『宇宙大戦争 サンタvs.火星人』:1964、アメリカ

クリスマスまで、あと数週間となった。KIDTVは今年の特別番組として、テレビ史上初となるサンタクロースの工房からの生中継番組を 放送している。特派員のアンディー・アンダーソンは、サンタクロースにインタヴューするため工房へ向かっている。その様子を、火星の 少年ボーマーと妹ギーマーがテレビで見ている。2人はテレビに釘付けだが、その顔は無表情だ。
アンディーが工房に入ると、サンタの助手である小人たちが手作業でオモチャを作っている。サンタはアンディーに「今年はロケットの そりを使うという噂は?」と問われ、「いつも通りトナカイで行くよ」と答える。仕事を急かす夫人が現れたので、サンタはアンディーに 紹介する。続いてサンタは宇宙部門を担当する助手ウィンキーを紹介した。ウィンキーは最新のオモチャであるロケットや、火星人人形を 作っている。その人形は、ボーマーとギーマーにそっくりだった。
火星のチーフを務めるキーマーは、星一番の怠け者である召使いドロッポを叩き起こした。妻のモーマーは、子供たちの食欲が無いので 食料ピルの仕入れへ行っているという。キーマーはボーマーとギーマーの父だ。彼は「無理も無い、バカな地球の番組を一日中見ている」 と溜め息をつき、子供部屋に入った。ボーマーとギーマーは、まだサンタの番組を見ている。キーマーは「こんなバカな番組は見ないで 寝なさい」と注意した。
モーマーが帰宅したので、キーマーは「子供たちが悩んでいて眠らない、また睡眠スプレーを使った」と告げる。それは彼の子供たちだけ でなく、火星全体で起きている問題だ。「リーダーとして何かしないと」と言うキーマーに、モーマーは「森でチョーチェム長老に相談 してはどう?」と提案した。キーマーは部下のローマス、リグナ、ハーゴー、ヴォルダーに連絡を入れ、雷の森でチョーチェムの椅子に 集合するよう指示した。
キーマーの部下が雷の森に集合するが、ヴォルターだけは「自分でやれないのか、なぜジジイに頼む?」と不服そうな顔だ。キーマーが 遅れて現れ、800歳のチョーチェムに呼び掛けた。「子供たちに食欲が無く、眠ろうともせず、地球の番組にしか興味が無い」と告げると、 チョーチェムは「地球ではクリスマスに近い時期、喜びと平和に満ちたイベントだ。子供たちがワクワクする時だ。サンタクロースの プレゼントが待ち遠しい」と語った。
キーマーが「子供とどう関係が?」と尋ねると、チョーチェムは「火星に子供はいない。体は子供だが中身は大人だ。彼らには幼年期が 無い。何百年も前から分かっていた。子供が生まれ、電子教育マシーンが脳に付けられ、ゆりかごの中で情報が脳に送り込まれ、歩ける ようになった時はもう大人だ。遊ぶことが無く、楽しむことを学ばない。反抗しているのだ」と説明した。
キーマーがアドバイスを求めると、「子供は子供に戻らせるのだ。遊ぶことを学び、楽しむことを学ぶのだ。火星にはサンタクロースが 必要だ」とチョーチェムは述べた。キーマーは「サンタクロースを手に入れよう、地球から連れて来る」と言い出した。ヴォルダーだけは 「オモチャやゲームは要らない、子供が遊んで走り回るのは迷惑だ」と言うが、その意見は却下された。キーマーは宇宙船一号を準備する ようリグナとローマスに命じた。
宇宙船は発進し、地球の軌道に入った。キーマーたちはマグネ・スコープでサンタを捜索する。「赤いスーツに白い毛皮、白く長いヒゲの 人物」というのが目印だ。すると街には、サンタの格好をした面々が何人もいた。ともかく宇宙船は着陸準備に入るが、地球では空軍基地 がレーダーを向けた。キーマーはヴォルダーにレーダーシールドを指示し、リグナにレーダーボックスをチェックするよう命じた。すると ボックスにはドロッポが隠れていた。彼は「地球を見たくなって」と釈明した。
宇宙船は湖の野原へ向けて、着陸準備に入った。レーダーから宇宙船の反応は消えるが、アメリカ大統領は撃退のために空軍の出動を 命じた。キーマーはヴォルダーとリグナを引き連れて地球に降り立つことを決めた。ラジオのニュースでは、防衛庁が「レーダーの物体は ただの隕石で大気圏で燃えた」と発表したこと、宇宙専門家ヴァン・グリーン教授は「火星の宇宙船だ」と主張していることが報じられた 。そのニュースを、少年ビリーと妹ベティーは森の中で聞いていた。
ベティーは「火星人なんて信じない」と言い、ビリーに「もし後ろにいたら?」と問われると「叫ぶわ」と返答した。そこにキーマーたち が現れたので、ベティーは叫んだ。キーマーが「サンタの一人を捜している。街に大勢いた」と言うと、ビリーは「サンタは一人だけ。街 にいたのはヘルパー。本当のサンタは北極の工房にいます」と告げた。ヴォルダーはビリーとベティーを連行しようとする。キーマーは 解放させようとするが、「通報させるのか」とヴォルダーに言われると、子供たちの拉致を承知した。
ドロッポは操縦室に誰もいないのを確認し、ビリーとベティーを案内した。エレベーターのシグナルが鳴ったので、ドロッポは慌てて 子供たちをレーダーボックスに隠れさせた。宇宙船は北極に到着し、キーマーはローマスに「警備に残り、出発の準備を」と告げた。 キーマーはリグナ、ハーゴー、ヴォルダーに一緒に来るよう言い、トーグの起動を命じた。「あんな男のために?必要ない」とヴォルダー は口にするが、キーマーは慎重を期すために使うのだと主張した。
キーマーたちが操縦室を出た後、ビリーはレーダーボックスに細工をした。そしてサンタに危機を知らせるため、ベティーと共に宇宙船 から脱出した。2人の逃亡を知ったキーマーは、部下に「追え、私はトーグを追わせる」と言う。ヴォルダーが捜索に来たので、ビリーと ベティーは身を隠した。ヴォルダーはシロクマが出現すると立ち去った。シロクマが去ったので、子供たちは工房へ向かおうとする。そこ へロボットのトーグが現われ、2人を捕まえた。
ヴォルダーは「潰せ」とトーグに命じるが、そこへキーマーが現れて「私の命令だけに従うようセットした」と告げた。キーマーは ハーゴーに、子供たちを閉じ込めるよう命じた。キーマー、ヴォルダー、リグナは、トーグを連れてサンタの工房へ行く。「捕まえろ」と いうキーマーの命令を受け、トーグはドアを破って工房に押し入った。しかしサンタは全く怖がらず、「私が見た最も大きなオモチャだ」 と感心する。トーグは全く暴れず、観察していたリグナは「オモチャになった」と漏らした。
キーマーは部下を引き連れて工房に乗り込み、宇宙銃で小人と夫人を固めた。トーグは動かなくなったため、置いていくことにした。 「サンタが火星人に誘拐される」というニュースが報道され、ヴァン・グリーンはスター・ショット計画のリーダーとしてテレビ取材を 受けた。彼は宇宙機構の対応について、「全ての資源をスター・ショット計画に注ぎ込み、火星人を追跡してサンタを奪還する」と告げた 。宇宙飛行士を乗せたロケットが発射された。
火星へ向かう宇宙船の中で、ヴォルダーは「あの老人は脅威だ」と険しい表情を浮かべている。サンタと子供たちは部屋に監禁されている 。キーマーたちは、ビリーがレーダーシールドに細工したことに気付いた。ヴォルダーはサンタたちの元へ行き、柔和な態度で「宇宙船を 案内する」と持ち掛けた。彼はサンタたちをエアロックへ連れて行き、置き去りにしてドアをロックした。
ヴォルダーはコントロール室へ駆け込み、エアロックのハッチ解放レバーを上げた。1分でハッチが解放され、サンタたちは宇宙船の外へ 投げ出されてしまう。1分が経過した時、キーマーがコントロール室に駆け込み、殴り合いの末にヴォルダーを取り押さえた。そこへ、 サンタと子供たちが悠然と現れた。エアダクトから脱出したという。「小さくて、とても入れないはず」とキーマーとヴォルダーが驚いて いると、サンタは余裕の笑みで「私はサンタクロースだよ」と告げた。
宇宙船は火星に到着し、キーマーはリグナたちに「ヴォルダーは裁判に掛けるため議会室へ連行する」と告げる。リグナたちは監禁して あるヴォルダーの元へ行くが、そこにはドロッポが捕まっていた。ヴォルダーは逃亡したのだ。キーマーはサンタと子供たちを連れて帰宅 し、ボーマーとギーマーに紹介した。ビリーとボーマーは共に10歳、ベティーとギーマーは共に8歳だった。
サンタが笑うと、子供たちも笑った。キーマーとモーマーは「あの子たちが笑うなんて初めて」と驚いた。その頃、ヴォルダーは洞窟に身 を隠し、手下のストーボーとシムを呼び寄せてキーマーへの復讐を企んでいた。シムは火星に設置されたサンタの工場を視察してきた。 シムは「工場はフル生産で、地球と違って道具は使っていない。キーマーが組み立て機を作った、この星はオモチャで一杯だ」と語った。 ヴォルダーはストーボーとシムに作戦を説明した。
オモチャ工場ではオートメーションで作業が行われ、ビリーとベティー、ボーマーとギーマーが手伝っている。ドロッポは、火星の各地 から送られてきた子供たちの手紙を運んできた。ベティーが手紙に書かれた希望のプレゼントを読み上げると、サンタが機械のボタンを 押す。すると選ばれたボックスからオモチャが出て来て、ベルトコンベアーで流れてくるという仕組みだ。
サンタと子供たちはキーマーの家へ戻ってくるが、ビリーとベティーの元気が無い。モーマーが「ホームシックよ。地球に帰さないと」と 言うが、キーマーは「不可能だ」と告げた。サンタに憧れるドロッポは、サンタの衣装と付け髭で変装し、ホーッホッホッホッと物真似を した。ヴォルダーたちは深夜のオモチャ工場に侵入し、オートメーションの機械に細工を施した。機械室にドロッポが現れたので、彼らは サンタだと勘違いした。彼らはドロッポを拉致し、洞窟へ連行した。
翌朝、サンタと子供たちは工場に現れ、機械を作動させた。だが、テディー・ベアと人形の頭が入れ替わるなど、異常が連続した。知らせ を受けて工場にやって来たキーマーは、ヴォルダーたちが機械に細工し、ドロッポをサンタと間違えて拉致したと見抜いた。ヴォルダーと ストーボはシムにドロッポの監視を任せ、洞窟を出た。彼らは工場に現われるが、機械室から出て来たキーマーと鉢合わせする。サンタを 目にしたヴォルダーは驚き、キーマーに銃を向けられた。しかし隙を見て反撃し、サンタを始末しようと企む…。

監督はニコラス・ウェブスター、原案はポール・L・ジェイコブソン、脚本はグレンヴィル・マレス、製作はポール・L・ジェイコブソン 、製作協力はアーノルド・リーズ、撮影はデヴィッド・L・クエイド、編集はビル・ヘンリー、美術はモーリス・ゴードン、 衣装はラムゼイ・モストーラー、特殊照明効果はデューク・ブラディー、火星人調度品はフリッツ・ハンセン、音楽はミルトン・デラッグ 、"Hooray for Santa Claus"はロイ・アルフレッド&ミルトン・デラッグ、音楽コーディネーターはニック・タッグ。
主演はジョン・コール、共演はレナード・ヒックス、ヴィンセント・ベック、ビル・マッカチオン、ヴィクター・スタイルズ、ドナ・ コンフォーティー、クリス・モンス、ピア・ザドラ、レイラ・マーティン、チャールズ・レン、ジェームズ・ケーヒル、ネッド・ ワーティマー、ドリス・リッチ、カール・ドン、イヴォー・ボーディン、アル・ネソー、ジョー・エリック他。


アメリカでは代表的なポンコツ映画として、ある意味で超有名な作品。
後にゴールデンラズベリー賞で1980年代最低新人賞を受賞するピア・ザドラのデビュー作でもある。
サンタをジョン・コール、キーマーをレナード・ヒックス、ヴォルダーをヴィンセント・ベック、ドロッポをビル・マッカチオン、ビリー をヴィクター・スタイルズ、ベティーをドナ・コンフォーティー、ボーマーをクリス・モンス、ギーマーをピア・ザドラが演じている。
本作品の出演者とスタッフの中で、最も有名なのは音楽担当のミルトン・デラッグかもしれない。
彼はナット・キング・コールのヒット曲「Orange Coloured Sky」を手掛けたり、バディー・ホリーのレコードをプロデュースしたりと いう経歴を持つ作曲家&バンドリーダーで、後にNBCの人気番組『ザ・ゴングショー』の音楽監督を務めている。
この映画のオープニングとエンディングで子供たちが歌っている『Hooray for Santa Claus』も、クリスマスのオムニバス・アルバムに 収録されたりしている。

さて、では中身を見ていこう。
火星人はザックリ言うと、全身タイツにアンテナ付きのヘルメットという姿。もちろん火星人の住処はチープなセットがバレバレの作り。
キーマーは子供部屋に行く際、ドアに近付いて人差し指を向けるとドアが開く。でも、その距離まで接近しないと開かないのなら、普通の 自動ドアと変わらない。その指差しの意味は全く無い。
帰宅したモーマーが購入した食料ピルの種類はハンバーガー、バター・アスパラガス、マッシュポテト、チョコレート・ケーキで、錠剤の 中身のメニューは地球と全く変わらない。
キーマーは子供たちが地球のテレビに夢中になっていることを危惧するが、だったら受信をやめればいいだけだ。
キーマーたちは雷の森へ行くが、もちろんハリボテ感丸出しだ。
チョーチェムは地球の仙人のイメージと全く同じで、そこに火星人らしさは皆無だ。しかも、しわがれ声は今にも死にそうな感じだ。

チョーチェムは「火星に子供はいない。体は子供だが中身は大人だ」と言うが、ボーマーもギーマーも無表情なだけで、外見だけでなく 中身も完全に子供だ。チョーチェムは「子供は子供に戻らせるのだ。遊ぶことを学び、楽しむことを学ぶのだ。火星にはサンタクロースが 必要だ」と言うが、そういう問題じゃないだろ。
遊ぶこと、楽しむことを学ぶのにサンタが必要というのは、ものすごい論理の飛躍だ。どういう理屈だよ、それは。
っていうか電子教育マシーンで大人にされたのなら、なんでサンタを見て夢中になってんだよ。もう大人だというのなら、キーマーたちと 同じ感覚じゃなきゃおかしいだろ。
で、ヴォルダーは「オモチャやゲームは要らない、子供が遊んで走り回るのは迷惑だ」と言うが、キーマーは「サンタを連れて来る」と 告げただけで、まだまだ一言もオモチャやゲームとか言ってないんですけど。
そういうものは火星に無いはずなのに、なんで「トイ」とか「ゲーム」という概念を知ってるんだよ。

さて、キーマーたちは宇宙船に乗り込む。もちろん宇宙船一号もチープなハリボテだ。ヴォルダーは地球のビル群を見て「あれが地球人の 都市?なんて原始的」と嘲笑するが、火星の様子の方が遥かにチープだ。
キーマーが「レーダーボックスをチェックしろ」と指示すると、リグナはボックスの蓋を手で開けている。
ホントにただの箱じゃねえか。
で、そこにドロッポが入っている。
レーダーボックスの中は、何も無い空洞なのかよ。でっかいゴミ箱か何かなのか、そこは。

地球からは戦闘機が飛び立つが、宇宙船が見つかって空中戦とか、そんな派手な展開は全く無い。
宇宙専門家のヴァン・グリーン教授は「火星の宇宙船だ」と主張するが、なぜ火星だと断定できるのかは分からない。
キーマーは森でビリーとベティーの前に現れ、「火星から来た、怖がらないで」と言うが、宇宙銃を向けながら言うセリフじゃないぞ。
むしろヴォルダーが銃を向けて、アンタはそれを止めなきゃいけないようなポジションじゃないのか。

ヴォルダーは兄妹を捕まえて「通報させるのか」とキーマーに言っているが、別に通報されてもいいだろ。
っていうか、なんで通報というシステムを知っているんだよ。
ドロッポは「誰もいない」と確認して兄妹に宇宙船の操縦室を見せるが、いちいち確かめなくても、誰かいるかどうかなんて分かる だろ。
で、シグナルが鳴るのでレーダーボックスに隠れさせるが、どこにも子供たちがいなかったら怪しまれるだろ。それに、なんで子供たちが 自由に移動できているんだ。キーマーはドロッポに「子供たちを見ろ、目を離すな」と言っているが、子供たちがいないことに気付いて いないのかよ。

宇宙船が着陸すると、あっさりと子供たちは逃げている。ローマスに警備を命じた意味が無いなあ。
しかも驚くべきことに、キーマーたちが先に操縦室を出たのに、宇宙船から出てくるのは子供たちが先で、後からキーマーたちが出て 来る。
どういう仕組みなんだ、その宇宙船は。
で、ヴォルダーは身を潜めた子供たちを捜索しているが、いかにも人が入っているのがバレバレなキグルミのシロクマが現われると 逃げる。
いやいや、お前の銃は何のためにあるんだ。
っていうか、そのシロクマ、何のために出て来たんだよ。

子供たちの前に現れたトーグは、ブリキのオモチャのデカい版みたいなロボット。これもハリボテ感満点だ。
トーグは子供たちを捕まえているが、ものすごく動きはノロいので、子供たちが走っていたら、たぶん逃げられたと思うぞ。
っていうか、その近くにヴォルダーたちがいるので、そいつらが捕まえた方が早いと思う。
で、キーマーはトーグに工房を襲わせるが、なぜかトーグは全く暴れない。キーマーは「我々でやる」と言って乗り込む。
トーグの意味がねえだろ。

小人が反発するとヴォルダーが銃の引き金を引くが、「ポコッ」という音がするだけで何も発射されない。不発なのかと思ったら、素早く 撃鉄を引いて、また撃っている。また「ポコッ」という音だけだが、小人が固まっている。
おいおい、それで攻撃は成立しているのかよ。せめてSEだけで何とかならなかったのか。
あと、そこに特殊効果をいれる予算も無かったのかよ。
で、キーマーが「連れて行け」と命じてもトーグは動かない。
なんでホントにオモチャになってるんだよ。
そんで置いて行くことに決めているが、いや、それはダメだろ。火星に戻して修理すればいいじゃねえか。運ぶのが大変だから嫌だったのか。

キーマーたちが地球を去った後、ヴァン・グリーンがスター・ショット計画について説明し、ロケットが発射される。しかし、この辺りの シーンに、まるで意味は無い。そのロケットや奪還計画は、全て投げ出されたまま終わっている。
ビリーがレーダーシールドに細工したために宇宙船が探知されるという展開があるが、それでキーマーたちがピンチになることは無いし。
ヴォルダーがサンタたちをエアロックから葬ろうとすると、キーマーがコントロール室に駆け込み、モッチャリした殴り合いがある。火星 に宇宙船が到着すると、リグナたちは『ジングルベル』を歌って浮かれた様子でヴォルダーの元へ向かう。
なんでその歌を知ってるんだよ。っていうか大人が子供みたいに浮かれたら変だろ。
で、キーマーの家に招かれたサンタが笑うと、つられて子供たちも笑う。
なんて気持ちの悪いシーンだこと。サンタは何も言わずに、ひたすらヘッヘッヘッと笑ってるだけなんだぜ。

シムは工場を視察して「地球と違って道具は使っていない」と言うが、なんでお前は地球の工房のシステムを知ってるんだよ。「キーマー が組み立て機を作った、この星はオモチャで一杯だ」という設定だが、オモチャが無かった星なのに、オモチャを組み立てるための機械を キーマーが作ったのかよ。すげえな。
で、星のあちこちから子供たちの手紙が送られてくるが、そこは紙の手紙なのね。っていうか、もうサンタが来たことは伝えられて いるのね。
オモチャの機械はオートメーションで、ボタンを押すとボックスからオモチャが出て来る仕組みだが、全部でボタンは24しか無いので、 24種類のオモチャしか作れないようだ。
っていうか、ボックスが6つしか見当たらないんだけど。その種類はBall、Bat、Doll、Car、Train、Toolsとなっている。
いや、他はともかくToolsって何だよ。それってオモチャなのか。

ベティーが「テディー・ベア1つと人形」と言うシーンがある。
人形は「人形」なのに、テディー・ベアは「ヌイグルミ」じゃなくてテディー・ベアで1種類なのね。でも、そんなボックス、 無かったぞ。
そんで終盤にはシャボン玉や水鉄砲、オモチャの戦車に兵隊まで出しているが、どのボックスから出したんだよ。
っていうか根本的な問題として、今までオモチャで遊ぶ習慣の無かった火星の子供たちが、なぜ「人形」とか「テディー・ベア」とか、 そういう要望を出すことが出来るんだよ。

「ホームシックよ。子供たちを帰さないと」とモーマーが言うと、キーマーは「不可能だ」と告げるが、何が不可能なんだよ。普通に 帰らせてやればいいだろ。もう置いておく意味など何も無いぞ。
ドロッポはサンタに憧れて扮装するが、なぜか枕が置いてあり、それを腹に詰める。なぜか付けヒゲが置いてあり、それを付ける。なぜ サンタ用の付けヒゲがあるんだよ。
ドロッポはヴォルダーたちに捕まるが、なぜか「自分はサンタじゃない」と釈明せず、黙って捕まっている。っていうかヴォルダー、 偽者サンタの頭には、お前らと同じヘルメットでアンテナが出ているのに、気付かないのか。
そんでシムがドロッポに「核カーテンを通れば粉々になるぞ」と脅しているが、それを作動させた機械は洞窟の中にあるんだから、その場 を離れたら解除されちゃうだろうに。実際、シムが呑気にその場を離れている間に、あっさりと解除されて逃げられてるし。

ヴォルダーはサンタを拉致したち思い込み、キーマーに要求を3つ告げる。その2つ目は「サンタを解放する、彼と地球人を星に返せ」と いうものなので、微妙にイイ奴になってるぞ。で、キーマーはヴォルダーたちを部屋に押し込んで、そのまま監禁しておけばいいものを、 銃を持っていれば大丈夫だと安心したのか、そのまま話し込んでしまい、反撃されてあっさりと気絶する。
で、ヴォルダーは「今度はサンタを始末する」と言うが、どないやねん。やっぱり始末なのかい。
そんでサンタは子供たちに指示して、水鉄砲やシャボン玉、オモチャの戦車やオモチャの兵隊で攻撃しているが、いや、それって武器に なってないだろ。なんでヴォルダーが、そんな攻撃で一方的にやられてるんだよ。さっさと銃を撃てば良かったじゃないか。
そんなわけで、頭から尻尾まで、ボンクラなアンコがパンパンに詰まった、正真正銘のクズ映画なのでありました。

(観賞日:2010年4月23日)

 

*ポンコツ映画愛護協会