『アウト・オブ・タウナーズ』:1999、アメリカ

オハイオ州に暮らすヘンリーとナンシーのクラーク夫妻は、息子のアランがヨーロッパへ旅立つのを見送るため空港へ赴いた。ロンドン行きの飛行機に乗る息子を見送った後、2人は車で自宅に戻る。ナンシーが寂しくて泣き出すと、ヘンリーは「今度の面接に合格して会社に入ったら、ニューヨークに引っ越しだ。金も入るぞ」と話す。ナンシーが「お金なんて要らない。シェリンスキーで23年も立派な仕事をしてきたし、ずっとオハイオで暮らして来たのよ。それにニューヨークを嫌ってたじゃない」と語ると、「もう嫌いじゃなくなった」と彼は言う。「スーザンには頻繁に会えるわね」とナンシーが娘の名前を出すと、ヘンリーは「僕は駄目。絶交だから」と口にする。スーザンが医学部を辞めたいと打ち明けた時、ヘンリーが怒鳴り飛ばしたせいで父と娘は不仲になっていた。
帰宅したヘンリーは友人のトニーと電話で話し、面接の手配について礼を述べた。ヘンリーはクビになったので新しい仕事を得るために面接を受けるのだが、そのことをナンシーには内緒にしていた。ナンシーは夕食を用意するが「こんなにたくさん、作り過ぎよ」とアランの分まで作ったことを嘆いた。「どういう気分?」とヘンリーが尋ねると、彼女は「これからの一生、どうして過ごしていけばいいのか何も思い浮かばない」と漏らした。
翌朝、まだナンシーが眠っている内に、ヘンリーは家を出て空港へ向かった。するとナンシーが追い掛けて来て、離陸直前になって飛行機に乗り込んだ。2人の席は遠く離れていたが、ナンシーはヘンリーに大声で話し掛けた。ヘンリーの隣の乗客が気を遣い、ナンシーに席を譲った。飛行機はニューヨークに近付くが、濃霧のために予定を変更してボストンへ向かう。空港に着いたヘンリーは、ニューヨーク近辺に行く便があるかどうか調べに行く。ニューヨーク行きの列車が20分後に出ると知った彼は、荷物を取りに行ったナンシーの元へ戻った。するとナンシーは、荷物が出て来ないことを教えた。
かつて広告代理店で勤務していたナンシーは、スーツケースの絵を描いて紛失物係の職員に見せた。そういう鞄は届いていないと言われたヘンリーは、諦めて空港を出る。苛立つヘンリーに、ナンシーは落ち着くよう促した。2人はタクシーに乗って駅へ向かうが、もう列車の出発時刻は過ぎていた。ナンシーは「次の列車があるわ」と言うが、ヘンリーはレンタカーを使うと告げる。ナンシーはトイレに向かうが、まだ列車が出ていないと知ったヘンリーは慌てて彼女を呼びに行く。2人は列車に飛び乗るが、それは反対側の車両だった。
目当ての列車は駅を出てしまい、ヘンリーとナンシーはレンタカーを借りに行く。すると高級車しか残っていないと言われ、仕方なく2人はそれを借りた。ヒーターの止め方が分からず、2人は暑さに耐えながら下着姿になってニューヨークへ向かう。ナンシーは地図を見て道を教えるが、説明が下手なのでヘンリーは間違えた場所で曲がってしまった。そこでナンシーが運転し、ヘンリーが道を教える。しかしヘンリーも教え方が悪いので、ナンシーはカーナビを使う。ところが衝撃で言語が変更されたため、ナンシーはボタンを何度も押す。そのせいで前方を良く見ていなかった彼女は、魚の卸売市場に車を突っ込ませてしまった。ナンシーは慌ててブレーキを掛けるが、車の修理代を含めて2200ドルを支払った。
ニューヨークに着いたヘンリーとナンシーが夜の街を歩いていると、舞台役者だという男に話しかけられた。「財布を落としたみたいで。ブロードウェイの舞台があるので稽古に遅れるとマズいんです」と男は語り、5ドル貸してほしいと頼む。「悪いけど、信じられないな」とヘンリーは断るが、ナンシーは「なんて芝居?」と尋ねる。男が『ジーザス・クライスト・スーパースター』だと答えると、ヘンリーとナンシーは一緒に観劇した思い出話で盛り上がった。
ヘンリーとナンシーは相手がアンドリュー・ロイド・ウェバーだと思い込んで金を貸そうとするが、男が拳銃を構えて脅しを掛けた。男は鞄と財布を奪い、その場から逃亡した。ヘンリーはクレジットカードを靴下に隠しておいたことをナンシーに教え、2人はホテルに向かう。ヘンリーはナンシーを連れて、予約していた高級ホテルに赴いた。しかしカードを確認したマーソルト支配人は、「問題があるようで」とカード会社と電話で話すよう告げた。
電話で話したヘンリーは、スーザンがカードを使って高額な買い物を繰り返していたと知る。ヘンリーが「スーザンと話す」と腹を立てると、ナンシーは「スーザンが医科大学を辞めて大学寮を追い出されたの。それで役者を目指すのにアパートを借りる必要があったから、カードを渡したの」と打ち明けた。2人が言い争っていると、マーソルトは現金が無ければ泊められないと告げた。ホテルを追い出されたヘンリーとナンシーは、スーザンのことで口論になった。
ナンシーがスーザンのアパートへ行くと言って勝手に歩き出したので、仕方なくヘンリーは後を追う。アパートのブザーを鳴らしても応答は無かったが、住人が出て来る時に扉が開いたのでナンシーは中に入る。ヘンリーは同行を拒み、外で待つことにした。八百屋から果物を盗む女性2人組を目にしたヘンリーは真似しようとするが、女店主に気付かれたので慌てて誤魔化した。スーザンが不在だったのでメモを残そうとしたナンシーは、向かいに住むイカれた夫婦に新聞泥棒と決め付けられる。ナンシーが否定して言い合いになると、隣の部屋に住むSMの女王様が出て来た。
ナンシーはアパートを去ろうとするが、イカれた夫婦が立ちはだかった。そこへ別の部屋の住人が猛犬を連れて出て来ると、夫婦は慌てて引っ込んだ。猛犬に追われたナンシーが隣を走り去ったので、ヘンリーは慌てて後を追った。2人は猛犬から逃走し、近くの教会に飛び込んだ。テーブルに多くの料理が並んでいるのを見た2人は腹ごしらえをしようとするが、「食事はミーティングが終わってから」と女性に言われる。フェイバー医師が「初めてですね。歓迎しますよ」と夫妻に声を掛け、席に座らせた。
教会には性の悩みを抱える人々が集まり、集団セラピーが行われていた。エドワードという男性は、1日に17回もマスターベーションをしていたこと、皆の話を聞いて抑制できるようになったことを話す。ヘンリーは馬鹿にして笑うが、他の参加者は拍手した。シーナという女性は不特定多数の相手とのセックスについてフェイバーに問われ、「風邪をひいたから先週は医者とだけ」と答えた。フェイバーから話を求められたヘンリーは、「我々はお祈りに来ただけなんです。宗派も違うし」と告げる。しかしナンシーが「私たちはセックスもそんなにしないし」と何気なく口にすると、フェイバーは「セックスの欠乏という悩みですね」と誤解した。
ヘンリーは適当に誤魔化して去ろうとするが、ナンシーは2ヶ月もセックスが無いことを話す。ヘンリーは「最近は精神が参ってるから」と言い、ナンシーやフェイバーに理由を問われると「クビになった」と明かした。ナンシーはショックを受けて教会を出て行き、ヘンリーは慌てて後を追った。「どうして私に嘘をついたの?相談しようとは思わなかったの?」と責められたヘンリーは、「自分が恥ずかしくて言えなかったんだよ」と口にした。
ナンシーは「過去は忘れて、人生の再スタートよ。私たちは選択を迫られてるのよ」と語り、前向きに考えるよう説いた。しかし「人生の楽しさを享受したい」と彼女が言っても、ヘンリーから精力的な言葉は出て来なかった。ナンシーはトラベラーズチェックを鞄に入れたことを思い出し、ヘンリーと共にホテルへ向かう。まだ荷物は届いていなかったが、2人はバーに酒のつまみが幾つも並んでいるのを発見する。ヘンリーがトイレへ行っている間、ナンシーは客のフリをして次から次へとつまみを口に放り込んだ。
カウンターで飲んでいたグレッグという男が話し掛けると、ナンシーは彼の金でシャンパンを注文する。つまみも貰ったナンシーは彼が金持ちだと知り、利用できると考える。ヘンリーが戻って来ると彼女は冷たくあしらい、グレッグとテーブル席に移動する。グレッグから口説かれたナンシーは、色目を使って「部屋の鍵を頂戴」と告げる。仕事で外出するグレッグは、ナンシーが部屋で待つことを承諾して鍵を渡した。
グレッグが去った後、ナンシーはヘンリーを連れて部屋へ行く。彼女はルームサービスで料理を注文するが、携帯電話を忘れたグレッグが戻って来た。ヘンリーは慌ててカーテンの後ろに隠れ、ナンシーは抱き付くグレッグを誤魔化して部屋から出て行かせる。しかしルームサービスが届いたのでグレッグは不審を抱き、ヘンリーとナンシーは部屋から顔を出してしまった。グレッグはナンシーの策略を知って激怒し、「警察を呼ぶ」と告げた。
警備員が部屋に駆け付け、ヘンリーとナンシーはバルコニーへ逃げる。1つ下のバルコニーに降りるナンシーは、ウェルストン夫妻の部屋で女装して踊っているマルソーの姿を目撃した。ヘンリーは看板を壊して配線をショートさせてしまい、ホテルは停電になった。ナンシーはマルソーが踊っていた部屋から20ドルを盗み出しており、ヘンリーと共にタクシーへ乗り込んだ。しかし運転席に乗っていたのは犯罪者で、強盗の相棒を待っているところだった。強盗が仕事を済ませて助手席に乗り込むと、運転手はタクシーを発進させた。強盗が拳銃を突き付けらると、ヘンリーは咄嗟に弾き飛ばす。すると2人組はドアを開け、ヘンリーとナンシーを放り出して逃亡した。
夫婦は安堵して抱き合い、ナンシーは「貴方は英雄よ」とヘンリーを称賛する。しかしナンシーが「さっきは今までの人生が浮かんで、二度と子供たちに会えないと思った」と言うと、ヘンリーは「僕は無関係?僕は単なる精子の提供者?」と不機嫌になった。ナンシーが「自業自得でしょ。スーザンの扱い一つ取ってもそうじゃない」と冷たく告げると、ヘンリーは「お互いに思いやらないと、これからは2人なんだ。そろそろ母親の役割から抜け出してもいいんじゃないか」と言う。「離婚の方がいい。貴方は変わったわ。もうウンザリよ」とナンシーが声を荒らげるとヘンリーも反論するが、すぐに2人は仲直りした…。

監督はサム・ワイズマン、原案はニール・サイモン、脚本はマーク・ローレンス、製作はロバート・エヴァンス&テリー・シュワルツ&ロバート・W・コート&デヴィッド・マデン、製作総指揮はクリスティン・フォーサイス=ピータース&フィリップ・E・トーマス、共同製作はアンドリュー・ラ・マルカ、撮影はジョン・ベイリー、美術はケン・アダム、編集はケント・ビーダ、衣装はアン・ロス、振付はアダム・シャンクマン、音楽はマーク・シャイマン。
出演はスティーヴ・マーティン、ゴールディー・ホーン、マーク・マッキネイ、ジョン・クリース、ジョー・グリファシ、グレゴリー・ジュバラ、ジョシュ・モステル、シンシア・ニクソン、アーニー・サベラ、ジャック・マギー、オリヴァー・ハドソン、ジェシカ・コーフィール、ルドルフ・ジュリアーニ、スコッティー・ブロック、クリス・マッキニー、ジェン・トンプソン、マンディー・ジークフリート、ジョセフ・マー、コンスタンス・マクキャッシン、メアリー・テスタ、トム・リース・ファレル、ダニ・クライン、クリストファー・デュラング、モー・ガフニー、エイミー・ジフ、フレンチ・ネイピア、T・スコット・カニンガム他。


1970年の映画『おかしな夫婦』のリメイク。
監督は『D2/マイティ・ダック』『ジャングル・ジョージ』のサム・ワイズマン。
脚本は『ライフwithマイキー』のマーク・ローレンス。
ヘンリーをスティーヴ・マーティン、ナンシーをゴールディー・ホーン、グレッグをマーク・マッキネイ、マルソーをジョン・クリース、エドワードをグレゴリー・ジュバラ、フェイバーをジョシュ・モステル、シーナをシンシア・ニクソン、強盗の運転手をアーニー・サベラが演じている。
スティーヴ・マーティンとゴールディー・ホーンは、1992年の『ハウスシッター/結婚願望』に続いて2度目の共演となる。

オリジナル版のヘンリーは本社の営業副社長に栄転してニューヨークへ行く設定で、田舎者が初めての都会に翻弄される様子に社会風刺を込めた作品になっていた。
しかし今回のリメイク版では、会社を解雇されたヘンリーが面接のためにニューヨークへ行く設定に変更されている。それに伴い、社会風刺は排除されている。
オリジナル版の頃とは時勢もニューヨークの状況も大きく違っているので、社会風刺を削るのは別にいい。
ただ、ヘンリーの設定を変更したことで、それ以降の展開に無理が生じる結果となっている。

冒頭、ナンシーはベッドに香水を振り、セクシーなネグリジェでヘンリーを待つ。しかしヘンリーは全く気付かず、そのまま眠りに入る。
そういう様子から入るのだから、「ナンシーは夫婦でラブラブ生活を送りたいが、ヘンリーには全くその気が無い」という夫婦関係なのかと思った。
ところがアランを見送った後、ナンシーは彼が旅立ったことへの寂しさで泣き出すだけでなく、「貴方の面接に付いて行くかもどうかも決められない。何だか皮肉よね、2人の時間が持てるようになった途端、距離が出来るなんて」と語る。
そうなると、ナンシーもラブラブな感情は消えていて、夫婦は倦怠期に入っているってことになる。

ってことは、冒頭シーンは「倦怠期を打破するためにナンシーが頑張ってみた」ってことなんだろう。
後から推理して「これかな」という答えは思い付くけど、あまり上手い映画の入り方をしているとは言えない。
しかも、飛行機に飛び乗って「来ちゃった」とヘンリーに言う時のナンシーは、ちっとも倦怠期を感じさせないのよね。
ヘンリーに大声で「私が来て嬉しい?」と問い掛けたり、他の客に頼んで荷物を渡してもらったりする様子からすると、まだまだヘンリーへの愛や情熱が強いイメージなのよ。

ヘンリーは荷物が出て来ないと聞いて苛立ち、紛失物係に説明しても分かってもらえないので苛立つ。ナンシーは穏やかに絵を描き、彼をサポートする。タクシーに急ごうとするヘンリーが焦っていると、ナンシーは「そんなにカリカリしないで」となだめる。列車の出発時刻に遅れてヘンリーが苛立つと、ナンシーは「元気出して。次の列車に乗ればいい」と励ます。
そのように、基本的にはヘンリーがカリカリしていて、それをナンシーがなだめて落ち着かせるという関係性で旅が描かれる。
ただ、ナンシーは常にヘンリーをなだめているだけでなく、本人もイライラすることがある。
例えばヘンリーが匂いを嗅いで「ピーナッツバターを食べたな」と指摘すると、ナンシーは「分かったわよ」と疎ましそうに白状する。地図を巡ってヘンリーが文句を言うと、腹を立てて嫌味を浴びせる。
一方、ヘンリーもやたらとイライラするくせに、強盗に鞄を奪われた時は「カードを靴下に隠しておいた」と言い、そんなに腹も立てずにホテルへ向かう。

そんなわけで、ヘンリーとナンシーのキャラ描写が、ちゃんと徹底されていないように感じる。
しかも、その場の展開に合わせて都合良くキャラを変えているわけではなく、「丁寧に作らず雑に作った結果」だと感じるんだよね。
と言うのも、話を進めることだけ考えれば、ヘンリーもナンシーを「イライラする夫と落ち着かせる妻」という関係性のまま使っても成立するのよ。
例えば強盗に鞄を奪われたシーンでは苛立つヘンリーをナンシーがなだめてから、「ヘンリーがカードの存在を思い出す」という手順に入ってもいい。で、まだヘンリーはイライラしているけど、ナンシーがなだめてホテルへ連れて行く展開にしても成立するでしょ。

とは言え、ヘンリーが一方的にイライラして、それをナンシーが穏やかになだめている関係性だと、そこから笑いを生み出すのは難しい。
出来ないことは無いけど、それよりはお互いに自分の主張をぶつけ合って言い争ってくれた方が、喜劇になりやすいことは確かだ。
でも、それならそれで、「互いに腹を立てて口論を繰り返す」という方向性で最初からやっておけばいいわけで。
ヘンリーにしろナンシーにしろ、キャラの動かし方が徹底されておらず、それが喜劇としてのヌルさに直結しているんじゃないかと。

社会風刺を入れるかどうかは別にしても、「田舎者の夫婦が、都会に慣れていないせいで次から次へと酷い目に遭う」という方向性で話を構築しても良かったんじゃないかと思うんだよね。
田舎と都会のギャップを利用するってのは、喜劇を描く上で何かと便利だろうし。
でも、そこに頼ろうとしなくても、それは別にいいよ。
ただし、じゃあ代わりにどういう方向で笑いを取ろうとしているのかってのを考えた時、それが本作品はキッチリと定まっていないように思えるのよ。

そこは「コメディーだから細かいことは気にしちゃダメ」ってことなのかもしれないけど、ナンシーがグレッグを騙してルームサービスを注文するのは、まるで笑えないんだよね。
グレッグが悪党か何かならともかく、ただナンシーをナンパしただけだ。そんな奴を騙して豪華な料理を食い逃げしようと目論み、金まで盗んでいるんだから、それは立派な犯罪でしょ。しかもナンシーは、別の部屋から20ドルを盗み出しているし。
なんでもかんでも清廉潔白なモラルが必要とは言わないけど、そういうことを罪悪感ゼロでやる様子を笑うってのは無理よ。
もしかしたら、上手く描けば笑いになったかもしれない。でも、私はそれを笑いに昇華できる方法をパッと思い付かないし、この映画では完全に失敗していることも確かだ。

どうやら今回のリメイク版は、「夫婦がニューヨークでの珍道中を通じて、倦怠期を打破する話」という内容を狙っているようだ。
しかし、それを笑いに上手く繋げることが出来ていないだけでなく、「ちょっと感動させるドラマ」としても出来が悪い。
ヘンリーがナンシーに子離れするよう説き、それにナンシーが反発して離婚まで口にするシーンなんかは、もっと丁寧に扱うべきトコでしょ。
それなのに、口論した直後に和解しており、「今のヒートアップは何だったのか」と言いたくなるんだよね。

終盤、ナンシーは警察署で電話を借りようとするが、警官に冷たく追い払われそうになる。彼女は腹を立て、ニューヨークで色々と酷い目に遭ったことを吐露して怒鳴り散らす。
だけど、ニューヨークで次から次へと大変な目に遭ったのは、決して「ニューヨークが田舎者に対して冷たい街だから」ってことではない。それどころか、幾つかのトラブルはヘンリーとナンシーが自分たちで招いた結果だ。
だから、そこで「夫婦がこんな酷い目にあったのに」とナンシーが怒鳴るのは、ただの八つ当たりでしかない。だから同情心は湧かないし、笑いに繋がっているわけでもない。
面接に行った会社で受付係にマーティンが怒鳴り散らすのも、これまた同様。
端的に言うと、「これっぽっちも笑えない」ってのが本作品の致命的な欠点だよね。

(観賞日:2020年7月10日)


第23回スティンカーズ最悪映画賞(2000年)

ノミネート:【芝居をすべきではないミュージシャン&アスリート】部門[マイク・タイソン]

 

*ポンコツ映画愛護協会