『エイリアン バスターズ』:2012、アメリカ

オハイオ州の田舎町グレンヴュー。エヴァンは町に貢献したいと日頃から考えており、ランニングクラブやコミュニティー・センターの スペイン語講座を作ったり、市議会で書記を務めたりしている。彼はコストコに12年勤務して、現在はシニア・マネージャーになっている 。ある夜、店を閉めたエヴァンは警備員のアントニオから市民権が取得できたことを聞かされ、祝福する。エヴァンが去った後、店内で 寛いでいたアントニオは、何者かの気配を感じる。警戒しながら店内を調べた彼は、何かに怯えて発砲する。慌てて逃げ出そうとした アントニオは、何かに襲われて死亡した。
翌朝、ニューヨークへ出掛ける妻アビーを見送ったエヴァンが出勤すると、店の前には警官が来ていた。店は封鎖されており、現場を指揮 しているブレスマン巡査部長はアントニオが野生生物に襲われて死亡したようだと告げた。アントニオは皮を剥がれ、現場には緑色の粘液 が付着していた。エヴァンはアメフトのハーフタイムを借りて「二度と事件を起こしてはならない。事件を解決したい」と熱く訴え、 自警団の結成を宣言した。
エヴァンの呼び掛けに応じて集まったのは、コストコの客として応対したことのあるボブ、警官志望だが試験に落ちたフランクリン、 イギリス人で離婚したばかりのジャマルカスという3人だった。エヴァンが警備計画について説明を始めようとすると、ボブは自分の家に 移動して話そうと提案した。ボブの家に行くと、彼が案内した部屋には安楽椅子やビリヤード台、酒やギターなどがあり、フランクリンと ジャマルカスは目を輝かせる。3人が説明を聞かずに酒を飲もうとするので、エヴァンは呆れて立ち去った。彼が自警団のチラシを貼って いると、ポールという男が声を掛けて来た。隣に引っ越してきたばかりだという彼は、「素敵な皮膚だ」と口にした。
翌朝、エヴァンが会合に赴くと、ボブは自警団のジャケットを配る。そこにはエヴァンのデザインしたロゴではなく、羽のある虎が大きく プリントされていた。エヴァンは文句を言うが、フランクリンとジャマルカスがボブに賛同したこともあり、そのジャケットを受け入れた 。その夜、4人は駐車場に車を停め、コストコを見張る。しかしエヴァン以外の3人は、まるで真剣さに欠けてていた。尿意を催したボブ は空き缶に小便をして、それをエヴァンに近付けてからかった。ホブは缶ビールを取り出し、エヴァン以外の3人は飲み始めた。
ブレスマンと相棒のチューチョがパトカーで現れ、エヴァンを犯人として疑うような態度を露骨に示した。フットボール場で騒音がして いるという電話が入り、エヴァンたちは急行する。すると、待ち伏せていた4人組が卵を投げて来た。スケボーで逃げようとした少年を 捕まえたエヴァンたちは、警察署へ連行した。しかしエヴァンたちが去ると、ブレスマンは注意することも無く、さっさと少年を追い払う 。警察署を後にした少年は、何者かに襲われた。
ご機嫌で車を走らせていた自警団は、何かにぶつかったような衝撃で車を停止させる。車の前方を調べたエヴァンは、アントニオの現場と 同じ緑色の粘液が付着しているのを発見した。近くに落ちていた銀色の球体を見つけたエヴァンは、幾つかある穴の一つに指を入れた。 すると球体の内部が光った。4人が驚いていると、銃を担いだ敷地の住人マンフレッドが脅すので、球体を持って去った。4人が全ての穴 に指を入れてみると、光線が発射され、命中した牛が爆発した。4人は警察に内緒で球体を保管することにした。
マンフレッドから「屋根の上で誰かが暴れてる」と電話が入り、自警団は出動した。屋根には誰もいないので、エヴァンたちは二手に 別れて周囲を調べる。エヴァンとジャマルカスは、草むらの向こうに潜む異星人を発見した。エヴァンは穏やかに話し掛け、ガムを渡す。 だが、異星人はマンフレッドの死体を投げ捨て、エヴァンを突き飛ばした。異星人は突っ立っているジャマルカスに近付くが、エヴァンが ノーム人形で背後から殴って退治した。
エヴァンとジャマルカスは異星人の死体を持ち帰って他の2人に見せ、みんなは写真を撮影して盛り上がる。だが、死んだと思っていた エイリアンは生きており、意識を取り戻して暴れ始めた。4人は必死で取り押さえようとするが、エイリアンは「我々は既にお前たちの中 にいる」と告げ、4人を怪力で弾き飛ばす。異星人は球体を奪って逃亡した。エヴァンは「だから皮を剥いだんだ。奴らは俺たちの近くに いる」と漏らした。「ブレスマンは仲間に違いない」とフランクリンは口にした。
エヴァンたちは、信用できる人間が出来るまで、異星人のことは伏せておこうと決める。周囲の誰も信じられなくなり、4人は警戒心を 強めて過ごす。そんな中、大量の電池を買い込んだポールから自宅での集まりに誘われたエヴァンは、彼が異星人と確信した。その夜、彼 は自警団の仲間と共に、ポールの家を張り込んだ。若い夫婦がポールの家に入っていくのを見た彼らは、異星人だと断定した。
ボブは娘のチェルシーが親友マンディーの家へ行くと知り、乱交パーティーに違いないと考える。彼は留まるよう要求するエヴァンの言葉 に耳を貸さず、フランクリンを引き連れてマンディーの家へ向かう。残ったエヴァンとジャマルカスは、窓からポールの家を覗こうとした 。すると背後からポールに声を掛けられ、家に招き入れられた。2人は緊張するが、中では乱交パーティーが行われていた。女に誘われた ジャマルカスはパーティーに参加し、エヴァンだけが退出した。
一方、ボブとフランクリンはマンディーの家に到着し、大勢の若者たちが盛り上がっているパーティーの様子を監視していた。チェルシー が恋人のジェイソンから寝室に誘われるのを目撃したボブは、マンディーの家に上がり込む。彼が寝室に乗り込むと、ジェイソンは不機嫌 そうに立ち去ろうとする。ボブが追い掛けると、ジェイソンは軽く叩きのめして勝ち誇った態度を取る。エヴァンは戻って来たボブを強い 口調で非難し、反論を浴びる。エヴァンがボブにクビを宣告すると、フランクリンはボブに同調した…。

監督はアキヴァ・シェイファー、脚本はジャレッド・スターン&セス・ローゲン&エヴァン・ゴールドバーグ、製作はショーン・レヴィー 、共同製作はジェフリー・JP・ウェッツェル&ビリー・ローゼンバーグ&トム・マクナルティー&ブロンデル・アイドゥー、 製作総指揮はダン・レヴィン&モニカ・レヴィンソン、撮影はバリー・ピーターソン、編集はディーン・ジマーマン、美術はダグ・ ミーアディンク、衣装はウェンディー・チャック、視覚効果監修はケリー・ポート、音楽はクリストフ・ベック、音楽監修はジョージ・ ドレイコリアス。
出演はベン・スティラー、ヴィンス・ヴォーン、ジョナ・ヒル、リチャード・アイオアデ、ローズマリー・デウィット、ウィル・フォーテ 、ダグ・ジョーンズ、R・リー・アーメイ、ニコラス・ブラウン、ジョセフ・A・ヌネス、メル・ロドリゲス、 エリン・モリアーティー、リズ・カッコウスキー、ジョニー・ペンバートン、シャロン・ジー、エリック・リー・ゴーインズ、ロバート・ C・シブレイ、グレース・フロンバーガー、ボニー・シルヴァー他。


『ホット・ロッド/めざせ!不死身のスタントマン』のアキヴァ・シェイファーが監督を務めた作品。
エヴァンをベン・スティラー、ボブをヴィンス・ヴォーン、フランクリンをジョナ・ヒル、ジャマルカスをリチャード・アイオアデ、アビーをローズマリー・デウィット、 ブレスマンをウィル・フォーテ、ダグ・ジョーンズ、マンフレッドをR・リー・アーメイ、ジェイソンをニコラス・ブラウン、アントニオ をジョセフ・A・ヌネス、チューチョをメル・ロドリゲスが演じている。

映画やドラマには、プロダクト・プレイスメント(作品内における企業や商品の宣伝)が付き物だ。
例えば、ジェームズ・ボンドが乗っている車がアストン・マーチンなので、映画を見た観客が同じ車種への購入意欲を刺激されるとか、 そういうことだ。
この映画のプロダクト・プレイスメントは、とても分かりやすい。
何しろ、主人公の勤務先がコストコなのだ(ホントの発音だと「コスコ」になるんだけど)。
当然のことながら、コストコのマイナスイメージに繋がるような描写は持ち込めない。
やる気の無い仲間3人がコストコの同僚ではなく地域住民なのも、そういうことが関係しているのかもしれない。

この映画、当初は『Neighborhood Watch(自警団)』という原題で公開される予定だった。
しかし撮影終了後、フロリダ州で自警団として活動しているジョージ・ジマーマンという男が非武装の黒人少年を射殺する事件を起こした ため、タイトルを『The Watch』に変更するなど、宣伝活動に大きな支障が生じた。
その事件が、興行成績に影響を及ぼしたということはあるだろう。
ただし、この映画の興行成績が芳しくなかったのは、それだけが原因ではないと思う。

自警団のメンバーが集まった段階で、エヴァン以外の3人が真面目にやろうと思っていないことはハッキリと見えている。
で、エヴァンは真剣に自警団として活動したいと思っているのだから、その段階で彼らとの活動を辞めればいいんじゃないの。
なぜ続行するのか、そこが良く分からない。
アントニオを殺した犯人を見つけたいというのが一番の願望なんだし、活動は一人でも別にいいでしょ。
っていうか、町を守りたいのか、犯人を見つけたいのかという目的の部分も、ボンヤリしているんだよね。

ボブたちが自警団を希望した動機は、それぞれに用意されている。
「週に一度は妻子と離れ、ビールでも飲もう」「警官になりたかったが、彼らは俺の価値に気付かなかった。最悪の気分を解消するには誰 かの頭を撃つのが一番だ」「若くてセクシーな主婦が夜中に一人でいて、僕が自警団として活躍すれば、その気になる」ということだ。
この時点で、自警団としてマトモに活動する気が無いのをハッキリと見せちている。
それはいいとして、だったら、その設定に沿った行動をとるべきでしょ。
それが出来ていない。

ボブは「妻子と離れて」と言っているのに、いきなりエヴァンたちを自宅に連れ帰る。
妻子と離れたいのなら、家に帰りたくないってことじゃないのかよ。実際、帰宅したら娘が来るし。
ただ、妻子と一緒にいることにウンザリしているとか、そういう雰囲気は無いんだよな。
だから、「週に一度は妻子と離れて遊びたい」という動機が、どうもピンと来ない。
っていうか、妻は仕事で外出ばかりしているんでしょ。だったら「妻子と離れてノンビリ」はおかしい。しかも、どうやら娘とは仲良く やりたいみたいだし。

フランクリンは警官希望だったのなら、むしろ自警団としては積極的に取り組もうとすべきでしょ。
だってさ、「悪党の頭を撃ち抜いてやりたい」と思っているんでしょ。だったら、早く悪党を捕まえて自分の力を誇示したいはず。
それなのに、自警団としての意欲を全く見せず、ボブと同調して気を抜いている。
むしろ、『ポリス・アカデミー』シリーズのタックルベリーみたいに、直情的な熱血キャラの方が、その動機とはマッチするんじゃないか と思うんだが。
スケボー少年を捕まえた時も、自分で悪党退治や罰を与えてやろうという意識は見せず、ただ高圧的な口調で注意しただけで、警察に身柄 を引き渡すんだよな。そこもヌルい。

ジャマルカスは女好きのキャラなのかと思ったけど、それが見えてこない。何しろ、なかなか女性が絡んで来ないしね。
これはエピソードの作り方にも問題はあるけど、自警団を結成して早々に「チラシを配りに回って、そこで女性と近付こうとする」という シーンでも用意すれば、それで彼のキャラをアピールする手助けになったはず。
彼に限らず、3人のキャラを立たせようという意識は乏しい。
ボブの扱いが他の2人よりは上だけど、それも出番や役回りが多いというだけで、キャラが立っているわけではない。

で、キャラの面白さが全く見えない内に、異星人と遭遇する。 っていうか、そもそも「自警団が異星人と遭遇」という展開を考えると、「それぞれ不純な動機で集まった自警団」というところで時間を 取るのが勿体無いんじゃないかと思える。
赤の他人が集まるんじゃなくて、「エヴァンが親友や身内を巻き込んで自警団を結成」ということにでもしておけばいいんじゃないかな。
そうすれば、「みんなエヴァンから強引に誘われて仕方なく」ということで成立するから、それぞれの動機を用意する必要も無いし、それ に応じてキャラをアピールする必要も無くなる。
別の角度から個性を発揮すればいい。
っていうか、そもそも「3人は自警団としての意欲が皆無」という設定にしておく意味も、あまり無いんじゃないかと感じるし。
「まさか相手が異星人だとは予想外」というところに仕掛けがあるわけで、自警団としての意欲があろうがなかろうが、あまり関係が無い よね。

それと、開始50分ほどで異星人と遭遇するんだけど、そこまでの話って、そこに上手く繋がっていないんだよね。
ただ「一人を除いてやる気の無い自警団が結成され、とりあえずスケボー少年を捕まえた」というだけで。会話の中でエイリアンという 言葉が出て来ることはあるし、エイリアンが登場する伏線は張ってあるけど、流れとしては、エイリアンが全く関係しない内容なのよね。
緑城の粘液やタコみたいな皮膚の一部といった伏線さえ排除してしまえば、エイリアンが登場しないまま物語が進行しても、特に支障は 無い。
それを言い出しちゃうと、最初の殺人も必要性が薄いんだけどね。

そう考えると、エイリアンを登場させるタイミングが遅いんじゃないかな。
エヴァンたちが遭遇するタイミングはともかくとして、観客には、もっと早い内にエイリアンの存在を明示した方が良かったんじゃ ないか。そうすれば「これは4人がエイリアンと戦う話ですよ」という意識で観賞できるし。
この映画の場合、敵の正体を隠しておくことのメリットより、デメリットの方が大きいと思うんだよな。
エヴァンたちがエイリアンと遭遇し、そこからは彼らが周囲にエイリアンが犯人であることを分かってもらおうとするとか、エイリアンを 捕まえようとするとか、そういう展開になっていくのかと思いきや、「エイリアンは人間に化けて周囲に紛れ込んでいる」ということが 明らかになり、『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』のような「周囲の誰も信じられず、疑心暗鬼になる」というネタをやる。
どうにも行き当たりばったり感が強い。
そのネタをすぐに終わらせるのが不幸中の幸いだが、それはそれで、「そこを膨らませるように思わせておいて、あっさり終了なのかよ」 というところで引っ掛かる。

その後は、エヴァンとボブが言い争って自警団が分裂するとか、そういう展開もあるけど、単純に「ノリが悪い映画だなあ」と感じる。
コメディーとして入ったはずなのに、ちっとも弾けず、変にマジな方向へ、しかも「家族関係」という要素を使ったマジな方向へと舵を 切るんだよな。
そうなると、もはやエイリアンとか必要ないんじゃねえかと思ってしまう。
それに、ボブが娘に干渉しすぎて嫌がられるとか、エヴァンが検査でタマ無しと分かったけど子供を欲しがっている妻に言い出せずにいる とか、そういう家庭の要素があるんだけど、まるで上手く使われていない。
っていうか、ハッキリ言って邪魔。
そっちまで手が回らないんだから、バッサリと削ぎ落としてしまった方が良かったんじゃないかと。

で、すっかり気持ちが冷めた辺りで、実はジャマルカスがエイリアンの一員だったことが明かされるが、その捻りは要らないなあ。
っていうか、もはやエイリアンとか、エイリアンによる地球侵攻とか、どうでもいいという気持ちで一杯になっている。
「エイリアン軍団との決戦」というクライマックスに向けて物語がスムーズに進行しておらず、あっちへフラフラ、こっちへフラフラと、 目的地を見失っているかのように蛇行したり、脇道に入って余計な道草を食ったりしているのだ。
意味ありげだった球体も、全く活用されていないし。

(観賞日:2013年3月24日)

 

*ポンコツ映画愛護協会