『インターンシップ』:2013、アメリカ

時計販売会社で働くビリー・マクマホンとニック・キャンベルはコンビを組み、営業活動に奔走している。その夜はボブ・ウィリアムズという小売店経営者の個人情報を事前に調査し、彼とディナーを取りながら時計を売り込んだ。2人は巧みな話術でボブの気持ちを動かし、時計の仕入れを持ち掛ける。しかしボブから「君らの会社は倒産しただろ」と言われ、ニックは「最近は景気が悪くて倒産の噂もあったけど、それは嘘です」と否定する。しかし倒産が事実だと知り、2人は困惑した。
会社に戻ったビリとニックは、社長のサミーに「なぜ契約を取りに行く前に会社を畳んだことを教えてくれなかったんですか」と抗議した。するとサミーは、「契約なんて取れない。今は携帯で時間を見る。お前たちは時代遅れだ。今やコンピューター時代だ。営業マンよりネット注文の方が安く済む」と語る。ニックは姉のジーニーから、彼氏の会社で働くよう勧められる。「タトゥー野郎の下では働けない」とニックは難色を示すが、「でも仕事が必要でしょ?」と言われた。ビリーは家を差し押さえられ、これまで耐えて来た恋人のメーガンに愛想を尽かされた。仕事を捜そうとグーグルで検索していたビリーは、「Google」という文字を打ち込んでみた。
翌日、ニックはジーニーの彼氏であるケヴィンが経営するマットレス販売店「スリープ&スヌーズ」で働き始める。初めての接客にニックが苦労していると、ビリーが現れた。彼は「明るい未来が見えた。グーグルだ。昼寝室もマッサージ室もある素晴らしい会社だ」と言うが、ニックは「IT企業だろ。未知の分野だ」と尻込みした。するとビリーは「俺たちは求められてる」と告げ、インターンの面接があることを話す。「ただのインターンの面接を受けろっていうのか」とニックが告げると、彼は「俺はデカいことをしたいんだ」と告げた。「面接は1時間後だ。これが最後のチャンスかも」と説得されたニックは、マットレス店を辞めることにした。
ビリーはニックを図書館へ連れて行き、インターネットで面接が行われることを説明した。インターンは大学生のみという条件があったため、あらかじめビリーはオンラインの大学に入学登録を済ませておいた。面接官のベンジャミンとアリソンが画面に登場すると、2人は子供たちに体験プログラムをやらせている最中だと嘘をついた。ベンジャミンたちが話すプログラミング用語は全く理解できない2人だが、適当な弁舌で誤魔化した。「もしも5セント玉の大きさに縮んでミキサーに落ちたらどうする?」という質問を受けた2人は饒舌に喋るが的外れなことばかりで、話が逸れてしまう。結局は解答を示さず、「試してくれたら後悔させない」という気持ちを訴えた。
グーグル本社ではインターン・プログラムの合格者を決める会議が開かれ、プログラム責任者のロジャー・チェティーと部下たちが話し合う。ダナとエノノアはビリーたちに対し、不合格だと判定する。しかしライル・スポルディングは「グーグルの特長は多様性ですよね。考え方の違う人材を入れるべきです」と訴え、ビリーたちにインターンの年齢より長い営業経験があることを重視するよう説いた。
合格したビリーとニックは、カリフォルニアにあるグーグル本社へ赴いた。敷地内を無人自動車が走り、建物の中には民間初の有人宇宙飛行を実現した宇宙船が展示されている。コーヒーを買おうとしたビリーは、カフェの店員から無料だと聞かされる。ベーグルやバナナなどカフェの商品が全て無料だと知って、ビリーは驚いた。ニックはダナと遭遇し、挨拶を交わした。インターンの帽子を被ったビリーとニックは、自分たちより遥かに若い学生たちと合流した。
チェティーは学生たちと会い、「普通のプログラムではなく、我々と同じことをしてもらって結果を評価する。秀でるためには頭脳以上の物が必要になる。必要なのはグーグリネスの精神だ」と告げた。彼は「チームに分かれ、プログラム終了時に1チームだけが正社員に選ばれる。まずは複数のセミナーで社風に慣れてもらう」と言い、プログラムの開始を宣言した。ビリーとニックは職場セミナーに参加し、チェティーは会社のルールを説明した。ビリーとニックがルールに反するような意見を口にしたため、チェティーは「君らへの疑念が裏打ちされたよ」と告げた。
好印象を与えられなかったと認識する2人だが、「明日はチーム分けがある。いいチームに入れば可能性はある」とビリーはニックに言う。しかし翌日、2人は年寄りであることを理由に、学生たちから敬遠されてしまう。高慢なグレアムなど有能な連中が次々にチームを結成する中、ビリーとニックは最後まで残ってしまう。チェティーはライルに、残った連中を集めてチームを作るよう指示した。ライルはビリーとニック、母に溺愛されて引き篭もりだったヨーヨー、ネット情報を盲信している生意気な態度のスチュアート、コスプレ好きのネーハという面々を集めた。
ビリーとニックは翻訳の講義を受けている最中、ライルが片思いしているマリエレナの情報をパソコンで見ている様子に気付いた。ライルに質問した2人は、全社員の詳細な情報が分かることを知った。ニックはダナの情報を調べ、彼女に接触した。積極的に口説いても冷たくされたので、ニックは「ナンパじゃなくて、インターンとして学びたかっただけだ」と嘘をついた。するとダナは同僚のシドを呼び、彼に講義するよう頼んで追い払った。
プログラムのチャレンジ初日、チェティーは「新製品にオーディオを無効にするバグが見つかった。二百万桁のコードはソースファイルにある。バグを突き止めてくれ」という課題を出した。すぐにライルたちは計算を始めるが、コンピューターの知識が無いビリーとニックは見当はずれなことばかり口にする。ネーハが「2人とも邪魔よ。プログラマーのミスを見つけるしかない」と言うと、「プログラマーは建物内の誰かだ」とビリーは告げ、その犯人と仲良くなって情報を引き出す作戦を提案した。
スチュアートは「名案だ」と言い、プログラマーの捜索を指示した。しかし、それは嘘の情報を教えてビリーとニックを厄介払いするためだった。スチュアートやネーハたちは、プログラマーとしてプロフェッサーXの情報を説明した。それが架空のキャラクターだと知らないビリーとニックは、スタンフォード大学へ向かった。騙されたと気付いて戻って来た2人は、昼食のテーブルでもチームから仲間外れにされてしまった。
運動場のチャレンジに参加したビリーとニックは、得意分野だと感じて張り切る。しかし競技として用意されたクイディッチのルールが全く分からず、チームワークもバラバラだったため、グレアムのチームに圧倒的なリードを許す。ビリーとニックはハーフタイムに入ると、『フラッシュダンス』のアレックスのようになろう、お互いを信じようと訴える。すると一気にチームワークが良くなり、チームは同点に追い付いた。しかしグレアムが卑怯な作戦を取ったため、惜しくも敗れた。
ビリーは悔しがるヨーヨーたちをなだめ、「全力を尽くしてチームになれた」と告げる。ニックは「この調子で頑張ろう」と仲間を元気付けたその様子を、チェティーが見つめていた。ニックは昼寝室でダナと遭遇し、口説こうとする。ダナが「30歳で仕事に人生を捧げても虚しくなると言うんでしょ。私は手遅れよ。人生は椅子取りゲームだと気付いた時は遅かった」と語ると、ニックは「何か行動を起こせばいい。後悔するだけの人生もあるが、いい気分じゃない」と述べた。
ビリーはニックから、「君を推した選考委員は1人だ。彼が間違っていたようだ」と言われる。ビリーは「大穴が当たる時もあります」と言い、「そんな貴方が好きですよ」と告げた。次のチャレンジでは、アプリを作る課題が与えられた。ライルたちが過去の人気アプリをカテゴリー別に分析しようとすると、ビリーは「アプリを使うのはカテゴリーじゃなくて人間だ」と口にした。写真を撮影してオンラインで共有するアプリを提案するビリーだが、インスタグラムと全く同じだったので仲間は呆れた。
ビリーとニックはリフレッシュを提案し、仲間たちを夜の街へ連れ出した。一行はディナーの後でストリップクラブヘ繰り出し、酒を酌み交わして盛り上がった。マリエレナがストリッパーとして登場し、ライルに気付いた。ビリーはライルに、「素の自分で攻めろ」と助言した。ライルはマリエレナに声を掛け、いい雰囲気になった。強面男が強引な態度でマリエレナを誘い、ライルに喧嘩を吹っ掛けた。チームの仲間が駆け付け、ニックは喧嘩を回避しようとする。しかし強面男と仲間たちが殴り掛かって来たため、喧嘩になってしまった。いつもはクールなスチュアートも喧嘩に参加し、店を出てからニックに「最高の夜だったよ」と告げた…。

監督はショーン・レヴィー、原案はヴィンス・ヴォーン、脚本はヴィンス・ヴォーン&ジャレッド・スターン、製作はヴィンス・ヴォーン&ショーン・レヴィー、共同製作はミカ・メイソン、製作総指揮はアーノン・ミルチャン&ダン・レヴィン&ジョシュ・マクラグレン&メアリー・マクラグレン&サンドラ・J・スミス&スコット・ステューバー、製作協力はウィル・ラック、撮影はジョナサン・ブラウン、編集はディーン・ジマーマン、美術はトム・マイヤー、衣装はリーサ・エヴァンス、音楽はクリストフ・ベック、音楽監修はデイヴ・ジョーダン&ジョジョ・ヴィリャヌエヴァ。
出演はヴィンス・ヴォーン、オーウェン・ウィルソン、ローズ・バーン、マックス・ミンゲラ、アーシフ・マンドヴィ、ジョシュ・ブレナー、ディラン・オブライエン、トビット・ラファエル、ティヤ・シルカー、ジェシカ・ゾー、ジョシュ・ギャッド、ロブ・リグル、エリック・アンドレ、ハーヴェイ・ギレン、ゲイリー・アンソニー・ウィリアムズ、ブルーノ・アマト、ジョアンナ・ガルシア・スウィッシャー、アンナ・エンガー、ショーン・ロバート・グールディング他。


ヴィンス・ヴォーンが主演&原案&脚本&製作を務めた作品。原案を手掛けるのは2006年の『ハニーVS.ダーリン 2年目の駆け引き』に続いて2度目、脚本は2009年の『南の島のリゾート式恋愛セラピー』に続いて2度目となる。
監督は『ナイト ミュージアム2』『リアル・スティール』のショーン・レヴィー、共同脚本は『空飛ぶペンギン』『エイリアン バスターズ』のジャレッド・スターン。
ビリーをヴィンス・ヴォーン、ニックをオーウェン・ウィルソン、ダナをローズ・バーン、グレアムをマックス・ミンゲラ、チェッティーをアーシフ・マンドヴィ、ライルをジョシュ・ブレナー、スチュアートをディラン・オブライエン、サントスをトビット・ラファエル、ネーハをティヤ・シルカー、マリエレナをジェシカ・ゾーが演じている。
アンクレジットだが、サミー役でジョン・グッドマン、ケヴィン役でウィル・フェレルが出演している。

映画やTVドラマの世界には、「プロダクト・プレイスメント」という用語がある。
日本語に訳すと、「劇中広告」という感じだろうか。劇中にスポンサー企業の名前や販売している商品を登場させるという宣伝手法のことだ。
例えば主人公が恋人と会う場所をスポンサー企業の店舗にしてみたり、使っている道具をメーカーの商品にしてみたり、そういう形で宣伝に繋げるやり方だ。
最近では映画やTVドラマだけでなく、ビデオゲームの世界にも導入されている。

プロダクト・プレイスメントは最近の宣伝手法ではなく、ずっと昔から積極的に用いられてきた宣伝戦略だ。
ただし一般的な認知度という意味では、ひょっとするとマイク・マイヤーズとダナ・カーヴィーが主演した1992年の『ウェインズ・ワールド』によって高まった部分はあるのかもしれない。あの映画では、プロダクト・プレイスメントがバカバカしい形で誇張され、それを徹底的に茶化していた。
商業映画においてスポンサーは大切だから、プロダクト・プレイスメントは全面的に否定されるべき存在ではない。
ただし、その塩梅というのは重要だ。あまりにも不自然な形で唐突に商品が登場したり、主人公が何の脈絡も無く企業名を口にしたり、そういう下手な方法を取ると観客に違和感を与え、拒否反応に繋がる恐れがある。場合によっては、その映画自体が台無しになってしまう可能性もある。

この映画は、ある意味でグーグルがプロダクト・プレイスメントを最大限に活用した作品と言えよう。何しろ、映画の主な舞台となっているのがグーグルの本社なのだ。しかも、ただの背景として会社が登場するわけではなく、その中で主役コンビが成功しようと奮闘する内容だ。
つまり、映画の内容と「グーグル」という企業が密接に関係しているのだ。
ってことは、物語の着地さえ間違えなければ、どんなストーリー展開にしようとも、その全てがグーグルの宣伝になってくれるのだ。
これ以上のプロダクト・プレイスメントは無いだろう。
ようするに、これはグーグルのPR映画なのである。

ヴィンス・ヴォーンや製作会社の偉い人たちが、最初から「グーグルを宣伝しよう」という意図で企画したり、グーグルを舞台に使おうと決めたりしたわけではないと思う。
たぶん、「アナログなオッサンたちがデジタルな企業で働くことになる」というプロットがあって、実在する最先端の企業を舞台にしたら面白いだろうってことで、グーグルにオファーを出したという流れなんだろう。
ただ、結果的にグーグルのPR映画になっていることは間違いないわけで。

もちろん、グーグルだって自社の損になるような映画だったら、建物どころか企業名さえ使わせなかっただろう。メリットがあると感じたからこそ、全面的に協力しているわけで。
実際、この映画はメインの2人の行動が全て、グーグルにとって宣伝になることばかりなのだ。
例えば、ビリーとニックがインターンの面接を受け、経歴を捏造したり質問に的外れなことばかり言ったりするが、ライルの主張を受けて合格が決まる。
これにより、「グーグルは多様性を大切にする会社であり、ずっと営業畑だったオッサンたちにもチャンスを与える会社」というアピールになる。

ビリーとニックが合格すれば、もちろん会社の様子が写し出される。公園のような庭があり、建物に入ればアミューズメント施設のようになっている。たくさんの食べ物や飲み物が無料で配られている。
それによって、「いかにグーグルという会社が社員にとって心地良い環境を整えているか」をアピールすることが出来る。
セミナーが開始されると、グーグルのルールが説明される。
それによって、「グーグルに入社した場合、こういうルールがあるんですよ」という情報をアピールできる。

憎まれ役であるグレアムはインターンであってグーグルの社員ではないので、グーグルを悪役にすることは避けている。
ちゃんと「性格のいい連中だけが正社員になれました」という形にしてあるので、グーグルのイメージは悪化しない。
最初はビリーとニックに否定的だったチェティーも、「高学歴じゃないけど努力して成り上がった人間で、実は自分と同じ匂いを感じて最初から2人に期待していた」ということが最後には明らかになる。
だから、グーグルのイメージに傷を付けることは無い。むしろ好印象を与える。

最初はアナログ人間だったビリーとニックは、終盤にはグーグルの広告掲載を拒むピザ屋の店主に「今の世代はみんなネットで情報を探す。俺たちもずっと変化を怖がってた。でも顔を上げれば目の前にチャンスが待ってる。新しい客、新しい店舗。それ以上のこともクリックで叶う」と語るようになる。
そのように変化させることで、「グーグルの戦略は前向きで正しいものだ」とアピールできる。
そして最終的に、「グーグルはビリーやニックのような人間でも活躍できる素晴らしい会社です」ということをアピールできるわけだ。

さて、では「グーグルのPR映画になっている」という問題を抜きにした場合、どういう評価になるかと考えると、それでも芳しいとは言えない。
まず「ビリーとニックは時代遅れの男たち」という序盤のアピールが全く足りていない。何しろ開始と同時にボブへの営業シーンが描かれ、すぐに会社の倒産を知らされるのだ。
社長に抗議する際、「携帯で時間を見るのは子供だけです」とか「人間は機械に不信感があります」とか訴えるけど、そんなセリフでは全く足りていない。
ドラマの中で、2人がいかにアナログ人間であるかをアピールしておくべきなのだ。

時計会社が倒産になった後、職探しの手順が全く無いのは物足りない。
幾らサミーから「君らのような恐竜は苦労するぞ。今より良い仕事を見つけることは無理だろう」と言われたからって、再就職のための活動を全くやらないってのは不自然だ。ニックは姉から彼氏の店で働くよう言われるので、そこで決まっているからいいとして、ビリーは「ちょっとネット検索しただけで諦める」ってのは不可解。
そもそも、冒頭でビリーとニックはサミーから恐竜扱いされており、「時計を携帯で見るのは子供だけですよ」と言っているぐらい時代遅れという設定なのに、普通にパソコンを使いこなし、しかも就職活動の始まりが新聞の求人情報じゃなくてネット検索ってのはキャラがブレているとしか思えない。
「アナログ人間」という設定じゃなくても、映画やドラマだと未だに「求人広告を見て仕事を見つける」というケースも多いのに。

また、「ニックがグーグルのインターンを目指す前に別の場所で少し働く」という手順を踏むのに、ビリーはいきなりインターン面接に辿り着くってのも物足りなさを感じる。
そこは「まず他の仕事を見つけて働き始めるが、何らかのミスをするなどしてクビになったり自ら辞めたりする」という手順を踏んで、それから「どうしよう」と悩んで、たまたまインターンの話に辿り着く流れにした方がいい。
っていうか、そもそもアナログ人間のはずのビリーがグーグルのインターン面接を受けることに積極的ってのも不可解だ。
せめて社員になるならともかく、インターンなのだ。「俺はデカいことをしたい。ワクワクする人生を送りたい」と言い出すけど、そういうキャラ設定なら、そのセリフを口にする前に彼の性格をアピールしておき、「アナログ人間だけどIT企業に飛び込むことに対して全く躊躇しないような奴」ってことを納得させるようにしておく必要がある。

そういう事前の対策を取っておかないから、急にそんなことを言い出すのが「段取りを消化するために、無理してキャラを動かしている」としか思えない。
そもそも、「デカいひとをしたい。ワクワクした人生を送りたい」という願望が、なぜグーグルに入ったら叶えられると思ったのか、そこも良く分からないしね。
何しろ、その時点では、ビリーがグーグルに対してどんなイメージを抱き、どれぐらいの情報を持っているのか、それがサッパリ分からないんだから。

ビリーはネット面接に対しても全く臆した様子が無いし、あらかじめオンライン大学に入学登録しているし、ちっともアナログ人間には見えない。
そりゃあ、コンピューターのプログラマーが知っていて当然の用語は全く知らないけど、そんな奴は世界中に山ほどいるわけで、それだけで「アナログ人間」というカテゴリーに入れてしまうのは違うんじゃないかと。
プログラミング用語を知らないけどパソコンや携帯を使いこなして何台も持っている人間なんて、幾らだっているわけで。
ようするに、この映画で定義されている「アナログ人間」ってのは、あまりにも範囲が狭すぎるのだ。

クイディッチのシーンでは、「ビリーとニックがルールを全く知らないので混乱する」という部分と、「チームワークがバラバラなので苦戦する」という部分が混在しているが、それは明らかにマイナスだ。
そこは「ビリーたちの弁舌でチームワークが良くなる」という流れに繋がるんだから、前者は邪魔なだけ。
それを考えると、そもそもビリーとニックがルールを知らない競技を持ち込むこと自体を避けた方がいいんだけど、そこは「グーグルらしい競技」ってことだろうから仕方が無い。
それと、「ビリへとニックの弁舌で仲間たちの意識が一気に変化する」という手順は、まるで説得力が無い。
2人が『フラッシュダンス』を例に挙げ、「アレックス椅子に座って鎖を引き、ずぶ濡れになった。水があると信じたから出た。信じた結果、オーディションに漕ぎ付けた。グルグル回ってダンス学校への道を切り開き、俺たちの心の中に届いた。後半は夢をめざし、アレックスになろう」と喋る言葉で、それまでバラバラだった若者たちの心が揺り動かされるってのは、どう考えたって無理があるでしょ。

「チームが団結していく」という手順に強引さがあるだけでなく、後半に入ると「いつの間にかニックがコンピューターの高度な知識を会得している」というトコロの強引さも加わる。
ニックが頑張って勉強している様子はチラッと描かれるが、インターン・プログラムの短い期間だけで、知識ゼロだった奴がプログラムの高度な知識を会得し、ダナに専門的なことを質問できるぐらいに成長するってのは、無理がありまくりだわ。
っていうか、せっかく「ビリーとニックにコンピューターの知識は無いけど、他の能力で有能さを見せる」という形で進めて来たのに、コンピューターの知識を身に付けたら他の連中と同じになってしまう。「専門的な知識は劣るけど、大切なことは他にもあるでしょ」という内容だったはずなのに、それが崩れてしまう。
ビリーの方は相変わらず営業のトーク力しか無いけど、そんな彼さえもヘルプセンターのチャレンジ直前には、グーグル社員の協力でコンピューターやネットに関する知識をそれなりに会得してしまう。

ビリーに関しては、「さすがにコンピューターやネットの知識ゼロでグーグルに入社するのは無理」という現実を考慮しての設定だったら、仕方のない部分はあるだろう。
ではニックに関してはどうなのかというと、こちらもコンピューターの知識を会得させなきゃ仕方の無い事情があるんだよね。
というのも、そういう変化を用意しないと、ビリーとニックの差異が少なくなるのだ。
「女を口説く」という部分でニックにビリーとの違いを付けているけど、インターン・プログラムの中では、ニックって「ビリーの相棒」でしかなくて、彼だけの能力ってのが何も無いんだよね。

(観賞日:2015年6月6日)

 

*ポンコツ映画愛護協会