『男と女の不都合な真実』:2009、アメリカ

アビー・リッチャーは、サクラメントのテレビ局「KPQU」でモーニングショーのプロデューサーを務めている。ラリーとジョージアの夫婦がニュースキャスターを務めているが、この2人は仲が悪い。ラリーはジョージアと一緒に仕事をすることを嫌がるが、アビーが説得する。助手のジョーイがスカイ・カムの故障を報告すると、すぐにアピーは対応する。スタッフのドリーとジョシュが番組で扱う内容を巡って言い争い、ジョージアは料理コーナーのシェフがカニアレルギーの自分にカニ料理を出したことで苦情を訴える。
アビーは局長のスチュアートに呼び出され、番組の低視聴率について苦言を呈される。アビーはデートを中止して視聴率アップの作戦を練ろうと考えるが、ジョーイが「外へ出て人間観察しなきゃ。またドタキャンしたら、もう終わりよ」と説く。アビーはレストランへ行き、デート相手のジムと会う。アビーは事前にジムの素性を調査しており、「理想の条件10項目の9つはクリアしてるわ」と言う。さらに彼女は、会話が途切れた時のための話題リストも用意していた。そんな彼女にジムは戸惑い、デートは上手く行かなかった。
アビーは帰宅し、飼い猫のダルタニアンに話し掛ける。ダルタニアンがテレビのリモコンを触り、生放送の恋愛指南番組『これが真実だ』が画面に写し出された。司会者のマイク・チャドウェイは偉そうな態度を取り、アビーが持っていた恋愛指南書を全て否定して「男は全員が単純だ。そんな本を読んでも時間と金の無駄だ」と言い放った。さらにマイクは、「結局は見た目だ。誰も人格には一目惚れしない」「男を勝ち取りたいならフェラチオだ」と述べた。マイクの発言や態度に腹を立てたアビーは電話を掛け、彼に文句を付けた。アビーが理想の男性像を語ると、マイクは「妄想だ。白馬の王子様を追うのはやめろ」とバカにして電話を切った。
翌朝、アビーが番組会議に出席すると、スチュアートは新しいコメンテーターとしてマイクを起用すると告げる。アビーは反対するが、スチュアートは既にマイクを雇って呼び寄せていた。マイクの下品で生意気な口ぶりに、ますますアビーは腹を立てた。彼女はラリーとジョージアに、本番でマイクを徹底して批判するよう指示した。しかしマイクは批判的なコメントを軽く受け流し、ラリーとジョージアが仮面夫婦であることに切り込んだ。
アビーはCMに入るようディレクターのクリフに指示するが、スチュアートが「そのまま続けろ」と命じた。マイクはラリーをフニャチン呼ばわりし、最終的には本番中にも関わらずジョージアとキスさせた。テレビ局には多くの視聴者から電話が掛かって来るが、好意的な意見ばかりだった。しかも女性からの肯定的な意見が圧倒的だったため、スチュアートはアビーに「ニュースを短くしてマイクのコーナーを全面に押し出す」と告げた。マイクは隣の家に住む甥のジョナから恋愛相談を受け、アドバイスする。ジョナの母であるエリザベスは、マイクのモーニングショー出演をケーキで祝福した。
その夜、アビーは逃げ出したダルタニアンを捕まえるため、庭の木に登った。すると、向かいに引っ越してきたばかりのコリンが風呂から出て来るのが見えた。腰にタオルを巻いたコリンの姿に見とれていたアビーは、足を踏み外して逆さ吊りになってしまった。悲鳴を耳にしたコリンが、慌てて助けに駆け付けた。整形外科医だというコリンは、アビーの怪我を手当てしてくれた。「何かあったら電話して」と名刺を差し出したコリンに、アビーはメロメロになった。
翌日、アビーはマイクに、「下品な言葉を使わず、指示に従って」と要求する。しかしマイクは「俺の機嫌を損ねたらクビなんだろ」と言い、まるで耳を貸さなかった。彼はバンビとキャンディーという若い女性のバンビとキャンディーをビキニ姿にして、ゼリーのプールでレスリングをさせた。アビーは不快感で一杯になるが、その日の視聴率は一気に上がって12パーセントを超えた。「貴方の男女観は真実じゃない」とアビーに批判されたマイクは、「君の理想の男性像も妄想だ」と言い返した。
アビーが「その理想に巡り合ったわ」と告げると、マイクは「デートに誘われたのか?誘われなかっただろ」と言う。アビーはコリンに電話を掛け、その場でデートの約束を取り付けようとする。マイクは電話を勝手に切り、腹を立てるアビーに「今、彼は君からの電話を待ってる。付き合いたいなら俺の言う通りにしろ」と告げた。「取り引きしよう。俺の指示で彼を落とせたら、仲良く仕事をする。もし落ちなかったら、俺が番組を降りる」とマイクが提案すると、アビーは承諾した。
マイクはアビーに、「いつまでも男は成長しないから説教するな」「嘘でもいいから彼の話に笑え」「男は見た目に弱い」「男は聞いてないから悩みを相談するな」といったルールを説明する。彼はアビーにセクシーな服を購入させ、髪型も変えさせて「天使と悪魔の2つの顔を持つんだ」と説いた。マイクの作戦が成功し、アビーはコリンから野球観戦に誘われた。マイクは野球場へ行き、イヤホンを通じてアビーに行動を指示する。コリンはアビーを家まで送り、キスをした。アビーは大喜びし、マイクに感謝の言葉を告げた。
ある日、番組を放送しているスタジオにジョナがやって来た。女の子からダンスに誘われたことを相談するジョナに、マイクはアドバイスした。マイクはアビーに質問され、ジョナが甥であることを教えた。またコリンからデートに誘われたアビーは、「セックスはいつまで待てばいいの?」と相談する。マイクは「焦らして繋ぎ止めろ」と助言し、いつから御無沙汰なのか尋ねる。11ヶ月前からセックスしていないことをアビーが明かすと、マイクはオナニーするよう促した。
マイクはアビーに、オナニー用の道具としてバイブ付きパンティーをプレゼントした。コリンから「デートの時間に遅れる」というメールが届き、アビーは自宅でバイブ付きパンティーに履き替えた。そこへスチュワートとマイクが来て、役員たちの接待に参加するよう求める。アビーがデートのことを告げると、スチュアートは「その彼も連れて行こう」と口にした。アビーは会食の席でバイブのリモコンを落としてしまい、それを拾った少年がスイッチを入れた。マイクはリモコンを持った少年に気付くが、面白いので放置した。新しい番宣についての説明を求められたアビーは、性的興奮と奮闘しながら仕事を果たした。アビーが絶頂に達したのを確認してから、マイクは少年のリモコンを回収した。
アビーとコリンの関係は順調に進展し、番組の視聴率も好調に推移した。アビー週末にタホ湖でデートする約束をコリンと交わし、そこでセックスを解禁しようと考える。マイクは全国放送の人気番組であるクレイグ・ファーガソンの『レイト・レイト・ショー』に呼ばれたことをエージェントのリックに知らされ、大喜びした。アビーはスチュアートから、CBS傘下が倍額のギャラでマイクにオファーを出すことを聞かされた。アビーは「マイクを説得しろ。クレイグのショーでウチの番組を宣伝させ、3年契約を迫れ」と命じられる。アビーは仕方なく週末のデートほキャンセルし、『レイト・レイト・ショー』の収録が行われるロサンゼルスへ向かった…。

監督はロバート・ルケティック、原案はニコール・イーストマン、脚本はニコール・イーストマン&カレン・マックラー・ラッツ&キルステン・スミス、製作はスティーヴン・ルーサー&キンバリー・ディ・ボナヴェンチュラ&デボラ・ジェリン・ニューマイヤー&トム・ローゼンバーグ&ゲイリー・ルチェッシ、製作総指揮はアンドレ・ラマル&エリック・リード&キャサリン・ハイグル&ナンシー・ハイグル&カレン・マックラー・ラッツ&キルステン・スミス&ライアン・カヴァナー、撮影はラッセル・カーペンター、美術はミッシー・スチュワート、衣装はベッツィー・ハイマン、編集はリサ・ゼノ・チャージン、音楽はアーロン・ジグマン。
出演はキャサリン・ハイグル、ジェラルド・バトラー、エリック・ウィンター、シェリル・ハインズ、ケヴィン・コナリー、ジョン・マイケル・ヒギンズ、ブリー・ターナー、ニック・サーシー、ボニー・サマーヴィル、イヴェット・ニコール・ブラウン、ネイト・コードリー、ノア・マシューズ、ジェシー・D・ゴーインズ、ジョン・スローマン、アレン・マルドナード、スティーヴ・リトル、ダン・キャラハン、テス・パーカー、アリエル・ヴァンデンバーグ、ロッコ・ディスピリート、ヴァレンテ・ロドリゲス他。


『キューティ・ブロンド』『ラスベガスをぶっつぶせ』のロバート・ルケティックが監督を務めた作品。
脚本は『キューティ・ブロンド』のカレン・マックラー・ラッツ&キルステン・スミスと、これがデビュー作のニコール・イーストマン。
アビーをキャサリン・ハイグル、マイクをジェラルド・バトラー、コリンをエリック・ウィンター、ジョージアをシェリル・ハインズ、ジムをケヴィン・コナリー、ラリーをジョン・マイケル・ヒギンズ、ジョーイをブリー・ターナー、スチュアートをニック・サーシーが演じている。

冒頭、アビーはジョーイからスカイ・カムが故障したと言われたり、ラリーがジョージアのことで愚痴をこぼしたり、ドリーとジョシュの言い争いを見たり、ジョージアから料理のことで抗議を受けたりする。
しかし、それは「番組の低視聴率」と直接的に結びついている描写という印象を受けない。
実際の番組が始まると、チキンのカチャトーレだと思っていた料理がカモだと知ったジョージアが顔を強張らせ、アビーが焦っているけど、どういうことか良く分からない。ジョージアはカニだけじゃなく、カモもアレルギーなのか。
だとしても、それは分かりにくいし、「だから低視聴率なのだ」という印象としても弱い。

アビーが担当している番組の内容は、そんなに退屈極まりないという印象を受けない。特に破綻も無く、良くも悪くも「ごく普通」だ。
「普通だから視聴率が低いのだ。だから思い切った変革で奇抜なことをやろうとスチュアートは考えた」という風に話を進めて行くなら、まだ分からないでもない。
しかし、そういう流れは示されていない。スチュアートは単に視聴率の低さを指摘するだけだ。
そうであるなら、最初に描かれる番組のシーンは、「低視聴率も納得できる内容」としてのアピールが弱すぎる。

アビーのデートにおける態度で、ジムが戸惑っているのは分かる。
カットが切り替わると帰宅したアビーの姿が写し出され、デートが失敗に終わったことも分かる。
しかし、そこはもっとハッキリとした形で、「ジムはウンザリしているが、アビーは失敗の理由が良く分かっていない」ということを見せた方がいい。
ダメな原因が分かっていれば改善するはずだし、ってことはアビーは自分が戦略を間違っていることに気付いていないはずなんだから、そこは分かりやすく提示おくべきだ。

「アビーは非現実的な理想の相手を追い求めているせいで男と上手く行かない」ってことを、観客に教えるタイミングが遅い。
ジムとデートをしている時点では、それが原因で失敗しているという印象は受けない。
アビーが事前に素性調査をしたり、デートを上から目線で仕切ろうとしたりすることが失敗する原因という風に見える。
マイクの番組に電話を掛けるシーンで、初めて彼女が男性に求める10の条件が明確になるが、それはデートの時か、それ以前の段階で観客に教えておくべきだ。

アビーがマイクの発言や態度に腹を立てて番組に生電話を掛けるってのは、キャラクターの動かし方として違和感を覚える。アビーが素人ならともかく、テレビ番組のプロデューサーなんだし。
スチュアートがマイクの下品で生意気な態度や発言を全面的に歓迎し、大喜びしているのも、キャラクターの動かし方に違和感を覚える。
視聴率を上げようとしているのは、毎朝9時からの番組でしょ。
そこで下品なことをやりまくるマイクにノリノリってのは、テレビ局の局長としては、なんか違うんじゃないかと。

アビーとの対比で、スチュアートを「朝から下品なことをやるのに大賛成」というキャラにしているのも分かるけど、やや無理を感じる。
マイクに下品なことをさせれば視聴率が上がると決まっているわけでもないし。マイクの恋愛指南番組が大人気ってことならともかく、そういうことへの言及は無かったわけだし。
だから、なぜスチュアートがマイクを気に行って出演させたのかも良く分からん。そういうやり方でラリーやジョージアが憤慨して降板を言い出したら、大変なことになるはずなんだし。
マイクのコーナーが始まると電話が殺到するが、抗議ではなく高評価ばかりで、しかも女性の93パーセントが肯定的ってのも、かなり強引な展開に思える。

アビーはコリンと出会った翌朝、ジョーイに「彼は嘘みたいに完璧なの」と言う。
しかし、前夜にチラッと会っただけであり、アビーは明らかにルックスだけでコリンに惚れている。だから、何がどう完璧なのかはサッパリ分からない。
アビーが理想のタイプに挙げていた10の項目なんて、まだ出会ったばかりなので該当しているかどうかは良く分からないはずなんだし。
「結局はアビーも見た目で選んでる」という事実を誰かが指摘したり、本人が後になって気付いたりする流れでもあればともかく、そうじゃないんだよな。
だから、その点が引っ掛かったままになってしまう。

私は自分が上品なモラリストだとは思わないが、「これは現実だ」と言っている割りには、マイクが番組で男女の真実に切り込んでいるのではなく、ただ単に下品なことを言ったりエロいことをやったりしているだけにしか思えない。そこに創意工夫や深い観察眼を感じない。
だから、そんな安易な下ネタ路線で視聴率が大幅アップし、それが全面的に肯定されるという筋書きに、それこそ低俗さを感じてしまう。
これは見せ方の問題で、例えば「苦し紛れにエロ路線に走ったら、たまたま成功した」とか、「ハプニング的にエッチな出来事が起きたら数字が上がった」とか、そういうことなら受け入れやすい。
「自信満々の偉そうな奴が、やってることは単なる安易な下ネタなのに大人気で視聴率も大幅アップ」という形だと、そんなマイクに好感が持てなくなってしまうのだ。

「やり方や態度はともかく、マイクの言ってることには含蓄があるよな」という風にも感じない。
彼が番組で話している内容は、確かに男女の真実を指摘している。しかし、「そんなの、わざわざ言われなくても、とっくに知ってる」という事柄ばかりなのだ。
「男は見た目で女を選ぶ」とか、「白馬の王子様なんて女の妄想に過ぎない」とか、そんなの誰でも知ってるでしょ。
マイクの恋愛指南は、ものすごく薄っぺらいのだ。

マイクがアビーにアドバイスする展開になってから、ようやく恋愛カウンセラーとしてのセット力が生じる。
だから、そういう説得力が伝わらない中で番組の視聴率がアップしているというのは、見せ方として上手くない。
そもそも、「番組の視聴率を上げなきゃならない」という筋書きと、「アビーがマイクから恋愛指南してもらう」という筋書きが、上手く絡み合っていないんだよな。
マイクのアビーに対する恋愛指南が始まると、「番組の視聴率を上げる」という筋書きは完全に消えているし、そこに相乗効果は無い。

アビーが嫌っていたマイクの助言を全面的に聞き入れるようになるのも、マイクが彼女に恋愛指南を始めるのも、ちょっと強引な展開だと感じる。
そういう意味も含めて、恋愛指南の部分が本作品のメインとして扱われているのなら、番組に関する筋書きは削除して、「恋愛が下手だったアビーが、口は悪いけど能力は確かなマイクのアドバイスで変身する」という話に絞り込んでしまった方がいい。
番組関連の部分は、そんなに面白くもないし、あまり膨らまないし。

脇役のキャラクターを全く活用できていないってのは、この映画の欠点の1つだ。
特にジョナなんかは、アビーがマイクを見直したり、この2人の距離を近付けさせたりする役割として利用すべきだろうに、スタジオへ遊びに来た後は、もう二度と登場しない。
マイクの妹であるエリザベスも1シーンのみの登場で、全く存在意義が無い。ジョーイも「アビーの話し相手」という程度で、活用度は低い。
アビーの恋の相手であるコリンですら、ほぼ「マイクの噛ませ犬」という程度で終わっている。マイクがコリンと絡むのは会食シーンだけだし、会話さえ交わさない程度の薄い絡みだから、アビーを含めた三角関係の構図も全く見えて来ない。

アビーがバイブ付きパンティーでエクスタシーに達しながらプレゼンする会食シーンは、面白いっちゃあ面白いが、リモコンの存在に気付いていながら放置するマイクは意地悪な奴にしか見えず、そこに女性への思いやりや優しさは無い。
そんな男だから、もちろんアビーも彼には感謝こそすれ、惹かれてはいない。アビーがマイクに惚れるのは、映画も残り20分ぐらいになってから。
「それまでも好意は抱いていたが、それが恋心に変わる」という流れは無い。「以前から何となく揺れる思いはあったが、それがハッキリと傾く」という流れも無い。
そこまでは全く恋の予感なんて無かったのに、残り少なくなって思い出したように、急に火が付くのだ。
恋愛劇としては、その描写を完全に失敗している。終盤で慌ただしく片付けても、アビーとマイクのカップルを祝福できんよ。

(観賞日:2014年11月12日)

 

*ポンコツ映画愛護協会