『悪魔のいけにえ2』:1986、アメリカ

1973年8月18日、南テキサスをドライブしていた若者たちの内、4人が死亡した。唯一の生存者であるサリーは、翌朝になって血まみれの姿で発見された。彼女は事情聴取に対し、人肉を食べる一家がチェーンソーで仲間たちを切り刻み、バーベキューにしたことを語った。1ヶ月に渡って捜査が行われたが、犯人も被害者も発見されなかった。そのため、この殺人事件は公式には存在しないことになっている。だが、この13年間、テキサスでは何度もチェーンソーによる殺人が報告されている。
ダラスへ向かって車を走らせていた高校生のバズとリックは、ラジオ局に電話を掛けた。DJのストレッチが受話器を取ると、彼らは浮かれた様子で「ここれからダラスで週末を楽しむのさ。女を買うんだ」と言う。ストレッチは軽く受け流し、電話を切るよう促す。だが、彼らは拒否し、電話で喋り続ける。バズは向こうから走って来るバンを見つけ、「あいつを脅してやろう」とリックに持ち掛けた。バズは車線を変更して脅かし、バンを道路脇に追いやった。
バズたちが話し続けるので、ストレッチはエンジニアのLGに対処するよう指示する。リックは「バトルランド遊園地まで7マイル」という看板を撃ち、バズは車を走らせた。夜になり、またバズたちがラジオ局に電話を掛けて来た。ストレッチはLGを呼び、電話を切るよう頼む。バズたちの車が橋を渡ろうとした時、昼間のバンが立ち塞がった。バンはバックでバズたちの車に並走し、レザーフェイスが荷台に上がる。レザーフェイスはチェーンソーを持ち出し、バズとリックを惨殺した。
翌朝、元テキサス・レンジャーのレフティーが事件現場を調べていると、保安官たちがやって来て「部外者は立ち入り禁止だ」と告げる。しかし顔見知りの刑事が、「彼はいいんだ」となだめた。刑事はレフティーに声を掛け、「甥御さんのチェーンソー殺人を調べているんですか。でも、これは無関係だ。ただの暴走事故です」と語った。レフティーは1973年8月18日の事件で甥を殺されていた。レフティーが嫌味を言うと、彼は「検事局から言われているんですよ。貴方を追い返せと」と話す。レフティーは立ち去る条件として、事故に関する情報収集と証人捜しを要求した。彼は刑事に、新聞社の力を借りるよう求めた。
新聞に掲載されたレフティーの記事を見たストレッチは、彼の宿泊している部屋をノックし、「私が証人よ」と言う。「あの2人は事故死じゃないわ。声を聞いたの。これが証拠よ」と、彼女は持参した録音テープを見せる。しかしレフティーは「素人の口出しは要らない。帰ってくれ」と冷たく告げる。ストレッチが「助けたくて来たのよ。ラジオのDJをやってるの。番組で協力に呼び掛けるわ」と言っても、彼は「邪魔なだけだ。俺には味方なんて要らない」と告げて追い払った。
ストレッチはLGと合流し、チリの調理コンテストを取材する。優勝者はダラスから来たドレイトンだった。彼は惨殺事件の犯人であるソーヤー家の一員だが、もちろん会場にいる誰も正体を知らない。優勝コメントを求められたドレイトンは、「肉の味が決め手です。私は極上の肉を見分ける目を持っているんです」と語った。一方、レフティーはチェーンソー販売店「カット=ライト」へ行き、3台のチェーンソーを購入した。
レフティーはストレッチの元へ行き、「あのテープを君の番組で流すんだ」と要求した。「なぜ?」という質問に、彼は「犯人はこの辺りにいる。この2年、犯行現場はこの周辺に集中している。しかし当局は殺人として扱わず、事故や行方不明として処理している。殺しのテープを流せば当局も俺に協力するだろう」と語る。ストレッチは承諾し、そのテープを何度も番組で流す。ラジオを聴いたドレイトンは、「またやったのか。ワシを苦しめたいのか」と喚いた。
その日の放送を終えたストレッチは、レフティーが来るのを待つことにした。LGが苛立ちながら去った後、スタジオに電話が掛かって来た。ストレッチが受話器を取って話し掛けると、相手は無言で切ってしまった。物音がしたので廊下に出ると、待合室に人影が見えた。ストレッチが部屋に入ると、薄気味悪い男がいた。彼は「アンタのファンだ」と言い、奇怪な笑みを浮かべながらストレッチに話し掛けた。ストレッチは怯えながらも追い返そうとするが、男は立ち去ろうとしなかった。
その男はレザーフェイスの双子の兄、チョップ・トップだった。レコード室からチェーンソーを持って飛び出してきたレザーフェイスは、間違ってチョップ・トップに激突した。チョップ・トップが「あの女だよ」と指示するので、レザーフェイスは逃げ出したストレッチを追い掛ける。ストレッチは扉に鍵を閉め、部屋に閉じ篭もる。コーヒーを買ってラジオ局に戻って来たLGは、チョップ・トップの暴行を受けて血まみれになった。
レザーフェイスは壁を破壊し、ストレッチの前に現れる。だが、ストレッチが「貴方、ホントはいい人なんでしょ」と口にすると、彼女を襲わずに周囲の物を斬りまくって立ち去った。チョップ・トップから「女を片付けたか?」と訊かれた彼は、大きくうなずいた。彼らはLGの死体をトラックに乗せ、ラジオ局を後にした。ストレッチはジープで後を追い、廃園となったバトルランド遊園地跡に到着した。ストレッチが車を降りて尾行しようとすると、背後から車が迫って来た。彼女は慌てて逃げ出す。運転していたのはレフティーだったが、ストレッチは穴に落下してしまった。レフティーはチェーンソーを構え、洞窟の中に突入した。
意識を取り戻したストレッチは、話し声を耳にして物陰に隠れた。ドレイトンとチョップ・トップの指示を受けたレザーフェイスが部屋に来て、LGの顔の皮を剥いだ。ストレッチは物音を立ててしまい、レザーフェイスに見つかった。レザーフェイスは包丁を振りかざすが、ストレッチが「駄目よ」となだめると、攻撃的な態度を解いた。ドレイトンとチョップ・トップが来ると、レザーフェイスは彼女がいることを隠した。「助けて、ここから出して」と頼むストレッチに、レザーフェイスはLGの顔の皮を被せた。
レザーフェイスはストレッチに帽子を被らせ、彼女の腕を取って一緒に踊らせた。レフティーのチェーンソーの音が聞こえると、彼はストレッチの両手を縛って部屋に閉じ込めた。まだ生きていたLGが体を起こし、ストレッチは悲鳴を上げる。LGは包丁でストレッチの縄を切った後、力尽きて倒れてしまった。部屋を抜け出したストレッチは、逃走する姿をドレイトンに見られてしまう。ドレイトンはチョップ・トップに、「怪しい奴が通った。調べに行け」と命じる。
レフティーは白骨化した甥のフランクリンを見つけ、復讐心を燃やす。ストレッチは出口を探すが、レザーフェイスが現れる。ストレッチが絶叫しながら逃げると、レザーフェイスはチェーンソーを振りかざして追い掛けて来る。レフティーが柱を切ったせいで天井が崩れ、ストレッチは行く手を塞がれる。彼女がレザーフェイスに逃がしてほしいと懇願しているところへ、ドレイトンとチョップ・トップが駆け付けた。チョップ・トップは「ババ(レザーフェイス)のガールフレンドだ」と楽しそうに言う。ドレイトンは「お前の責任だぞ、ここで始末しろ。焼いてしまえ」とレザーフェイスに命令する。レザーフェイスが首を横に振って拒むと、ドレイトンはストレッチを連行するようチョップ・トップに指示した…。

監督はトビー・フーパー、脚本はL・M・キット・カーソン、製作はメナハム・ゴーラン&ヨーラン・グローバス、共同製作はトビー・フーパー、製作協力はL・M・キット・カーソン、製作総指揮はヘンリー・ホームズ&ジェームズ・ジョーゲンセン、撮影はリチャード・クーリス、編集はアラン・ジャクボヴィッツ、美術はケイリー・ホワイト、衣装はカリン・フーパー、特殊メイクアップ効果はトム・サヴィーニ、音楽はトビー・フーパー&ジェリー・ランバート。
出演はデニス・ホッパー、キャロライン・ウィリアムズ、ジム・シードウ、ビル・モーズリー、ビル・ジョンソン、ケン・エヴァート、ハーラン・ジョーダン、カーク・シスコ、ジェームズ・N・ハーレル、ルー・ペリー、バリー・キニオン、クリス・ドゥーリダス、ジュディー・ケリー、ジョン・マーティン・アイヴィー、キンキー・フリードマン、ワート・ケイン、ダン・ジェンキンズ、ジョー・ボブ・ブリッグス他。


1974年の映画『悪魔のいけにえ』の続編。
『ブレスレス』『パリ、テキサス』の共同脚本家であるL・M・キット・カーソンが、シナリオを担当している。
1作目から続投しているキャストはドレイトン役のジム・シードウのみで、レザーフェイスと祖父役は交代している。レフティーをデニス・ホッパー、ストレッチをキャロライン・ウィリアムズ、チョップ・トップをビル・モーズリー、レザーフェイスをビル・ジョンソン、一家の父をケン・エヴァート、LGをルー・ペリーが演じている。

監督は前作に引き続いてトビー・フーパーが担当しているが、そのテイストはガラリと変化している。
恐怖劇が行き過ぎると、時に喜劇へと転化することがあるが、監督デビュー作である前作で絶賛を浴びたトビー・フーパーは、この続編を純然たるホラーではなく、コメディー映画へ寄せている。
どう考えても、それは「結果的にコメディーっぽくなってしまった」というのではなく、意図的なものだ。

冒頭に殺され要員として登場するヤッピーたちは、かなりイカれている。助手席のリックは浮かれた様子で「ウヒヒハハハ」と奇声を上げ、拳銃で看板を撃ちまくっている。運転席のバズも止めることは無く、「どんどん撃て」と言っている。
そんなバズたちの車に脅かされたチョップ・トップとレザーフェイスのバンは、すぐに方向転換している。だから、そのまま車を追い掛けてバズたちを殺すのかと思いきや、夜になって橋まで辿り着いて、ようやく登場する。
しかも後ろから追い付くのではなく前に立ちはだかっているが、いつの間に追い抜いて先回りしたんだよ。
って言うか、先回りできるってことは、一本道じゃないんだよね。だとしたら、その橋をバズたちの車が渡るってことが良く分かったな。

バズたちはレザーフェイスの登場にビビっている中でも、なぜか電話はラジオ局に繋いだままで、切ろうとしない。
一方、バンはなぜかバックのままで並走する。ターンしてから追い掛けてもいいと思うんだが。もしくは、立ちはだかった時に、思い切りぶつけてバズたちの車を止めてもいいと思うんだが。
で、屋根に上がったレザーフェイスは、自分の前にミイラを置いて操っており、二人羽織の状態。
バズのカーラジオから流れる音楽に合わせて体を揺らしているので、なんかノリノリで踊っているようにしか見えない。ホントは恐怖シーンなのだが、なんか楽しい雰囲気だ。

レフティーは刑事に「事故の情報を集めろ。証人も欲しい」と言っていたのに、ストレッチが証人として部屋に来ると、邪魔者扱いして追い払う。
いやいや、なんでやねん。重要な証拠である録音テープを聴くことさえせず、「味方なんて要らない。一人でいい」と協力を拒否するのは、ワケが分からん。たぶん一匹狼的なキャラクター造形にしたいんだろうけど、単にイカれた奴にしか見えないぞ。
っていうか、その後の行動を見る限り、ホントにレフティーって単なるイカれた奴だったのだ。
レフティーは専門店へ赴き、チェーンソーを3台も購入する。甥を殺したのがチェーンソー野郎だからって、なんで対抗するための武器がチェーンソーなんだよ。「目には目を」ってことなのか(だとしたら完全に言葉の解釈を間違えているが)。
で、試し切りを促され、店の前にある丸太を切るのだが、思いきりチェーンソーを振りかぶって、何度も丸太に斬り付ける。それを見ている店員は楽しそうに笑い出す。こいつもイカれてる。

レフティーから殺人テープをラジオ局で流すよう求められたストレッチは、どうやら勘違いした使命感に燃えているようで、朝から晩まで延々と殺人テープを流し続ける。
ある意味では、この女もイカれている。
そんなストレッチの元へ現れたチョップ・トップは、もちろん彼女を怯えさせるような不気味さを醸し出しているキャラクターではあるのだが、そのクレイジーな立ち振る舞い、ノリノリな態度は、どこかコミカルな雰囲気も感じさせる。
ティム・バートン監督の『ビートルジュース』なんかに近いノリもあるかなと。

チョップ・トップの指令を受けたレザーフェイスはストレッチを襲うが、「貴方、いい人よね」「いい人なんでしょ」と彼女に言われる中で殺人への気持ちが消え去り、始末せずに立ち去る。
それを「ストレッチに恋した」と解釈している人も多いようだが、あれは恋じゃないと思うなあ。
そのシーン、レザーフェイスは回転を止めたチェーンソーをストレッチの股間にグリグリと押し付けている。
きっと彼は、ショートパンツの下半身を見てストレッチに欲情を感じたのだ。でも性的な体験が無いから、どうすれば良いか分からず、だから周囲の物を斬りまくって去ったのではないかと、そう推測したのだが。

ストレッチがレザーフェイスたちを追ってバトルランド遊園地跡に到着すると、背後から車が走って来る。ストレッチはビビって逃げ出すが、それはレフティーの車。
彼は「仕方が無かった、君を利用した」と言うが、利用してレザーフェイスたちの隠れ家を突き止めるまでは理解できるけど、到着した後、車でストレッチを追い掛ける意味は何なんだよ。彼女をひき殺そうとしているようにしか見えんぞ。
その後、レフティーはチェーンソーを手にして人工洞窟に突入するが、「破壊してやるぞ」とか「主よ我を守りたまえ」などと喚きながら支えの木を切りまくるだけ。
いや、そりゃあ確かに、全ての柱を切ってしまえば洞窟は崩壊し、中にいる連中は生き埋めになっちゃうかもしれんけどさ。それを狙ってチェーンソーを購入したわけでもあるまいに。
そんなことで時間を費やしている暇があったら、さっさとレザーフェイスたちを捜索しろよ。「捜したけど見つからないから、誘い出すために柱を切っていく」という行動なら、まだ分からないでもないけど、そういうことでもないし。

レフティーはレザーフェイスたちへの復讐に執念を燃やしているキャラクターとして登場するが、ほぼ役立たずのままで物語は進行する。
単に役立たずというだけでなく、むしろストレッチの邪魔をして、危機に陥れている。
そんな彼は、映画の残り時間が15分を切った辺りで、ようやくレザーフェイスたちの前に姿を現す。
捕まったストレッチの縄を切り、ようやく主人公らしい行動を取っている。

ストレッチが逃げ出した後、レフティーとレザーフェイスはチェーンソーでのチャンバラを繰り広げる。
ドレイトンは「店じまいの時が来たようだ」と呟き、隠しておいた手榴弾を取り出す。外へ出てから洞窟を爆破しようということかと思いきや、テーブルの下でピンを抜き、そのまま座っている。
その場にドレイトンもレザーフェイスもレフティーもいる状態で、爆発が起きる。
ドレイトンが誤って手榴弾を落としたところで爆発が起きているが、落とさなくても結果は同じだよな。

ストレッチはチョップ・トップに追われて傷を負わされながら、階段を上がって頂上の部屋に辿り着く。そこにはババアのミイラが鎮座している。
チョップ・トップが追い付くと、どうやらストレッチは完全に正気を失ったような目をしている。彼女はババアのチェーンソーを取り出し、チョップ・トップに背中を何度も刺されながらも、必死でリコイルスタータを引く。何度か引いていると、ようやくエンジンが作動する。
彼女はチョップ・トップを始末すると、狂ったように彷徨しながらチェーンソーを振り回す。それは、まるでチェーンソーを使った勝利の舞踏のようでもある。最終的には、ストレッチもイカれた奴になっちゃうのね。
ソーヤー家のイカれっぷりを描くのかと思いきや、それ以外の連中もイカれた奴らばかりってことだ。
レザーフェイスって、この中だとマトモな方じゃないか。

(観賞日:2013年6月16日)

 

*ポンコツ映画愛護協会