーヌはヴァレリアンの元へ行き、コンバーターを受け取った。ヴァレリアンは夢で見たパールを回収し、立ち去ろうとする。しかし彼は攻撃を受けて危機に陥り、援護に駆け付けたクーパーは番犬に襲われた。
ヴァレリアンは地下に墜落するが、何とかマーケットから脱出した。ヴァレリアンやローレリーヌたちがバスで発進すると、サイラスの放った巨大な番犬が追って来た。ヴァレリアンとローレリーヌはイントルーダーに戻り、しがみ付く番犬を振り落としてキリアンから離脱した。ヴァレリアンはアレックスにパールを分析させ、イントルーダーの10倍のパワーを持つこと、30年前に消滅したミュールで採取されていたことを知った。ヴァレリアンはデータを見ようとするが、最高ランクのみのアクセス制限が掛かっていた。
アルファに到着したヴァレリアンとローレリーヌはオクト=バー将軍の元へ行き、コンバーターを回収したことを報告する。ヴァレリアンが事情説明を求めると、「1年前、ステーションの中心部に高放射性ゾーンを発見した。探査機や特殊部隊を送り込んだが戻らなかった」とバーは語る。そのゾーンの空気は汚染されており、拡大を続けていると彼は説明する。そこへフィリット司令官が現れ、「すぐに除去しないと、1週間でアルファを滅ぼす。これは大量破壊兵器で、背後には殺人者がいる」と言う。
フィリットは大臣と通信し、委員会から許可が出たことを聞く。大臣がヴァレリアンとローレリーヌに警護を支持すると、フィリットは「必要ありません。私が訓練したKトロン部隊が付いています」と断る。しかし大臣が政府の命令だと告げたため、フィリットは仕方なく受け入れた。ヴァレリアンがチームとして作戦の情報提供を求めると、フィリットは「この後の安全保障理事会で話すことになっている。そこで全て分かるだろう」と冷淡に告げた。
フィリットはヴァレリアンたちと別れた後、パール人を拷問させている部屋へ赴く。彼はパール人が何も話さないことを部下に聞き、あと1時間で口を割らなければ始末しろと命じた。ヴァレリアンとローレリーヌはフィリットと合流し、危険な任務にコンバーターを連れて行くことに対する疑問を呈する。フィリットが「あらゆる物を瞬時に複製する能力を備えている。交渉になった時に、大いに役立つ」と言うと、「Kトロンが一緒で交渉になるとは思えません」とヴァレリアンは告げる。
フィリットがコンバーターを引き取ろうとすると、ヴァレリアンは「この種の最後の生き残りで、宇宙全体が追っています」と拒否してローレリーヌに任せることを要求した。フィリットは不敵な笑みで了承し、ネザ軍曹に通信を入れて理事会へ向かった。ヴァレリアンはローレリーヌを廊下で待機させ、フィリットに同行した。フィリットは異星人の代表たちと会い、作戦を説明した。ローレリーヌは情報屋のドーガン=ダギーたちに見つかり、辟易した様子を見せた。しかしヴァレリアンの指示を受け、ミュールの情報を尋ねた。
ダギーたちはローレリーヌに、ミュールの専門家であるサムク少佐が1年前に不審死を遂げていることを話す。さらに彼らは、傭兵たちがコンバーターを奪いに来ることを教え、その詳細が知りたければ報酬を払うよう持ち掛けた。その直後、警報が鳴り響き、ヴァレリアンはアレックスから十数名のグループが迫っていることを知らされた。ネザは司令室から退避しようとするが、扉は外からロックされていた。会議室にはパール人の一団が突入し、一人も殺さずにヴァレリアンたちを制圧した。
一団がフィリットを連れ去った後、ヴァレリアンはローレリーヌに「将軍を助けて司令室に戻れ」と指示した。ヴァレリアンはパール人の一団を捜索し、司令室でモニターを確認したローレリーヌは「ドッキング・ベイに向かってる」と教える。パール人の一団は宇宙船に乗り込み、ヴァレリアンはイントルーダーで追跡する。パール人の一団は宇宙船を分散させて逃亡するが、ヴァレリアンはフィリットが乗っている一機を確認する。彼はスカイジェットで出撃し、危険区域に近付いていることをローレリーヌから知らされた。
ヴァレリアンはワイヤーを発射するが宇宙船に引っ張られて危険区域に突入し、ローレリーヌはスカイジェットの信号を見失った。彼女ははヴァレリアンの捜索に向かおうとするが、バーは許可しなかった。ローレリーヌが命令に背こうとすると、バーは「君まで失うわけにはいかない」と告げ、部下たちに彼女の拘束を命じた。ローレリーヌは連行役の2人を叩きのめし、ダギーズを脅してヴァレリアンを捜索するための協力を強要した。ダギーズは承諾し、海賊のボブにローレリーヌを紹介した。
ボブは潜水艇にローレリーヌを乗せ、海中を進む。コーテックスクラゲを捕獲した。海獣の群れに襲われたボブは、猛スピードで逃亡した。ダギーズはローレリーヌに、「コーテックスクラゲを被れば、見た物を教えてくれる。でも1分を過ぎるとアンタの記憶を食い始める」と教える。仕方なくローレリーヌはクラゲを被り、謎の文字と数字の配列を目にした。彼女の質問を受けたダギーズは、それが意味する場所を教えた。ローレリーヌと別れたダギーズはバーの元へ行き、有益な情報を売ると持ち掛けた。
ローレリーヌは教わった場所へ行き、気を失って倒れているヴァレリアンを発見した。ローレリーヌが意識を回復させると、ヴァレリアンは立ち上がってフィリットの捜索に向かおうとする。お礼を言わないことに腹を立てたローレリーヌは、また口説こうとするヴァレリアンを冷たくあしらった。バーはパール人が拘束されている部屋へ行き、担当していたフィリットの部下を連行させる。パール人が助けを要求すると、バーは「助けてほしいなら知っていることを全て話せ」と要求する。パール人は「必要な物を押さえているから」と答え、体から青い衝撃波を放った。
ヴァレリアンが故障したスカイジェットを修理していると、ローレリーヌがブーラン・バソールに拉致される。後を追ったヴァレリアンは、バソールがローレリーヌを駕籠に閉じ込めてレストランへ入る様子を確認した。彼に助言を求められたアレックスは、相手に成り済ますためにグラム・ポッドを探すよう勧めた。バーはパール人について調べるがデータベースに情報は無く、ネザは何者かが消去した可能性を指摘した。バーは部下から天国横丁でヴァレリアンの反応があったことを知らされ、全員に協力を通知するよう命じた。
グラム・クラブの前を歩いていたヴァレリアンは客引きのジョリーに声を掛けられ、グラム・ポッドを探していることを話した。ジョリーは彼を店内に案内し、武器を没収して「ショーを楽しんで」と言う。ステージには女性ダンサーのバブルが現れ、パフォーマンスを見せた。感想を問われたヴァレリアンは、「ショーは凄かったけど、俺の探してる物じゃない。君の助けが必要なんだ」と言うと、バブルは変身能力を披露した。ヴァレリアンは隠し持っていた銃でジョリーを始末し、バブルに「相棒捜しを手伝えば自由にしてやる」と持ち掛けた。ジョリーが死んだことを確認したバブルは、協力を承諾した。
バソールのレストランに入ることを知ったバブルは難色を示すが、ヴァレリアンが説き伏せた。彼女はバソールに化け、ヴァレリアンの体を覆う。ローレリーヌはバソールに様々な衣装を提案され、仕方なく1着のドレスを選んだ。ヴァレリアンとバブルは店に潜入し、料理長から料理を運ぶよう命じられた。ヴァレリアンとバブルは給仕の列に並び、皇帝ブーラン三世の元へ赴いた。そこへローレリーヌが来ると、皇帝は彼女の脳を食べようとする…。

監督はリュック・ベッソン、原作はピエール・クリスタン&ジャン=クロード・メジエール、脚本はリュック・ベッソン、製作はヴィルジニー・ベッソン=シラ、製作総指揮はマーク・ギャオ&グレゴリー・ウェノン&JC・チェン]、製作協力はディラン・ハガーティー、撮影はティエリー・アルボガスト、美術はユーグ・ティサンディエ、編集はジュリアン・レイ、視覚効果監修はスコット・ストックダイク、視覚効果プロデューサーはソフィー・A・ルクラーク、衣装はオリヴィエ・ベリオー、音楽はアレクサンドル・デスプラ。
出演はデイン・デハーン、カーラ・デルヴィーニュ、クライヴ・オーウェン、リアーナ、ルトガー・ハウアー、イーサン・ホーク、ハービー・ハンコック、クリス・ウー、サム・スプルエル、アラン・シャバ、ピーター・ハドソン、グザヴィエ・ジャノリ、ルイ・ルテリエ、エリック・ロシャン、ブノワ・ジャコー、オリヴィエ・メガトン、ジェラール・クラヴジック、オーラ・ラパス、シュテファン・コナルスケ、ギャヴィン・ドレア、エリック・ランパール、アイリーン・パルコ、サム・ダグラス、マチュー・カソヴィッツ、アレクサンドル・ウィローム、ジョナ・ブロケ、エチエンヌ・メナール他。
声の出演はエリザベス・デビッキ、ジョン・グッドマン他。


ピエール・クリスタンとジャン=クロード・メジエールのバンド・デシネ『ヴァレリアンとロレリーヌ』シリーズを基にした作品。
監督&脚本は『マラヴィータ』『LUCY/ルーシー』のリュック・ベッソン。
ヴァレリアンをデイン・デハーン、ローレリーヌをカーラ・デルヴィーニュ、フィリットをクライヴ・オーウェン、バブルをリアーナ、大統領をルトガー・ハウアー、ジョリーをイーサン・ホーク、国防長官をハービー・ハンコック、ネザをクリス・ウーが演じている。

冒頭の宇宙ステーションのシーンでは、交代していく隊長役として、フランスの映画監督が出演している。
『偉大なるマルグリット』のグザヴィエ・ジャノリ、『インクレディブル・ハルク』『グランド・イリュージョン』のルイ・ルテリエ、『愛さずにいられない』『哀しみのスパイ』のエリック・ロシャン、『マリー・アントワネットに別れをつげて』『小間使いの日記』のブノワ・ジャコー、『トランスポーター3 アンリミテッド』『96時間/リベンジ』のオリヴィエ・メガトン、『WASABI』『TAXi(4)』のジェラール・クラヴジックという顔触れだ。
他に、ギブソン役で『007 スカイフォール』のオーラ・ラパス、兵士のホーカー役で『憎しみ』『アサシンズ』を監督したマチュー・カソヴィッツ、アルファの司令室にいるネザの同僚役で『エル ELLE』のジョナ・ブロケが出演している。
また、パール人の皇后の声を『コードネーム U.N.C.L.E.』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』のエリザベス・デビッキ、サイラスの声をジョン・グッドマンが担当している。

原作は『スター・ウォーズ』にも影響を与えたと言われており、熱烈なファンであるリュック・ベッソンは長年に渡って映画化を熱望していたそうだ。
かなり気合いが入っていたことは、フランス映画史上で最高額となる1億9700万ユーロの製作費が投じられたことからも良く分かる。しかし興行的には失敗して1憶3500万ドルの損失を出し、ヨーロッパ・コープは株価が大幅に下落してCEOが退任に追い込まれた。
2008年の『ザ・スピリット』を見た時も思ったことだけど、こういうのって「先にやったモン勝ち」みたいなトコがあるのよね。
幾ら「こっちが元祖、こっちが元ネタ」と主張したところで、映画として後発だと、その時点で大きなハンデなのよ。

「リュック・ベッソンの脚本は雑で低品質」ってのが仕様なのは、今さら言うまでも無いだろう。
それが急に変化することなど無いので、もちろん今回も安定のデタラメっぷりだ。
冒頭シーンは特に必要性が高いわけじゃないが、さすがに「いきなりダメっぷりが露呈する」ということは無い。パール人のシーンも、まだ頑張っている。
しかしヴァレリアンたちのシーンに切り替わった途端、早くもダメな匂いが強烈に漂ってくる。

イントルーダーのシーンに切り替わると、ヴァレリアンがローレリーヌを口説こうとする様子が描かれる。そこの会話劇がダラダラと続くことによって、一気にポンコツ度数が上昇する。
こいつらがラフな格好なのも、軽い調子なのも、これまたポンコツ度数を上昇させる要因になっている。
そういう描写は、もちろん狙い通りなんだろうけど、ダメな軽薄さにしか感じない。
リュック・ベッソンが軽妙さを表現しようとした時、それは必ずと言っていいほど失敗に終わる。

数多くの道具が登場するが、どういう機能なのか良く分からないケースも少なくない。
説明不足だったり、説明が下手だったりすることが大きく影響し、秘密道具を使うシーンにワクワク感が無い。
それどころか、「何がどうなっているのかサッパリ分からない」という印象ばかりが目立ち、せっかくアクションシーンが展開されていても、そこに没入できない。もちろん、興奮なんて味わえない。
「そんなことより、まずは理屈を教えてくれよ」と言いたくなる。

説明不足や説明が下手ってのは、道具に限ったことではない。
ヴァレリアンとローレリーヌのキャラ紹介からして、まるで足りていない。「大臣の指示で任務遂行のために動いている」ってのは最初の段階で分かるけど、立ち位置がものすごくフワフワしている。
コンバーターが何をするための道具で、何のために回収するのかも不明だし。
「最初は謎だらけだが、次第に色んなことが明らかになっていく」という構成が意味を持っていればともかく、そうじゃないし。

一応は序盤から「任務を遂行して云々」という手順が始まっているのだが、ずっと「ヴァレリアンがローレリーヌを口説き、ローレリーヌも全く気が無いわけじゃないけど冷たく接する」というユルい恋愛劇が中心に据えられている。
そして、その部分が邪魔でしかないのだ。
この手の作品で、恋愛要素が絶対に不要というわけではない。むしろ、そういう要素を盛り込むケースの方が圧倒的に多いだろう。
ただ、それがメインイベントのようになっているので、それは違うんじゃないかと。

ヴァレリアンとローレリーヌがアルファに行くと、アレックスが「現在のアルファはこんな状態です」ってのを詳しく解説する。
だけど、それを入れるタイミングとしては、明らかに遅すぎる。
そういうのはヴァレリアンたちのパートに入ったら、すぐに入れちゃった方がいい。そこで解説しておかないのなら、もう要らない。
っていうか、どうせアレックスに解説されても、まるで頭に入って来ないんだよね。
それが必要不可欠な情報とは到底思えないし、実際にその通りだし。

コンバーターを回収しなきゃいけない事情は、ヴァレリアンたちがオクト=バーと会った時に説明されるのかと思いきや、そこでも不明のまま。
バーにしろフィリットにしろ、「汚染地域が拡大しているので除去する必要がある」ってことは語るけど、それとコンバーターの関係性については何も教えてくれないのよね。そしてヴァレリアンとローレリーヌにしても、「コンバーターは何に使うのか」と質問することも無いのだ。
だから、こっちは「たぶん除去のために必要なんだろう」と、勝手に推測せざるを得ない。
そりゃあ、推測することは決して難しくないけど、そこで不親切にしておく意味は無いでしょ。そもそも、「なぜコンバーターが必要なのか」なんて、任務が出た時点でさっさと明かしておいた方が、絶対に得策だし。

粗筋では全く言及していないけど、実はミュール・コンバーターって機械じゃなくて、箱に入っている小動物のことだ。
だけど、ここは無駄に分かりにくいし、「実は小動物でした」というサプライズの効果を上手く演出できているわけでもない。それが小動物であることに、何の意味も感じないし。
そこに限らず、この映画は「特に意味を持たない設定」が多く出て来るし、「ホントは重要な意味を持たなきゃいけないのに無効化されている仕掛け」が後を絶たない。
でもリュック・ベッソンが脚本を書いているので、無造作に放り出されてしまう要素が多いのは仕様だと思うしかないのだ。

ローレリーヌからヴァレリアン捜索のための協力を要求されたダギーズは、彼女にボブを紹介する。
ボブが潜水艦を発進させるので、それでヴァレリアンの元へ向かうのかと思ったら、なぜかクラゲを捕獲している。
基地へ戻ってからダギーズが「そのクラゲを被れば見た物が分かる」と説明するけど、だったら潜水艦で発進する前に「こういう目的で海へ出ます」と言っておくべきだわ。そこは明らかに手落ちがあるぞ。
あと、なぜクラゲがヴァレリアンの情報を知っているのか、サッパリ分からないんだよなあ。

バブルのショーを3分ほど見せるシーンがあるが、そこに長い時間を割く意味が全く無い。「リアーナのパフォーマンスをお楽しみあれ」ってことかもしれないけど、ダラダラと時間を浪費しているだけにしか感じない。
ヴァレリアンはグラム・ポッドを探していたはずで、なのにバブルのショーを見てから「君の助けが必要だ」と言い出すのもサッパリ意味が分からない。最初からバブルの変身能力を知っていたのか。
っていうか、それがグラム・ポッドなのか。ホントにワケが分からんのよね。
あと、そこで仲間になったバブルを、「バソールとの戦いで怪我を負って死ぬ」ってことで簡単に退場させてしまうのは、キャラの扱いが雑すぎるわ。

ヴァレリアンがパール人の宇宙船を追ってて消息を絶ち、ローレリーヌが捜索に赴く。ローレリーヌがバソールに拉致され、ヴァレリアンが奪還に向かう。
「そもそも、こいつらの目的って何だったっけ」と首をかしげてしまう。
その時点では「フィリットの奪還」だけど、もっと遡ると「フィリットの捜索」ってのも当初の目的からは外れているんだよね。
つまり、この映画はヴァレリアンとローレリーヌの行動目的が次々に変わっていくのだが、それが行き当たりばったりの適当な展開にしか思えないのだ。

(観賞日:2019年7月3日)

 

*ポンコツ映画愛護協会