『宇宙からの少年』:1959、アメリカ

夕暮れ時、天文台ではメイソン博士と助手が仕事をしていた。天体望遠鏡を覗いていた助手はメイソンを呼ぶが、「すみません。何でもありません。突然、光ったので」と口にする。「彗星か隕石だろう」とメイソンが言うと、「いいえ、ドリルの形でした。回転してた」と助手は口にするが、すぐに「気のせいかも」と弱気になった。助手は「地球って孤独な星ですよね。宇宙の大海原に垂らされた餌のよう。いつか何かに飲み込まれそうだ」と語り、天空を見上げた。
宇宙船が地上に着陸し、そこから現れた異星人のトールは走って来た犬を光線銃で白骨化させた。異星人のデレク、モレル、ソウルも宇宙船から出て来た。デレクが白骨化した犬を気にしていると、船長が調査に移るよう促した。船員たちは装置を使い、地球の環境を確認した。船長が「子供のガーゴンを持って来い。その反応を見て判断しよう」とモレルに命じると、デレクは「待って下さい。この星に知性体が存在する証拠が」と意見を述べる。
トールが「気にする必要は無い」と告げると、デレクは「君らしいな。この小動物も簡単に殺した」と批判する。船長は言い争う2人を制止し、ガーゴンを持って来るよう指示する。するとデレクは、「その必要はありません。この星は条件を満たさない」と反発して光線銃を構える。「ガーゴンの飼育地を探す任務よりも、異星人が大事なのか。思い出せ。我々の食糧のために必要なんだぞ」と船長が説いても、デレクは耳を貸さなかった。
彼らの住む星では、母も父も知らぬまま箱の中で育てられ、老いた者や病める者は崇高なる種を保つために殺される運命にある。しかしデレクは焚書を免れた本を読み、家族や兄弟姉妹があり、幸せや愛がある生き方を知ってしまったのだ。デレクは「無人の星を探すべきだ。ガーゴンは文明生物を危険にさらす」と話すが、隙を見せてしまい、銃を奪われた。船長はトールにデレクの見張りを命じ、ガーゴンの様子を確認する。ガーゴンは彼らの食糧であり、それを地球で繁殖させようと目論んでいた。
だが、船長は窒素が多すぎてガーゴンの繁殖に不適だと考え、船員たちに離陸準備を指示する。船長が基地へ連絡している間に、デレクは隙を見て逃走した。船長は発砲しようとするトールを制止し、「デレクは生きたまま連れて帰らねば。我々の指導者の息子だ」と告げる。驚くトールに、船長は「彼の行動を報告した。デレクは自分の出自を知らないそうだ」と語った。直後、ガーゴンが過剰な窒素に刺激されて元気になったことを知った船長は、やはり繁殖に適していると考える。
船長はモレルとソールに対し、ガーゴンの脚にロープを付けて洞穴に隠せと指示した。再び指導者と通信した船長は、部下を送ってデレクに自分の息子だと伝えさせるよう命じた。もしもデレクが頑固な態度を崩さなかった場合は、彼と関わる者も含めて始末するよう指導者は指示する。トールが名乗り出たので、船長は彼にデレクの捜索を任せた。一方、街に足を踏み入れたデレクは、白骨の近くで拾った刻印の意味をガソリンスタンドの従業員に尋ねる。そこには「スパーキー」という犬の名前と住所が記されていた。デレクは従業員に教えてもらった住所へ向かっている途中、通り掛かった車の持ち主に「乗りな、送ってやるよ」と声を掛けられた。
デレクがスパーキーの飼い主である家に辿り着くと、「貸し部屋あり」という看板が出ていた。その家には、ベティー・モーガンという若い娘と祖父が2人で暮らしていた。ベティーの兄であるバドが結婚して出て行ったため、その部屋を貸し出そうとしていたのだ。デレクに気付いたベティーは部屋を見に来た人だと誤解し、家に招き入れた。一方、トールは車に乗せてくれた男に、運転の方法や燃料を尋ねていた。男は給油するため、ガソリンスタンドへ向かった。
デレクはベティーと祖父に、「ここで一緒に住んでも構いませんか」と遠慮がちに訊く。ベティーと祖父は快諾し、町に来たばかりで家賃が払えないなら仕事に就くまで待つと言う。着替えを禁じられていて制服しか持っていないとデレクが話すと、ベティーはバドの服を貸してあげることにした。ベティーはアリスと一緒に泳ぎに行くことになっていたが、車で迎えに来た友人のジョーは「延期しよう。記事を書かなきゃいけなくなった」と言う。彼は記者なのだ。空飛ぶ円盤を目撃したという人が現れたので、話を聞きに行くのだという。そこでベティーは、デレクを誘ってみることにした。
トールは車の持ち主がガソリンスタンドに立ち寄った時、従業員から「同じ服を着た奴と話したよ」と言われる。トールは従業員に銃を向けて脅し、犬の名札の住所を教えたことを吐かせた。車の持ち主が怯えて車を発進させようとすると、トールは光線銃で白骨化させた。従業員が逃げ出そうとするので、トールは銃で白骨化させた。トールは白骨を外に投げ捨て、車を奪ってベティーの家へ向かう。
デレクは初めて乗る車に戸惑いながらも、ベティーの助言を受けながら運転してアリスの家に辿り着いた。ベティーはアリスにデレクを紹介し、彼の水着を貸してもらうことにした。デレクは名札を落とした、ベティーはスパーキーの物だと気付く。「どこで見つけたの?」と彼女が尋ねると、デレクは「ここに来た時、僕は一人じゃなかった。その内の一人が殺したんだ。遺体のそばで、それを見つけて」と話す。ベティーは動揺しながら、その場所へ連れて行ってほしいと頼んだ。
トールがモーガン邸に着くと、ベティーの祖父はデレクの仲間だと思って「彼を捜してるなら、今はいないよ。孫娘のベティーと一緒にウッドワード家に行ったよ」と言い、場所を教えた。ベティーはデレクに案内された場所で白骨を見るが、スパーキーだとは信じられない。デレクは「破壊焦点光線を知らないの?光線を照射して、生体の分子を分離するんだ。骨格だけが残る」と語った。「説明を聞いてもらえる人を探さねば」とデレクが言うと、ベティーは「たぶん理学部長のシンプソン教授ね」と告げた。
トールはウッドワード家に到着するが、もちろんデレクの姿は無い。アリスを恫喝した彼は、デレクとベティーが去ったことを知った。アリスが警察を呼ぼうとすると、トールは光線銃で白骨化させた。帰宅したベティーは、祖父が昼寝中だったのでメモを残し、デレクと共にシンプソン教授の元へ向かう。目を覚ましてメモを見た祖父は、再び訪ねて来たトールに、デレクたちがシンプソンの元へ向かったことを教えた。
トールは研究室にいるシンプソンを白骨化させ、その場から逃亡した。研究室にやって来たデレクとベティーは、シンプソンの白骨を発見した。デレクは「僕を止めようとしてるな。車に乗って安全な場所に行くんだ」とベティーに言う。ベティーは祖父に電話を掛け、大学へ行ったことをデレクの友達に教えたと聞かされる。彼女は「彼はシンプソン教授を殺したのよ。たぶんデレクを追って家に向かってる。すぐに家を出て」と祖父に告げた。
ベティーは警察に電話を掛け、出動を要請した。トールはモーガン邸に戻って祖父を光線銃で脅し、デレクの元へ案内するよう要求した。デレクはトールに発見されたため、ベティーに外へ出ないよう告げて車を降りた。張り込んでいた刑事たちはベティーを隠れさせ、トールに発砲する。銃弾を浴びたトールが姿を消したため、デレクは刑事たちと共に捜索する。ジョーはベティーの元に駆け付け、アリスの家でプールの白骨があったことを告げた。
車の中に隠れていたトールは、デレクとベティーに銃を向けた。トールはデレクから拳銃を取り上げて2人を車に乗せ、病院へ行くよう命じた。ベティーは往診に向かおうとしているブラント医師に声を掛け、銃弾を取り出すよう依頼する。トールは彼を脅し、中に入るよう指示した。診察台に寝たトールに、デレクは「なぜ僕を追って来た?深い理由があるな」と訊く。トールは「ここでガーゴンを育てるのだ。お前を逃がすわけにはいかん」と述べた。
「隊長が許可したら、お前を殺したのに」とトールが歯痒そうに言うので、デレクは「なぜ隊長は狙撃を制したのだ?」と問い掛けた。トールが「お前は指導者の息子だと、隊長は知ったのだ」と言うので、デレクは驚いた。「隊長の命令に反して、なぜ町で僕を撃った?」と彼が訊くと、トールは「生かすも殺すも俺次第だ。反逆者は次期指導者にふさわしくない」と睨んだ。ブラントは弾丸を摘出するが、トールは意識が朦朧とする。その間に3人は、その場から逃げ出した。
デレクたちは車に乗り込み、警察へ向かう。だが、ブラントは看護婦のモースが来ることを思い出した。モースは倒れているトールを見つけ、手当てを施した。ブラントからの電話で、モースはトールが殺人犯だと知る。だが、目を覚ましたトールは銃を向けてモースを脅し、車を運転するよう命じた。デレクはベティーに、「ここに来た目的はガーゴンのためだ。子供の内は小さいが、一日も経たぬ間に、あのビルほど成長する」と教える。
「止められないの?」とベティーが訊くと、彼は「破壊光線しか効かない。科学者なら、トールの銃を参考に作れるかもしれない。その時間があればいいけど」と言う。一方、刑事のマックとハリーはスパーキーの白骨を発見し、近くの洞窟を調べてみることにした。その頃、トールはモースを人質にして閉じ篭もろうと考え、洞窟に向かっていた。洞窟に入ったマックは、怪物に襲われて命を落とした…。

脚本&製作&監督はトム・グレーフ、製作協力はC・R・カルテンサラー&ジーン・スターリング&ブライアン・G・ピアソン。
出演はデヴィッド・ラヴ、ドーン・アンダーソン、ブライアント・グラント、ハーヴェイ・B・ダン、トム・ロックイヤー、ロバート・キング・ムーディー、ヘレン・セイジ、フレデリック・ウェルチ、カール・ディッケンソン、ソニア・トーギソン、ビリー・ブリッジス、ジェームズ・コンクリン、ジーン・スターリング、ラルフ・ロウ他。


ポンコツ映画を特集するアメリカのケーブルTV番組『ミステリー・サイエンス・シアター3000』やカサンドラ・ピーターソンがホストを務めるB級ホラー映画専門番組『Elvira's Movie Macabre』などで放送され、一部のマニアを喜ばせた映画。
『宇宙から来たティーンエイジャー』という別タイトルでも知られている。
デレクをデヴィッド・ラヴ、ベティーをドーン・アンダーソン、トールをブライアント・グラント、モーガンをハーヴェイ・B・ダン、ジョーをトム・ロックイヤーが演じている。
デヴィッド・ラヴは、本作品の前に短編映画1本に出ているが、その2本しか出演作が無いという無名の俳優。そもそもプロの俳優なのかどうかも怪しいものがある。

製作と脚本と監督を務めたのはトム・グレーフという人物で、1955年の『The Noble Experiment』に続く長編2作目。
その前に短編2本を撮っている。その4本が、彼の撮った全ての作品だ。
アンクレジットだが、実は撮影と編集と特殊効果と音楽コーディネートも彼が担当している。
それで何となく予想が付く人もいるだろうが、ものすごく低予算の自主映画ってことだ。
なお、トム・グレーフとデヴィッド・ラブとが同一人物だと思われていた時期が長かったのだが、ジョーを演じたトム・ロックイヤーがトム・グレーフの変名だ。

冒頭、科学者のメイソン博士と助手が登場し、宇宙にある何かを観測したことを助手が口にしたり、「地球って孤独な星ですよね。宇宙の大海原に垂らされた餌のよう いつか何かに飲み込まれそうだ」と語ったりする。
この2人、それ以降は全く登場しない。
「何のために登場したのか」と問われても、答えは見当たらない。
そこのシーンを丸々カットしても、その後の展開には何の影響も及ぼさない。本編に向けて、雰囲気を煽るための役割を果たしているわけでもない。

シーンが切り替わるとドリル状に回転する宇宙船が地上に着陸するが、すぐにコルク抜きのような部分は消えて、上部にある鍋の蓋のような部分だけになる。コルク抜きの部分は、地中に埋まったという設定のようだ。
で、ハッチがパカッと開いて、戦闘機のパイロットが使うみたいなヘルメットと、エンタープライズ号の乗組員みたいなコスチュームを着用した男たちが現れる。一応、「宇宙人」という設定である。
ただ、見た目の宇宙人っぽさは皆無。おまけに、名前も「デレク」だの「モレル」だのと、アメリカ人と変わらないネーミング。低予算が云々という前に、そもそもホントに宇宙人に見せようという意識があったのかと疑いたくなる。
あと、タイトルが「Teenagers from Outer Space」なんだから、少なくともデレクは10代の若者という設定のはずなのに、そんな風には全く見えないぞ。
ひょっとすると、「彼らの星では、あれでも10代」という裏設定があったりするのかもしれないが、たぶん何も考えていないだけだろう。

異星人は犬が走って来ると、光線銃で白骨化させる。
そういうシーンを演出する場合、普通なら「銃から光線が発射され、それを浴びた犬が白骨化される」という形になる。
低予算だと犬が白骨化する変化を表現する特撮に金は使えないから、犬のカットと白骨のカットを用意し、それを繋いで変化を表現するパターンが常道だろう。
しかし本作品では、それでは済まないぐらい予算が少なかったのか、銃から光線が出ない。
だから「犬が走って来る様子」→「銃口が光る様子」→「白骨化した犬が転がる様子」というカットの繋ぎ方になる。
そのシーンに限らず、光線銃が使われる際は全て同様のカットの繋ぎ方であり、光線が標的に命中する表現は無い。

地球に降り立った異星人たちは、食糧であるガーゴンを繁殖させようとする。知性体が存在すると確信したデレクは反対するが、光線銃を奪われる。
ってことは「異星人たちがガーゴンを繁殖させ、それが原因で地球人が危機に陥る」という展開になるのかというと、直後に「ガーゴンの繁殖には向かないから別の星へ向かおう」ということになる。
だったら、デレクが繁殖に反対したり、銃を奪って拘束したりという手順の意味が全く無いだろ。
で、そう思っていたら、「ガーゴンが過剰な窒素に刺激されて元気になった。やっぱり繁殖に適している」ということになる。どないやねん。

あと、異星人たちは「数千匹のガーゴンを数百万倍に成長させる」「収穫は上空から行う。我々に危険は及ばない」などと語っているが、「危険があるけど、食糧として繁殖させる」って、なんか奇妙じゃないか。
繁殖させるなら、もっと安全な食糧を選んだ方がいいだろ。わざわざ危険性の高い生物を繁殖させる食糧に選ぶ必要は無い。
一日でビルほどの大きさになっちゃうような生物を食糧にしているって、チャレンジャーだなあ。
まさか、そいつらはガーゴンしか食べられない設定だったりするのか。

異星人の指導者は地球がガーゴンの繁殖に適していると聞かされると、「ただちに帰還し、輸送船をそこに案内しろ」と命じる。そこまでは分かる。
ただ、その後に「逃走したデレクが下等な原住民と関われば作戦が困難になる」と言い、船長の「直ちに帰還するなら、彼をどうすれば?」という質問に「部下を送り、彼は私の息子だと伝えよ」と言い出すと、ちょっと引っ掛かる。
そこで簡単に息子であることを明かすなら、なぜ今までは内緒にしていたのか。
それと、デレクを連れ戻したいのなら、船長たちを直ちに帰還させず、みんなで捜索に向かわせた方がいいんじゃないのか。デレクを捜索させるけど宇宙船は帰還させるって、なんか変だぞ。

実を言うと、ベティーがデレクを間借り希望の若者だと誤解して招き入れる辺りでは、「異星人が地球の若い娘と仲良くなって云々」というホーム・コメディーっぽい話にしてしまえばいいんじゃないかと感じた。異常なほど優しいベティー&祖父がデレクを受け入れる辺りのホンワカした雰囲気は、決して悪くないのだ。
だから、異星人が地球に生活や文化に戸惑うというカルチャー・ギャップや、異星人の特殊能力で活躍するといったトコロを使って喜劇を構築すれば、それなりに面白くなる可能性はあるんじゃないかと感じたのだ。
ただ、そういう内容に仕上げても、たぶん「稼げる映画」にならないんだよな。
稼げる作品にするためには、陳腐であってもSFモンスター映画にした方がいいのだ。

シンプソンと会うために大学を訪れたデレクとベティーは、なぜか研究室ではなく駐車場で待とうとする。そんな不可解な行動を取る理由は簡単で、「2人が駐車場へ行っている間にトールが研究室へ行き、シンプソンと接触する」という展開を作りたいからだ。
不自然な行動は、それだけに留まらない。普通に入り口から入って研究室へ赴いたトールは、シンプソンを白骨化させた後、なぜか窓から逃亡するのだ。
なぜ来たルートを戻らずに窓から逃げるのかというと、ちょうど廊下をデレクとベテイーが歩いて来ているからだ。そこでデレクたちと遭遇させるのは都合が悪いので、窓から逃げさせているのだ。
駐車場で待つデレクたちの行動にしろ、窓から逃げるトールの行動にしろ、その理由は彼らの中には存在しない。あくまでも脚本上の都合だ。
そして、そういう脚本上の都合で登場人物の行動が不自然になっているということは、その脚本は出来が悪いということだ。

デレクが逃亡し、それをトールが捕まえようとして追い掛けているのだから、そこの追い掛けっこを使ったサスペンスがメインなのかと思いきや、終盤になってモンスター映画としての様相が急に飛び込んでくる。
まあ全く伏線が無かったわけではなくて、序盤にガーゴンが巨大化することを恐れる異星人のセリフがあったり、スパーキーの白骨をベティーに見せたデレクが何かの音を耳にしたりという描写はあるのだが、かなり薄いネタ振りだ。
しかも、怪物出現の予兆が無い中で展開される「トールが追って来る」という話は、ものすごくモタモタしていてテンポが悪いし、無駄な展開も多い。

異星人たちが繁殖させようとしているガーゴンがどんな生物なのかというと、ただのロブスターだ。そこには何の細工も施されていない。
ただのロブスターをそのまま写しているだけなのに、「ガーゴンという別の生き物」と言い張ってしまうのだ。
とは言え、まだ怪物化していない状態なので、「きっと巨大化して怪物の姿になったら、それなりの見た目を披露してくれるんだろう」と思いきや、そんなことは無かった。
しかも、こっちの予想を見事に外すような姿で現れてくれた。

モンスターが登場する低予算映画では、動物をミニチュアの前に立たせて巨大に見せ掛けたり、動物に何かをくっ付けて怪物に偽装したり、そういう手法が良く使われる。
そういう手法を使っても、ハッキリ言って相当に陳腐な仕上がりになってしまうのだが、この映画では、そういう方法を採用していない。
で、どんな方法を使ったのかというと、「ロブスターの影絵を大きく写す」というやり方だ。

トカゲ特撮に似ているが、こちらは別撮りした影をハメ込んでいるので、人間との共演が可能になっている。キグルミを使ったり、本物の動物をトカゲ特撮で巨大に見せたりした時のような類の陳腐さは排除できる。
ただし別の陳腐さは生じるので、優れた方法とは言えない。しかも、影なんだから怪物っぽく作ることは出来ただろうに、ロブスターの影をそのまま写しているだけなのだ。
途中でロブスターの姿がチラッと影の中から覗く箇所があるので、ひょっとすると影絵をやろうとしたわけではなく、別撮りしたロブスターの映像を合成したら、質が低すぎて影みたいになってしまったのかもしれない。
あと、それだけでも充分に滑稽なのに、ロブスターが立っている形でハメ込んでギクシャクと動かしちゃうもんだから、ますます滑稽なことになっている。

(観賞日:2014年6月23日)

 

*ポンコツ映画愛護協会