『アダルト♂スクール』:2003、アメリカ
弁護士のミッチは仕事を早く切り上げ、飛行機に乗って自宅へ戻った。同棲している婚約者のハイジを驚かそうとしたミッチだが、彼女が寝室でハードコア・ポルノを観賞していたので困惑する。それでも気を取り直してハイジとセックスしようとしたミッチだが、浴室から裸の男女が現れたので驚愕した。ハイジは悪びれず、以前から乱交パーティーを繰り返していた事実を明かす。そこへ乱交パーティーの連絡を受けた新たな男が訪ねて来たので、ミッチは呆れ果てた。
ハイジと別れたミッチは、親友であるフランクの結婚式に付添人として出席した。一緒に付添人を務めるビーニーは、フランクに「結婚式なんてやめろ。ここから逃げ出せ」と囁く。「今が人生で一番幸せのに」とフランクが言うと、ビーニーは「半年後、それが変わらないと思うのか。妻子持ちの俺が幸せそうに見えるのか」と告げる。彼はミッチは「無視しろ」と告げ、フランクはマリッサと結婚式を挙げた。結婚パーティーで悪酔いしたミッチは、高校時代に思いを寄せていたニコールから声を掛けられる。マリッサから恋人と別れたことを聞いていたニコールは、ミッチにコーヒーを勧めた。
ミッチは大学の敷地内にある一軒家へ引っ越し、失恋の痛手から立ち直ろうとする。そこに住んでいた教授が死去したため、ミッチが借り受けたのだ。ビーニーは家を訪れ、「俺達には最高の場所だ。女を連れ込むには絶好の場所になる」と言う。「まずは派手にパーティーをやろう」と彼が提案すると、フランクも賛同した。「家を借りた時、不動産屋から面倒を起こすなと言われてるんだ」とミッチは嫌がるが、ビーニーは耳を貸さなかった。
フランクはマリッサから「バカ飲みは卒業してね」と釘を刺され、「分かってるよ」と軽く言う。ビーニーは大勢の大学生を一軒家に集め、パーティーは大いに盛り上がる。フランクは参加者に促され、酒を飲んで興奮する。ヒップホップのライブが始まる中、フランクは全裸になってステージに乱入した。マリッサがビーニーの妻であるララたちを乗せて車を運転していると、家を飛び出したフランクが走っていた。マリッサは険しい表情でフランクを呼び止め、車に乗せた。
翌朝、ミッチが目を覚ますと、ベッドの隣ではダーシーという女がいた。ミッチが動揺していると、ダーシーは「ちよっと楽しんだだけよ。だから気にしなくていいの」と軽く笑った。ミッチがビーニーと話していると、プリチャードという男が現れた。すぐにミッチは、それが学生時代に「チーズ」と呼んでいた元クラスメイトだと気付いた。かつてプリチャードは、ミッチやビーニーたちからイジメを受けていた。大学の学部長を務めるプリチャードは、「この家の利用は制限される。今後は大学の施設以外に使えない」と言う。彼は1週間以内の明け渡しを要求し、書類を渡して立ち去った。
マリッサはフランクを連れてセラピストの元を訪れ、カウンセリングを受けさせる。正直な気持ちを話すよう促されたフランクは、「この先、1人の女とだけセックスして一生を終えるなんて耐えられない」と告白した。上司のゴールドバーグと仕事のことで話していたミッチは、ダーシーが彼の娘であること、まだ高校生であることを知って動揺した。ミッチが帰宅すると、マリッサの怒りを買ったフランクが来ていた。泊めてほしいと頼まれ、ミッチは了承した。
ミッチが家に入ると、ビーニーが40人の男たちを集めて演説していた。ビーニーは説明を求めるミッチに、「彼らは一日中、ここにいる。昨夜のパーティーのおかげで俺たちは有名になった。俺たちは社交クラブを作る。ここを大学の社交クラブにすれば、引き渡しの問題は解決する」と話す。「パーティーは楽しかっただろ。ずっと続けばいいと思わないか?」とビーニーが語ると、ミッチは「俺は休みたい。ここで社交クラブなんてやらない」と拒む。しかしビーニーが「ガッカリだよ。自分のスケジュールを裂いてお前を救おうとしたのに」と告げると、フランクに「やるって言え」と促されたので承諾した。
ミッチ、フランク、ビーニーはパンストを被ってバンを走らせ、最初のメンバー候補を次々に拉致した。3人は老人のブルーを始めとする14名を集め、21日間の試練を与えると説明した。社交クラブの面々がジョギングしている様子を目撃したプリチャードは、部下のマイケルに「もう2週間も経ってるのに、なぜクラブがあるんだ?」と苛立ち交じりに質問した。マイケルが「正式なクラブではありませんが、学生会が一時的に認めたんです」と説明すると、彼は「奴らの半分は学校にも行ってない」と苛立つ。するとマイケルは「年齢は関係ない。規則の抜け穴です」と告げた。
ミッチは社交クラブの噂を聞き付けた同僚のウォルシュから、「面白そうだな。入れてくれ」と言われる。「社交クラブなんて無い」とミッチは敬遠するが、話を聞いたビーニーは「入れてやれよ」と告げる。シングルマザーのニコールは幼い娘のアマンダを連れてミッチの家を訪ね、引っ越し祝いを渡した。ビーニーは息子のマックスが6歳を迎えるので、日曜に一軒家で誕生パーティーを開くことを決めていた。彼はニコールとアマンダも誘い、ミッチも同調した。
マリッサは友人たちに勧められ、フェラチオ講座の先生を自宅に招いてレッスンを受ける。家を覗き込んだフランクは、マリッサが講師をフェラしていると思い込む。フランクは背後から襲い掛かるが、反撃を食らって殴り倒された。マックスの誕生パーティー当日、ニコールはアマンダだけでなく恋人のマークも連れて来た。ニコールと2人きりになったミッチは、「高校時代に貴方が好きだった」と言われて驚いた。ミッチは「僕も好きだったけど、近寄り難くて遠くから見ているだけだった」と語った。トイレへ移動したミッチは、マークが他の女とキスしている現場を目撃する。マークは悪びれず、「ニコールには言うなよ。男はペラペラ喋ったりしない」と告げた。フランクは誤って自分の首に麻酔銃の矢を撃ち込み、朦朧とした意識の中でプールに転落した。
プリチャードはマイケルに、「あの社交クラブには理事会からも疑問の声が出ている」と告げる。プリチャードは学生会長のメーガンを呼び、社交クラブの承認を撤回するよう要求する。メーガンが嫌がると、プリチャードは彼女が希望するコロンビアのロースクールに入るための協力を持ち掛けた。ミッチはニコールに頼まれ、賃貸契約書の手続きを手伝う。ニコールがマークと一緒に住むと聞いたミッチだが、浮気のことは話せなかった。ブルーの誕生パーティーに、ミッチたちはローション・レスリングを開催した。ブルーも出場し、全裸美女のジェニーとジーニーと対戦する。しかし興奮したブルーは、心臓発作でポックリと逝ってしまった…。監督はトッド・フィリップス、原案はコート・クランドール&トッド・フィリップス&スコット・アームストロング、脚本はトッド・フィリップス&スコット・アームストロング、製作はダニエル・ゴールドバーグ&ジョー・メジャック&トッド・フィリップス、共同製作はポール・ディーソン、製作総指揮はアイヴァン・ライトマン&トム・ポロック、撮影はマーク・アーウィン、美術はクラーク・ハンター、編集はマイケル・ジャブロー、衣装はナンシー・フィッシャー、音楽はセオドア・シャピロ、音楽監修はランドール・ポスター。
出演はルーク・ウィルソン、ウィル・フェレル、ヴィンス・ヴォーン、ジェレミー・ピヴェン、エレン・ポンピオ、ジュリエット・ルイス、リア・レミニ、ペリー・リーヴス、クレイグ・キルボーン、エリシャ・カスバート、パトリック・クランショー、ハーヴ・プレスネル、アーティー・ラング、マット・ウォルシュ、パトリック・フィスクラー、リック・ゴンザレス、ショーン・ウィリアム・スコット、サラ・タナカ、ケイト・エリス、フィー・キャプラン、サラ・シャヒ、クリステン・カー他。
『ビタースウィート・モーテル』『ロード・トリップ』のトッド・フィリップスが監督を務めた作品。
脚本は『ロード・トリップ』でも組んでいたトッド・フィリップス&スコット・アームストロングのコンビ。
ミッチをルーク・ウィルソン、フランクをウィル・フェレル、ビーニーをヴィンス・ヴォーン、プリチャードをジェレミー・ピヴェン、ニコールをエレン・ポンピオ、ハイジをジュリエット・ルイス、ララをリア・レミニ、マリッサをペリー・リーヴス、マークをクレイグ・キルボーン、ダーシーをエリシャ・カスバート、ブルーをパトリック・クランショーが演じている。
ヒップホップ業界からスヌープ・ドッグ、ウォーレン・G、ビショップ・ドン・マジック・ファン、コケインが本人役で登場している。アンクレジットだが、ゴールドバーグ役でテリー・オクィンが出演している。まず序盤で感じるのは、「まとまりが全く無いなあ」ってことだ。
コメディー映画だから、笑いを取ろうとするのは理解できる。
それは当たり前のことである。
ただ、集会を抜け出したミッチがタクシーに乗るとシートベルトが切れているが、運転手に「いちいち気にするな。後ろなら死なない」と荒っぽく言われるとか、空港の金属探知機に何度も引っ掛かるってのは、この映画がどういう方向性で喜劇を構築しようとしているのかを見せる上では、どう考えても焦点が定まっていない。むしろ、そのオープニングは笑いを取ろうと欲張り過ぎたせいで、逆効果になっていると感じる。
さっさとミッチを帰宅させて、ハイジの淫らな行為を見てショックを受ける展開に入った方が得策だろう。ミッチがショックを受けることで、物語が始まるわけで。
それに、その「ハイジが乱交パーティーを始めようとしていた」というエピソードが描かれた時に、そこから逆算して前述したタクシーや空港のシーンを見ても、まるで繋がってないでしょ。
だったら、そこは笑いを取りに行くことより、話を先に進めることを優先した方がいい。ハイジと別れたミッチはフランクの結婚パーティーに出席し、ビーニーは「結婚なんて最悪だ」と吐露している。
だから、そこからは結婚を巡る話としてコメディーを進めて行くのかと思いきや、ミッチの引っ越し先でビーニーが派手なパーティーを開く展開になる。
そこに恋愛の要素は全く絡んでいない。
ミッチはダーシーと一夜を共にしているが、そこから2人の恋愛劇が発展しないことは大抵の人間が容易に想像できるだろう。ダーシーが高校生だと明らかになると、「そのネタがやりたかっただけなのね」と気付くことになるだろう。プリチャードから一軒家の引き渡しを要求され、「どうするかミッチたちが思案し、対策を考える」という手順があるのだろうと思いきや、ビーニーが勝手に社交クラブの発足を決めている。
そこを雑に片付けるのは、まあ受け入れておこう。しかし、そこの展開には、それ以前の問題がある。
それは、「導入部から考えた時、完全にピントがズレてるよね」ってことだ。
「家の引き渡し要求に社交クラブを作ることで対抗し、ミッチたちvsプリチャードの戦いが勃発する」という話を描きたいのなら、ミッチが婚約者と別れるとか、フランクがマリッサと結婚するとか、そういう要素って全く要らないよね。その展開に、全く繋がってないよね。ミッチは結婚パーティーでニコールと会っているので、ここの関係で恋愛コメディーを進めて行くのかと思いきや、なかなか彼女が再登場しない。
そして前述したように、「一軒家を巡る争い」に突入してしまう。
そうなると、もはやニコールに限らず、恋愛要素は完全に邪魔なだけだ。
実際、「ミッチたちが社交クラブのメンバー候補を訓練する」という展開に入るので、恋愛云々というだけでなく女性キャラが不要になっている。ミッチはビーニーが派手なパーティーを開いても、社交クラブを発足させても、最初は嫌がる様子を見せるものの、結局は受け入れたり歓迎したりしている。
ただ、ノリノリで参加している様子は乏しい。むしろ、「強引なビーニーのペースに乗せられている弱気な軟弱者」という印象だ。
そういう関係性で描かれていることもあって、ビーニーがトラブルメーカーとして強引に話を動かしていく話に気持ちが乗らない。
「ビーニーに翻弄されるミッチ」という形でも笑いも感じない。ただビーニーへの不快感を催すだけなのだ。パーティーのバカ騒ぎが描かれたり、社交クラブを発足させる展開になったりすると、「大人に成り切れないバカな男たち」ってのを描きたいのかなあという感想が湧く。
ただ、そうだとしても、導入部の「ミッチがハイジの乱交パーティーを知る」というエピソードは全くフィットしていないでしょ。
そこから始めておいて、それ以降は全くリンクしないエピソードばかりを描いているのだ。
むしろ、その導入部を排除して、何か別の理由でミッチが大学内の一軒家を借りる展開にしておけば、もう少し統一感は出たんじゃないかと。中盤にはマリッサたちがフェラチオ講座を受けているシーンが挿入されるが、ひたすらに違和感しか無い。
そりゃあ、裸で走るフランクをマリッサが発見するシーンで、そんな会話があったことは確かだよ。だから、何の前フリも無く描かれているわけではない。
だけど、「そもそもマリッサがフェラチオを教わる意味って何なのか」という疑問があるのよ。
フランクと彼女が不和になっているという状態も、なんかフワフワした見せ方になっているし。
もしも「マリッサがフェラしているとフランクが誤解する」というネタありきで描いているとしても、逆算が下手すぎるし、そのせいで笑いも妨害されているし。社交クラブを発足させたミッチたちは最初のメンバー候補を集め、「ブロックとロープを繋ぎ、もう一方の先をチンコに結ぶ。高い場所から地面に向かってブロックを投げ落とす」というテストを強いる。全員でジョギングしている様子も描かれる。
だけど、「それって何の意味があるのか」と言いたくなる。
ミッチたちにとって必要なのは、「社交クラブの部室として一軒家を使っている」という事実でしょ。
つまり、社交クラブを形式的に発足させたら、それで事足りるはず。
ビーニーは「楽しいことがやりたい」という意識で社交クラブを発足させたんだろうけど、全員でジョギングするのが「楽しい遊び」には到底思えないし。っていうかさ、社交クラブを発足させたことが、物語を動かす要素として機能していないんだよね。入会テストのシーンとジョギングが描かれた後、社交クラブとして活動している様子が一向に描かれていないのだ。言い出しっぺのビーニーにしても、社交クラブを積極的に活用する意識を全く見せていない。
なので、それまでの「バカ騒ぎが好きなオッサンたち」という状態と何の変化も無い。「社交クラブ」という要素を抜きにしても、ほぼ支障が無い状態で話を進めることが出来てしまうのだ。マックスの誕生パーティーにしても、社交クラブとは全く無関係なイベントだし。
1時間ほど経過して、ブルーの誕生日にローション・レスリングを開催するシーンが描かれる。
だけど、それも「別に社交クラブとか要らなくね?」と思ってしまう。だって最初にビーニーがパーティーを開いた時は、社交クラブなんて存在しなかったんだから。社交クラブが発足した直後から機能停止に陥る中、ニコールが再登場すると、そこからは恋愛劇の要素が強くなる。
で、それならそれで、もっと「恋愛コメディー」としての徹底を図るべきだろう。ミッチとニコール、フランクとマリッサという2組のカップルの関係を充実した描写にすべきだろう。
ニコールが登場すると、今度は「社交クラブが云々」といった設定が邪魔でしかない。
ミッチたちが社交クラブを作る話と恋愛の要素が、相乗効果を生まないどころか、これっぽっちも絡み合っていないのだ。プリチャードが一軒家の明け渡しを要求し、それを阻止するためにミッチたちは社交クラブを発足させる。
だったら、「プリチャードが社交クラブを潰すために手を打ち、それにミッチたちず対抗する」という戦いが勃発すべきじゃないのか。
ところがプリチャードが行動を起こすのは、残り30分を過ぎてからなのだ。
しかも、プリチャードがメーガンを呼んで承認の撤回を要求しても、そこからミッチたちに「承認取り消し」という情報が伝達されるまでに時間が掛かってしまう。
だから当然っちゃあ当然だが、「社交クラブvsプリチャード」という対立の構図は、終盤に突入するまで全く見えて来ない。残り時間が少なくなって、ようやく「ミッチたちが社交クラブを承認させるために立ち上がる」という展開が訪れても、そこまでに何の流れも作っていないから、取って付けた印象しか無いわ。それに、すんげえ大雑把で駆け足の描写になっているし。
本来なら「ダメ男のミッチたちが立ち上がり、一致団結して頑張る」という展開は気持ちを燃えさせてくれなきゃマズいのに、すんげえ冷めた目で見てしまうわ。
あとさ、そもそもプリチャードがミッチたちを追い払おうとした理由は「かつてイジメを受けていたから」であって、同情すべき部分が大きい。
でもミッチたちは過去のイジメを全く反省せず、贖罪も済ませず、一方的にプリチャードを卑怯な悪者として描いているので、そこでも乗れないんだよね。(観賞日:2016年12月4日)