『アンダーワールド 覚醒』:2012、アメリカ

ヴァンパイアとライカンの存在を知った人間は、粛清に乗り出した。ジェイコブ・レーン博士は検疫所で感染検査を行い、感染者」と されたヴァンパイアとライカンは軍隊によって始末された。一掃作戦から逃れるため、セリーンはマイケルと共に街を出ようとする。だが、船に乗ろうとした2人は、港で待ち受けていた兵士たちの一斉攻撃を受けた。海中に沈んだセリーンとマイケルは、意識を失った。
冷凍ポッドの中で意識を取り戻したセリーンの脳内に、「被験者2」と呼ばれる存在の視界が飛び込んで来た。被験者2は脱走してポッドの解凍スイッチを押し、その部屋から走り去った。銃を持った警備員たちが追い掛ける中、被験者2は施設から逃亡した。セリーンが冷凍ポッドから出たことを知ったレーンは、部下のアランたちに「元に戻して眠らせろ」と命じた。アランたちは無力化ガスを部屋に噴射するが、セリーンは外へ脱出した。
セリーンは建物の窓から飛び降り、トラックの荷台に乗って逃亡した。振り向いた彼女は、収容されていた場所がアンティジェン社の施設だと知った。レーンはセリーンの逃亡を知りながらも、被験者2と接触させるために泳がせるよう部下たちに命じた。セリーンが埠頭へ行くと、そこはフェンスで封鎖されていた。セリーンの正体を知らない警備員が近付き、埠頭が立ち入り禁止区域になっていることを彼女に告げる。セリーンは警備員と話し、自分が捕まってから12年が経過していることを知った。
セリーンの脳内に、突如としてガード下の映像が飛び込んできた。気になった彼女は、その現場へ行ってみることにした。ガード下ではズタズタに切り裂かれた死体が発見され、刑事のセバスチャンと新人のコルブが現場検証に来ていた。コルブは「明らかにライカンの仕業です。CDC(疫病対策センター)に連絡しましょう」と言うが、セバスチャンは簡単に決め付けずに調べるよう諭した。そんな様子を、離れた場所からセリーンが眺めていた。そして、そんなセリーンを、1人の男が密かに観察していた。
セバスチャンは本部からの無線で、「アンティジェン社の窓から誰かが飛び降りたという目撃証言が入った。そっちを優先してくれ」と指示される。セバスチャンがアンティジェン社へ赴くと、応対したレーンは「被験者が脱走を試みたが、既に処分した。事態は解決した」と告げる。不審を抱くセバスチャンに、レーンは「アンティジェン社の目的は感染予防であって、蔓延ではない。私は息子を失っている。公衆の安全を脅かすことは無い」と語る。車に戻ったセバスチャンは、本部が送信してきた写真をコルブから見せられる。それは窓からセリーンが飛び降りる瞬間を撮影した写真だった。そこでセバスチャンは、調査を開始することにした。
セリーンはアンティジェン社の研究員が帰宅するのを待ち受け、脅しを掛けた。科学者は被験者2の正体がマイケルであること、セリーンとマイケルのDNAを使って治療法を開発していたことを話す。さらに科学者は、「君らは関連性がある。近くにいると脳波は同調し、視界を共有できる」と述べた。セリーンが用済みの科学者をビルの窓から突き落とした直後、また脳内に映像が飛び込んできた。その現場へ向かうセリーンを、ガードしたにもいた男が張り込んでいた。
セリーンは尾行しているデヴィッドという男に気付き、待ち伏せて拳銃を構えた。するとデヴィッドは、「我々は同類だ。ガード下の死体、犯人は誰だと思う?」と口にする。その時、2人は近くを歩いている3頭のライカンを目撃した。デヴィッドは「粛清以来、ライカンは地下に潜んでいて滅多に地上へ出ることは無い。何かが奴らを刺激した」と話す。直後、セリーンの脳内に、誰かがライカンに襲われそうになっている映像が飛び込んで来た。セリーンはマイケルだと感じ、現場へ向かう。銃を向けてライカンを追い払ったセリーンが見たのは、小さくなって震えている一人の少女、イヴだった。
セリーンとデヴィッドはイヴをバンに乗せ、その場から逃げることにした。すぐに3頭のライカンが追って来て、バンに飛び付いた。イヴはライカンに噛まれるが、変貌して真っ二つに引き裂いた。セリーンとデヴィッドは、残り2頭を始末した。イヴは自分が被験者2であることをセリーンに話し、「私を知らないの?」と問い掛ける。イヴと会話を交わしたセリーンは、彼女が自分の娘だと知った。父親の視界が見えるのかと尋ねたセリーンに、イヴは「見えない」と答えた。
アンティジェン社でイヴの面倒を見て来た科学者のリダは、レーンに「ラボしか知らない彼女は、外では生きられません」と通報するよう訴えた。しかしレーンは冷淡な口調で、「自分の仕事に集中しろ。君があの怪物を人間扱いしたことが、警備の怠慢を招いた」と述べた。イヴの噛まれた傷が治癒しないため、デヴィッドは地下にあるヴァンパイア族のアジトへ連れて行く。そこに暮らす一族を治めているトーマスは、デヴィッドの父だった。
トーマスはヴァンパイア族を裏切ったセリーンに敵意を示し、彼女を連れて来たデヴィッドを責めた。デヴィッドは「裏切ったのは我々の方だ」と言い、医師のオリヴィアにイヴの手当てを依頼した。オリヴィアはイヴに質問し、彼女が一度も血を飲んだことが無いと知った。オリヴィアが自分の血を与えると、すぐにイヴの傷口は回復へと向かう。イヴの目を見たトーマスは、彼女が混血種だと気付いた。「彼女は何者だ?」と尋ねるトーマスに、セリーンは「言う必要は無い。傷が治ったら出て行く」と告げた。
デヴィッドはセリーンが処刑人だと知った上で、アジトへ案内していた。彼はセリーンに、「戦い方を教えてほしい」と持ち掛け、人間と戦うべきだと考えていることを話す。しかしトーマスは、「かつて若いライカンが長老に反対し、人間と戦うことが決まった。しかし今やライカンは絶滅の危機に瀕している。お前は絶滅を望むのか」と厳しく批判する。イヴが敵の襲来を感知すると、トーマスはシェルターに一族を避難させようとする。しかしデヴィッドは仲間たちに対し、武器を取って戦うよう訴えた。
トーマスはデヴィッドの考えに真っ向から反対し、セリーンに「お前が人間を連れて来た」と怒りを向ける。セリーンはデヴィッドに、「娘を連れて逃げるわ。ここを出るまで敵を食い止めて」と頼んだ。アジトに乗り込んで来たのは人間ではなく、ライカンの群れだった。デヴィッドと彼に賛同した仲間たちは、銀弾を使ってライカンと戦う。イヴはライカンに襲われ、変身して戦う。セリーンはイヴを襲ったライカンを始末し、外へ出ようとする。デヴィッドがライカンに噛まれていたので、セリーンは彼を助けた。
唸り声を耳にしたセリーンは、デヴィッドにイヴを預けて広間へ向かう。するとセリーンの前には、通常の倍ほどもある巨大なライカンが出現した。セリーンは銀の武器で戦うが全く効果は無く、外へ弾き飛ばされてしまう。セリーンがアジトに戻ると、ライカンは姿を消していた。トーマスがイヴを引き渡したため、ライカンは去ったのだ。セリーンに責められたトーマスは、「お前のせいで一族は滅び、息子は死んだ」と声を荒らげた。
セリーンは「デヴィッドは逃げても無駄だと分かっていた。ライカンは絶滅どころか、前より強くなってる。娘はコルヴィナスの最後の直系の子で、生存する唯一の混血種よ」と語り、トーマスの行為を糾弾した。彼女はデヴィッドの腹を切り、手を突っ込んだ。デヴィッドを蘇らせたセリーンは、アジトを後にした。彼女はセバスチャンの前に現れ、拳銃を向けながら「ある一族がライカンを滅ぼした」と語る。セバスチャンが全く動じないので、セリーンは彼がライカンの生存を知っていたことを察知した。
セバスチャンは場所を移動し、セリーンに「2年前、政府はライカンの絶滅を宣言し、ヴァンパイアに集中すると発表した。しかし今から3ヶ月前、首吊り死体で見つかった俺の友人から、これが届いた」と話して資料を見せた。その資料は、ライカンの疑いがあるとされた200名が検査で陰性とされたことを示していた。セバスチャンは「誰かがライカンを守り、復活のための時間を稼いだ」と話し、警察の仕業ではないことを口にする。資料を確認したセリーンは、アンティジェン社の陰謀であることを確信した。
レーンは仲間たちを集め、ワクチン接種の準備が準中に進んでいることを話す。そこへリダが現れ、レーンがイヴを生体解剖に使おうとしていることに抗議した。レーンは「個体の世話に雇っただけだ。おかげで皆が助かる」と言い、息子のクイントを呼んだ。クイントは怪力を使い、リダを簡単に殺害した。レーンはライカンの一族であり、クイントは銀に対する免疫を付ける臨床試験の第一号だった。予防措置の追加摂取によって、ジェイコブは体力や筋肉量が大幅に増強された。レーンはワクチンを無限に作って全てのライカン族に銀の免疫を付けさせるために、イヴを利用しようと目論んでいたのだ…。

監督はモーリンド&スタイン、キャラクター創作はケヴィン・グレイヴォー&レン・ワイズマン&ダニー・マクブライド、原案はレン・ワイズマン&ジョン・ラヴィン、脚本はレン・ワイズマン&ジョン・ラヴィン&J・マイケル・ストラジンスキー&アリソン・バーネット、製作はトム・ローゼンバーグ&ゲイリー・ルチェッシ&レン・ワイズマン&リチャード・ライト、製作総指揮はデヴィッド・カーン&ジェームズ・マクウェイド&デヴィッド・コートスワース&エリック・リード&スキップ・ウィリアムソン&ヘンリー・ウィンタースターン、撮影はスコット・キーヴァン、編集はジェフ・マカヴォイ、美術はクロード・パレ、衣装はモニク・プリュドム、音楽はポール・ハスリンジャー。
主演はケイト・ベッキンセイル、共演はスティーヴン・レイ、マイケル・イーリー、チャールズ・ダンス、テオ・ジェームズ、インディア・アイズリー、サンドリーヌ・ホルト、アダム・グレイドン・リード、クリス・ホールデン=リード、ケイトリン・アダムズ、ジェイコブ・ブレア、ロバート・ローレンセン、リー・マジドーブ、ジョン・イネス、タイラー・マクレンドン、パノウ、イアン・ロジーロ、ベニータ・ハー、クリスチャン・テシエ、カート・マックス・ランテ他。


シリーズ第4作。
監督は『シェルター』のモンス・モーリンド&ビョルン・スタイン。
セリーンをケイト・ベッキンセイル、レーンをスティーヴン・レイ、セバスチャンをマイケル・イーリー、トーマスをチャールズ・ダンス、デヴィッドをテオ・ジェームズ、イヴをインディア・アイズリー、リダをサンドリーヌ・ホルト、アランをアダム・グレイドン・リード、クイントをクリス・ホールデン=リード、オリヴィアをケイトリン・アダムズが演じている。
ちなみにインディア・アイズリーは、オリヴィア・ハッセーと3番目の夫であるデヴィッド・アレン・アイズリーの娘である。

プリクエルだった前作に出演しなかったセリーン役のケイト・ベッキンセイルは復帰したが、それ以外は全て新しい顔触れとなっている。
まあミラ・ジョヴォヴィッチありきの『バイオハザード』シリーズと同様で、極端に言ってしまえばケイト・ベッキンセイルがいれば成立するシリーズではあるのよ。
だけど、やはり彼女しかレギュラー出演者が存在しないってのは寂しい。
レギュラーのキャラクターは大半が前作までに死んじゃった設定なので仕方のない部分はあるんだが、マイケルも全く絡んで来ないしなあ(序盤にチラッと写るが、スコット・スピードマンではなく無名の代役)。

そもそも本作品と『バイオハザード』シリーズとの類似性は多くの人が感じていたことだろうと思うけど、それにしても今回は自分から『バイオハザード』に寄せて来たなあ、という印象を受ける。
ヴァンパイアとライカンが「感染者」ということになっちゃうし。
「全裸のヒロインが謎の施設で目覚める」という導入部のシーンからして、何となく『バイオハザードIII』に似ているし。
むしろ、あのシリーズからは遠ざかるべきだろうに。『バイオハザード』の亜流みたいな扱いにされても構わないのかよ。

冒頭、軍隊によってヴァンパイア族とライカン族が一気に片付けられていったことがナレーション・ベースで説明される。
そうなると、「これまで長きに渡って続いていたヴァンパイア族とライカン族による戦いは何だったのか」という気持ちになってしまう。
しかも、人間が動き出したら、簡単に絶滅寸前にまで追いやられてしまうんだよな。
そりゃあ弱点が暴露されてるから仕方が無いっちゃあ仕方が無いんだけど、「ヴァンパイア族とライカン族が人間より遥かに弱い」という位置付けになっちゃうのは、どうにも情けないわ。

公開当時の惹句が「新たな敵は、<人類>。」だった。
ってことは、今回はヴァンパイア族とライカン族に人間も絡んできて「三つ巴の戦い」という図式になるのかと思いきや、そうではない。
アンティジェン社はライカンの隠れ蓑であり、レーンと仲間たちは全て人間ではなくライカンなのだ。
だから、今までの「ヴァンパイア族vsライカン族」という図式と何も変わらない。セバスチャンは人間だけどセリーンの協力者だから、三つ巴の戦いには発展しないし。

あと、やっぱりヴァンパイア族とライカン族のいずれにも長老クラスのキャラクターがいないってのは、かなりのマイナスじゃないかなあ。
第2作までに長老キャラクターが全滅してしまい、巨大な組織や強大な敵に立ち向かう構造が成立しなくなったことで、話のスケールが小さくなってしまったという印象を受ける。
この映画で描写される戦いって、所詮は「小さなグループと小さなグループの戦い」でしかないんだよな。
それを考えると、「人間の仕掛けた一掃作戦で、ヴァンパイア族とライカン族の両方が絶滅寸前に追いやられている」という、共に組織としての弱体化が激しい状況にしていることも、失敗だったんじゃないかと。

このシリーズは1作目から、「モンスター同士の戦いなのに、どちらも人間の格好で銃撃戦を展開するので、ヴァンパイア族とライカン族である意味が薄い」という問題点があった。
2作目ではライカン側が変身する描写を多く用意していたが、ヴァンパイア族は相変わらずという状態だった。
この4作目でも、ライカン側は狼男の姿で襲って来るが、ヴァンパイア族は銃や剣で戦うので、「強い人間たちと怪物の戦い」という絵になっている。
ライカン側も、人間の姿から狼男に変身するわけじゃなくて、登場した時点で狼男というパターンが大半なんだよね。だから「変身」の魅力を見せてくれるのは、イヴぐらいなのだ。

キャラクターの相関関係も、そこで繰り広げられるべき人間ドラマも、どうしようもなく薄っぺらい。
デヴィッドはセリーンを処刑人として受け入れ、戦いを教えてもらおうとするが、そこの絆が深まる前に死亡する。
デヴィッドとトーマスは反目しているが、それが和解に向かうドラマも描かれない。
セリーンとトーマスの対立が和解や協力に至るドラマも描かれない。
セリーンがイヴに対する愛や母性に目覚めるドラマも描かれない。

セリーンとセバスチャンは、駐車場でセリーンがライカンの攻撃について語るシーンが初対面だ。
それまでに、セバスチャンがセリーンを捜索したり調べたりする展開も用意されていない。やり方次第では、セリーンをセバスチャンと 絡ませずに話を進めることさえ可能だ。
セバスチャンは、その程度のキャラに過ぎない。
リダは「イヴの面倒を見ていた」というのがセリフで語られるだけで、イヴと仲良くしていたことがドラマとして描かれるわけではない。
イヴのリダに対する思いも、全く描かれない。

レーンが息子を失ったことは、前半にセリフで軽く触れられているだけで、クイントはリダを殺すシーンで初登場する。
だから「死んだはずだが、実は生きていた」ということで登場しても、そこにインパクトは無い。
上映時間は88分であり、長編映画としては短い部類に入るのだが、「時間が足りなくて人間ドラマを厚くすることが出来なかった」というのは言い訳にならない。尺を決めるのは監督の裁量だからだ。
ほぼ間違いなく、シナリオの段階で薄かったのだろうと思われる。

「アクション映画だから、人間ドラマが薄くても別に構わないんじゃないか」と思うかもしれないが、ここまで薄いとアクション部分にも大きな影響が出てしまう。
面白いアクション映画というのは、アクション・シーンだけをカッコ良く撮れば出来上がるものではないのだ。
アクションをやるキャラクターの厚みや人間ドラマがある程度は付随していないと、それは良く出来たPVやCMでしかないのだ。それは決して、高揚感に満ちた「映画」ではない。
それを勘違いしているアクション映画の、なんと多いことか。

セリーンがイヴを助け出すためにアンティジェン社へ乗り込むクライマックスの展開にしても、「そんなに彼女の中でイヴに対する愛や母性が芽生えてたっけ?」というところに疑問が残るので、高揚感に乏しい。
しかも冷凍ポッドのマイケルを見ちゃうと、イヴを救出する目的を完全に忘れてしまうし。
いや、そりゃあマイケルを見つけて気になるのは分かるんだけど、それは「セリーンがイヴの存在を軽視している」ということになってしまうので、シナリオとしてマズいだろ。

(観賞日:2014年7月3日)

 

*ポンコツ映画愛護協会