『アニー・イン・ザ・ターミナル』:2018、アイルランド&イギリス&アメリカ&香港&ハンガリー
教会の告解室に入った女は「神父様、私は罪を犯しました」と言うが、反省の態度を見せずに煙草を吸い始める。「お前の望みは何だ?」と問われた彼女は、「既にお分かりのはずよ。貴方の仕事を全て私に任せてほしい」と要求する。男が「先に希望者がいたので、そちらに任せた」と言うと、ローラは「賭けをしませんか」と言う。彼女が「別の希望者を始末する。2人の死体を運ぶわ。私が勝ったら全ての仕事を任せて。そちらが勝てば私が死ぬだけよ」とと提案すると、男は承諾した。ローラは告解室を出て行く時、最後に「ある人を捜してほしい」と告げた。
ターミナル駅のモニター室に入った男は、「ゲーム開始だ」と口にした。アルフレッドが「今夜はデートだ」とホテルの部屋で髭を剃っていると、2週間前から一緒に閉じ篭もっている相棒のヴィンスが皮肉を浴びせた。そんな2人の様子を、男がモニターで観察していた。地下鉄のホームでビルが夜中に煙草を吸っていると、清掃員のクリントンが来て「今日の運航は終わりましたよ」と教える。ビルは今すぐ乗りたいんだと苛立つが、行き先は特に無いと言う。
始発まで時間を潰す方法をビルが尋ねると、クリントンは「終点」という名前のカフェは24時間営業だと告げた。カフェに向かおうとしたビルは、強盗2人組のレニーとレイモンドに拳銃を突き付けられる。しかしビルは全く動じず、準備不足を指摘した。彼は銃に弾が入っていないことを言い当て、反省を促して立ち去った。他に客のいないカフェでビルが煙草を吸おうとすると、ウェイトレスのアニーが「ここは禁煙よ」と注意した。
1杯目のコーヒーを頼んでから20分も悩んでいたビルは、すっかり冷めたので2杯目を注文した。「前にどこかで会ったかな?」とビルが訊くと、アニーは否定する。激しく咳き込んだビルは体のために煙草を吸わせてくれと頼み、アニーは呆れながらも承諾した。ヴィンスは新聞の記事を読み、自身の見解をアルフレッドに語った。アニーが「何の病気?」と訊くと、ビルは原因不明だと答える。アニーは「死は人生にとって最高よ」と興奮し、「悪性腫瘍なのに認めようとせず、別の理由を探してるんじゃない?」と問い掛ける。ビルは医者から宣告された時のことを思い出すが、アニーには「私は癌じゃない」と否定した。
3週間前。イリングが目を覚ますとベッドに手錠で拘束されており、目の前には煙草を吸うアニーがいた。イリングが「命が惜しかったら、俺を解放して逃げろ。君は俺の素性も雇い主も知らないだろう」と脅すように言うと、アニーは落ち着き払って「もちろん知ってるわ」とイリングの詳しい情報を説明する。アニーは「貴方から少しだけ情報と寄付を貰いたいの」と不敵に笑い、口を塞いで黙らせた。それから彼女は教会へ行き、「神父様、私は罪を犯しました」と言ったのだった。
ヴィンスとアルフレッドはカフェで映画の描写について意見を交わし、アニーに紅茶を注文した。そんなカフェの様子も、男はモニター室で見ていた。ヴィンスはアルフレッドに「仕事の話だ。留守電にメッセージが残ってた。終点の駅へ行き、125番のロッカーを開けろと」と話し、ロッカーから持って来た黒いブリーフケースを出した。ブリーフケースには「付いて来い」と書かれたマッチ箱が入っており、フランクリンの仕事だと気付いたアルフレッドは「デカいヤマだ」と喜んだ。
ヴィンスはアルフレッドはマッチに店名のあったナイトクラブへ行き、受付嬢のコネホと話す。「何がご希望?」と問われたアルフレッドは、「人に会いに来たが、正体も用件も分からない」と答える。コニーは「バニーに会わせてあげるわ」とテーブルへ案内し、ステージにはポールダンサーのバニーが現れた。ヴィンスは彼女に話し掛け、ウェイトレスのアニーだと気付いた。「なぜこんな場所にいる?」と訊かれた彼女は、「稼ぐためよ」と微笑で即答した。
ヴィンスが「どこかで話せないか」と持ち掛けると、アニーは大金の入った封筒を渡すよう要求した。封筒を受け取った彼女は、ヴィンスとアルフレッドを楽屋へ招いた。アニーはブリースケースを差し出し、「私はただの仲介者。荷物の受け渡しを手伝ってるだけ」と言う。ヴィンスが「カフェとの時とは雰囲気が違うな」と言うと、アニーは「当たり前よ、メイクもドレスも変えているんだから」と口にする。ヴィンスは腑に落ちなかったが、アルフレッドに促されて楽屋を後にした。
ビルが「この状況に参ってる。呼吸が止まるのを待つだけだ」と漏らすと、アニーは「貴方は自分に酔ってるだけ。せっかく手にした特権なのよ。無秩序になるためのチャンスなの。残りの人生を好き勝手にすればいいじゃない」と助言した。「何かトラウマでもあるのか」とビルが困惑すると、彼女は「幼い頃にママが燃え死んだ以外に?」と口にした。ヴィンスが駅のロッカーを開けてブリースケースを取り出すと、クリントンが来て「ここはアンタのロッカーじゃない」と指摘する。ヴィンスがナイフで脅すと、彼は金を要求した。ヴィンスは30ポンドを渡し、クリントンを納得させた。
レニーとレイモンドは駅を出ようとするヴィンスを狙うが、恫喝されて諦めた。ヴィンスはカフェに入り、アルフレッドがアニーと仲良く話す様子を見て苛立った。アルフレッドはアニーとキスしてから、ヴィンスと共に店を去った。ヴィンスはブリースケースの中にあったレコーダーを渡し、アルフレッドはフランクリンのメッセージを確認した。フランクリンは彼らに1人の殺害を依頼し、指定の部屋で待機するよう指示した。フランクリンは実行の前に、どちらか1人との面会を要求していた。
ヴィンスは指定のホテルを訪れ、アニーの姿に気付いた。しかし彼が追い掛けると、アニーは姿を消した。背後からアニーが現れて口笛で呼んだので、ヴィンスは「ゲームは勘弁してくれ」と言いながら後を追った。アルフレッドがカフェに行くと、アニーは「危険な状況よ」と深刻な表情を見せる。彼女は「貴方が好きだから死なせたくない。紹介した人がいる。ちやんと話を聞いて」と言い、クリントンを呼び寄せた。クリントンはブリースケースを開けると、レコーダーの音声を再生した。
「押せ」というメモを見たヴィンスは電話機のボタンを押し、掛けて来た相手に「フランクリンだな」と確認する。相手は「そうだ」と答え、「仕事は明日からだ。君たちのいる部屋から見える位置に、ターゲットが現れる」と説明する。彼は一発で仕留めるよう要求した後、「この仕事が終わったら、君の相棒を殺してほしい」と告げる。「報酬は倍額を支払う」と提案されたヴィンスは、その依頼を受けた。クリントンがカフェでアルフレッドに聞かせたのは、その音声だった。アルフレッドは憤慨し、拳銃をクリントンに突き付けて「どこから持って来た?」と詰め寄る。クリントンは「駅のロッカーだ。黒いブリーフケースの中にメモがあって、男が金をくれた」と説明し、彼に脅されて店を去った。アルフレッドが荒れていると、アニーは新しい相棒にしてほしいと持ち掛けた。
アニーはカフェでビルと話している時、「貴方には選択肢が2つある。1つは自殺。度胸があれば、人生を終わらせる手段なんて幾らでもある」と話す。ビルは迷いを示し、「カトリック?」と訊かれて「そうだ」と答えた。彼は教会で告解室へ行った時、咳き込みながら神父に懺悔した。すると神父は彼の話をほとんど聞かず、キャンディーを差し出した。アニーは自殺の方法を提案し、万年筆を使うよう促した。ビルが「しかし痛そうだ」と言うと、彼女は貴方は自殺したくないんでしょ」と告げる。アニーは万年筆を欲しがり、半ば強引に自分の鉛筆と交換した。
ヴィンスとアルフレッドはホテルでの生活が13日目に突入し、トランプを見つけて遊ぼうとする。しかしカードが足りないのでヴィンスは苛立ち、アルフレッドを扱き下ろした。『鏡の国のアリス』の本を見つけたアルフレッドが文章を読むと、ヴィンスは内容を知っていた。「意味が分からない」とアルフレッドが吐き捨てると、彼は「文句はルイス・キャロルに言えよ」と告げた。アニーはビルに、「もう1つの選択肢は、人の手を借りて死ぬ」と話す。彼女は「自殺する度胸が無いのなら、他人にやってもらえばいい。私の今の恋人がやってる」と言い、幾つかの方法を提案した。するとビルは、ビルから突き落とされる方法をキープした。
ホテル生活に辟易したヴィンスは、アルフレッドに苛立ちをぶつけた。「お前はお荷物だ」と言われたアルフレッドは、「今まで働いて来たのは俺だけだ」と声を荒らげた。アニーはビルに付いて来るよう言い、カフェの外へ連れ出した。彼女は昔の通気孔へビルを案内し、「良く来るの。大好きな場所よ」と話す。通気孔に飛び込むよう言われたビルが「身投げなんかしない」と断ると、彼女は「痛みが無くて知的な死に方よ」と言う。
突き落とされそうになったビルが慌てて「君は異常者だ」と指摘すると、アニーは「何が嫌なの?死んだら全てが終わるのよ」と話した。ビルが「こんな方法は嫌だ」と反論すると、彼女は「もしかして本心では死にたくないんじゃないの?」と問い掛けた。ヴィンスはホテルで銃に一発だけ弾を装填し、背中を向けているアルフレッドに引き金を引いた。弾は出なかったが、アルフレッドが「装填ししてた?」と訊くとヴィンスは全く悪びれずに「ああ、一発だけな」と答えた。
アニーは改めて、ビルに通気孔に飛び込むよう要求する。ビルが拒むと、彼女は「ガッカリしたわ」と言って立ち去ろうとする。ビルが腹を立てて「君にとってはゲームみたいな物か。ちっぽけな頭じゃ理解できないだろうが、私にとって死はリアルなんだ。君が死について語ることなんて無意味なんだ」と言うと、アニーは「そうやって怒りを吐き出すのよ」と嬉しそうに言う。ビルは彼女を激しく罵り、「君のような悪い子をたくさん指導してきたんだ」と口にした。するとアニーは不敵な笑みを浮かべ、「ビンゴ」と告げた。孤児だったアニーは幼少期、ビルから性的虐待を受けていた。「貴方が私を思い出すまで、ずっと待っていた」とアニーは言い、万年筆でビルの首を突き刺して通気孔に落とした。
ヴィンスはフランクリンから電話を受け、アルフレッドに「始めるぞ」と指示する。彼が窓に近付いてライフルを構えた直後、再び電話が鳴った。アルフレッドは受話器を取って「聞こえてる?」と確認し、ヴィンスに早く撃つよう指示する。ヴィンスがアニーの姿に気付いた直後、アルフレッドは背後から彼に拳銃を突き付けた。アルフレッドはライフルを捨てさせ、アニーを呼び寄せた。アニーが部屋に来ると、アルフレッドは匂いが違うと気付く。アニーは「香水を変えたの」と答え、ヴィンスに「貴方は相棒を売った」と告げる。アルフレッドはヴィンスを厳しく糾弾し、彼に銃弾を浴びせた。ヴィンスはアニーを見て「その目、見覚えがある」と言い残し、アルフレッドに止めを刺された…。脚本&監督はヴォーン・スタイン、製作はマーゴット・ロビー&トム・アッカーリー&ジョシー・マクナマラ&モリー・ハッセル&アリアンヌ・フレイザー&テューン・ヒルテ&デヴィッド・バロン、製作総指揮はサイモン・ウィリアムズ&チャールズ・オーティー&メーガン・フォーデ&デルフィーヌ・ペリエ&ヘンリー・ウィンタースターン&ジョン・ジェンクス&D・トッド・シェパード&シェリー・マディソン&ジョー・シンプソン&A・レックス・ハマー&マシュー・ジェンキンス&ハビブ・パラチャ&ヴィクトリア・ペトラニー&アオイフ・オサリヴァン&トリスタン・オーペン・リンチ&ミラ・ズドラヴコヴィッチ&テッド・カウレイ&ミシェル・サマルジッチ、共同製作はステファニー・ポン&ソフィア・カー&アラナ・クロウ、共同製作総指揮はルザンナ・ケゲヤン、撮影はクリストファー・ロス、美術はリチャード・ブロック、編集はアレックス・マルケス&ヨハネス・ボック、衣装はジュリアン・デイ、音楽はルパート・グレッグソン=ウィリアムズ&アンソニー・クラーク、オリジナル・ソングはニュートン・フォークナー。
出演はマーゴット・ロビー、サイモン・ペグ、デクスター・フレッチャー、マックス・アイアンズ、マイク・マイヤーズ、カタリーナ・キャス、ニック・モラン、レス・ラヴデイ、ジョルダン・ダン、マシュー・ルイス、トーマス・ターグース、ジェイ・シンプソン、ベン・グリフィン、ロバート・グッドマン、ポール・レイノルズ、ジータ・バンファルヴィー他。
『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』でアカデミー賞主演女優賞候補となったマーゴット・ロビーが、主演と製作を兼任した作品。
2015年の短編映画『Yussef Is Complicated』でトロント国際キッズ映画祭の観客賞を受賞したヴォーン・スタインが、初の長編監督と脚本を勤めている。
アニー&ボニーをマーゴット・ロビー、ビルをサイモン・ペグ、ヴィンスをデクスター・フレッチャー、アルフレッドをマックス・アイアンズ、フランクリンをマイク・マイヤーズが演じている。最初に教会のシーンがあるが、これが3週間前の出来事であることが、しばらくすると明らかにされる。それだけでなく、他のシーンでも時系列をシャッフルして行ったり来たりを繰り返している。
時系列を入れ替えて構成を複雑化し、それによって観客を引き付けようという作戦になっているわけだ。
そういう戦略が効果的に作用する作品もあるが、これは完全に失敗している。
理由は簡単で、基本の話が退屈で何の面白味も無いからだ。たぶん誤解している人もいるんじゃないかと思うんだけど、時系列の入れ替えってのは、あくまでも目的を達成するための手段に過ぎない。
ミステリーのネタバレを避けるとか、先に結末を提示しておいて「どんな経緯なのか」という形で観客を引き込むとか、何かしらの目的があって、そのために時系列をシャッフルするべきなのだ。
しかし本作品の場合、時系列を入れ替えること自体が目的化しているような状態になっている。
だから、そこに面白味が無いのだ。粗筋では最初に登場するキャラクターを「アニー」と書いたが、たぶん監督は正体不明の女として描いているんじゃないかと思われる。
だけど、かなり早い段階で「カフェのウェイレトスと同じ人でしょ」ってことが分かる。
メイクも服装も変えているけど、本気で同一人物ってのを隠そうとしている気配は乏しい。
もしかすると、「冒頭の女もアニーもバニーも全て同一人物と思わせておいて」という後に別の仕掛けもあるので、そっちを生かすために、あえて「冒頭の女とアニーは一緒」ってのはバレバレにしたのかもしれない。だとしても戦略としては失敗だと思うけど、実は2つ目の仕掛けも分かりやすいヒントを出しすぎちゃってんのよね。ヴィンスがクラブで「雰囲気が違う」と怪しむシーンがあって、勘のいい人なら「もしかしたら別人じゃないか」と感じてしまうのよ。
もっと勘のいい人なら、「瓜二つってことは、双子とか姉妹かもね」というトコまで絞り込めるかもしれない。
で、完全ネタバレを書くと、アニーは双子なのだ。
でも、双子である意味は全く無いので、それか明かされても「だから何なのか」としか思えない。
ちなみに、アニーの正体だけでなく、クリントンの正体がフランクリンなのも、かなり早い段階で何となく気付く人は少なくないんじゃないかな。構成を複雑にして謎めいた仕上がりにしてあるのだが、そういう肝心なトコは分かりやすくなっている。アルフレッドはカフェでヴィンスと話す時、平気で銃を振り回している。2人はアニーに聞こえるような声で、堂々と仕事の話をしている。
彼らが殺し屋であることを考えると、そんな目立つ行動は明らかに不自然だ。では2人はアニーと以前から知り合いなのかというと、そうではない。そこは殺し屋たちが集まる店になっているのかというと、そういうわけでもない。
不自然であるがゆえに、「何か秘密が隠されているのではないか」と考えたくなってしまう。しかし残念なことに、何の秘密も無いのだ。
つまり、「ただ不自然なだけの行動」ってことだ。
それをスタイリッシュな描写として持ち込んでいる節が窺えるが、不細工なだけだ。時系列をシャッフルしたことでミステリーとしての魅力が高まっているかというと、そんなことは全く無い。ただ無駄にゴチャゴチャしているという印象を受けるだけであり、プラスの作用など微塵も感じられない。
たぶん監督は基本的に、会話シーンで観客を引き付けようとしているんじゃないかとは思われる。映画の多くを、会話シーンが占めているしね。
ただ、そんな会話シーンには何の魅力も無い。本筋に関連する会話シーンでは、ミステリーを盛り上げる力が無い。
そこは本来なら、シンプルに「物語を進行する」とか「伏線を張る」という意味での力が無きゃいけないはずなのよね。でも、単なる説明や交通整理に留まっているし、伏線としての機能も乏しい。本筋から脇に逸れている会話シーンも多いのは、たぶんクエンティン・タランティーノの影響を受けているんだろうと思う。
しかし、そこに無駄話としての面白さは無い。シンプルに退屈で、ただ話を間延びさせているだけだ。
あと、本筋に関わる会話にしろ、無駄話にしろ、それを喋っているキャラクターにも引き付ける力が乏しいしね。
キャラクターさえ魅力的なら、それだけで作品を引っ張れちゃうようなトコはあるんだけどね。後半、アニーは幼少期にビルから性的虐待を受けており、彼が思い出すまで待っていたってことが明らかになる。
でも、そこに向けた伏線なんて、ちっとも張られていなかった。だから「実はこんな過去がありまして」と明かされても、ただ唐突なだけなのよ。完全なる後出しジャンケンだからね。つまり、ミステリーとしては完全に破綻しているのよ。
っていうか、「そんなの要るかな」と感じるし。
彼女が冒頭で捜索を依頼した対象がビルなのだが、そこの復讐劇は排除して、殺し屋としての話に絞り込んだ方が良くないか。ビルのパートを持ち込んでも、ただ話が散らかっているだけだぞ。冒頭の「別の希望者を始末する。2人の死体を運ぶわ」という台詞で分かりやすくヒントを出しているので、アニーが最初からヴィンスとアルフレッドを殺すつもりってのもバレバレだ。
で、終盤になって彼女は本性を表すが、その気になればヴィンスとアルフレッドを簡単に殺せたはずなのに、なぜか無駄な手間と時間を掛けている。
ホテルに缶詰めにして、自分を騙してヴィンスを殺させた理由をアルフレッドから問われた彼女は、「腹ぺこのネズミが殺し合うのを見るのが好きだから」と答える。
だが、それで「なるほど」納得できる観客は、よっぽどのお人好しかバカのどっちかだろう。結局、変に構成を捻らず、シンプルな時系列順で並べた方が、まだマシになったんじゃないかと思っちゃうのよね。
とは言え、あくまでも「マシになる」というレベルであって、決してポンコツの沼から脱出できるわけではないんだけどね。
殺し屋たちが絡み合う話なんだし、もっとノワール的なアクション映画としての方向に振り切ったら、もしかすると何とかなったかもね。この映画って、そっち方面への意識は皆無に等しいからね。
それも退屈を生み出す要因の1つになっている。(観賞日:2021年2月21日)