『悪魔のいけにえ3/レザーフェイス逆襲』:1990、アメリカ

1973年8月18日、サリー・ハーデスティーと兄のフランクリン、その親友たちは、人肉を食らう恐ろしい家族と遭遇した。サリーだけが生き残ったのが、彼女は1977年に療養施設で死亡した。人肉を食らう家族の中で裁かれたのは、記録によればW・E・ソーヤーだけだ。W・E・ソーヤーは1981年にガス室で処刑され、陪審員は彼こそが逃亡中のレザーフェイスだと断定した。これによって、仮面の殺人鬼は地獄へ落ちたはずだった。だが、W・E・ソーヤーはレザーフェイスではなかった。まだレザーフェイスは生きていた。
テキサス。ミシェルは車を運転し、恋人のライアンを乗せてフロリダへ向かっていた。車をミシェルの父に届けるのが目的だ。2人の関係は険悪になっており、ライアンは今回の旅行で彼女と別れるつもりだった。ラジオのニュースでは、埋められていた大量の死体が発見されたことが報じられていた。日が暮れてから、2人は郡に派遣された調査班が死体を運び出している現場を通り掛かった。腐敗の進んでいる死体は毒性が強く、調査班は防護服を着用して作業に当たっていた。
翌朝、ミシェルは脇見運転をしていて、道路を横断しようとしていたアルマジロをはねてしまう。瀕死のアルマジロを見たミシェルは石で殴って死なせてやろうとするが、出来なかったのでライアンに頼んだ。ガソリンスタンドに立ち寄ったミシェルは、トイレが安全かどうかライアンに確かめてもらう。その間に店主のアルフレードがミシェルに近付き、不気味な態度で話し掛けた。ミシェルが警戒しながら車を降りると、カウボーイ姿のテックスという男が歩み寄ってアルフレードに「迷惑を掛けるな」と注意した。
ミシェルが礼を言うと、テックスは「あいつは食肉工場をクビになってから頭が変なんだ」と告げた。ライアンがトイレから戻ると、彼は2人に「ビールでもどうだ?」と持ち掛ける。ライアンは「急いでるんだ」と断るが、ミシェルはテックスに好意を抱いたような態度を示す。ミシェルがトイレヘ行った後、テックスはライアンに「近道がある」と新しく出来た道を教えた。
アルフレードは事務所からトイレを覗いていたが、テックスに見つかって外に連れ出される。アルフレードがショットガンを持ち出してミシェルに発砲しようとしたので、テックスは「早く逃げろ」と叫んだ。ミシェルはライアンを車に乗せ、ガソリンスタンドから逃亡した。ライアンはミシェルに、テックスから教わった道を行くよう指示した。猛スピードで迫って来たトラックが動物の死体を投げ付け、そのまま走り去った。ミシェルは急ブレーキを掛けるが、タイヤがパンクしてしまった。
ライアンがパンク修理をしていると、レザーフェイスがチェーンソーで襲い掛かって来た。ミシェルとライアンは慌てて車に乗り込み、必死で逃走した。まだ修理の途中だったため、ライアンは「ナットを締めたい。車を停めろ」と言うが、ミシェルは拒絶した。ライアンが説得し、ミシェルが承諾した直後、目の前に男が飛び出した。ミシェルはハンドルを切るが、車は横転する。ちょうど向かい側から来た黒人のベニーも男をはねそうになり、慌ててハンドルを切ってジープを横転させた。
車から抜け出したベニーは、気を失っているミシェルを外に引っ張り出した。ライアンは「チェーンソーの男に追われてるんだ」と話すが、ベニーは信じなかった。彼は「事故で頭がおかしくなってるんだ。これを飲め」と言い、ライアンに鎮静剤を飲ませた。ミシェルが意識を取り戻すと、ベニーは彼女にも薬を服用させた。ミシェルも「命を狙われてる」と口にしたので、ようやくベニーは真剣に受け止める。「敵は何人だ?」と尋ねる彼に、ミシェルは「分からない、2人か、それ以上」と答えた。
ベニーは「俺に任せろ」と言い、薬の影響で体が思うように動かない2人を残してジープへ戻る。すると先程の男、ティンカーが笑みを浮かべて立っていた。ベニーは「ジープを起こすのを手伝ってほしい」と頼むが、ティンカーの車にチェーンソーが積んであるのを見つけ、「ちょっと待っててくれ」と告げてジープへ向かう。彼は車に積んであった銃を組み立てようとするが、ティンカーは車を突っ込ませる。間一髪でかわしたベニーが崖を転がり落ちると、待ち受けていたレザーフェイスがチェーンソーで襲い掛かった。
ベニーは反撃してレザーフェイスと揉み合いになるが、脚を切られた。その様子を物陰から見ていたサラという女性が「こっちよ」と叫び、レザーフェイスをおびき寄せて走り出した。いつの間にか眠っていたミシェルとライアンは目を覚まし、その場を離れることにした。サラがレザーフェイスを撒いて戻ると、ベニーは「何があったんだ?」と苛立った口調で訊く。サラが怪我を負っていると気付き、彼は「すまない」と詫びた。
サラはベニーに、1週間前に襲われて妹が殺されたことを話した。それ以来、ずっと森に隠れて生き延びていたのだという。ミシェルの呼ぶ声を耳にしたベニーは、彼女たちの元へ行くことにした。「一緒に来るかい?」と誘うと、サラは断った。「ここから動くな。すぐに戻る」と告げ、ベニーはサラの元を離れた。その直後、レザーフェイスが現れてサラを殺害し、続いてミシェルとライアンを発見する。ライアンは森に仕掛けられた罠に足を挟まれ、レザーフェイスに襲われた。
ミシェルは森を抜けて民家を発見し、住人に呼び掛ける。開いていたドアから中に入ると、2階に少女がいた。ミシェルが追い掛けて部屋に入ると、少女は抱いていた骸骨人形を見せた。サラは少女にナイフで脚を突き刺され、背後から現れたテックスに捕まった。そこはソーヤー家の住まいであり、テックスはレザーフェイスの兄だった。テックスだけでなく、アルフレードとティンカーもレザーフェイスの兄だった。テックスはミシェルを椅子に拘束し、両腕を釘で打ち付けた。食堂の椅子にはミイラ化した兄弟の父親が座っていた。
レザーフェイスのママが車椅子で現れ、助けを求めるミシェルに「お黙り、舌を引き抜くよ」と凄んだ。ティンカーがライアンを運び込み、テックスと共にフックで逆さ吊りにした。テックスは少女と共に、ミシェルの口を塞いだ。レザーフェイスが帰宅すると、テックスはティンカーが飾り付けた新しいチェーンソーをプレゼントした。一方、ベニーは森で後片付けをしているアルフレードを発見し、沼に突き落とした。彼は銃を握り、ソーヤー家へ向かった…。

監督はジェフ・バー、キャラクター創作はキム・ヘンケル&トビー・フーパー、脚本はデヴィッド・J・スコウ、製作はロバート・エンゲルマン、製作協力はマイケル・デルーカ、撮影はジェームズ・L・カーター、編集はブレント・ショーンフェルド、美術はミック・ストローン、衣装はジョーン・ハンター、音楽はジム・マンジー&パトリック・レーガン。
出演はケイト・ホッジ、ヴィゴ・モーテンセン、ウィリアム・バトラー、ケン・フォリー、ジョー・アンガー、R・A・ミハイロフ、トム・エヴェレット、トニ・ハドソン、ミリアム・バード=ネザリー、ジェニファー・バンコ、マイケル・シェイマス・ワイルズ、ベス・デパティー、デヴィッド・クラウド、デュアン・ウィテカー他。


シリーズ第3作。
前2作で監督を務めたトビー・フーパーが完全に離脱し、今回は『魔性の囁き/悪夢と幻想の四章』のジェフ・バーがメガホンを執っている。
脚本は『エルム街の悪夢』のTVシリーズで1話分のエピソードを書いたデヴィッド・J・スコウで、これが映画デビュー作。
ミシェルをケイト・ホッジ、テックスをヴィゴ・モーテンセン、ライアンをウィリアム・バトラー、ベニーをケン・フォリー、ティンカーをジョー・アンガー、レザーフェイスをR・A・ミハイロフ、アルフレードをトム・エヴェレット、サラをトニ・ハドソン、ママをミリアム・バード=ネザリーが演じている。

このシリーズ、作品ごとにソーヤー家の家族構成が異なっている。
1作目ではレザーフェイスの他に、2人の兄(ドレイトンとヌビンズ)と父親がいた。2作目では、ヌビンズの双子の兄弟であるチョップ・トップが登場した。
ただ、ここまでは新たにチョップ・トップが増えただけで、整合性は取れている。
2作目ではドレイトンと父親が前作に引き続いて登場していたし、ヌビンズは骸骨となって登場していた。ただし、2作目では全員が死んでいる。チョップ・トップはヒロインに殺され、他の3人は爆発に巻き込まれている。

で、この3作目だが、レザーフェイスが登場するのは「爆発では死ななかった」ということだと解釈しよう。冒頭で「W・E・ソーヤーが処刑された」とあるので、その「誰だよ、そいつ」と思うW・Eを強引にドレイトンだと解釈しよう。
そうなると、後はレザーフェイスと父親(生き残れたとは到底思えないが)だけってことになる。
ところが今回、新たにテックス、ティンカー、アルフレードという兄貴たちが登場し、ママと娘まで登場する。
どうなってんだよ、ソーヤー家の家族構成って。

アルフレードはガソリンスタンドの店主をしており、それは1作目のドレイトンと共通する。
ってことは同一のキャラクターと解釈すればいいのかと思ったら、「急にミシェルの写真を撮影して代金を請求する」という行動を取っており、それは1作目のヌビンズと共通する。2人をミックスさせたようなキャラクターになっている。
そこも含めて、かなり1作目のリメイク的な匂いが強くなっている。
そもそも「テキサスにポツンと建っている一軒の家にレザーフェイスと家族が暮らしており、生贄を連れ込んでは殺害する」という基本的な部分は崩せないので(ホントは崩そうと思えば崩せるんだけど、あまり崩しすぎると『悪魔のいけにえ』っぽさが消えるという問題が起きる)、似たような筋書きになるのは仕方の無い部分もあるが、それにしても1作目に良く似ている。
で、1作目のリメイク的な内容ってことは、どう頑張っても1作目を越えられないってことだ。
あれはトビー・フーパーに舞い降りた、一生に一度の奇跡だから。

一応、1作目の犠牲者が「みんな仲間」だったのに対して、今回はカップル、サバイバル・ゲームに行く途中のオッサン、1週間前の襲撃から逃れた女性という4人になっており、多種多様な面々を揃えていると言うことも出来る。
しかし、じゃあキャラの色分けが物語に何か影響を与えているのかというと、そういうモノはほとんど感じない。
サラはあっさりと始末されてしまうから、「1週刊前の襲撃で妹を殺されている」とか、「その時の情報を持っている」という要素は全く物語に影響を及ぼさない。
カップルは1作目の「みんな仲間」と大して変わらない程度のキャラ設定なので、特に言及するようなことは無い。

そうなると、オッサンの「銃火器を持っていて扱いに慣れている」という部分ぐらいしか、その設定がちゃんと活用されることが無いのだ。
しかも、ベニーって2作目のクレイジーなレフティー・エンライトと比較すると、キャラとしては随分とおとなしい。
まあレフティーみたいにイカれた奴ならいいのかと問われたら、それはそれで問題があるけどさ。
ただ、どうせオーソドックスにやったところで冴えない仕上がりになるのは目に見えているわけで(実際、そうなっちゃってるし)、だったら開き直って「キテレツなパワーでグッチャグチャにしてしまえ」というぐらいの気持ちで行っても良かったんじゃないかと思ったり。

今回の見所としては、配役に目を向けるしか無いだろう。
具体的には、後に『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズでスターになるヴィゴ・モーテンセンと、『ゾンビ』『フロム・ビヨンド』のケン・フォリーだ。
ヴィゴ・モーテンセンに関しては、「ちょっとキャラに馴染んでないんじゃないかなあ」と感じてしまう。「後にアラゴルンを演じる人」という先入観でバイアスが掛かっているのかもしれないけど、「理不尽で理解不能な狂人」という印象が、今一つ薄いように感じられる。
まだ容姿はちっともアラゴルンとして出来上がってないんだけどね。

ガソリンスタンドでのテックスの態度やアルフレードとのやり取りは、ミシェルたちを家へ誘い込むための作戦なんだけど、あまりにも頭脳的な作戦なので、それも違和感がある。
それは他の兄弟たちも同様で、どうもイカれっぷりが物足りないかなと。
ある程度の狡猾さはいいんだけど、「狂人」の印象を薄めることに繋がっちゃうと、それは本末転倒でしょ。
そりゃあ「知的な狂人」ってのもキャラとしては有りだけど、『悪魔のいけにえ』のソーヤー・ファミリーとしては、そこは何となく違うのかなと。

1作目の殺人家族って「何をしでかすか分からない、得体の知れない連中」という印象だったけど、今回の一家は、そこが弱い。
表現としては変かもしれないけど、「それなりに筋の通った狂人」って感じなのよね。
まあ、もはやシリーズ3作目であり、こっちがソーヤー家の面々について知ってしまったというのも影響はあるだろうけどね。
今までの情報が蓄積されているので何となく行動パターンが読めてしまい、その予想を大きく逸脱しないっていうことがね。

「少女が笑顔でライアンを始末する」という部分で違いを見せようとしているのかもしれんけど、それだけでは弱い。
そもそも殺人家族に少女を参加させていること自体が反則じゃないかと思うが、それはひとまず置いておくとしても、だったら彼女をもっと活用した方がいいんじゃないかと。
そもそも、彼女はレザーフェイスの娘という設定らしいんだが、劇中では説明されないし、2人が絡むシーンも用意されていない。
そこを活用すれば、もうちょっと面白味が出たんじゃないかと思うんだけど。

(観賞日:2014年2月7日)

 

*ポンコツ映画愛護協会