『エアポート・アドベンチャー クリスマス大作戦』:2006、アメリカ

クリスマス・シーズンのアメリカ東部。デパートのサンタに会ったチャーリー・ゴールドフィンチは、すぐに気絶してしまった。父親は「毎年のことなんです」と説明するが、彼も気絶して倒れた。北部。グレース・コンラッドは友人3人と賭けをして、サンタのコスプレ写真を撮影する男に声を掛ける。顎鬚を取るとイケメンだったので、彼女は友人たちに「やっぱりイケメンよ。ソイのモカ・ショットね」と興奮して告げた。
南部。ドナ・マローンは「もう11歳よ。サンタと写真なんて嫌」と言うが、母から「言うことを聞かないと外出禁止よ」と脅される。仕方なくサンタの膝に座ったドナだが、肩に腕を回されると「気安く触るな」と股間を殴り付けた。西部。キャサリン・ダヴェンポートはサンタの前で、「会いたくないる。膝に乗るのは嫌」と泣き出した。兄のスペンサーは「何も怖くないぞ」と言い、サンタの膝に座る。その姿を高校の同級生たちに見られ、「サンタの膝に乗ってる」と冷たい視線を向けられた。
12月24日。スペンサーはキャサリンを連れて、父のサムを訪ねることになった。母のヴァレリーが離婚して子供たちを引き取り、サムだけが遠方に住んでいるのだ。スペンサーとキャサリンは飛行機に乗り、フーバー国際空港へと到着した。すぐに世話係のザックが現れ、2人を案内する。空港にクリスマスの飾りが無いことをキャサリンが指摘すると、ザックは乗客担当責任者であるオリヴァー・ポーターの命令で撤去されたことを説明した。彼はスペンサーたちに、「乗客も祝日も嫌いらしいけどね」と言う。
ポーターは15年ぶりにクリスマス休暇を取り、ハワイ旅行を楽しもうとしていた。しかし大雪が降ったため、ハワイ行きの飛行機は全て欠航となった。それだけでなく、吹雪のせいで空港全体の便が欠航となった。スペンサーとキャサリンはザックに導かれて、付き添いがいない子供たちの待機する部屋へ赴いた。ドアが開くと多くの子供たちが騒いでおり、大混乱に陥っていた。人手が不足しているために客室乗務員2名が部屋を任されており、ザックはヘトヘトになっている彼女たちに「ここを機内だと思えばいい。乗客を外に出さないでくれ」と告げた。しかし2人は子供たちの暴れっぷりに耐えられず、部屋から逃げ出した。
スペンサーはチャーリーから、「親は離婚してる?子供たちだけで旅する理由を調査中なんだ」と話し掛けられる。チャーリーは「1位は親の離婚。2位はユダヤ教徒。後は金持ち。少数だけどね」と言い、女子たちとポーカーで遊ぶグレースに視線を向ける。スペンサーはグレースに一目惚れし、チャーリーは気付いて「君とは住む世界が違うけど、声を掛ける?」と問い掛けた。スペンサーはグレースに声を掛け、同類を装う。しかし住む世界の違いが簡単に露呈し、グレースと仲間たちに笑われた。
キャサリンに普段の生活や行動を暴露され、スペンサーはため息をついた。ザックが他の子供たちの気を取られている隙に、スペンサーは部屋から抜け出した。続いてグレース、ドナ、チャーリー、小太りのビーフも外へ出た。姉と一緒にいたヴァレリーはテレビのニュースでフーパー国際空港の事情を知り、心配になる。彼女は空港と連絡を取ろうとするが、電話は繋がらない。ヴィレリーから電話を受けたサムは、「車で迎えに行くよ」と告げた。
チャーリーは電気店のマイクで陽気に歌っていたが、警備員に見つかって逃げ出した。救急用具室で遊んでいたビーフは、警備員に発見されて逃げ出した。エステでリラックスしていたヴァレリーは、警備員に見つかって逃げ出した。スペンサーはレストランで食い逃げをして、警備員に追われた。ヴァレリーは運搬車を勝手に操縦し、警備員から逃走した。スペンサー、グレース、チャーリー、ビーフは、次々にドナの運搬車へ乗り込む。しかし大勢の警備員に包囲され、隔離部屋に連れ戻された。すると他の子供たちは消えており、ポーターが待ち受けていた。
ポーターはスペンサーたちに、「子供たちは、ここから2キロほど離れたホテルに泊まる」と述べた。チャーリーが「僕らもそこに?」と質問すると、彼は「外は吹雪で道路は封鎖されている。不良の君たちは、この部屋で過ごしてもらう」と語る。彼はザックに子供たちの面倒を任せ、「失業したくなければ、部屋から一歩も出すな」と指示して立ち去った。一方、ホテルに移動したキャサリンが泣きそうになっていると、責任者のシンディーがメアリー・アンという少女を紹介した。メアリー・アンは高慢な性格で、「試しに私の妹にしてあげる。嫌がったら後悔することになるわ」とキャサリンを恫喝した。
スペンサーは他の子供たちに、「出よう。妹の所に行かなきゃ。4時半にサンタが来ないと、忘れられたと思い込む」と告げる。他の4人もホテルへ行くことを望んだので、スペンサーは作戦を考えた。彼はザックを騙してカウンターに行かせ、他の4人と共に部屋から抜け出した。報告を受けたポーターはザックと警備員たちを集め、すぐに子供たち見つけ出すよう命じた。スペンサーは仲間たちに、「ホテルへ行くにはチーム・ワークが大切だ」と説いた。「まずはどうする?」とスペンサーが問い掛けると、ビーフは「ツリーを取って来る」と走り去った。残った4人は、ビーフが戻らないだろうということで意見が一致した。
空港に毎週来ているチャーリーは、「ここから脱出したいなら、手荷物受取所の後ろ側は警備が手薄だ」と仲間に教えた。同じ頃、サムは大雪の中でヴァレリーに電話を掛けていた。電話を終えた彼は、向こうから走って来た車と激突しそうになる。運転手は慌ててブレーキを掛けるが、屋根のに積んであった木が飛び出した。その木はサムの車のフロントガラスに突っ込み、大きな穴が開いた。スペンサーたちは荷物として預けられていた犬を逃がし、手荷物受取所の前にいた職員たちを襲わせた。
スペンサーたちは受取所の後ろ側へ入るが、ポーターたちが来たので身を隠した。ザックが「犬が糞をして飼い主が話したいと」と報告に来たので、ポーターは捜索を警備員に任せる。チャーリーが隠れている鞄につまづいたポーターは、持ち主が不明だと知ると「早く倉庫に運べ」と職員に命じて立ち去った。職員たちが鞄をベルトコンベアーに乗せて去った後、ドナはチャーリーを救おうとする。スペンサーとグレースも鞄を追い掛け、4人は所有者不明の荷物が集められている場所に辿り着いた。スペンサーたちはクリスマス・プレゼントを手に入れるため、荷物の中身を探った。
サムは木が突っ込んだ状態の車で先を急ぐが、給油のためにガソリンスタンドへ立ち寄った。しかし給油して出発しようとした彼は、異変を感じて外へ出た。その直後、車は爆発して炎上した。子供たちは自分の好きな物品を見つけ出し、スペンサーはキャサリンのためにプリンセスの人形を手に入れた。ポーターたちに見つかった4人は逃げ出し、ドアを見つけた。4人が開けたのは空港の外へ出るドアで、その向こうにはホテルがあった。
スペンサーたちはボブスレーを持ち出し、追って来たザックも乗せてホテルへ向かった。ポーターと警備員たちは、それぞれの乗り物を使って子供たちの後を追った。ポーターの追跡を逃れたスペンサーたちは、眠っているキャサリンを発見する。しかし人形を彼女の傍らに置いた直後、ポーターに捕まった。ポーターは空港へスペンサーたちを連れ戻し、1人ずつ部屋に監禁する。しかしスペンサーたちは部屋から脱出し、ツリーを持ち帰ったビーフも合流した…。

監督はポール・フェイグ、脚本はジェイコブ・メスザロス&マイア・スター、製作はローレン・シュラー・ドナー&マイケル・アギュラー、製作総指揮はイーラ・グラス&キャリー・モーロウ&ジュリー・スナイダー&マイケル・ランバート&ブルース・バーマン、撮影はクリストファー・バッファ、美術はアーロン・オズボーン、編集はジョージ・フォルシーJr.&ブラッド・E・ウィルハイト、衣装はリサ・トムチェスジン、音楽はマイケル・アンドリュース、音楽監修はジェニファー・ホークス。
出演はルイス・ブラック、ウィルマー・バルデラマ、タイラー・ジェームズ・ウィリアムズ、ディラン・クリストファー、ブレット・ケリー、ジーナ・マンテーニャ、クイン・シェファード、パジェット・ブリュースター、ロブ・コードリー、ドミニク・サルダーニャ、ジェシカ・ウォルター、ロブ・リグル、ミシェル・サンドラー、デヴィッド・ケックナー、B・J・ノヴァク、ミンディー・カリング、ケヴィン・マクドナルド、ブルース・マカロック、マーク・マッキニー、デイヴ・“グルーバー”・アレン、スティーヴ・バノス、トニー・ヘイル他。


『アイ・アム・デビッド』のポール・フェイグが監督を務めた作品。
『エアポート・アドベンチャー』のタイトルでTV放送されたこともある。
脚本のジェイコブ・メスザロスとマイア・スタークは2002年の短編映画『P.E. 』で脚本と監督として組んだコンビで、これが初の商業作品。
オリヴァーをルイス・ブラック、ザックをウィルマー・バルデラマ、チャーリーをタイラー・ジェームズ・ウィリアムズ、スペンサーをディラン・クリストファー、ビーフをブレット・ケリー、グレースをジーナ・マンテーニャ、ドナをクイン・シェファード、ヴァレリーをパジェット・ブリュースター、サムをロブ・コードリーが演じている。アンクレジットだが、ヴァレリーの姉をテリー・ガーが演じている。

冒頭、4人の子供たちのエピソードが短く描かれる。もちろん、そこには「最初に子供たちを紹介しておこう」という目的がある。それと同時に、ちょっと笑いも取っておこうという意識もある。
それは決して悪くない考え方だし、笑いを取りに行って外しているのは「まあ仕方が無いかな」と受け入れられる。
ただ、わざわざ最初に子供たちを登場させるなら、5人じゃないと中途半端でしょ。4人しか紹介しないのなら、そういう方法を取らない方がいい。空港に到着してから、あるいは5人が合流してからキャラクター紹介を始めたとしても、遅くは無いのでね。
だからバランスを崩すぐらいなら、下手に冒頭でキャラ紹介を入れる必要は無い。

もう1つの問題として、こっちの方が遥かに大きいのだが、「後の展開に全く繋がらないキャラクター紹介になっている」ということが挙げられる。
チャーリーは「興奮したら気絶する」というキャラなのかと思ったら、そうではない。終盤に「サンタを見て気絶する」というネタが繰り返されるが、そこまでは全く使われない。
キャサリンに関しては、「サンタの膝に乗るのを嫌がって泣き出す」という描写があるので「泣き虫」とか「内気」という性格なのかと思いきや、そんなことは全く無い。
スペンサーの場合、「同級生に恥ずかしい姿を見られる」という内容になっているが、それは性格を表現するモノではないし、その同級生たちは二度と登場しないので、後の展開には全く関係が無い。あえて擁護するなら「妹思い」という部分は伝わるが、そんなのは別でシーンを用意しなくても、12月24日のエピソードで簡単に表現できることだしね。

12月24日のシーンになると、ヴァレリーがスペンサーとキャサリンを連れて空港に来ている。彼女は通り掛かった女性職員に「すみません、子供たちだけで飛行機に乗るんですが」と声を掛ける。すると職員は「子供だけの乗客2人」と大声で叫び、男性職員が駆け付けて子供たちの首からバッジを吊り下げて連れて行く。
そこまで丁寧に描くぐらいだから、その段階で何かしらのトラブルが起きたりするのかと思いきや、カットが切り替わるとフーバー国際空港に子供たちが到着している。
だったら、そこに時間を掛けるのは無駄なだけでしょ。
せめて1つぐらい笑いを取るためのネタを盛り込まないと。

ザックがスペンサーとキャサリンに「乗客担当責任者であるオリヴァー・ポーターの命令でクリスマスの飾りが撤去された」と説明した直後、その隣をバカンス気分のポーターが歩いて行く。彼はパイロットたちと話し、15年ぶりの休暇でハワイ旅行に行くことを楽しそうに話す。しかし大雪で欠航になり、「クリスマスなんてクソ食らえだ」と吐き捨てる。
つまり、ザックはクリスマスが嫌いなのではなく、クリスマスに働かなきゃいけないのが不満ってことだ。
だったら、「ハワイ旅行に行くつもりが大雪で欠航」という手順は無い方がいい。それを入れることで、何となく話がボヤける。
そこは単純に、「クリスマスは大勢の乗客が来る。みんな楽しそうだが、自分は働かなきゃいけないのでポーターは不機嫌」という形にしておいた方がスッキリする。
「ハワイ旅行が直前でダメになる」というネタで笑いを取りに行ったのは分かるんだけど、それと引き換えに余計な引っ掛かりが生じている。

スペンサーとキャサリンが隔離部屋に案内された後、メインとなる他の子供たちも次々に写し出される。最初はドナが部屋に入って来て、 次がビーフ。でも彼はオープニングで登場していないので、姿が写し出された時点ではメインのキャラってことが全く分からない。
冒頭の紹介から彼を外した理由が何かあるのかと思ったら、特に何も無い。だったら、そこを初登場にするのは何なのかと。
っていうか、冒頭で4人を紹介しておきながら、隔離部屋のシーンに至るまでは「スペンサーとキャサリンが主役」みたいに進めるのは構成として上手くないでしょ。
せめてフーバー国際空港に舞台が移った時点で、他の子供たちも登場させた方がいいよ。

吹雪で全便が欠航になった後、ヴァレリーが姉と一緒にいる様子、空港の事情を知って子供たちを心配している様子、サムが車で迎えに行こうとする様子などが挿入される。他の子供たちは家族の様子が全く描かれないので、スペンサーとキャサリンだけが特別扱いを受けているってことだ。
それなら、冒頭で「4人の子供たちの物語」みたいな紹介コーナーを用意しているのはバランスが悪い。スペンサーが隔離部屋に入った時に、後で一緒に行動する面々と初めて会う形にしておいた方がいい。
ところが困ったことに、隔離部屋から抜け出した途端、5人がバラバラに行動するのである。つまり、そこに至ると、今度は5人が並列の扱いになるのだ。
しかし上手く捌けていないので、映画としてもバラバラになっている。

さらに困ったことには、役割分担がボンヤリしている。
っていうかザックリ言うと「5人がそれぞれ問題を起こし、警備員に追われて逃げる」という形なので、同じことを別々でやっているだけになっているのよね。
しかし何よりダメなのは、「すぐに子供たちが捕まって連れ戻される」という展開になることだ。わざわざ5人をバラバラに行動させて、「それぞれが警備員に追われる」というトコまで広げておきながら、簡単に捕まって連れ戻され、そこから再び「部屋を脱出する」という展開に持って行くのだ。
いやいや、脱出イベントは1度で充分だわ。
5人が警備員に追われる騒動を描きたいのなら、その前に隔離されている手順を排除して、「騒動を起こしたから隔離される」という形にでもしておけばいいのよ。

「5人が騒ぎを起こしている間に他の子供たちはホテルに移され、キャサリンも消えている」という形を作りたかったのは分かるのよ。
だけど、金持ちのヴァレリーがエステに行くとか、キャラの良く分からないビーフが救急用具室で遊ぶってのはともかく、「スペンサーが食い逃げする」とか「ドナが運搬車を盗んで走り回る」とか「チャーリーがマイクを握ってノリノリで歌う」ってのは、段取りのためだけに駒として動かされている印象が強すぎるのよ。
例えばヴァレリーに関しては、仲間と楽しく遊んでいたのに抜け出すってトコで違和感がある。
チャーリーは優等生キャラだったはずなのに、急に中の人が入れ替わったようになっちゃうし。

しかも、スペンサー無銭飲食だし、ドナは運搬車を盗んだ上に走り回って器物を損壊している。
つまり、「子供の悪戯」というレベルを遥かに超越しているので、それをスルーしたまま「警備員から逃走してホテルへ向かおうとする子供たちを応援してね」というスタンスで進められると、どうにもスッキリしないのだ。
それに、スペンサーは「妹のために」という共感すべき動機があるけど、他の連中は無関係だし。単に「部屋から逃げ出したかった」というだけだし。
いや、「ただ逃げ出しただけ」ってことでも、普通なら別にいいのよ。ただ、前述したようにスペンサーとドナは立派な犯罪者なので、それを無視するわけには行かないぞ。

隔離部屋から抜け出した後、グレースとドナは些細なことで喧嘩になる。
しかし、チャーリーが誤ってパンチを受けたことで喧嘩が中断されると、そこからは全く反目せずに仲良くやっている。
そんなに簡単に終了するぐらいなら、中途半端に「女同士の対立」なんて要素を持ち込まない方がスッキリする。
また、冒頭で用意されていなかったビーフのサンタ関連のエピソードだけは、彼がツリーを取って来ると言って別行動を取った後に挿入されるが、これは明らかにバランスが悪い。

あと、スペンサーたちが「ビーフは戻って来ない」と決め付け、彼を無視して空港からの脱出を図るのは、すんげえ薄情な奴らに思える。
ただし、ホントにビーフは、なかなか戻って来ないのよね。
それはそれでダメだろ。それは「ビーフだけに別行動を取らせることで生じるメリットとデメリット」を考えた時に、デメリットの方が大きいという意味でダメだわ。
しかも別行動を取らせたことで、ビーフは単なる「要らない子」と化しているし。

スペンサーが空港を抜け出してホテルへ行こうとする動機として「妹のため」という要素を用意しているのは、「観客が彼を応援したくなる」という部分に繋げるためには、もちろん間違っちゃいない。
ただ、そのせいで「キャサリンの様子を途中で何度も描く」という作業が入る。そこをバッサリと削ぎ落とすと、それはそれで構成として上手くない。「スペンサーが妹の元を目指す」という筋書きにした以上、ホテルにいるキャサリンの様子を何度か挿入するのは必要な作業だ。
ただ、そのせいで話が散らかっているのも事実。そもそも、ヴァレリーが心配するとか、サムが車で迎えに行こうとするとか、それだけでも散らかっているのだ。
とは言えヴァレリーとサムは大人なので、子供であるスペンサーたちとの色分けは出来ている(まあ強引な擁護ではあるが)。キャサリンは子供なので、「子供はスペンサーのグループに絞った方がいいでしょ」と思うのだ。
そういう問題を考えると、スペンサーが空港から脱出しようとする理由は、「妹のため」ではなく別の形にしておいた方が良かったんじゃないかと。

チャーリーがマイクを握ってノリノリで歌うシーンでは違和感があったのだが、グレースがクリスマス・プレゼントとして8トラックのテープ・プレーヤーを見つけた時に彼が「僕は全国で一番のカセット・コレクターなんだ」と興奮し、Lee Morganの『The Sidewinder』を流して踊り出したシーンを見て、「そういうことだったのね」と理解した。
ようするにタイラー・ジェームズ・ウィリアムズは歌ったり踊ったりするのが得意な役者なので、それを見せたかったってことなのね。
でも、理解はするが、賛同はしないぞ。
彼のパフォーマンスを入れるにしても、もうちょっと上手い方法があるだろ。

この映画の原題は『Unaccompanied Minors』で、「同伴者のいない未成年者たち」という意味だ。
邦題は全く異なるが、「エアポート・アドベンチャー」ってのは作品の肝となる部分を言い当てている。
この映画は「空港という閉鎖された限定空間の中で、子供たちが大人から逃げ回って脱出を図る」という部分に面白味があるはずなのだ(まあ実際のところは、まるで面白くないのだが)。
だから、空港から子供たちが脱出した後、ホテルまでの追いかけっこがあって、ホテルでもポーターからの逃亡があり、捕まって空港に連れ戻されるという手順を踏むのは、自分で自分の長所を台無しにしているようなモンだ。

スペンサーたちが空港から脱出した時点で、ほぼ目的は達成されている形にしておいた方が絶対にいいはずだ。
「眠っているキャサリンに人形を届けた後で空港へ連れ戻され、監禁された部屋から脱出する」という展開は、蛇足にしか感じない。
ただ、そういう手順でも入れておかないと、ツリーを取りに行ったビーフが放置されたままになってしまうんだよね(スペンサーたちが監禁部屋から脱出した後、ビーフがツリーを引きずって戻って来る)。
そういう意味でも、ビーフに別行動を取らせたのは失敗だし、それなら彼は要らないわ。

そんなわけで、かなり出来栄えの悪い映画だが、1つだけ褒めておくと、ポーターを悪者のまま終わらせずに改心させたのは良かった点だ。「そんなの珍しくもないだろ」と言いたくなるかもしれないけど、そこはホントに「ここは評価できるな」と感じたのよ。
ってことは、裏を返せば「他に褒めるトコが何も無い」ってことではあるんだけどさ。
ただ、完全ネタバレだけど、スペンサーたちが1人で空港の朝を迎えた面々のためにクリスマス・プレゼントの準備を整え、サンタ役として仮装したポーターが登場するってのは、ファミリー向けのクリスマス映画としては、なかなか上手い着地だと思うのよ。
おっ、ダメな映画なのに、なんか最後は持ち上げて終わったな。

(観賞日:2016年8月28日)


第29回スティンカーズ最悪映画賞(2006年)

ノミネート:【最悪のクリスマス映画】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会