『アーバン・カウボーイ』:1980、アメリカ

テキサスの田舎町で育ったバドは、伯父のボブと家族が暮らすヒューストンへとやって来た。ボブは石油会社に勤めており、バドも同じ会社で働くことになった。ボブと妻コリーンは町のカントリー・バー“ギリーズ”の常連で、バドも2人に連れて行ってもらった。
ある時、バドはギリーズでシシーという女性と出会う。意気投合した2人は、すぐに結婚を決めた。新婚生活を始めたバドは、ギリーズのロデオ・マシーンに夢中になった。シシーも興味を持ったが、バドは彼女をマシーンに乗せようとはしなかった。
ギリーズに、仮釈放で刑務所から出たウエスという男が現れ、ロデオ・マシーンを見事に乗りこなした。ウエスはシシーに色目を使い、バドは腹を立てる。後日、バドが仕事をしている時間に、シシーはギリーズに行って、ウエスからロデオ・マシーンの乗り方を教わった。そのことを知ったバドは、シシーに怒りをぶつける。
バドとシシーは険悪な関係になり、シシーは家を出て行った。バドはパムという金持ちの娘と付き合い始め、シシーはウエスとの同棲生活を始めた。バドはロデオ・コンテストでの優勝を目指して特訓を積むが、そんな中、ボブが作業中の事故で死亡する…。
監督はジェームズ・ブリッジス、原案はアーロン・レイサム、脚本はジェームズ・ブリッジス&アーロン・レイサム、製作はロバート・エヴァンス&アーヴィング・エイゾフ、製作総指揮はC・O・エリクソン、撮影はレイ・ヴィラロボス、編集はデヴィッド・ローリンズ、美術はスティーヴン・グライムズ、衣装はグロリア・グレシャム、追加スコアはラルフ・バーンズ、音楽コーディネイターはベッキー・シャーゴ。
主演はジョン・トラヴォルタ、共演はデブラ・ウィンガー、スコット・グレン、マドリン・スミス、バリー・コービン、ブルック・アルダーソン、クーパー・ハッカビー、ジェームズ・ギャモン、ミッキー・ギリー。ジョニー・リー、ボニー・レイット、チャーリー・ダニエルズ、タズ・ディ・グレゴリオ、チャーリー・ヘイワード、ベティ・マーフィー、エド・ゲルバート、リー・ゲルバート他。


実在するカントリー・バー“ギリーズ”が舞台の中心となっている映画。バドをジョン・トラヴォルタ、シシーをデブラ・ウィンガー、ウエスをスコット・グレン、パムをマドリン・スミス、ボブをバリー・コービン、コリーンをブルック・アルダーソンが演じている。また、ギリーズのオーナーであるミッキー・ギリーが、本人役で出演している。
冒頭、ジョン・トラヴォルタがヒゲモジャの顔にカウボーイ・ハットという姿で現れたので、イカしたダンス男のイメージの脱却を狙っているのかと思ったが、すぐにヒゲは剃り落とすし、ギリーズで踊り始めるので、やっぱりイメージは変えたくないようだ。

しかし、どうでもいいが、やたらとダンスのシーンが多いような気がするなあ。何かと言えば、ダンスのシーン。話が煮詰まったらダンス、展開が止まったらダンス、シーンとシーンの間にダンス、とにかく困ったらダンス。ヘタすりゃダンス映画だよな、これって。
でも、実際はダンス映画じゃなくて、ロデオ・マシーンへの熱と恋愛劇がメイン。しかし、ロデオの方は、本物のロデオじゃなくてロデオ・マシーンだし、それをオーソドックスに、マジに描かれて、それを見て熱くなれるかと言うと、それは出来ない相談だ。

しかも、いわゆるスポ根映画のように、バドがロデオ・コンテストに向けて特訓する様子が熱く描かれるわけではない。肝心のロデオ・コンテストも、淡々と描かれるので、ちっとも盛り上がらない。なんか、どうでもいいのかと思えるような扱いだ。
では、恋愛劇はどうかと言うと、こっちも苦しい。何しろ、冴えない痴話ゲンカだからねえ。意固地なバカップルが、そのせいで周囲を振り回して、1人の女を不幸にして、元サヤに収まって自分達だけはハッピーという話。勝手にやってろって感じだ。険悪になったのは、どっちにも非があるのだが、どっちにも同情できない。

バドもシシーも、残念ながら魅力が全く無いのよ。まずバドは、嫉妬心と虚栄心が強すぎ。ウエスと殴り合いになるシーンなんかは、勝手にバドがカッカしてハンバーガーを投げ付けて、しかもケンカを仕掛けるんだから、そりゃ全面的にアンタが悪いよ。
しかし、バドはシシーと別居した後は、かなり好感度を取り戻す。ところが、別居してからのシシーは、かなり酷い。バドに見せ付けるようにウエスと熱烈なキスをした後、これまた見せ付けるようにロデオ・マシーンを乗りこなす。後日、バドが素直に笑顔で手を振っても、シシーはファックのポーズで返す始末。なんちゅう女だ。
後になって殊勝な態度を見せられても、それまでの蓄積されたイヤな女のイメージを覆すには至らない。ウエスに暴力を振るわせることで、シシーに同情票を集めようとしてるいるのかもしれないが、それだけでは、ちょっと無理でしょうな。なんかね、バドはパムと一緒になった方が、絶対に幸せになれるはずだと思ってしまう。

そんなわけで、中身は気にせずに、使用されるカントリー音楽だけを楽しむべきだろう。映画の出来映えはともかくとして、この作品のおかげで、アメリカで一時的にカントリー・ブームが巻き起ったことは間違い無いのだ。ジョニー・リー、ボニー・レイット、チャーリー・ダニエルズ・バンドは、劇中で演奏シーンもある。
それを楽しむべし。

 

*ポンコツ映画愛護協会