『あなたに逢えるその日まで…』:1997、アメリカ

グウェン・モスは幼い頃から両親や祖父母の運命的な出会いの話を聞かされ、いつか自分も運命の相手と巡り会えると信じていた。一方、ニック・ダウカンは幼い頃から険悪な両親の下で育ち、恋愛に対して不信を抱くようになってしまった。全く違う環境に育った2人だったが、どちらもTVドラマ『幸せ家族』を楽しみに見ていた。
大学院生になったグウェンは教授のグレゴリーと付き合っていたが、彼が男と浮気していることを知ってショックを受け、中退した。一方、ニックは高名な建築家ティモに自分の設計のプレゼンテーションを行うが、失敗に終わってしまう。
ゴーストライターとなったグウェンは、かつて『幸せ家族』で人気子役だったフランチェスカ・ランフィールドの自伝を書くことになった。一方、ティモの会社で働くニックは、フランチェスカが所有するアパート“ラ・フォーテュナ”の改築設計を任された。
ラ・フォーテュナの住人は公聴会で改築反対を訴え、グウェンも同調する。グウェンの書いた新聞の投書記事を読んで、ニックは仕事の妨害だと激怒する。グウェンは公聴会で知り合った市会議員ジョンと付き合うが、上手く行かない。一方、『幸せ家族』のファンだったことを隠してフランチェスカと付き合っていたニックにも、破局の時が訪れる…。

監督はスコット・ウィナント、脚本はウィニー・ホルツマン、製作はペニー・フィンケルマン・コックス&トム・ローゼンバーグ&アラン・ポール、共同製作はジュリー・ゴールデン&リチャード・S・ライト、製作協力はカレン・モンゴメリー&ジェームズ・マックエイド、製作総指揮はシガージョン・サイヴァッツォン&テッド・タネンバウム、撮影はボビー・ブコウスキー、編集はリチャード・マークス&ジョアンナ・カプッチルリ、美術はクレイグ・スターンズ、衣装はエニッド・ハリス&リタ・サラザール、音楽はマイルズ・グッドマン&テレンス・ブランチャード。
出演はジーン・トリプルホーン、ディラン・マクダーモット、サラ・ジェシカ・パーカー、ジェニファー・アニストン、クレイグ・ビアーコ、ニナ・フォック、アリス・ドラモンド、クリスティーン・エバーソール、マイケル・タッカー、レッグ・ロジャース、カシ・レモンズ、パトリック・マラハイド、スティーヴン・アンティン、スーザン・ウォルターズ、ケイル・ブラウン他。


ジーン・トリプルホーン、ディラン・マクダーモットが共演した恋愛劇。グウェンをトリプルホーン、ニックをマクダーモット、フランチェスカをサラ・ジェシカ・パーカー、グウェンの親友デビーをジェニファー・アニストン、ジョンをクレイグ・ビアーコが演じている。

てっきりロマンティック・コメディーだと思っていたのだが、微妙に違っていた。
これは、コメディーがほとんど介入しないニックとフランチェスカのロマンスと、ロマンスの色が薄いグウェンのコミカル(というほどコミカルでもないのだが)な話を、くっ付けた作品だった。

もう少し詳しく説明すると、つまり、この作品は2つの話が同時進行する。
普通に考えれば、最初の内にグウェンとニックが出会って、それぞれが相手の存在も気にしつつ、他の異性との関係を続けて、最後に2人が結び付くという形になるはずだ。
ところがどっこい、この話、2人は残り5分を切るまで、互いの存在を認識していない。

実は小学校時代に一度だけ顔を合わせているが、そんな記憶は2人とも残っていない。2人をすれ違わせるにしても、互いに相手を認識していないわけだから、ただ何の関係も無い赤の他人が近くにいたけど顔を合わせなかったというだけだ。
おそらく狙いとしては、「運命の相手には気付かない内に巡り合っている」という形にしたいんだろう。しかし、2人が顔を合わせて互いを認識するシーンが遅すぎる。少なくとも前半の内に、互いの存在を(恋愛対象でなくていいから)認識させておいてほしい。

例えばトム・ハンクスとメグ・ライアンが主演した『めぐり逢えたら』でも、男女は最後の最後まで会わなかった。ただ、あの作品の場合は、会えない内から2人が互いの存在を意識していたし、それぞれの物語に相手の存在が強い影響を及ぼしていた。
しかし、この映画では、グウェンもニックも相手の存在に気付いていない(会話さえ交わしたことが無い)。だから、『めぐり逢えたら』のようなことは成立しない。
グウェンとニックの話はそれぞれ独立しており、距離をキープしたままでずっと進んでいく。

本人達は気付いていないが、実は互いの存在が恋愛に強く影響を及ぼすということも、ほとんど無い。全く影響を与えていないわけではないのだが、かなり遠いところからの影響力だし、それが直接的に恋愛に作用するという感じは無い。
そうなると、ただ単にグウェンとニックの出会いが遅すぎるだけで、これから恋愛が進展するところで話が終わるという風にしか受け取れない。
野心的な構成と言えるかもしれないが、ただ2つの話がバラバラに動いているだけとしか感じない。


第20回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の助演女優】部門[サラ・ジェシカ・パーカー]

 

*ポンコツ映画愛護協会