『オーメン 最後の闘争』:1981、アメリカ&イギリス

イリノイ州シカゴ。ソーン博物館で瓦礫の解体作業に参加していた作業員は7本の短剣を発見し、密かに盗み出した。骨董品店に飾られている短剣に気付いた男は購入し、オークションに出品した。落札者は文献を調査し、メギドの短剣だと突き止めた。短剣は神父に託され、イタリアのスビアコにいるデ・カルロ神父へと届けられた。ダミアン・ソーンは亡くなった義父のリチャードからソーン産業を引き継ぎ、若くして社長に就任していた。彼はソーン産業を世界的な大企業へ成長させ、さらに勢力を広げようとしていた。ダミアンは救援活動にも積極的で、赤十字にも負けたくないと考えていた。
ダミアンは秘書のハーヴェイ・ディーンに、大統領から英国大使に任命されることを予告する。彼はヘブロンの書の一節を読み、ナザレが自分を滅ぼすことが預言されていると話す。彼は「滅ぶのはナザレだ」と述べ、「君が大使になったに今の大使は?」と問われて不敵な笑みを浮かべた。現在の大使は公園を歩いている最中、野犬と遭遇した。彼は車に戻らず徒歩で、大使館へ向かった。大使は秘書の呼び掛けを無視し、洗面所で顔を洗う。彼は鏡で自分の顔確かめた後、記者会見を開くと部下に告げる。彼は部屋に仕掛けを用意し、集まった記者たちの前で自害した。
ダミアンは大統領に呼ばれ、「大使の件はお断りします。英国へ行ったらソーンの仕事に支障が」と告げる。大統領が「何とかしよう。法を変えればいい」と言うと、彼は2つの要望を出した。1つ目は、上院に立候補する2年後までの期間に限定すること。2つ目は、国連ユース会議の代表権を得ることだ。大統領が承諾したので、ダミアンは駐英大使の仕事を引き受けた。天文台の科学者たちは天体を調査し、カシオペアの3つの星が重なる日時を割り出した。バチカンから報告を受けたデ・カルロはダミアンを滅ぼすため、メギドの剣を6人の神父たちに手渡した。彼は神父たちに、「ナザレ再臨の時が我らに示された。その時までに悪魔を倒すのだ」と告げた。
晩餐会でダミアンを目にしたTVキャスターのケイト・レイノルズは、その若々しさに驚いて強い興味を抱いた。妻のバーバラを伴って出席していたディーンは、彼女をダミアンに紹介した。ケイトは『世界の焦点』という番組で司会を務めており、ダミアンにインタビューを申し込んだ。ダミアンは「是非お話ししましょう。次の日曜にでも」と言い、ケイトが「日曜は息子と」と告げると「息子さんも連れて来ればいい」と述べた。
日曜日、ダミアンは公園でケイトと会い、夫を亡くしてから女手一つで育てている息子のピーターとも親しくなった。ダミアンがケイトと散歩していると、何人かの男性が自身の主張を演説して多くの人々が集まっていた。その中の1人はスビアコのマテウス神父で、「間もなくキリストは再臨する。預言は実現されつつある。闇の王子は我々を欺き、平和を破壊する」と訴えていた。バウロ神父はダミアンに気付き、後を追った。
デ・カルロと仲間の神父たちは、布教区の夜間ホームで集まった。パウロはデ・カルロたちに、「尾行したが近付けなかった。テレビのキャスターと一緒にいた」と報告した。マテウスは「私に彼を滅ぼす役を。彼とは目が合った」と志願するが、デ・カルロが「君は駄目だ。不意を突かねば勝てない」と却下する。神父たちは相談し、ダミアンがケイトの番組に出演する時を狙うことにした。ベニート神父はスタジオに侵入し、機会を窺う。しかし気付いたディーンの叫び声に焦って転落し、火事が起きて焼け死んだ。
ダミアンは床に落ちた剣を発見し、ディーンに「あれは刺客だ。メギドの剣があれば私を殺せる」と告げる。彼はディーンに、ビュアーをシカゴへ行かせろと命じた。ディーンはバーバラの陣痛が始まったと連絡を受けるが、ダミアンは病院へ行く前に仕事を済ませるよう命令した。デ・カルロはシメオンとアントニオを伴ってダミアン生誕の地の確認に行くことを決め、他の面々には待機するよう指示した。帰宅したダミアンは、必ずキリストを滅ぼすと宣言した。デ・カルロは天文台を訪れ、3つの星が並ぶ場所を科学者から知らされた。ダミアンは夜中に目を覚まし、ナザレの再臨を悟った。
翌日、ダミアンが大使館へ行くと、ケイトが待っていた。スタジオでの騒動を謝罪するケイトに、ダミアンは「私の所でインタビューの続きを。その後でディナーでも」と告げた。ディーンはダミアンに、剣はオークションに出品されていたことを報告する。ダミアンは剣がスビアコ修道院に送られたこと、神父たちが自分を滅ぼすために英国に来たことを知っていた。彼は「ナザレの誕生は昨晩だ。奴は成長し、私の力は衰退する」必ず見つけ出すと誓った。
後日、ダミアンは罠だと知りながら、マテウスを尾行した。待ち伏せていたパウロとマーティンはダミアンに頭から上着を被せ、剣で何度も突き刺す。だが、それはダミアンではなくマテウスだった。激しい雷鳴が轟いたため、パウロとマーティンは地下壕へ避難する。しかし扉が閉じられ、2人は外へ出られなくなった。次の朝、ダミアンはディーンに、「まだ3本残ってる。これ以上は待てない。ナザレを葬るには、3月24日の早朝に産まれた全ての男児を殺すことだ」と語った。ディーンはダミアンに、バーバラは3月23日に男児を出産したと説明していた。
ダミアンは側近たちを引き連れ、ピーターの初めてのキツネ狩りに付き合った。シメオンとアントニオはダミアンをおびき寄せ、挟み撃ちにしようとする。しかしアントニオは乗っていた馬が暴れたため、橋から転落死した。ダミアンは猟犬の群れを差し向け、シメオンを殺害した。ダミアンは悪魔崇拝者の集会を開き、使徒たちにナザレを殺すよう命じた。ディーンは3月24日の早朝に産まれた男児の情報を部下たちに伝え、事故に見せ掛けて次々に殺害させた。
ケイトはロンドンで1週間で17人の男児が死亡し、14件が特定の地域だったことを番組で報じた。ケイトは不審を抱き、スタジオに招いた専門家に詰問した。番組を見ていたデ・カルロはケイトを訪ね、死んだ男児は全員が3月24日の午前に産まれていることを教えた。彼は再臨のキリストを殺すのが一連の事件の目的だと言い、黒幕はダミアンだと指摘する。ケイトは信じようとしなかったが、デ・カルロはダミアンの資料を渡した。ダミアンの下僕となっていたピーターは、デ・カルロの動きを知らせた…。

監督はグレアム・ベイカー、キャラクター創作はデヴィッド・セルツァー、脚本はアンドリュー・バーキン、製作はハーヴェイ・バーンハード、製作総指揮はリチャード・ドナー、製作協力はアンドリュー・バーキン、撮影はロバート・ペインター&フィル・メヒュー、美術はハーバート・ウエストブルック、編集はアラン・ストラカン、音楽はジェリー・ゴールドスミス。
出演はサム・ニール、ロッサノ・ブラッツィー、ドン・ゴードン、メイソン・アダムズ、リサ・ハロー、バーナビー・ホルム、ロバート・アーデン、ルイーン・ウィロビー、マーク・ボイル、ミロシュ・キレク、トミー・ダガン、ルイス・マホーニー、リチャード・オールドフィールド、トニー・ヴォーゲル、アーウェン・ホルム、ヒュー・モクシー、ウィリアム・フォックス、ジョン・バスクコーム、ノーマン・バード、マーク・スミス、アーノルド・ダイアモンド、エリック・リチャード、リチャード・ウィリアムズ、スティーヴン・ターナー他。


『オーメン』『オーメン2/ダミアン』に続くシリーズ第3作。
1981年に完結編として公開されたが、10年後の1991年に『オーメン4』がテレビ映画として製作された。
監督のグレアム・ベイカーは、これが長編デビュー作。脚本は『ハメルンの笛吹き』のアンドリュー・バーキン。
ダミアンをサム・ニール、デ・カルロをロッサノ・ブラッツィー、ディーンをドン・ゴードン、大統領をメイソン・アダムズ、ケイトをリサ・ハロー(当時のサム・ニール夫人)、ピーターをバーナビー・ホルム、大使をロバート・アーデン、バーバラをルイーン・ウィロビーが演じている。

これは最初から勝ち目の無かった戦いを挑み、当然のごとく惨敗した作品である。なぜ勝ち目の無い作品なのかというと、ダミアンが大人に成長しているからだ。
まだダミアンが少年だった『オーメン2/ダミアン』ですら、既に「かなり厳しい」と言わざるを得なかった。『オーメン』の肝は、「無垢で無表情な赤ん坊のダミアンが殺人を繰り返す」という設定にあった。ダミアンを成長させることで、その強みは失われる。
さらに今回はダミアンが大人になっているので、ますます状況は悪化している。
『オーメン2/ダミアン』では、「無垢で無表情な赤ん坊が殺人を繰り返す」という強みを失った代わりになるような武器が何も無かった。そして今回も、何の武器も持たずに特攻している。
製作サイドが武器だと思って手にしている物は、ただのガラクタだ。

大使が散歩中に野犬と遭遇すると、不安を煽るような音楽が流れる。顔を洗って自分の顔を確かめた時も、やはり不安を煽る音楽が流れる。
もちろん彼の行動は不可解だし、「こりゃダミアンの呪いが発動したんだろうな」ってことは誰でも簡単に分かるだろう。
ただ、実際に描かれている内容が、まるで見合っていない。音楽ばかりが奮闘して、「ここは怖がるポイントですよ。もうすぐ何か起きますよ」と必死でアピールしている。
そして、そのアピールが完全に空回りしていると言っていいだろう。

大使は記者会見を開くと決めた後、タイプライターのリールをドアノブに巻き付けて仕掛けを用意する。そして記者がドアを開けると拳銃の引き金が引かれて自分に向けて銃弾が放たれるようにしておく。何も知らない記者がドアを開けると、大使は脳天に銃弾を浴びて死ぬ。
でも、これを「呪いによって大使が自殺する恐ろしいシーン」として描かれても、ちっとも怖くないのよ。むしろ滑稽だわ。
記者会見を開くと言って記者を呼んだら、自分で引き金を引いて死ねばいいだけでしょ。なんで自動的に発砲されるような細工を凝らすのかと。
その作業は、全くの無駄でしょうに。

前作から20年後の設定で、ダミアンは32歳になっている。その間に彼が何をやっていたかというと、「義父の会社を継いで成長させる」という仕事だ。
いや、それって普通の若社長と同じじゃねえか。悪魔の子らしいことは何一つとしてやってねえだろ。
全世界を支配するとか、人類を征服するとか、ハルマゲドンを起こすとか、そういう目的に基づいた計画って、まるで進めていないじゃねえか。
世界各地で救援活動に積極的なのも、その裏にある悪魔の子らしい陰謀は何も見えないし。

ダミアンが駐英大使になるのも「ナザレが復活して自分を滅ぼすのを阻止する」ってのが目的であり、ただ防御としての行動に過ぎない。完全に受け身であり、能動的な計略ではない。
大統領がダミアンを大使に任命するのは、彼の情報収集能力の高さなどを買ったからだ。つまりダミアンは純粋に「能力の高い男」という部分だけで、大使に就任するのだ。
もちろん、その前に現在の大使を殺害するトコでは悪魔の力を発動させているが、それで自分が後任に指名される保証は無かったはずで。
なので本来なら、そこも悪魔の力を使うべきじゃないかと思うんだけどね。

デ・カルロと仲間の神父たちはダミアンを滅ぼすため、イタリアから英国に向かう。そこでの最初の行動は、公園でのマテウスの演説だ。
しかし、なぜ彼が演説しているのか、わざわざダミアンの前に姿を見せるのか、その理由がサッパリ分からない。
夜間ホームのシーンで「こういう理由がありまして」という裏でも明かされるのかと思ったら、何も無いんだよね。
「マテウスは目が合ったから不意を突く作戦に参加できない」と指摘されているし、むしろマイナスじゃねえか。

ベニートはスタジオに忍び込み、高い場所へ移動してダミアンを狙う。でも、あの位置から、どうやってスタジオで喋っているダミアンを殺すつもりだったのか。
鎖を使ってターザンみたいに飛び降り、ダミアンを狙うつもりたったのか。剣を使わなきゃ殺せないので、近距離に接近する必要があるからね。
それを考えると、高い場所に移動している意味が全く無いだろ。
っていうか、わざわざスタジオに潜入している意味も無いぞ。テレビ局には入り込めたんだから、楽屋から出て来るタイミングでも狙った方が可能性が高いだろ。

ベニートはディーンの叫び声に焦り、転落して死ぬ。その程度で失敗するって、すんげえボンクラじゃねえか。
ただしダミアンもボンクラで、刺客の存在に全く気付いていないんだよね。
ディーンが気付かなかったら、そのまま殺されていた恐れもあるわけで。
そこはダミアンの恐ろしさをアピールする意味でも、「ベニートたちの動きを読んで策を用意していた」とか「侵入したベニートに気付いていた」という展開にした方がいいでしょうに。

マテウスは囮になってダミアンを誘い出すが、パウロとマーティンに殺される。パウロは顔を見て「ダミアンだったのに」と驚いているが、そもそも上着を頭から被せる時に、ちゃんとダミアンってことを確認しているようには見えないのよね。
あと、頭から上着を被せる意味も分からんし。いきなり突き刺せば、それでいいはずで。
いや、もちろん「観客に対して被害者の顔を隠しておき、上着を外したら別人だったという衝撃を与えるため」という狙いは分かるけど、そんな効果は無くて陳腐になっているだけだ。
その後の「パウロたちが落雷を避けようとして地下壕へ閉じ込められる」という展開も、ただマヌケなだけ。死に様を描いていないからヌルいし。

アントニオとシメオンが死ぬシーンも、何の緊張感も無くてバカバカしいだけ。
アントニオは馬に振り落とされて橋から落ちるけど、その前に降りれば良かっただろ。なんで馬に乗ったままでダミアンを狙おうとしてるんだよ。どうせ剣で刺す必要があるんだから、馬に乗ったままじゃ難しいでしょうに。
シメオンが猟犬の群れに襲われて死ぬのも、これまたマヌケでしかない。
そもそも狩りの時に襲っている時点で、ダミアンが猟犬の群れを連れているのは分かっているはずでしょ。それなのに、何の対策も考えてなかったのかよ。

ダミアンはケイトに惹かれるが、そこに悪魔的な野望は何も絡んでいない。
彼は「ごく普通の男性」としてケイトと惹かれ合い、ピーターと仲良くなる。ディーンから「彼女は危険だ」と忠告されても無視し、ケイトと会う。
デ・カルロが接触したと知っているのに、ケイトに対する恋愛感情を優先する。
ケイトが川に落ちると、手を伸ばして助ける。ケイトとセックスしたダミアンは眠り込み、右耳の後ろにある666の痣を見られてしまう。

ケイトもボンクラなので、デ・カルロから資料を見せられても全く信じなかっただけでなく、ダミアンと簡単にセックスする。その後で「ピーターがダミアンの下僕になって一緒に神の子を殺そうとしている」とデ・カルロから聞かされ、ようやく耳を貸す。
ダミアンは自分の身を守るため、ピーターを盾にするというチンケな行動を取る。でも最終的にはケイトに剣で刺され、命を落とす。
シリーズ3作目まで引っ張っておいて、「ダミアンが黙示録とは程遠い状況の中で一般人のシングルマザーに殺される」という結末が待ち受けているのだ。
こんな強烈な尻すぼみのシナリオで、良くゴーサインが出たな。

(観賞日:2021年9月13日)

 

*ポンコツ映画愛護協会