『ウルトラヴァイオレット』:2006、アメリカ

全ての発端は、東ヨーロッパに昔から潜在した謎のウイルスをアメリカ兵器研究所が発見したことだった。研究所はウイルスの改造に よって兵士用の肉体増強剤を作ろうとしたが、より強い感染力を持つ伝染病を生み出してしまった。ヘモファージ・ウイルス(HGV)と 呼ばれるウイルスは研究所の外に漏れてしまい、人々が感染に怯える時代がやって来た。
HGVに感染した者は犬歯が長くなるのが特徴で、マスコミはヴァンパイアと呼んだ。感染者は腕章の着用が義務付けられ、しばらくして 医療機関が施設への収容を決定した。だが、施設に入った人々は、二度と出て来なかった。ヴァイオレットは妊娠中に感染して夫を失い、 施設に収容された。感染によって彼女の視覚は鮮明になり、聴覚は鋭くなった。骨は頑丈になり、治癒力は高まった。しかしヘモファージ には、感染してから最長で12年しか生きられないという特徴もあった。
ヘモファージは光に敏感なのが普通だが、ヴァイオレットには影響が出なかった。頻繁に輸血を受けながら、彼女は実験のために蘇生 させられ、お腹の子供を失った。収容を免れたヘモファージは抵抗軍を結成し、地下に潜って政府への反撃を開始した。これが血液戦争の 始まりだ。この世界を支配する医療機関のトップに立つダクサス枢機卿は、ヘモファージの一掃作戦を展開していた。
抵抗軍は血液バンクを襲撃したが、それは罠だった。待ち受けていた防護服の警官隊が、侵入した抵抗軍を射殺した。手袋を取った刑事 クロスの指にヘモファージの血が付着したため、仲間は彼を射殺した。ヘモファージの血が付くと感染してしまうからだ。一掃作戦に よってヘモファージは絶滅寸前となっていたが、わずかに残ったのは精鋭ばかりで、テロは激化していた。
ダクサスは部下に、「この10年間に渡ってウイルス研究所と組んで開発した兵器があれば、数日でヘモファージを抹殺できる。特使を派遣 し、この統合省に運ぶよう言い付けてある」と告げた。ウイルス研究所に特使として現れたのはヴァイオレットだった。彼女は12年前に 施設から脱走していた。ヘモファージを見抜く複数の検査を通過した彼女は、ケースが保管されている部屋に通された。研究所の責任者は、 「絶対にケースを開けるな。ケースは9時間後、自動的に破壊されるようになっている」と告げた。
本物の特使が現れたため、ヴァイオレットは警備隊を蹴散らして街へと逃亡する。追っ手が迫る中、抵抗軍のリーダーであるナーヴァに 連絡すると、「届けるのが無理なら爆破しろ」と言われる。「私は36時間以内に死ぬ。でも大勢の人々を巻き添えにすることは無い」と ヴァイオレットは反論し、ケースを開けて兵器を使うことを提案する。だが、ナーヴァは爆破しろとの一点張りだった。
ヴァイオレットが追っ手を撒くと、ナーヴァは抵抗軍のアジトがあるニードルタワーへケースを運ぶよう指示した。ニードルタワーの エレベーターに乗ったヴァイオレットは、ケースを開いた。すると、中では少年が眠っていた。彼女はナーヴァと仲間の元へ行き、「兵器 じゃなかった」と告げる。するとナーヴァは「この子は血液中でヘモファージ全員を殺せる抗体を培養している」と言い、その場で射殺 しようとする。ヴァイオレットは「逆の作用を持つ抑制遺伝子も持っているかもしれない」と止めようとするが、ナーヴァは「もう帰れ」 と冷徹に告げる。ヴァイオレットは立ち去るが、実はケースの中身を替え玉の映像に摩り替えていた。
ヴァイオレットは外に待機させていた少年を連れて、上の階へと逃げた。タワーの上部10フロアは、ブラッド・シノワという独立組織が 仕切っている。ヴァイオレットは通してほしいと要求するが、ブラッド・シノワは拒否して銃を向けた。ヴァイオレットは包囲した一味を 全滅させ、タワーから脱出した。そこにダクサスが現れ、「その子は君には何の役にも立たない。子供を渡せば自由にしてやる。その子は 兵器ではなく、私の息子だ」と告げる。ヴァイオレットは「大嘘つき」と罵り、車で逃走した。
ヴァイオレットは少年を連れて地下鉄に乗り、駅で降りた。ヴァイオレットはショッピングモールを移動しながら、仲間の研究者ガースに 連絡を取る。だが、ガースは「その子のために今までの研究を危険にさらすことは出来ない」と、協力を拒んだ。ヴァイオレットが呼び名 を尋ねると、少年は両手で6を示した。「シックス?」と訊くと、彼はうなずいた。
追っ手の姿を確認したヴァイオレットは注射器を取り出し、シックスに「血液だけでも持って行く」と脅すような口調で告げる。すると シックスは初めて口を開き、「もし僕が叫べば、2人とも殺される」と告げた。ヴァイオレットはシックスに、彼が置かれている状況を 説明した。彼女はシックスをガースの研究施設に連れて行き、血液の調査を依頼した。
ダクサスは抵抗軍を追い詰めて照明を落とし、部下に暗視カメラで銃撃させる。照明が付くと、ダクサスの部下が全滅していた。しかし ダクサスは余裕の態度を見せ、ナーヴァの仲間を一瞬で全滅させた。彼はナーヴァに「互いの利益になる話をしようじゃないか」と 持ち掛けた。ガースはシックスの血液を検査し、ヴァイオレットに「シックスの血液中にヘモファージ・ウイルスを抑制する抗体は無い。 治療薬は作れない。我々の役には立たない子供だ」と告げた。
さらにガースは、シックスの体内には有効範囲100メートルの追跡装置があること、毒性の強いたんぱく質があって衰弱は避けられず、 あと8時間もすれば死亡することをヴァイオレットに教えた。ヴァイオレットはシックスを連れて、研究施設を後にした。しかし政府の 追っ手が迫り、ヴァイオレットはシックスの保護を諦めて彼と別れる。シックスが追っ手を騙して逃走したと知った彼女は、慌てて彼を 捜し出した。だが、そこに抵抗軍が現れ、シックスを拉致してしまう。
ヴァイオレットが後を追うと、教会に集まった抵抗軍が井戸の上にシックスを吊るしていた。ナーヴァは「こいつの体内には、人類を全滅 させる抗体がある。ダクサスと有益な取引をした。お前は立ち去れ」と告げる。ヴァイオレットが拒否すると、ナーヴァはロープを離して シックスを井戸に落下させようとする。ヴァイオレットは抵抗軍を全滅させ、シックスを救出した。
ダクサスからヴァイオレットに通信が入り、「その子は私の8体のクローンの内、6体目だ。引き渡せ」と告げた。ヴァイオレットは 追跡装置を使い、ダクサスが統合省にいると突き止める。ヴァイオレットが統合省へ行くと、ダクサスは700人の護衛を配置させていた。 ヴァイオレットはシックスの解毒剤を渡すよう要求するが、ダクサスはニヤニヤと笑って拒否した。
ダクサスはヴァイオレットを銃撃するが。それは本物ではなくホログラムだった。離れた場所で観察していたヴァイオレットに、シックス は「人が多すぎる。行くのは無理だ」と告げる。ヴァイオレットは公園でシックスと遊び、彼の死を看取った。そこに現れたダクサスは、 シックスを収容して処置を行うよう部下に命じ、悲しみに暮れているヴァイオレットを始末した…。

脚本&監督はカート・ウィマー、製作はジョン・バルデッチ、共同製作はポーリーン・チャン&ルイス・シット、製作総指揮はT・C・ウォン&チャールズ・ワン &トニー・マーク&スー・ジェット、撮影はアーサー・ウォン、編集はウィリアム・イェー、美術はチウ・ソンホン 、衣装はジョセフ・ポロ、ファイト・コレオグラフィーはマイク・スミス、音楽はクラウス・バデルト。
出演はミラ・ジョヴォヴィッチ、キャメロン・ブライト、ニック・チンランド、ウィリアム・フィクトナー、 セバスチャン・アンドリュー、アイダ・マーティン、デヴィッド・コリアー、キーラン・オルーク、ディガー・メッシュ、ライアン・ マーティン、スティーヴン・カルコート、リカルド・マムード、マイク・スミス、クレイ・カレン、ジェニファー・カプート他。


『リベリオン』のカート・ウィマーが監督&脚本を務めたSFアクション映画。
一応はアメリカ映画だが、撮影のアーサー・ウォンや美術のチウ・ソンホン、製作総指揮のチャールズ・ウォンなど香港映画のスタッフが 多く携わっており、実質的にはアメリカと香港の合作といった感じだ。
ヴァイオレット役はミラ・ジョヴォヴィッチで、カート・ウィマーは最初から彼女の主演を想定してシナリオを執筆したらしい。
他に、シックスをキャメロン・ブライト、ダクサスをニック・チンランド、ガースをウィリアム・フィクトナー、ナーヴァを セバスチャン・アンドリューが演じている。

カート・ウィマーは『リベリオン』を手掛ける際、ファイト・コレオグラファーのジム・ヴィッカーズと協力して「ガン=カタ」という 新しいスタイルのアクションを編み出した。それはガン・アクションにカンフー・アクションや日本の時代劇の殺陣のような「型」を 持ち込み、様式美として仕上げたものだった。『リベリオン』の劇中では、「銃撃戦を統計学的に分析し、敵の射線を避けるため死角に身 を置いて攻撃する」という、ハッタリ満開の説明があった。
ところが、カート・ウィマーとしては、『リベリオン』のガン=カタには不満が残ったらしい。
そこで今回、彼は邪魔な存在であるジム・ヴィッカーズを排除し、「これが本物のガン=カタである」というところを見せ付けようと した。
しかし、ジム・ヴィッカーズと袂を分かって自由にガン=カタをやれるようになったこと、『リベリオン』より予算が増えてCGを多く 使えるようになったことが、いずれもマイナスにしか作用していない。

ウイルス研究所の警備隊との戦いは、銃を持っていないので、ガン=カタではない。屋上でのバトルでは銃を撃っているが、ただの カッコ悪い銃の撃ち方にしか見えない。
で、屋上から飛んで外に着地すると警備隊に包囲されるので、どうするのかと思っていたら、髪が黒から紫に変化すると全員が殺されて いる。つまり、敵を倒す動きを描かないのだ。
アホですか。
そりゃあ、そこを省略することでクールな効果を出すタイプの映画もあるだろう。
でも、この映画に関しては、とにかくガン=カタを見せなきゃ話にならんでしょ。
そこだけが唯一の売りと言ってもいい映画なんだから。

研究所からバイクで逃走するアクションは、CGで加工しまくっているので、迫力や凄味が全く伝わらない。
バイク・アクションそのものだけでなく、背景もCG加工してあるから、コンピュータ・ゲームの映像みたいな感覚なのよね。
ヘリに突っ込むシーンも、それが現実世界で展開されるスタント・アクションなら凄いと思ったかもしれないが、CGでは全くだ。
じゃあCGの質は素晴らしいのかというと、そうでもない。
むしろ現代劇としてやってくれた方が、少しはマシだったかもしれない。

ブラッド・シノワとの戦いでは敵の銃弾をかわしているけど、ヴァイオレット本人は銃を所持していない。
それってガン=カタなのかな。
だとしたら、明らかに『リベリオン』よりカッコ悪くて見栄えがしなくなっているぞ。
ってことは、ガン=カタの生みの親であるカート・ウィマーよりも、ジム・ヴィッカーズの方が優秀だったってことか。

墓地や教会におけるヴァイオレットと抵抗軍とのバトルも、どちらも銃を持っていないので、ガン=カタとは呼べない。
なぜかカート・ウィマーは今回、やたらとブレード・アクションをやりたがる。クライマックスのダクサスとの戦いも、やはり銃ではなく ブレード・アクション。しかも真っ暗だから(夜という意味じゃなくて、本当に照明を消した真っ暗闇の中で戦うのだ)、何をやって いるのか、ほとんど分からないという始末。
演出としてアホすぎるぞ。
この映画で繰り広げられた格闘アクションが、カート・ウィマーの考える「本物のガン=カタ」だということなら、本物のガン=カタって 、殺陣としてはあまりカッコ良くないモノということになる。
そんでジム・ヴィッカーズと別れるにしても、半ば香港映画なんだから、香港映画界で活躍している武術指導者を招聘すればいいものを、 起用していないんだよなあ。

アクションだけでなく、話も散々な出来映え。 まずヒロインのキャラクターやバックグラウンドを表現するために重要な部分を、全てナレーション・ベースで処理してしまう。
「その話は1作目で描いていて、これは続編」という感じの構成だ。
しかし、もちろん本作品は2作目ではない。
夫や子供を失ったこと、度重なる実験を強いられたこと、そこでの彼女の悲みや怒りは、そういう処理方法では、まるで伝わってこない。

「ヘモファージは犬歯が長くなるのが特徴で、ヴァンパイアと呼ばれた」と説明されるが、だったらホントの吸血鬼という設定でも いいんじゃねえかと思ってしまう。
だってさ、犬歯が長くなるだけじゃなくて、光に敏感になって、頻繁に輸血が必要で、身体能力は高くなるんだから、ほとんど ヴァンパイアじゃねえか。
十字架やニンニクという弱点は無いし、コウモリやオオカミには変身しないけど、『ブレイド』や『アンダーワールド』に出て来る ヴァンパイアだったら、ヘモファージと似たようなモンだぞ。

なぜナーヴァはケースの中身が少年だと分かっていたのか。
入れ物より大きい少年が入っているケースの仕組みはどうなっているのか。
ブラッド・シノワの目的は何なのか。
なぜ抵抗軍とブラッド・シノワは同じタワーにアジトを構えているのか。
そんな目立つ場所にアジトを構えていたらバレバレなはずなのに、なぜ政府は今まで攻撃しなかったのか。
ヴァイオレットの髪の毛が黒になったり紫になったりするのは何の意味があるのか。
ダクサスか鼻に詰め物をしてカッコ悪い見た目になっているのは何の狙いなのか。
とにかくワケの分からんこと、説明不足な箇所が幾つもある。

ヘモファージのヴァイオレットが、なぜウイルス研究所のチェックを通過できたのか不思議に思っていたら、「代謝抑制剤で血液の構成を 変えていた」ということが明らかになる。
なんじゃ、その見事なほどの御都合主義は。
で、その後、ヴァイオレットは天井へ飛んで逆さになって警備隊を撃つが、それがヘモファージの身体能力なのかと思っていたら、重力 レベラーとかいう装置を使っているらしい。
おいおい、そんな装置を使うことで人間離れした動きが出来るのなら、ヘモファージの身体能力って何の意味があるのよ。

ヴァイオレットはニードルタワーの上の階へと逃亡したはずなのに、ブラッド・シノワを全滅させた後、タワーの外に脱出して いる。
どうやって1階まで下りたんだよ。
抵抗軍に追われていたはずだろ。
その追っ手に捕まらずに上の階から1階まで下りることが出来るぐらいなら、最初から上じゃなく下へ逃走すれば良かったじゃねえか。 そこ、どうなってるんだよ。

タワーの外に出たヴァイオレットは車を走らせるが、なぜか地下鉄に乗り換える。
路線が決まっていて逃げ場の無い地下鉄に乗るよりも、そのまま車で逃走した方が良かったんじゃないのか。
で、わざわざ地下鉄に乗るからには、そこで何かアクションがあるのかと思ったら、何も無いまま駅で降りている。で、そこから歩いて 移動する。
だったら、やっぱり車を使った方が良かっただろ。
っていうか、シックスの体内には追跡装置があるのに、なぜ追っ手はなかなか見つけ出すことが出来ずにいるのか。

ダクサスは照明を落とし、部下に暗視カメラで抵抗軍を銃撃させるが、自分の部下が全滅する。
でも、抵抗軍がどうやって暗闇の中で敵を全滅させたのか、その方法は全く分からない。
ダクサスが発砲すると、ナーヴァの仲間は耳を押さえて苦悶しながら倒れるが、ダクサスが何をどうやって一瞬で全滅させたのか、それも 分からない。

ヴァイオレットが守ろうとするガキが、ちっとも可愛くないってのも痛いなあ。
キャラとしても、見た目も、どっちも可愛くない。
初めてセリフを口にすると、これがまた可愛くない。
で、逃げる途中、ヴァイオレットは、シックスが喋れることにダクサスに気付いていないと察知する。
で、そのことが、そこからの展開にどう関わるのかと思ったら、まるで影響を及ぼさない。

途中でヴァイオレットがシックスを守ることを諦めて政府の手に渡そうとする展開があるが、どういう心情の移り変わりがあったのか、 サッパリ伝わらない。
統合省への突入を諦めてシックスと公園で遊び、そこで彼の死を看取るという展開もあるが、こちらも同様で、どういう心情の動きが あったのか、まるで伝わらない。
だから彼女の涙にも、こっちの心は全く揺り動かされない。
「ヴァイオレットがシックスを守ろうとする」というところで、彼女が子供を失っている過去を絡めようとしているが、子供を失った設定 はナレーション・ベースで処理してあるので、その心情は全く伝わらない。
まあ「会ったばかりの子供を守るために戦う」という展開は、別に「過去に子供を失っている」という設定が無くても、何の問題もなく 出来るけどね。『グロリア』とか、そんな感じだし。
っていうか、この映画って、ようするに『グロリア』だよね。

ヴァイオレットが子供を失っていることは、映画に何の影響も及ぼしていない。
っていうか子供だけじゃなくて夫も失っているのに、そこは全くシカトされている。
ヘモファージは頻繁な輸血が必要だという設定も、何の意味も無い。劇中、ヘモファージが血液の不足で苦悶するようなシーンは一度も 無い。
ヴァイオレットの残り寿命がわずかだという設定も、何の意味も無い。
そのことで彼女が焦ったり不安になったりすることは無いし、逆に「寿命わずかだから死を恐れない」というわけでもない。

抵抗軍と政府軍の対立や、途中で手を組むという展開、この2つとは別の独立組織ブラッド・シノワがあるという設定にも、何の意味も 無い。
抵抗軍は、ダクサスと手を組んだ次の登場シーンで、ヴァイオレットによってあっという間に全滅させられる。
ブラッド・シノワに至っては、何の目的で組織されているのかさえ分からない内に、一瞬で全滅して、それで出番が終わっている。

(観賞日:2010年2月14日)

 

*ポンコツ映画愛護協会