『ウォリアーズ』:1979、アメリカ

ストリート・ギャング「ウォリアーズ」は、コニー・アイランドを縄張りにしている。ある夜、リーダーを務めるクレオンは、サイラスから集会の使いが来たことを仲間たちに話す。サイラスはニューヨーク最大のストリート・ギャング「グラマシー・リフス」を率いる男であり、伝説の存在だ。武器の持ち込みは禁止、手出しも無用、参加するメンバーは1チーム9人までというのが集会のルールだ。クレオンはサイラスがどんな男か確かめるため、集会に参加することを決めた。
クレオンは参謀格のスワンの他、エイジャックス、レンブラント、コチーズ、カウボーイ、スノウ、ヴァーミン、フォックスという顔触れで地下鉄に乗り、集会の開かれるブロンクスへ向かった。彼らが公園に到着すると、大勢の面々が集まっていた。壇上に立ったサイラスは、「これだけ集まれば、未来は俺たちの物だ」と満足そうに言う。「100のチームが集まり、他にも100のチームがある。支部も含めれば4万人。未組織の2万人も参加する。ニューヨーク警察は6万人だ。分かるか」と彼が話すと、聴衆は盛り上がった。
サイラスは「俺たちが1つになれば、町を乗っ取れる。俺たちは今までケチな縄張りを争ってきた。だが、町全体を縄張りにするんだ。それが俺たちの権利だ」と語り、聴衆は喝采を送る。そんな中、密かに拳銃を持ち込んでいた「ローグス」のルーサーが発砲し、サイラスを殺害した。ルーサーはフォックスに目撃されたと気付き、銃殺しようとする。しかし張り込んでいた警官隊がライトを付けたため、その機会を逸した。会場は騒然となり、ストリート・ギャングは散り散りに逃げ出した。
ルーサーはクレオンを指差して「あいつが撃った。ウォリアーズがやった」と叫び、ローグスの仲間は「この目で見た」と嘘をつく。そのためにクレオンは暴行を受け、ウォリアーズの面々も狙われる。クレオンを覗くウェリアーズの面々は公園から逃走し、墓地に身を隠してパトカーをやり過ごした。スワンが「コニーへ帰るんだ。今後は地下鉄でも危ないぞ」と言うと、エイジャックスは「俺を差し置いて、いつお前をボスにした?」と反発する。しかし他の仲間が今は団結するよう諭し、エイジャックスは仕方なく承知した。
フォックスが駅を発見し、ウォリアーズは警戒しながら移動する。グラマシー・リフスのサブリーダーであるマサイは、「ウォリアーズを一人残らず捕まえろ。生け捕りが無理なら、殺せ」と仲間に指示した。彼らははラジオDJにレコードを掛けてもらい、その歌詞を使ってウォリアーズに宣戦布告した。「ターンブル」や「ベースボール・フューリーズ」など、他のチームも行動を開始した。ウォリアーズはターンブルに襲撃されるが何とか駅へ駆け込み、地下鉄に乗り込んで逃亡した。
スワンたちは列車の中で安堵するが、何者かが次の駅に火を放った。そのせいで列車は停止し、スワンたちは降りざるを得なくなる。一方、ルーサーはリフスより先にウォリアーズを見つけ、始末しようと目論む。徒歩で次の駅を目指したウォリアーズは、三流ギャングとして見下しているオーファンズの縄張りに入り込む。一行はオーファンズの面々と遭遇し、縄張りへの侵入を抗議される。フォックスは相手のリーダーを上手く持ち上げ、「おとなしくすれば通してやるぜ」という言葉を引き出した。
マーシーという女が鶏の真似をしながら現れると、オーファンズのリーダーは「よせ」とウンザリした様子で告げる。しかしマーシーは無視してウォリアーズに近付き、「素敵なベストね。一着ちょうだい」と言う。スワンが「駄目だ」と冷たく断ると、彼女はオーファンズのリーダーに「こいつらを黙って通す気?呆れるわ」と告げる。マーシーから馬鹿にされたリーダーは、スワンたちに「軍服を取れば、通してやる」と強気な態度で告げた。しかしスワンが拒むと、諦めて引き下がった。
スワンは挑発して来るマーシーを無視し、仲間を率いて次の駅へ向かう。マーシーが後を追うと、エイジャックスが捕まえた。スワンが「なんで付けた?」と尋ねると、マーシーは「何となく出来事を期待して」と答える。スワンが冷淡な態度を取っていると、オーファンズが現れた。リーダーはナイフを構え、「実力を見せてやるぞ」と凄む。スワンは火炎瓶を車に投げ付けて爆破し、その隙にマーシーや仲間と共に逃走した。スワンたちは駅へ駆け込み、列車に乗った。
スワンたちは96丁目駅で次の列車を待つが、警官隊が来たので散り散りに逃げ出した。フォックスはマーシーを逃がして警官と揉み合いになり、線路へ投げ落とされた。レンブラント、コチーズ、ヴァーミンは到着した列車に乗り、駅から脱出する。スワン、エイジャックス、カウボーイ、スノウは駅の外へ出るが、ベースボール・フューリーズに襲われる。彼らは二手に別れて逃走するが、公園に入ったところで戦うことにした。4人は合流して戦い、フューリーズのバットを奪い取って全員をノックアウトした。
ユナオン駅に到着したレンブラントたちは、女性グループのリジーズを目撃する。コチーズとヴァーミンは彼女たちに興味を抱き、消極的なレンブラントも巻き込んで口説きに掛かる。エイジャックスはベンチに座っている女を見つけ、声を掛けようと考える。スワンは「よせ、急ぐんだ」と注意するが、エイジャックスは「俺は楽しむ」と耳を貸さなかった。スワンは置き去りにして立ち去り、エイジャックスは女に話し掛けた。カウボーイとスノウはエイジャックスが心配になり、スワンと別れて戻ることにした。女は婦人警官で、エイジャックスに手錠を掛けた。エイジャックスがパトカーで連行される姿を、カウボーイとスノウは目撃した。
スワンが駅に着くと、マーシーが待っていた。彼女は「ユニオン駅へ行くなら案内するわ」と告げ、スワンと共に駅構内へ入る。ホームに警官が現れたので、スワンはバットを投げて転倒させた。スワンとマーシーは、線路の上を走って逃げた。レンブラントたちはリジーズに案内され、チームの溜まり場となっている店へ入った。レンブラントは「駅へ戻ろうぜ。みんなが心配している」と言うが、コチーズとヴァーミンは店で楽しむことにした。
マーシーは冷たい態度を取り続けるスワンに、「なぜ嫌うの?」と質問した。「君の生き方が嫌いだ。もっとマトモな女に会いたい」とスワンが言うと、彼女は「何よ、偉そうに」と反発した。彼女は近所に住む主婦の退屈な暮らしについて語り、「今、何かが欲しい。短い一生の間に」と述べた。マーシーはスワンに顔を近付け、唇を奪った。スワンは改めて彼女にキスをするが、すぐに離れて「早く次の駅へ行こう」と冷たく告げる。マーシーが「もう一度、キスしてよ」とせがむと、彼は「君は今夜の出来事の一つに過ぎん。くだらない」と突き放した…。

監督はウォルター・ヒル、原作はソル・ユーリック、脚本はデヴィッド・シェイバー&ウォルター・ヒル、製作はローレンス・ゴードン、製作総指揮はフランク・マーシャル、製作協力はジョエル・シルヴァー、撮影はアンドリュー・ラズロ、編集はデヴィッド・ホールデン、美術はドン・スワナガン&ボブ・ワイトマン、衣装はボビー・マニックス、音楽はバリー・デ・ヴォーゾン、主題歌作曲はジョー・ウォルシュ&バリー・デ・ヴォーゾン、歌唱はジョー・ウォルシュ。
出演はマイケル・ベック、ジェームズ・レマー、デボラ・ヴァン・フォルケンバーグ、マルセリーノ・サンチェス、デヴィッド・ハリス、トム・マッキッタリック、ブライアン・タイラー、ドーシー・ライト、テリー・マイコス、デヴィッド・パトリック・ケリー、ロジャー・ヒル、エドワード・ソーワー、リン・シグペン、ジニー・オルティーズ、マーセデス・ルール、ジョン・スナイダー、デニス・グレゴリー、グウィン・プレス、ジョディー・プライス、ジェフリー・スコット、カール・ブラウン他。


ソル・ユーリックの小説『夜の戦士たち』を基にした作品。
監督&脚本は『ストリートファイター』『ザ・ドライバー』のウォルター・ヒル。
共同で脚本を手掛けたのは、『男と女のあいだ』の翻案担当だったデヴィッド・シェイバー。
スワンをマイケル・ベック、エイジャックスをジェームズ・レマー、マーシーをデボラ・ヴァン・フォルケンバーグ、レンブラントをマルセリーノ・サンチェス、コチーズをデヴィッド・ハリス、カウボーイをトム・マッキッタリック、スノウをブライアン・タイラー、クレオンをドーシー・ライト、ヴァーミンをテリー・マイコス、ルーサーをデヴィッド・パトリック・ケリーが演じている。

今の感覚からすると、この映画は色んな意味でダサい。
まず、ストリート・ギャングの格好がダサい。
チームの全員が同じ服装で統一しているのは、「チームの違いを分かりやすく見せるため」という意図もあるだろうから、それは理解できる。
ただ、ウォリアーズの「素肌に革のベスト」はともかく、「紫のベストに紫のハット」というボッパーズとか、「顔が白塗りで黒いシルクハットに吊りズボン」というピエロみたいなハイハッツとか、「それで周囲を威圧する気はあるのか」と言いたくなるようなチームもいるのよね。

集会のシーンも、かなりダサいことになっている。
何しろ、集会の主催者であるサイラスからしてダサい。インチキなカルト教団の教祖にしか見えない。ちっともカリスマ性のある大物ギャングのリーダーには思えない。
とてもチンケな野郎という印象を受けるので、そいつの安っぽい演説でストリート・ギャングの連中が大いに盛り上がり、その主張に賛同しているのもバカにしか見えない。
まあストリート・ギャングに知性を求めるのが間違いかもしれんが、それにしてもバカばっかりだなと。

ただ、少なくとも当時のアメリカにおける若者たちからすると、この映画で描かれているストリート・ギャングはカッコ良かったのだ。
だからこそ、この映画を見て多くの若者が熱狂し、影響を受けたストリート・ギャングによる殺人事件や抗争事件まで起きてしまったのだ。決して良い影響とは言えないが、それぐらいの人気があったってことだ。
しかし、それはアメリカでの出来事であり、日本では本作品に影響されて事件が起きるようなことは無かった。そもそも、この映画は日本で全くヒットしなかったのである。
そこは日本とアメリカのセンスや文化の違いってことだろう。日本だと、ストリート・ギャングなんて存在しなかったしね。
それと日本だと、当時でも劇中に登場するストリート・ギャングの格好はダサかったんじゃないかと思われ。

ルーサーがサイラスを射殺する理由が、良く分からない。
サイラスを殺したところで、ルーサーが後釜になれるわけでもないし。
それと、彼はルーサーを撃つ時には「気付かれないように」という意識が見えるが、フォックスを狙う時は堂々と銃を構えている。それなのに犯行がバレないってのは、かなり無理があるぞ。
フォックスに銃を向ける姿は、大勢に目撃されるはず。そして銃を持ち込んでいると分かった段階で、サイラスを撃った犯人ってこともバレるでしょ。

なぜフォックスが「サイラスを撃ったのはルーサーだ」と言い出さないのか、その理由もサッパリ分からない。
そのせいでウォリアーズが命を狙われる羽目になっているのに、黙っているのは何なのかと。
せめてウォリアーズの仲間には話すべきでしょ。彼が目撃者としての証言を全くしないせいで、ルーサーの嘘を否定するための機会が完全に失われてしまうわけで。
あと、彼は駅で警官と揉み合った時、列車が走って来る線路に投げ込まれるので「死んだかも」というスリルがあるのだが、そこはスルーしたまま話が進むのよね。
そもそも、その出来事を誰も目撃しちゃいないし。そこを全く使わないのなら、何のためのシーンだったのかと。

ウォリアーズが他のストリート・ギャングから狙われ、そこからは激しいバトルが繰り広げられるのかというと、そうではない。
基本的に、ひたすら逃げ回るだけである。
格下であるオーファンズに対しては強気な態度を取るが、他のストリート・ギャングと遭遇した時は全く戦おうという意識を見せない。
「無駄な争いを避ける」と考えば分からんでもないが、ストリート・ギャングなのに全力で争いを避けて地元へ逃げ帰ろうってのは、どうなのかと。

ヒューリーズに追われた時は戦っているし、しかも4人で敵チームの全員をノックアウトしているので、決して弱いわけではない。
ただ、「ヒューリーズの見た目がダサい上、まるで歯応えが無い相手なので、雑魚キャラを倒しただけにしか見えない」という難点はあるけどね。
何しろヒューリーズは、野球のユニフォーム姿で帽子を被り、バットを持っている連中なのよ(なぜか顔にペイントもしている)。
漫画から出て来たようなキャラクターだわな。

ウォリアーズは他のストリート・ギャングだけでなく、警察にも追われている。
警官に捕まりそうになったり、囮捜査の婦人警官に逮捕されたりするシーンがある。
でも、そういうのは排除して、ストリート・ギャング同士の抗争に絞り込んだ方が良かったんじゃないかなあ。
そりゃあ警察が動くのは当然かもしれないけど、「ウォリアーズが他の全てのストリート・ギャングから追われる身となっている」という図式からはズレてしまうわけで。

あと、警察からすると、ウォリアーズだけじゃなくて、他のストリート・ギャングも取り締まりの標的でしょ。
なので、「ウォリアーズがサイラス殺しの犯人として他のチームに狙われる」という図式がボヤけてしまう。
それと、警察に捕まれば、他のストリート・ギャングに襲われて殺される危険は回避できるので、それはそれで悪くないんじゃないかと思ってしまうんだよね。
あれだけ大勢が公園に集まっていたのに、ウォリアーズを追って来るギャングは少ないので、「警官を出すより、そっちを増やした方が」と思ってしまう。

終盤、ルーサーはサイラスを射殺した理由について「何となくやった」と話すが、そういう目的意識の乏しさも含めて、すんげえ小物感が強い。
そんなチンケな奴のチームが最後に待ち受ける敵なので、そこにクライマックスとしての高まりは感じない。
あと、スワンたちは必死になってコニー・アイランドへ戻るが、だからって安全になるわけではないのよね。実際、そこまでローグスは来ているし。
まあ、どうであれ地元へ戻るのは当然っちゃあ当然だが、じゃあ地の利を生かして戦うのかと思いきや、なぜか砂浜へローグスをおびき寄せる。
ちっとも自分たちが優位に戦える場所じゃないので、そんなトコへ呼び出す意味が不明。

ウォルター・ヒルは1975年の『ストリートファイター』で監督デビューし、1978年の『ザ・ドライバー』に続いて本作品を撮った。
1980年に『ロング・ライダーズ』、1982年には『48時間』、そして1984年には『ストリート・オブ・ファイヤー』を手掛ける。
こうやって列挙すると、ウォルター・ヒルは1980年代にマッチした監督だったんだなあと感じる。
1990年代以降の彼はロクな映画を撮っていないのだが、それは才能が枯れたのではなく、持ち味が合わなくなったのだろう。
シルヴェスター・スタローンと初めて組んだ2012年の『バレット』でも、「良くも悪くも昔のまんま」という感じだったしね。

(観賞日:2017年1月22日)


1979年スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最も苛立たしいグループ】部門[世界最年長に見えるギャングたち]

 

*ポンコツ映画愛護協会