『愛に迷った時』:1995、アメリカ

グレイスはビション商会を営むエディと結婚しており、キャロラインという娘にも恵まれて幸せに暮らしている。彼女は牧場を経営する父ウィリーの下で働きながら、主婦が集まる地元委員会の委員長もしており、忙しい毎日を送っている。
ある日、委員会の集まりを終えて帰宅しようとしていたグレイスは、エディが見知らぬ女性とキスをしている現場を目撃する。その日の夜、打ち合わせで遅くなると言っていたエディは、その女性とレストランへ食事をしていた。グレイスは寝巻きのままでエディの前に現れ、彼に詰め寄った。だが、エディはシラを切り通そうとする。
キャロラインを連れて家を出たグレイスは、実家に転がり込む。だが、エディと取り引きのある父ウィリーは夫婦喧嘩など迷惑だと言うし、母ジョージアも浮気なんて良くあることだと告げる。グレイスの味方をしてくれるのは、姉のエマ・レイだけだ。
やがてエディが牧場へと現れるが、グレイスは言い訳も聞かずに追い返した。エディから離婚したいのかと尋ねられたグレイスは、明確な答えを出すことが出来なかった。グレイスは怒ってはいたが、エディへの愛情を完全に失ったわけではなかった…。

監督はラッセ・ハルストレム、脚本はカーリー・クォーリ、製作はアンシア・シルバート&ポーラ・ワインスタイン、共同製作はウィリアム・ビーズリー、製作総指揮はゴールディ・ホーン、撮影はスヴェン・ニクヴィスト、編集はミア・ゴールドマン、美術はメル・ボーン、衣装はアギー・ガーラード・ロジャース、音楽はハンス・ジマー&グレアム・プレスケット。
主演はジュリア・ロバーツ、共演はデニス・クエイド、ロバート・デュヴァル、ジーナ・ローランズ、キーラ・セジウィック、ブレット・カレン、ヘイリー・オール、アンヌ・シュロップシア、ミューズ・ワトソン、ギニー・ランダル、テレンス・P・キャリア、レベッカ・クーン、ロンダ・グリフィス、リサ・ロバーツ、デボラ・ホバート、エイミー・パリッシュ、ヘレン・ボールドウィン、リビー・ホイットモア他。


女優ゴールディ・ホーンが製作総指揮を務めた作品。
グレイスをジュリア・ロバーツ、エディをデニス・クエイド、ウィリーをロバート・デュヴァル、ジョージアをジーナ・ローランズ、エマ・レイをキーラ・セジウィック、キャロラインをヘイリー・オールが演じている。

始まってすぐの内に、様々な情報が提示されている。
まず、牧場で働いているハンクが、自分が育てていた馬をウィリーがグランプリに出場させずに、他の馬を勝手に購入したことから、牧場を辞めようとしていることが示される。
キャロラインがポニーを卒業して馬に乗りたがっているが、グレイスは反対していることも示される。他に、委員会で料理本を出版することになり、レシピの作者名を従来通りに夫の姓名にするかフルネームにするかという問題があることも示される。

そんな風に、最初の内に描かれた情報が、後になってグレイスとエディの夫婦の問題にどのように絡んでくるかと言うと、これが見事に絡まない。
レシピの作者名の問題などは、すっかり忘れ去られる。
で、本筋の夫婦関係にしても、掴みどころが無いまま、いつの間にか、何となく、グレイスとエディが和解する方向に進んでいる。

女性とキスをしているのを見たという段階で相手に弁明の機会さえ与えず、一方的に別れを宣告する時点で、グレイスがヒステリックな女に見える。
夫の浮気を肯定しろとは言わない。
だが、もう少しマシな対処法は考え付かなかったのかと思ってしまう。
いきなり沸騰してしまうのだから、思慮深さの無い女としか受け取れない。

本当は最初に浮気をしたエディが悪いはずなのだが、話が進むに連れて、どんどんグレイスの印象が悪くなり、エディが被害者のように思えてくる。
というのも、グレイスは短気で理性に欠けているだけでなく、とても迷惑な女だからだ。

委員会の集まりで、グレイスは友人が夫と浮気していることを発表し、さらに誰が浮気しているかなど、そこにいる人々の、他人に知られたくないようなコトをベラベラと喋りまくる。
自分の夫婦仲が悪いからといって、周囲の夫婦関係も壊そうとするのだ。

グレイスは他人の夫婦関係をブチ壊そうとしたことに対して、全く悪びれる様子も無い。むしろ、なぜか被害者面なのである。
グレイスとエディは仲直りするが、周囲の人々がどうなったのかは分からない。
だから、「エディと元サヤに収まるために、グレイスは周囲に迷惑を掛けまくりました。何の罪悪感も抱かず、平然と他人の夫婦関係を壊しました」という話にも取れる。
で、そういう話なの?

 

*ポンコツ映画愛護協会