『オープン・シーズン』:2006、アメリカ
グリズリーのブーグは、山あいの町ティンバーラインでパークレンジャーのベスと共に暮らしている。昼間は動物ショーに出演し、夜は ガレージで眠りに就く。甘えん坊のブーグは、幸せな日々を過ごしている。その日、ベスが保安官事務所に立ち寄り、ブーグは車で待って いた。そこへハンターのショーが車でやって来た。ボンネットには、ミュールジカが縛り付けられていた。
事務所に入ったショーは、オープン・シーズン(狩猟解禁期間)は3日後なのにシカを仕留めたことをベスから非難される。彼はベスや 保安官のゴーディーに、「あっちが飛び出してきた」と説明した。しかし実は、シカを見つけて車ではねたのだ。だが、そのシカは死んで いなかった。エリオットという名前のシカはブーグに話し掛け、助けを求めた。横着な対応をしたブーグだが、ロープを切って逃がして やった。その様子をショーは目撃するが、訴えを受けたゴーディーは相手にしなかった。
夜、ブーグの部屋にエリオットが忍び込み、「トンズラさせてやる」と言う。ブーグは「ここは僕の家で、何をするのも自由なの」と説明 するが、エリオットからチョコバーを見せられると誘惑にかられた。「これを手に入れるには外へ行かなきゃいけない」と言われ、ブーグ はエリオットに付いていく。エリオットは閉店したコンビニのドアを破壊し、中に入った。
ブーグはチョコバーを頬張り、エリオットと一緒に暴れた。砂糖で酔っ払ったブーグが店内で浮かれていると、そこにゴーディーが現れた。 ゴーディーはブーグを車に乗せ、ベスの元へ連れ帰った。ゴーディーは「君は母親じゃない」とベスに告げ、ブーグを自然に帰すよう 勧めた。ベスが「あと一夏だけ」と言うと、ゴーディーは「延ばすと別れが辛くなるぞ」と告げて去った。
翌朝、町に留まっていたエリオットは、ショーに見つかって逃げ出した。ブーグが動物ショーの楽屋で出番を待っていると、エリオットが 飛び込んできた。ブーグが追い払おうとするが、エリオットは逃げ回る。カーテンに写る影を見た観客は、ブーグがシカを襲っていると 勘違いし、怖がって逃げ出した。ショーはブーグとエリオットをまとめて射殺しようとするが、ゴーディーに邪魔された。ゴーディーは 逮捕しようとするが、ショーは姿をくらましてしまった。
ベスはブーグとエリオットに麻酔弾を撃ち、眠らせた。彼女はゴーディーに説得され、2匹を森に帰すことにした。ハンターに撃たれない よう、狩猟エリアではない滝の上にヘリで運んだ。翌朝、目を覚ましたブーグは驚き、町へ帰ろうとする。だが、幾ら歩いても元の場所に 戻ってしまう。松の木に登って森全体を見ようとするが、リスの親分マックスクイージーと子分たちに妨害された。
エリオットはブーグに、「町へ連れて行ってやるからパートナーになろう」と持ち掛けた。ブーグは承諾し、エリオットの案内で森を 歩き始めた。ビーバーのライリーたちがダムを作っている現場に通り掛かると、エリオットは「俺たち、ショーに出る」と得意げに言う。 ブーグは腹が減ったが、川で魚を獲ろうとしても逃げられてしまう。ブーグは排便したくなったが、トイレが無い。エリオットに言われて 茂みで排便しようとするが、他の動物たちに見られて困ってしまった。
エリオットはメスジカのジゼルを見つけて声を掛けるが、群れの親分イアンと仲間たちに包囲される。エリオットは群れを追い出されて いたのだ。そこへブーグが来るが、イアンたちはリスにやられたことを知っており、見下した態度を取った。ブーグは威嚇しようとするが、 イアンに睨まれるとビビってしまう。それを見ていたマックスクイージーたちも、ブーグを腰抜け呼ばわりした。
ボブとボビー夫妻はビッグフットの写真を撮影するため、飼い犬ウィーニーを連れて森に来ていた。そこに現れたショーは、ウィーニーが ブーグやエリオットの仲間だと思い込んで襲い掛かった。ショーは「動物がみんなグルになって人間の世界を乗っ取る」という妄想に 取り付かれており、「俺が止めないと自然界の秩序が崩れる。ペットは二重スパイだ」と捲くし立てた。
翌朝、ブーグとエリオットは森を進むが、昨日と同じビーバーのダムに辿り着いた。ブーグはエリオットが町への道を知らないと気付き、 詰め寄った。そこへショーが発砲してきたため、ブーグはダムの上を逃げようとする。しかしブーグの重みに耐え切れず、ダムが決壊して 大水が勢い良く溢れ出した。川を流されたブーグとエリオットは、滝壺に転落してしまった。
ブーグとエリオットが陸に上がると、他の動物が集まっていた。彼らも川に流されてしまったのだ。動物たちは「お前のせいで狩猟エリア に流された」と言い、ブーグを激しく糾弾した。エリオットが「こいつのせいじゃない」と擁護すると、ブーグは「そうだ、お前のせいだ」 と彼を非難した。ブーグは「これっきりだ」と言い放ち、エリオットと別れて歩き出した。
ブーグは山小屋を発見し、中に入った。小屋には誰もいなかった。ブーグはトイレがあったので大喜びで排便し、冷蔵庫でチョコバーを 見つけて頬張った。電気を付けたブーグは、動物の剥製が幾つも置いてあるのを見て慌てふためいた。そこへショーが現れたため、ブーグ は急いで身を隠した。そこはショーの家だったのだ。ブーグはショーに気付かれるが、何とか脱出した。
エリオットの元に戻ったブーグは、ヘソを曲げている彼と和解した。ハンターに狩られないよう、ブーグはエリオットを連れてガレージに 避難しようと考えた。その話を聞いていた他の動物たちは、一緒に避難することを求めた。しかし、それほどガレージは大きくない。山 から見下ろすと、大勢のハンターが集まっており、町に行くことは不可能な状況になっていた。ブーグは「みんなで戦って、ハンターを森 から追い払おう」と訴え、動物たちも賛同の意志を示した…。監督はロジャー・アラーズ&ジル・カルトン、共同監督はアンソニー・スタッチ、原作はスティーヴ・ムーア&ジョン・B・カールズ、 映画原案はジル・カルトン&アンソニー・スタッチ、脚本はスティーヴ・ベンチック&ロン・J・フリードマン&ナット・モールディン、 製作はミシェル・マードッカ、共同製作はエイミー・ジュピター、製作総指揮はジョン・カールズ&スティーヴ・ムーア、 編集はケン・ソロモン&パム・ツィーゲンハーゲン、美術はマイケル・ハンフリーズ、音楽はラミン・ジャヴァディー。
声の出演はマーティン・ローレンス、アシュトン・カッチャー、ゲイリー・シニーズ、デブラ・メッシング、ビリー・コノリー、 ジョージア・エンゲル、ジョン・ファヴロー、ジェーン・クラコウスキー、ゴードン・トゥートゥージス、パトリック・ウォーバートン、 コーディー・キャメロン、ニカ・ファッターマン、ダニー・マン、ジャック・マッギー、ミシェル・マードッカ他。
ソニー・ピクチャーズ・イメージワークスが初めて手掛けたフルCGアニメーション映画。
監督は、『ライオン・キング』のロジャー・アラーズと、これが初監督となるジル・カルトン&アンソニー・スタッチが共同で務めて いる。
ブーグの声をマーティン・ローレンス、エリオットをアシュトン・カッチャー、ショーをゲイリー・シニーズ、ベスをデブラ・メッシング が担当している。
日本語吹替版では、ブーグを石塚英彦、エリオットを八嶋智人、ベスを木村佳乃、スカンクのマリア&ロージーをPUFFYが担当している。ブーグはエリオットから「チョコバーを手に入れるには外へ出なきゃ行けない」と言われ、ホイホイとガレージを抜け出す。
ここで「勝手に抜け出したらベスに悪いな」とか、そういう迷いは全く生じていない。まあ、お菓子につられるってのは分かるけど、その 前に「お菓子以外の何かでエリオットが誘惑しようとするが、ブーグは迷う」という手順を踏んだ方がいい。
っていうか、ずっと町で暮らしているのなら、ブーグはチョコバーぐらい見たことがありそうなもんよな。コンビニだって、たぶん目に しているはず。勝手にドアを破壊して、店内の物を勝手に食べたり暴れたりしたらダメだということぐらい、分からなかったのか。
店で暴れる様子を「楽しいシーン」として描いている感覚が理解し難い。
正直、ブーグにすげえ不快感を抱いてしまった。
とにかくブーグがちっとも可愛くないんだよな。デザインは可愛いけど、行動が全くダメで、だから同情も共感も皆無。あとさ、エリオットは「トンズラさせてやるぜ」と言っているわけだから、「町で人間と暮らすことは動物にとって正しくない。森に帰る べきだ」という考えの代表であるべきじゃないのか。
なのに、自然界には存在しないチョコバーを当たり前のように食べたり、店の商品で楽しんで次の朝まで留まったりするのは、キャラの 動かし方として違和感を覚える。
森に帰された後には、「パートナーになって一緒にショーに出よう」とまで言い出す。それなら、エリオットはブーグを外に連れ出す必要 など無かっただろうに。最初から「ブーグのように人間と馴染む暮らしに憧れる動物」にしておけばいいのだ。それに、そんなに町での 暮らしを望むような発言をしていたエリオットが、最終的に森に留まっているのは何なのかと。
それと、町に戻りたいのなら、戻る道を知らないままブーグを連れ歩いているのは、どうなのよ。そりゃあ、最初はパートナーの約束を してもらうために嘘をついたんだろうから、そこは構わない。
ただ、そのまま歩いていても町には戻れないわけで、だったらブーグに嘘がバレないようにしながら、何とか町に戻る道を探ろうとする策 を講じるべきじゃないのか。後半に入っても、ブーグは1ミリたりとも森の生活に順応していないし、そこでの暮らしの良さも感じていない。
そもそも観客に対しても、動物が町ではなく森で生活することの素晴らしさは何もアピールされていない。
そこから、どうして「みんなでハンターと戦おう」とブーグが訴える展開になるのか、ワケが分からん。
途中の手順を幾つもスッ飛ばしているんじゃないか。
エリオットと和解する手順、森の動物と仲良くなる手順、弱虫ブーグが戦う勇気に目覚める手順、森の動物を守ろうとする手順、森の一員 として森の暮らしを守ろうとする手順、そういった諸々が全て省略されているように思えてならない。ショーはボブ&ボビー夫妻の元に現れた時、「動物がみんなグルになって人間の世界を乗っ取る。俺が止めないと自然界の秩序が崩れる」 と言い出す。
最初は「狩猟時期を無視して動物を殺そうとする残忍なハンター」として登場したはずなのに、いつの間にやらマッドな奴になっている。
これは完全にキャラ設定の失敗だろう。
「なんか付いていけんわ」と思ってしまう。あと、ブーグが戦う相手を作りたいのは分かるけど、ハンターに襲われる危険があるのなら、なおさら自然に帰るよりも町での暮らしを 続けた方が安全で幸せでしょうに。
それでもブーグが森の生活を選ぶ理由が、この映画には何も用意されていない。
ラスト、ブーグは迎えに来たベスと町に戻らず、森に留まることを選ぶが、その判断に何の説得力も無い。
おまけに、そこには「ずっと可愛がってくれたベスとの別れ」に対する悲しみも薄い。途中まではショーだけが悪玉になっているが、後半に入ると他のハンターも敵になってくるのよね。
ハンターたちは動物に襲われ、車を爆破されて逃げ帰る。
だけど、ちゃんとルールを守って狩猟に来ているハンターまで敵にするのであれば、オープン・シーズンの意味が 無くなっちゃうよな。
それと、彼らが悪者扱いされるのなら、動物をショーに出演させて曲芸をさせているベスも悪者の部類に入って しまうんじゃないの。(観賞日:2010年1月12日)