『アンリミテッド』:2015、アメリカ

メッセンジャーとして働くカムは、仕事でアップダウンへと自転車を走らせていた。一方、パルクール集団の4人は、軽やかに建物の屋根を移動していた。メンバーのニキが車道に着地したため、向こうから来たタクシーは慌ててハンドルを切った。その後ろを走っていたカムはタクシーを避けられず、正面からぶつかってしまう。その勢いで投げ出されたカムは、ニキと激突した。「大丈夫?」と問われたカムは、体の痛みを感じながらも「平気だ」と答える。男が追い掛けて来たため、ニキは慌てて逃走した。
カムはチェンが率いる中国系組織から多額の借金をしており、毎月1500ドルずつ返済しなければならない。だから金を稼ぐ必要があったが、自転車が壊れて仕事が出来なくなった。チェンの手下であるジェリーとフーはカムから今月の返済額を奪い取り、「残り1万5000ドルだ。返済日は守れ」と告げて立ち去った。カムは家賃も滞納しており、大家のアンジーに「支払いが遅れそうなんだ」と釈明した。アンジーは息子のジョーイが世話になっていることもあって了承するが、「私も厳しいから、早めにお願いね」と述べた。
カムは父の形見である古いポンティアックを修理したいと考えているが、そのための時間も部品も足りなかった。翌日、カムは自転車便の社長であるロニーから電話を受け、「今日は欠勤か」と問われる。「自転車が無いんだよ」とカムが説明すると、ロニーは「お前の彼女が新しい自転車を置いて行った」と告げる。カムが事務所へ行くと、「安全運転を」というメッセージと共に新品の自転車が置いてあった。街に出たカムはニキを見つけ出し、お礼を言おうと声を掛ける。しかしニキが逃げ出してしまったので、慌てて後を追った。
すぐにニキがパルクールをしていることに気付いたカムは、「どこで習ったの?」と問い掛ける。ニキは軽く笑い、パルクールをやってみるようカムに持ち掛ける。カムが試しにやってみると、ニキは「向いてないわ」と告げる。しかしカムは「君もやってみてよ」と促し、軽々と駆け回る彼女の後を追った。カムが失敗すると、ニキはアドバイスをくれた。そこへニキの兄であるディランと仲間のテイト&ジャックスが現れ、威嚇するような態度でカムを取り囲んだ。
ディランは「パルクールは危険なんだ」と冷笑し、ニキたちと共に立ち去った。カムは自転車を停めておいた場所に戻るが、チェーンを切られて盗まれていた。彼は工具を売却し、金を工面した。翌日からカムは、独学でパルクールの練習を開始した。たちまち上達したカムの様子を見たディランは、一緒に練習しようと誘いを掛けた。彼は秘密の練習場所があることを教え、ブルックリンの埠頭にあるへ夜明けに来るよう指示した。
約束通りに埠頭へ赴いたカムは、ディランから仲間を紹介される。ニキたちの練習場所とは、使われなくなった輸送船のルージェイン・ターミナルだった。カムたちが練習していると、パルクール集団のリーダーであるミラーがやって来た。カムはメンバーから質問攻めに遭い、クイーンズ出身であること、2年前に半年だけ少年院に入っていたこと、窃盗経験はあるが銃は使わないことなどを話す。自分の仕事を説明したカムが「君らの仕事は?」と逆に尋ねると、ミラーは「捕まらなければ何でも」と答えた。
その日が返済の期限だと思い出したカムは、慌ててジェリーの元へ行く。しかしジェリーはポンティアックをガレージから運び出しており、「車で5000ドルは負けてやるから、残りを来月に返せ」とカムに告げた。ジェリーたちがジョーイに近付いていたため、カムはアンジーから「もう私たちに近付かないで」と追い出されてしまった。カムは輸送船へ行き、ディランに「仕事の仲間に入る。何でもいいから入れてくれ」と告げた。
ニキはカムの加入に反対するが、ミラーは「俺たちは闇の運送屋をやってる。依頼主から証拠を消せと言われれば従う。ルールは2つだけ。問題があれば俺に言う。仕事以外でもチャイナタウンには近付かない」と語ったミラーたちは覆面の武装グループを装ってカムを騙し、彼を追い掛けたり荷物の中身を白状するよう脅したりする。カムが最後まで口を割らなかったので、彼らは覆面を外して「合格だ。もう仲間だ」と告げた。
仕事の報酬を受け取ったカムはアンジーの職場へ行き、滞納していた家賃よりも多い金を渡す。「あの連中は?」と訊かれたカムは、「母が病気になった時、あちこちで金を借りた。でも母が死ぬ直前に、結局は家が差し押さえられた」と話した。アンジーは彼に、「悪の道は深入りすると抜け出せなくなるわ」と忠告した。カムはジェリーたちの元へ行き、返済期限を延長するよう頼む。しかしジェリーはフーと共にカムを暴行し、「友人や子供に手を出す可能性もあるぞ。2週間後に1万ドルを払え」と脅した。
カムはディランたちに誘われ、クラブへ遊びに出掛ける。彼らと話したカムは、ミラーが過去に中国系組織と揉めたことがあり、ある失敗を犯してからは二度と近付かないようにしているのだと知った。カムはニキと踊り、雰囲気が高まったところでキスしようとする。しかしニキが拒んで店を出て行ったので、カムは後を追う。そこへミラーがバイクで現れ、ニキを後ろに乗せて去った。次の日、カムはニキから「ディランの失敗をミラーが解決してくれた」と釈明される。彼女は「ミラーから離れて」と告げ、声を荒らげるカムにキスした。カムはニキとのセックスに及んだ後、「借金があるんだ。返したら消えるよ」と告げた。
カムたちが仕事と練習を続ける中、ミラーは「来週にはデカい仕事がある。1人2万ドル以上になる」と告げる。彼はカムがニキと深い関係になったことに気付き、「世の中には秩序がある」と告げた。「2万ドル以上になる」と言われた仕事の日が訪れ、カムが仲間たちの車へ行くと、ミラーから「ニキは休みだ」と告げられる。仲間たちが銃を用意していたので、カムは「聞いてない」と困惑する。車は銀行へ向かうが、ディランは「今は銀行じゃない。ギャングが乗っ取った」と告げる。ミラーは「ベトナム系ギャングが資金洗浄してる。20万ドルは貯めてる」と言い、自分は車で待機する。カムはディランたちと共に覆面で顔を隠し、銀行へ乗り込むのだが…。

監督はダニエル・ベンマヨール、原案はT・J・スコット&ケヴィン・ランド&マット・ジョンソン、脚本はマット・ジョンソン、製作はマーティー・ボーウェン&ウィク・ゴッドフリー&D・スコット・ランプキン、共同製作はアダム・C・ロンディー&アレクシス・アレクサニアン、製作総指揮はロバート・コーサム&ダグラス・K・ブラットン&I・ジョン・ブラムリー、製作協力はミッチェル・スミス、撮影はネルソン・クラッグ、美術はダン・リー、編集はピーター・アムンドソン、衣装はジェニー・ゲーリング、音楽はルーカス・ヴィダル、音楽監修はローラ・カッツ。
主演はテイラー・ロートナー、共演はマリー・アヴゲロプロス、アダム・レイナー、ラフィ・ガヴロン、ルシアーノ・アクーナJr.、ジョシュ・ヤードン、ジョニー・ウー、サム・メディーナ、アミラー・ヴァン、クリステイン・スティール、ワイ・チン・ホー、クリス・ジャクソン、ショーン・ラヒル、アンドリュー・エルヴィス・ミラー、ドゥーナ・ムーナ、スコット・ジャクソン、テディー・カネズ、ヘンリー・ユック、ジョン・セナティエンポ、ブライアン・マイケル、ジョセフ・ハーレル他。


「トワイライト」シリーズで人気者になったテイラー・ロートナーの主演作。
脚本は『トルク』『イントゥ・ザ・ブルー』のマット・ジョンソン、監督は『サバイバル・フィールド』のダニエル・ベンマヨール。
カムをテイラー・ロートナー、ニキをマリー・アヴゲロプロス、ミラーをアダム・レイナー、ディランをラフィ・ガヴロン、テイトをルシアーノ・アクーナJr.、ジャックスをジョシュ・ヤードン、ジェリーをジョニー・ウー、フーをサム・メディーナ、アンジーをアミラー・ヴァン、ジョーイをクリステイン・スティール、チェンをワイ・チン・ホー、ロニーをクリス・ジャクソンが演じている。

この映画の撮影が終了したのは2013年8月だが、公開されたのは2015年だ。
完璧主義者のダニエル・ベンマヨール監督が編集作業に時間を掛けるなどしたことが理由らしいが、そのせいで完全にタイミングを逸してしまった。
「トワイライト」シリーズ最終作『ブレイキング・ドーン Part 2』のアメリカでの封切が2012年11月だから、撮影直後に公開しておけば、まだ少しは便乗できたかもしれないのだ。
しかし2015年になると、もはや「トワイライト」シリーズのブームは終わっている。

もちろん、「トワイライト」シリーズが終わった後もテイラー・ロートーナの人気が持続していれば、それどころか俳優としてステップアップしていれば、何の問題も無かっただろう。
それどころか、逆にプラスに働いたかもしれない。
しかし、「トワイライト」シリーズのメインキャスト3人の内、クリステン・スチュワートが『アクトレス 〜女たちの舞台〜』で数多くの映画賞を獲得し、ロバート・パティンソンがクローネンバーグ作品などで地味ながらも着実にキャリアを重ねているのに比べると、テイラー・ロートナーは一人だけ取り残されている印象がある。

テイラー・ロートナーにAクラスの俳優になれる素養があるとは感じないが、この映画の彼は頑張っている。
主人公はメッセンジャーとして自転車で疾走するだけでなく、パルクールにも参加するキャラクターだが、テイラーはスタント・ダブルを使わずに全てのアクションを担当している。
「トワイライト」シリーズの時には何の魅力も感じなかったけど、本作品の彼は嫌いじゃないよ。なんか「どストレートなB級アクション映画スター」っぽい匂いを感じるのでね。
だからこそ、格闘アクションもやってくれたら良かったのに。

しかし残念ながら、そんなテイラー・ロートナーの「B級アクション映画スター」としてのレベルに、映画の演出や脚本が全く追い付いていない。
それは序盤から顕著に表れていて、まずオープニングで「メッセンジャーとして自転車で街を疾走するカム」と「パルクールで駆け回るニキたち」を並行して見せるのが間違い。
そこはカムの運動能力を見せたいのなら彼だけに集中すべきだし、パルクールの凄さを見せたいのならニキたちだけを見せるべき。
どっちも見せようとして、互いのアピール力を削いでいる。

どっちを優先すべきかと問われたら、そりゃあ間違いなくカムだよ。
これが「冴えない主人公がパルクールと出会い、やがて才能を開花させていく」という話なら、登場した時点でのカムは「全く運動能力に長けていない若者」ってことになるから、それならニキたちの凄さを見せておくべきだ。
しかし、カムは「メッセンジャーとして自転車を猛スピードで走らせ、混雑する車の間を軽やかに抜けて行く」という能力を披露しているんだから、そこは彼の妙技を存分にアピールすべきだろう。

カムはガレージに古いポンティアックを保管しており、それを修理することに執着している。ポンコツ車を修理することには固執するくせに、大事な商売道具である自転車は、ちょっと前輪が曲がっただけで簡単に捨ててしまう。
それは違和感が強いぞ。
自転車が無ければ仕事が出来ないってこともあるんだし、なぜ修理しようとは思わないのか。
「全額を借金取りに奪われたから修理に出せない」ってことかもしれないけど、自力で直そうとする努力はしてみようぜ。
間違いなく、車よりも自転車の方が直すのは楽なはず。

カムは多額の借金を抱えており、それを返済するために必死で稼がなきゃいけないと状況にある。
それなら、彼がヘラヘラしながら遊ぶような態度で自転車を走らせている様子を描くのは、得策とは言えないだろう。
もっと問題なのは、「彼が仕事をしている様子が無い」ということだ。彼が自転車で街を疾走する様子は冒頭から描かれているが、具体的に「何かの依頼を受けて、どこかへ荷物を届ける」という描写が欠けているのだ。
そこで「他の誰よりも多くの依頼を引き受け、せわしなく走り回って一つでも多くの仕事をこなそうとする」という姿を見せておかないと、「借金返済のために頑張っている」という印象は受けない。
15分ほど経過した辺りで、ダイジェストの中に「オフィスへ荷物を届ける」という様子が含まれる。
ただし、それは「パルクールの練習をしながら仕事をする」という描写なので、やはり「借金返済のために必死で仕事をこなしている」という内容ではない。

「カムがニキと出会い、彼女に惹かれてパルクールの練習を開始する」という展開を序盤から用意しておくのであれば、「借金返済のために稼ぐ必要がある」という初期設定は邪魔じゃないかと思うんだよね。
だって、「頑張って大金を稼ぐ必要がある」という切羽詰まった状況と、「惚れた女に近付くためにパルクールの練習を積む」という要素は、どう考えてもマッチングが良くないでしょ。
「パルクールの練習をする暇があったら、もっと金を稼ぐために頑張れよ」と言いたくなるわけで。

あと、「元々の運動能力やセンスが高かった」と解釈すべきなのかもしれないけど、カムがパルクールの練習を始めてから上達するペースが異常に早いわ。
日数が具体的に出るわけじゃないけど、体感だと長く見積もっても1週間程度でミラーから声を掛けられるぐらい上手くなっているのよ。
そりゃあ、そんなトコで長々と時間を掛けていたら、肝心な部分が短くなっちゃうだろうとは思うよ。そもそも「カムが練習を積んでパルクールの達人になる」という成長ドラマを描きたいわけではないしね。
ただ、それなら最初からカムを「パルクールの技術がある奴」という設定にしておいても良くねえかと思うんだよね。

カムを最初からパルクールの出来る奴ってことにした場合、具体的な話の流れとしては「カムが街で偶然にもニキと出会って惚れる。カムがパルクールの能力を持つと知ったミラーたちは、仲間に引き入れようとする」ってな感じになるだろう。
それで何の問題も無いわけで。「カムが練習を積む」という手順が無くなるだけでしょ。
もっと言っちゃうと、カムがミラーたちの仲間に入った後は表の仕事をするシーンは全く無いし、自転車の妙技が役に立つ展開も無いので、彼がメッセンジャーとして働いている設定も無意味に近いんだよね。
そこはミラーたちに無くてカムだけが持っている特殊技能なのに、終盤の展開で全く活用されないんだよな。

ミラーたちが覆面の武装グループを装ってカムを追い詰める入団テストのエピソードは、まるで必要性が無い。っていうか、無駄な道草にしか思えない。
まずカムと一緒にいたディランが撃たれた時点で、既に「ああ、ミラーたちの仕業だな。狂言だな」ってことがバレバレになっているという問題がある。
それがバレバレじゃなかったとしても、やっぱり要らない。今さら入団テストなんて要らないでしょうに。もはやカムを仲間に入れることは確定事項だし、こっちだって分かり切っているし。
しかも、入団テストという無駄なシーンは盛り込んでおきながら、一方で「カムが最初の報酬を貰うためにやった仕事」は省略されているのだ。
むしろ、そっちを見せるべきでしょ。

カムが多額の借金を背負っている理由は、なかなか明かされない。
きっとニキに明かす形で説明されるんだろうと思っていたら、なんとアンジーの職場を訪れるシーンで語られる。
それは予想外だったが、まるで歓迎できないぞ。なんでニキに言わないのよ。
っていうか、それは40分ぐらい経過してからのシーンなんだけど、なぜ序盤の内に説明しておかないのかと。
そこまで引っ張るメリットは何も無いぞ。むしろ最初の方で説明して、カムに同情させるための要素として使った方が美味しいでしょ。

カムはミラーから誘われて闇の運送屋に加わるのではなく、自ら希望している。
それは借金を返すためなんだけど、「2週間後に1万ドルを払え」とジェリーに脅されているわけだから、つまり「闇の運送屋をやったら借金を返せる」という確実な保証があるわけではないのだ。
そうなると、闇の運送屋に加わる動機に弱さが生じてしまう。
そこは例えば、「1ヶ月後に1万ドルが必要」という状況をカムが話してミラーが「その気があれば簡単に返せる」と告げるとか、何かしらの対策を用意しておいた方がいいだろう。

後半に入れば、当然のことながら話のテンポを上げた方がいいし、サスペンスなりアクションなりのレベルも高めた方がいい。
ところが、なぜか後半に入るとカムとニキの恋愛劇に重点を置いて、ダラダラと時間を費やしてしまうのだ。
その一方で、「闇の運送屋」として仕事をするシーンは、申し訳程度にチラッと入れるだけで、ほぼ皆無に等しい。
カムとニキとミラーの三角関係を絡ませたいのは分かるけど、そのせいで犯罪 アクション映画としてのテンポや面白味を削いでしまったら本末転倒でしょ。

カムが「2万ドル以上になる」と言われた仕事へ向かう段階で、既に本編の残り時間は25分程度になっている。
つまり、「起承転結」で言うならば、そこでようやく「転」が訪れるわけだ。
そこまでの「承」の部分が充実していたり、「転」へ向けた流れを作っていたりするのであれば、そのタイミングでも問題は無い。
しかし、ただダラダラと恋愛劇で時間を浪費しただけなので、「カムが銀行強盗に加担する羽目になる」という展開に入るのは遅すぎると断言できる。

「闇の運送屋」としての仕事ぶりが皆無に等しいまま時間が過ぎる中、「銀行を襲撃する」という展開が訪れる。
ギャングから金を強奪するってのは、明らかに「闇の運送屋」の仕事からすると専門外だ。それなのに、本物の悪党であるミラーと彼に弱みのあるディランはともかく、なんでテイトとジャックスも疑問を持たずにホイホイと引き受けているんだよ。
そもそも、パルクールの技能は全く関係ねえじゃねえか。
ただし、カムたちはギャングから逃げなきゃならない羽目になるから、シナリオとして下手な逆算であることは明白だけど、結果的にはパルクールの技能が役に立つ。
と思いきや、ジャックスがギャングに射殺されてカムが警察に逮捕されるので、「そこに来てパルクールの能力が役に立たないって、どういう計算だよ」と言いたくなるぞ。

「襲った金庫が空っぽだったので逃げました」という時点で、もう本編の残り時間は20分を切っている。
だから「ベトナム系ギャングとの因縁」でクライマックスを構築し、話を終わらせようとするのが、綺麗な形じゃないかと思われる。
ところが、そこから「実はミラーの正体が麻薬捜査局の汚職捜査官だった」→「カムが抜けようとすると、ミラーはニキが人質だと匂わせて次の仕事を手伝うよう脅す」→「ロシアの大物の隠れ家を襲ってダイヤを奪う」という展開が待ち受けている。
いやいや、もう残り時間が少ない中で、そこまで多くの新しい要素を詰め込むかね。メチャクチャな計算能力だな。

そんなことより、ベトナム系ギャングとの間に生じた因縁を解決しろよ。
「金庫が空っぽだった」ってのは「情報に間違いがあった」というだけで済ませているし、ベトナム系ギャングから狙われる問題は残ったままになるし、終盤になって片付けなきゃいけないのに、逆に散らかしてどうすんのよ。
そんで最終的には「ミラーがロシア人一家を惨殺するので怒ったカムがダイヤを奪って逃走する」という展開になり、ミラーが車で追って来るんだからカムは建物の上を移動すればいいものを、なぜか道路を逃げ続けるマヌケっぷり。
しかも、そこはカムの得意分野である自転車を使えるトコなのに、ただ走り続けるだけ。

カムは大きな建物に逃げ込んでミラーに追い詰められるが、そこはチェンの縄張りだった。過去にミラーが失敗した相手はチェンであり、縄張りに近付かないという約束を破ったため、捕まってマカオ行きの船に乗せられる。
つまり、カムは自力でミラーを撃退したり問題を解決したりするわけではなくて、それまで借金のせいで困らされていた組織に助けてもらうのだ。
おまけにチェンはカムからダイヤを受け取ると無罪放免にして、借金までチャラにしてポンティアックも返却する。
中国資本が入っているわけでもないのに、なんで最後の最後になって急に中国系組織を持ち上げてんだよ。
あと、テメエが手を下したわけではないものの、カムはミラーがロシア人一家を惨殺する犯罪に加担しているのよ。それなのに罪悪感や後悔を全く見せず、ハッピーエンドになっているのは、いかがなものかと。

(観賞日:2016年8月18日)

 

*ポンコツ映画愛護協会