『アンダーワールド:エボリューション』:2006、アメリカ

8世紀前、支配者階級であるヴァンパイアと反逆するライカンの間で抗争が勃発した。伝説によれば、人類初の不死者アレクサンデル・ コルヴィナスの2人の息子が争いを始めたという。兄のマーカスはヴァンパイア族の首領となり、弟ウィリアムは最強のライカンとなった。 西暦1202年、領主ヴィクターの土地で、ウィリアムが村を襲撃した。ヴィクターは女族長アメリアを含む討伐部隊を率いて、人々が惨殺 された村へ赴いた。部隊の中には、マーカスの姿もあった。
マーカスは「弟を傷付けないでくれ」と頼むが、ヴィクターは「奴を止めねばならん」と鋭く言い放つ。ウィリアムに噛まれた村人が次々 にライカンへと変身して暴れ始め、討伐部隊は戦闘に入った。討伐部隊はウィリアムを発見し、ボウガンによる攻撃で捕獲した。マーカス は「なぜ傷付けた」と批判するが、ヴィクターは「身の程を知れ、獣への同情など愚かなことだ」と告げる。ヴィクターは、マーカスの 知らない場所で、ウィリアムを監禁状態にすることを決定した。
そして現在。ライカン族の長ルシアンはヴィクターやヴァンパイアとライカンの混血種マイケル・コーヴィンと戦い、命を落とした。 ヴァンパイア族の処刑人セリーンは、自分の家族を殺した犯人がヴィクターだと知り、彼を殺して復讐を遂げた。追われる身となった彼女 にとって、唯一の望みは、最後の長老マーカスを休眠状態から復活させて真実を伝えることだった。休眠状態のままでは、リーダーの クレイヴンに始末されるからだ。
セリーンはマイケルを研究施設に残し、一人で屋敷へ戻ろうと決めた。その頃、屋敷ではクレイヴンがマーカスを始末しようと企んでいた。 だが、一足早く、マーカスはライカンとの混血種として蘇っていた。マーカスはクレイヴンと手下を襲撃し、全滅させた。埠頭の船にいる ロレンゾ・マカロという男は、部下のサミュエルたちに命じてヴィクターたちの死体を回収していた。ロレンゾはヴィクターの死体を解剖 し、胸に埋め込まれていた謎の器を取り出した。
マイケルはセリーンから「ここで血を補給して。人間の食べ物は受け付けない」と忠告されたにも関わらず、酒場へ出掛けて食べ物を注文 した。普通に食べ始めたマイケルだが、急に気分が悪くなって苦しみ始めた。その時、テレビのニュースで、マイケルの指名手配について 報じられた。店にいた警官は、マイケルに銃を向けた。マイケルは変貌し、店から逃走した。警察無線を聞いてマイケルのことを知った ロレンゾは、現場にサミュエルを向かわせた。
マイケルは警官隊の銃弾を浴びて負傷しながらも、森に逃げ込んだ。そこへセリーンが駆け付け、警官たちを倒した。彼女は「飲まなきゃ 死ぬ」と言い、自分の血をマイケルに与えた。そこへマーカスが現れ、「隠していることを吐け」と告げてセリーンに襲い掛かった。 セリーンとマイケルはトラックを奪い、猛スピードで走らせた。追って来たマーカスは、マイケルが下げていたヴィクターの首飾りを 奪おうとした。マイケルは荷台からマーカスを振り落とした。
太陽が昇り始めたため、セリーンは急いでトラックを日陰に突っ込ませた。マイケルは弱ったセリーンを労わり、2人は肌を重ねた。 首飾りを手にしたセリーンは、それを幼い頃に見たことがあると思い出した。その時、首飾りは開いていた。詳しいことを知るため、彼女 はマイケルを連れて、ヴァンパイア族の年代記編者タニスの元へ向かうことにした。タニスはヴィクターの行為を歴史書に記したため、 300年前に虚偽記述の罪で追放処分となっていた。彼を追放した際の責任者がセリーンだった。
セリーンはマイケルと共に、修道院を改造した監獄へ赴いた。タニスはライカンを差し向けるが、セリーンとマイケルが蹴散らした。 タニスの護衛にライカンが付いていたのは、ルシアンと取引したためだ。タニスはルシアンに紫外線弾を渡して、仲間殺しの片棒を担いで いたのだ。タニスは「ヴァンパイア族の始祖はヴィクターではなくマーカスだ」と告げた。
タニスは「ヴィクターは元々、この土地の君主だった。老いが迫った頃、マーカスから永遠の命を与えると持ち掛けられ、見返りに軍隊を 差し出した。マーカスの双子の弟ウィリアムが暴れるのを阻止するためだ。そしてヴィクターはウィリアムを監禁した。牢獄を作ったのが セリーンの父親だ」と語る。ヴィクターはウィリアムの居場所を知るセリーンの家族を、口封じのために惨殺したのだ。しかしセリーン だけは自分が処刑した娘に似ていたため、殺すことが出来なかった。
セリーンは、父親から牢獄の鍵として首飾りを渡されたことを思い出した。マーカスがセリーンを追って来たのは、牢獄の場所を知る唯一 の生き残りだからだ。今頃になってマーカスがウィリアムを助け出そうとする理由について、タニスは何も分からないという。しかし彼は、 マーカスの計画を阻止できる男を紹介してやろうと言う。それが埠頭にいるロレンゾ・マカロだった。
セリーンとマイケルが監獄を去った後、マーカスがタニスの前に現れた。マーカスは「ヴィクターの鍵は2つある。一つは娘の首飾り。 もう一つは?」とタニスに尋ねた。知らないフリをしたタニスだが、威嚇されて「ヴィクターが体に埋め込んで持ってます」と答えた。 マーカスはタニスに噛み付いて血を吸い、セリーンたちがマカロの元へ向かったことを知った。
マカロと会ったセリーンは、彼がコルヴィナスだと気付いた。ずっと隠れて生き続けていたのだ。コルヴィナスは「息子を殺す手伝いを しろと言うのか」と述べ、セリーンへの協力を拒否した。そこにマーカスが襲来し、マイケルに瀕死の重傷を負わせて首飾りを奪う。 セリーンは血を与え、何とかマイケルを助けようとする。その間にマーカスはコルヴィナスを刺し、もう一つの鍵を奪って牢獄へ向かった。 コルヴィナスは自分の血をセリーンに与え、マーカスを追わせた…。

監督はレン・ワイズマン、キャラクター創作はケヴィン・グレイヴォー&レン・ワイズマン&ダニー・マクブライド、原案はレン・ ワイズマン&ダニー・マクブライド、脚本はダニー・マクブライド、製作はデヴィッド・コートスワース&ゲイリー・ルチェッシ&トム・ ローゼンバーグ&リチャード・ライト、共同製作はケヴィン・グレイヴォー、製作総指揮はダニー・マクブライド&テリー・A・マッケイ &ジェームズ・マクウェイド&スキップ・ウィリアムソン&ヘンリー・ウィンタースタイン&レン・ワイズマン、撮影はサイモン・ダガン、 編集はニコラス・デ・トス、美術はパトリック・タトポロス、衣装はウェンディー・パートリッジ、音楽はマルコ・ベルトラミ。
出演はケイト・ベッキンセイル、スコット・スピードマン、トニー・カラン、サー・デレク・ジャコビ、ビル・ナイ、スティーヴン・ マッキントッシュ、シェーン・ブローリー、ブライアン・スティール、ジータ・ゴロッグ、ジョン・マン、マイケル・シーン、ソフィア・ マイルズ、リッチ・セトロン、マイク・ムカティス、クリスティン・ダニエル、カジャ・ジェスダル他。


2003年の映画『アンダーワールド』の続編。
ビデオタイトルは『アンダーワールド2 エボリューション』。
セリーン役のケイト・ベッキンセイル、マイケル役のスコット・スピードマン、ヴィクター役のビル・ナイ、クレイヴン役のシェーン・ ブローリー、アメリア役のジータ・ゴロッグ、クレイヴンの腹心ソーン役のジョン・マン、ライカン族の長ルシアン役のマイケル・シーン、 ヴァンパイア族の女エリカ役のソフィア・マイルズ、ライカン族のピアース役のリッチ・セトロン、ライカン族のテイラー役のマイク・ ムカティスは、前作からの続投。
マーカスをトニー・カラン、コルヴィナスをサー・デレク・ジャコビ、タニスをスティーヴン・マッキントッシュ、ウィリアムを ブライアン・スティールが演じている。

元々、1作目と本作品は、1本の作品として作られる予定だった。だが、アイデアがプラスされて尺が長くなったため、内容を分割して 1作目を仕上げた。それがヒットしたことで、残りの部分も続編として描くことが出来るようになったという次第だ。
つまり、1作目のヒットを受けて後から物語を考えたわけじゃなくて、続編企画が決まっの段階で大まかな内容は出来上がっていたって ことだ。
なお、前作を見ていること、内容を覚えていないのなら復習しておくことが、本作品を見る際の必須条件と言ってもいい。
そうでなければ、何が何やら良く分からないまま話が進んでいき、置いてけぼりを食らうこと請け合いだ。

前作では、ヴァンパイアとライカンというモンスター同士の戦いなのに、どちらも人間の格好で銃撃戦を展開するので、単なるギャング 同士の抗争にしか見えないという問題があった。
今回、その欠点を解消しようという意識が、少しは働いたようだ。
マーカスは登場した段階で既にモンスターの姿をしているし、マイケルもモンスターに変身して戦っている。この2人による怪物バトルも 繰り広げられる。
ただ、マーカスはタニスの前に現れた時、人間の姿になっている。
せっかくモンスターの姿で登場し、それまではずっとモンスターのままだったんだから、そこで急に人間タイプに戻らなくてもいいのに。

コルヴィナスは「謎の男」として勿体付けたまま後半に入り、「実はコルヴィナスだった」ということが明らかにされたのに、それが 明らかにされた直後に、マーカスによって簡単に殺される。
しかもナイフで刺されて死ぬ。
アンタ、不死者じゃねえのかよ。
死ぬにしても、せめて「自ら望んで人生に幕引きをする」という形か、あるいは特殊な武器や道具によって殺されろよ。
まるで戦うことも無い内にナイフで刺されて死ぬなんて、それじゃあ最初の不死者としての特殊性ゼロだろ。
普通のオッサンじゃねえか。

今回、マイケルの存在意義が薄い。セリーンとマイケルの恋愛関係が、ストーリー展開において何の意味も持っていない。
セリーンが許されぬ恋に苦しむことも無ければ、愛する人が暴走することへの不安も無い(もうマイケルは暴走しなくなって いる)。セリーンがマイケルを守るために戦うわけでもないし、マイケルのせいで追われているわけでもない。
マイケルって、都合のいい時だけ助っ人をしてくれる、ただの道連れになっている。
セックスシーンを入れたからって、存在意義が生まれるわけじゃないよ。

ライカンと混血種はモンスターに変身して「人間ではない存在」としての意味を持たせているけど、ヴァンパイア族は相変わらずだ。
っていうかヴァンパイア族って、クレイヴン一味はすぐ殺されるから、ほとんどセリーンしか出てこないんだけどね。
そのセリーンは前作と同様、ヴァンパイアという設定の意味が乏しい。
一応、「太陽が昇って危機に陥る」というシーンはあるけど、それぐらいだよな。
それ以外は、例えば「すげえタフな人間の殺し屋」という設定でも、大して内容は変わらない。

コルヴィナスは「コリーンを助ける」という目的で、彼女に自分の血を飲ませる。
でも、それで何がどうなったのか、牢獄での戦いでは全く見えてこない。コルヴィナスの血が混じったことで強くなったのかどうか、 分からない。
っていうか、ラスト、セリーンは太陽の光を浴びても大丈夫な体になっているので、それがコルヴィナスの血を飲んだことによる効果で、 戦力アップの効果は無いのかな。ひょっとすると、セリーンは自分の力だけで、純血より遥かに強いはずの混血種であるマーカスを簡単に 退治したのかな。
だったら混血種の意味が無いよな。
まあ前作でもそうだったんだけどさ。

(観賞日:2010年2月10日)

 

*ポンコツ映画愛護協会