『おじさんに気をつけろ!』:1989、アメリカ
ラッセル家の長女である15歳のティアは、弟のマイルスや妹のメイジーの些細な言動に腹を立てる。以前に住んでいたインディアナポリスが好きだった彼女は、シカゴでの暮らしに不満を抱いている。転居を決めた両親にも、彼女は強く反発していた。ティアは両親の外出中にマイルスとメイジーの子守を強いられ、愚痴をこぼす。夜、母のシンディーや父のボブと食事をする時も、彼女は嫌味を口にした。同じ頃、ボブの弟のバックは、恋人のシャニースとカフェて外食していた。彼はシュニースが経営するタイヤ店で働いているが、決して前向きではなく、頻繁にサボっている。シュニースは結婚を望んでいるが、バックは「俺は自由でいたいんだ」と否定的だ。「誰も傷付けてないだろ。何が問題なんだ?」とバックが言うと、シュニースは呆れた様子で説得を諦めた。
深夜、ボブは電話を受け、シンディーの父が心臓発作で倒れたことを知る。ボブはシンディーの実家へ向かうに当たり、向かいのマーシーに子供たちを預けようと考える。しかしシンディーが「あの人にだけは頼みたくない」と嫌がるので、ボブはバックに頼もうかと提案した。シンディーは「彼には頼みたくない。結婚もしてない、子供もいない、仕事もしてないのよ」と反対するが、ボブは「変わり者だけど責任感はある。何より家族だ」と語った。
ボブはシンディーに「心配の種が増えるだけよ。それに、この家でギャンブルでもされたら」と言われ、彼は近所のネヴィルに連絡を取る。だが、ネヴィルがフロリダに出掛けていたため、シンディーはボブを呼ぶことを仕方なく承諾した。電話を受けたボブは、すぐに荷物をまとめた。彼はシュニースに連絡して、仕事に行けなくなったことを告げる。シュニースは理由を聞こうとせず、冷たく電話を切った。バックは間違って別の家をノックし、大声でボブを呼んだ。気付いたボブが慌てて彼を呼び寄せ、起きてしまった近所の住人に謝罪した。シンディーは不安を感じながらもバックに小切手帳を渡し、ボブと共に出発した。
翌朝、バックはラジオから流れる音楽に合わせてノリノリで歌いながら、朝食を用意する。ティアは無言で彼を睨み付け、勝手にコーヒーを飲んだ。バックは見た目の悪い朝食を出すが、ティアは食べなかった。バックは大量の排気ガスを吐くボロ車で子供たちを学校まで送り届け、すっかり注目を浴びたティアは「帰りは友達の車に乗せてもらう」と告げる。バックは「来なかったら明日はパジャマのまま教室まで付いて行く」と脅し、ティアは余計に腹を立てた。
バックはシュニースと電話で話し、「店に来ないと他の人を雇う」と言われる。「1週間、考えさせてくれ。いい人がいたら雇ってくれていい」とバックは告げ、シュニースが怒って電話を切っても全く気にしなかった。彼はテレビを見たり転寝したりして、ノンビリと時間を過ごした。夕方、バックがティアを迎えに行くと、彼女は恋人のバグとキスをしていた。バックはティアを車に乗せると、バグに「また人前でティアにキスしたら生贄の儀式にするぞ」と笑いながら脅しを掛けた。ティアが激怒すると、彼は「あの男は本気でお前を好きじゃない」と述べた。「なんで分かるの?」と訊かれた彼は、「俺も同じ年の頃、君みたいな子を追い掛けてた」と答えた。
バックはマイルスに夕食後の食器洗いを任せ、メイジーから一緒に寝てほしいと頼まれて何とか諦めさせようとする。電話が鳴ったのに誰も出ないので、マイルスは食器洗いを中断して受話器を取った。掛けて来たのはシンディーで、マイルスは「バックおじさんに言われて、お小遣いを稼いでる。働くと大人になれるって言うから、お皿を洗ってる」と話す。子機で会話を聞いていたティアは、バックの問題点を列挙してシンディーに知らせた。マイルスに呼ばれて電話を替わったバックは、何も問題が無いと告げる。しかしシンディーは彼が1日に何度も犬に餌をやったこと、トイレの洗浄水を与えたことを知り、ショックを受けた。バックはメイジーの説得に失敗し、彼女とマイルスと同じベッドで就寝した。
翌朝、洗濯機の使い方が分からずにバックが暴れていると、マーシーが訪ねて来た。マーシーはバックからラッセル家の事情を聞き、父が発作で倒れた時は3週間も付き添ったことを教えた。夜、バックは子供たちを連れてボーリング場へ出掛けようとするが、ティアは同行を拒否する。バックは脅しを掛けて、彼女を黙らせた。ティアがゲームに参加せず退屈そうにしていると、パルという男が近付いた。パルがティアを口説いているのに気付いたバックは、彼を追い払った。直後に友人のログが来たので、バックはティアに紹介した。「仕事の話がある」と言われたバックは、場所を移動する。ログに「ジミーから電話があった。金曜の競馬に来る。八百長で稼げるから借りは返すって。出走時刻の1時間前に来れば勝ち馬を教えるってさ」と聞いたバックは少し考えるが、「何とか行くよ」と答えた。
翌日はマイルスの誕生日で、バックは朝から巨大ホットケーキを作った。事前にシンディーが雇っておいた道化師のポッターが遅刻して訪問するが、泥酔しているのを知ったバックは帰らせた。夜、ティアは仲間たちと夜遊びに出掛け、バグからセックスに誘われて「今は嫌なの」と拒んだ。しかし「家まで送って行くよ」と言われると「まだ帰りたくない」と告げ、セックスをOKした。バックはマイルスとメイジーを車に乗せ、ティアの元へ向かった。彼は「手斧が車に積んである。いつ必要になるか分からないからね」などとバグを脅し、ティアを連れ帰った。
次の日、バックはメイジーの学校へ行き、シンディーの代理として副校長のホーガスと会った。ホーガスはメイジーを「悪い卵」と評し、「まるで勉強せず、夢ばかり見ている。無邪気なだけで、小学生としての在り方を真面目に考えていない」と告げる。バックは「無邪気さの無い6歳なんていませんよ。小学生としての在り方を考えている子供だっていない。アンタみたいな頭の固い婆さんが子供たちの可能性を奪ってる」と反論し、罵声を浴びせて去った。留守電を確認したシュニースは、バックの「君のことばかり考えてる。会いたくて電話したんだ」というメッセージに頬を緩ませた。彼女がラッセル家に電話するとティアが出て、「バックはマーシーとデートに出掛けて深夜まで帰らない」と嘘を教えた。
翌朝、マーシーがラッセル家を訪れ、バックをダンスに誘う。バックは消極的な態度を見せるが、「1曲だけ」とせがまれて付き合った。そこへシュニースが来て2人の姿を目撃し、激怒して去った。ティアから「おじいちゃんの状態も落ち着いてるみたいだし、明日の夜は泊まりに行ってもいい?」と問われ、「俺が親代わりの間は駄目だ」と却下した。ティアはバックが不在の内に家を抜け出し、パーティーに行く。バックはマイルスとメイジーから、ティアが「パーティーに行く。日曜に戻る」と言い残したことを聞く。バックは「今夜は大事な用がある。生活が懸かってる。1年の稼ぎが決まる」と言い、2人を連れて競馬場へ向かおうとする。しかし渋滞に巻き込まれた彼は、ティアのことが気になってしまう…。監督はジョン・ヒューズ、脚本はジョン・ヒューズ、製作はジョン・ヒューズ&トム・ジェイコブソン、製作協力はビル・ブラウン&レイミー・E・ウォード、撮影はラルフ・ボード、美術はジョン・W・コーソ、編集はルー・ロンバルド&トニー・ロンバルド&ペック・プライアー、衣装はマリリン・ヴァンス=ストライカー、音楽はアイラ・ニューボーン。
出演はジョン・キャンディー、ジーン・ルイーザ・ケリー、ローリー・メトカーフ、ジェイ・アンダーウッド、エイミー・マディガン、マコーレー・カルキン、ギャビー・ホフマン、エレイン・ブロンカ、ギャレット・M・ブラウン、スザンヌ・シェパード、マイク・スター、ブライアン・タランティーナ、デニス・コックラム、ジョエル・ロビンソン、コリン・バウムガートナー、エリック・ウィップル、マーク・ローゼンタール、ダグ・ヴォン・ネッセン、ウェイン・ニーランド、ジジ・キャスラー、ラヴァーン・アンダーソン、ジーナ・ドクター、レイチェル・トンプソン・パーリン、ロン・ペイン他。
声の出演はウィリアム・ウィンダム。
『大災難P.T.A.』『結婚の条件』のジョン・ヒューズが監督&脚本を務めた作品。
バックをジョン・キャンディー、ティアをジーン・ルイーザ・ケリー、マーシーをローリー・メトカーフ、バグをジェイ・アンダーウッド、シャニースをエイミー・マディガン、マイルズをマコーレー・カルキン、メイジーをギャビー・ホフマン、シンディーをエレイン・ブロンカ、ボブをギャレット・M・ブラウン、ホガースをスザンヌ・シェパード、道化師をマイク・スター、ログをブライアン・タランティーナが演じている。バックはバグがティアとキスしているのを見ると、脅しを掛ける。
ティアの怒りを買った彼は「あの男は本気でお前を好きじゃない」と言い、そう思う理由を問われて「俺も同じ年の頃、君みたいな子を追い掛けてた」と答える。
だけど、それって何の根拠にもなっていないでしょ。「ただの勘」と、そんなに変わらない。
自分が不真面目にしか女と付き合って来なかったからって、「みんな同じ」と決め付けているだけでしかないでしょ。実際にバグはティアと本気で付き合っているわけじゃないから、結果としては「バックは正しかった」という形になる。
だけど前述したように根拠が薄弱なので、「たまたま当たっただけ」にしか思えないのよ。
ホントは「バックはティアの気持ちなんて分からない酷い奴」に見せておいて、「本気で姪を心配しており、だから遊び人であるバグを遠ざけようとした」という真相に辿り着く流れじゃなきゃダメなはずなのにさ。
「偏見で動いていたけど偶然にも的中した」ってことでは、バックの印象アップに繋がらないでしょ。それを考えると、バグを遠ざけようとするバックの言動には、もっと明確な根拠が必要になるのよ。
それが何も無いのなら、最初は懸念を示す程度にしておいた方がいい。そして、例えば「密かにバグを調べ、遊び人だという証拠を掴む」という手順を経た上で別れさせようとして、何も知らないティアに嫌われるという流れにでもすればいいんじゃないかと。
そんな時間的余裕が無いのなら、最初からバックが「バグはチャラ男」と知っている設定にしてもいいだろうし。
っていうか、「たまたま当たったか否か」という部分を別にしても、バックが本気でティアを心配したからバグを遠ざけようとしたって感じも無かったし、それも大きな問題でしょ。それ以外のシーンでも、バックには「子供たちのために」という意識が欠如した言動が色々と見られる。
マイルスに皿洗いをさせるのも、「働くと大人になれる」と言っているけど、実際は自分がサボりたいだけだ。
ボーリング場所へ出掛けるのも、ただ自分が行きたいからにしか思えない。マイルズやメイジーが行きたがったわけじゃないしね。子供たちを家に残して出掛けるわけにはいかないので、連れて行くだけだ。
ティアが嫌がった時に脅しを掛けてまで言うことを聞かせるのも、決して彼女のためではない。それがダメということじゃなくて、それならそれで話の進め方がある。「最初は自分本位だったけど、子供たちと交流する中で次第に考えが変化して」というドラマを描けばいいのだ。
しかし、そういう流れを上手く描けているとは言い難い。
例えば、バックがログから競馬の八百長に誘われた時に少し考え込むのは、子供たちのことが気になったからだ。
ここでは「子供たちのことを心から考えている」という様子が見える。ただ、それ以前から、ちょいちょい「子供たちのことを考えて行動している」ってのが見えるのよね。
なので、キャラの見せ方として中途半端に思えるのよ。そもそも、バックは深夜の電話で起こされたのに文句一つ言わず喜んで駆け付けているんだから、それだけでも充分に優しくて思いやりのある男だと言ってもいいだろう。それに、翌朝には早起きして朝食も作っているし、ちゃんと車で送り迎えもしている。これに関しては、全くサボっていない。
なのでホントなら、「優しくて愛のある男だけどヘマが多い」というキャラで良かったんじゃないかと。
ただ、他のことではヘマをするけど車の送迎では何のヘマも無いし、その辺りもフワッとしている。
あと、家事全般に疎いのは分かるけど、「犬にトイレの水を与える」ってのは、そういう問題じゃないだろ。どこまで非常識なんだよ。
「どこまでバックをボンクラにするのか」という基準も、なんかフワッとしてるんだよなあ。ともかく、バックを最初から「子供たちのことを親身になって考えているし、全力で面倒を見る」というキャラとして、徹底して描いた方がスッキリする。
そのためには、「昼間にテレビを見てゴロゴロする」とか、「皿洗いをマイルスに任せる」とか、そういう描写はカットした方がいいだろう。
その一方で、「頑張ってるけど空回りしてヘマをやらかす」という描写を幾つも用意して、そっちで喜劇を回せばいい。
もちろん、前述した「最初は自分本位だったけど、子供たちと交流する中で」というドラマでも構わないよ。反抗的なティアを際立たせることを考えれば、マイルスとメイシーがすぐバックに懐くってのは、キャラの動かし方としては何も間違っていない。
ただ、「なぜ簡単に懐くのか」というトコで疑問は湧く。
バックはゲロみたいな朝食を作り、煙モクモクのボロ車で学校へ送り、マイルスとメイシーの眼前でティアに脅しを掛けるのだ。そんな奴に、そう簡単に懐くものかな。しかも初対面なんだぜ。
これって、過去に会っていて、前からマイルスとメイシーはバックが好きだという設定にでもしておいた方が良くないか。バックを「不真面目なロクデナシに見えるけど、実際は全く違っていて」というキャラクターとして見せたいことは、序盤から見えている。でも、見せたいイメージと実際に映画から伝わるイメージは、合致していない。
あと、実は「自由が好きだから結婚に縛られたくない」とバックが考えている設定も、邪魔になっているか、もしくは上手く扱えていないように感じる。
「彼が子供たちと触れ合うことで家庭について考え、結婚に対する心境が変化する」というトコへ繋げるための設定であることは良く分かる。
ただ、「そもそもバックが子供たちのために行動する理由は何なのか」ってのが引っ掛かってくるのよ。で、その理由を考えてみると、「家族だから大切にする」ということぐらいしか思い浮かばない。
そうなると、バックは家族という形態を嫌っているわけではないことになってしまう。
だったら「結婚して家庭を持ちたい。子供を作りたい」というシュニースの望みを頑なに拒絶する理由は何なのかと。
子供たちの面倒を見ているせいで、バックは本人が何よりも優先していた「自由」という環境を一時的に喪失しているのに、それを全く気にする様子が無いんだよね。終盤、バックは八百長で金を稼ぐために競馬場へ行こうとするが、思い留まってシュニースとマイルスとメイジーを預け、ティアを捜しに向かう。
ここは本来なら、バックの大きな変化を示す重要なシーンのはずだ。
しかし、それまでも彼は子供たちのために行動していたし、ティアのことを親身になって考えていた。だから、そこで競馬場よりティアを選ぶのは、ごく当たり前のことでしかない。
「起承転結」における「転」の機能は、全く果たしていないのだ。(観賞日:2021年9月5日)