『オーシャンズ13』:2007、アメリカ

オーシャンズのメンバーであるルーベンが心筋梗塞で倒れ、仲間のダニー・オーシャン、ラスティー、ライナス、フランク、ヴァージル、 ターク、リヴィングストン、バシャー、イエン、ソールが集まった。ルーベンはオーシャンの忠告に耳を貸さず、ホテル王ウィリー・ バンクに投資していた。しかしホテル建設に奔走したルーベンは、バンクに切り捨てられてしまったのだ。
オーシャンズのメンバーは報復を考えるが、その前にダニーはバンクにチャンスを与えることにした。ダニーはバンクに会い、ルーベンに 金を返すよう要求した。しかしバンクが拒絶したため、オーシャンズは復讐することにした。半年後、ダニーとラスティーは発明家の ネイゲルを呼び寄せ、協力を求めた。オーシャンズは、グランド・オープニングを控えたバンクの新しいホテルに狙いを定めていた。既に ホテルは完成し、現在はソフト・オープニングの期間に入っている。
バンクはカジノで高額を賭ける客をターゲットにするため、超高級ホテルを建てていた。バンクは右腕アビゲイルと共に全てを仕切り、 7月3日のグランド・オープニングに向けて準備を進めていた。会社の役員9名の内の6名は外部の人間であり、バンクはオープン3ヶ月 で5億ドルを稼がないと地位が厳しい状況にあった。また、彼は5回連続の5ダイヤモンドも狙っていた。それはホテルの格付けの最高位 で、バンクは今まで建てた4つのホテルでは5ダイヤモンドを獲得していた。
オーシャンズは、バンクの5ダイヤモンド獲得を阻止しようと考えた。ラスティーは野心を持ったコンシェルジュのデビーを味方に付けて おり、ネイゲルに「バンクと評価委員が接触する前に手を回す」と言う。オーシャンズはホテルのシステムに侵入しており、ダニーは ネイゲルに「バンクの客を奪う」と告げた。そのためにラスティーがダニー・シールズと会い、上得意客18名のマネージャーと話を付けて いた。オーシャンズは、カジノの客に5億ドルほど勝たせることを目論んでいた。
オーシャンズはダイスに細工を施すため、その製造工場にヴァージルを潜入させた。ブラックジャックに関しては、リヴィングストンが シャッフル・マシーン会社への就職に成功した。スロットマシンはコンピュータ制御されているが、それについてはオンライン・カジノで 多額の借金を背負った青年ユージーンに仕事を任せた。ルーレットに関しては、玉に細工を施すつもりだ。
グランド・オープニングではカジノ・エキスポが開催され、そこにはバンクも出席する。オーシャンズはフランクを送り込む計画を立てて いた。オーシャンズは盗癖のあるフロア責任者ニールも抱き込んだ。警備の情報については、セキュリティー・システムの名前だけが判明 した。システム開発者がグレコ・モンゴメリーだと知ったネイゲルは、「諦めろ、ハッキングが不可能な無敵のシステムだ」と言う。 そのシステムは人工知能を使っているのだという。
ネイゲルが「とんでもない災害でも起きない限り、システムを停止させるのは無理だ」と言うと、ダニーとラスティーは「仮に停められる として、再起動までの時間は?」と尋ねた。3分半だとネイゲルが答えると、彼らは「充分だ」と言う。ネイゲルは、ドリルで地下から穴 を掘り進め、ホテルの地下で激しい揺れを起こして地震を偽装する作戦を提案した。ラスティーは学者に変装してバンクと面会し、地震の 可能性を指摘した。ラステスーはカメラを仕掛けた地震計をバンクのオフィスに残し、立ち去った。
ソールはチェックインを待つ客に紛れ、アビゲイルの前でわざと格付け基準書を落とした。ソールが評価委員だと思い込んだアビゲイルは 、丁重な態度で案内を買って出た。本物の評価委員に対しては、オーシャンズの指示を受けたデビーやニールが不快感を与えるような態度 で応対した。ソールは隣の部屋に入り、評価委員の部屋に異臭を流し込んだ。
ドリルが壊れて新しい物を買う必要が生じたが、金が不足してしまった。ライナスの提案で、オーシャンズはカジノのオーナーである テリー・ベネディクトに話を持ち掛けた。バンクに恨みを持っているベネディクトは、「オーシャンズを監視する」「出資した倍額を返却 する」「バンクが持っている5ダイヤモンドのダイヤを盗み出す」という条件を出して、金を出すことに応じた。
ホテルの設計図を手に入れたラスティーは、「スーパーVIPルームからエレベーターシャフトに入れる。そうすれば床の厚さが分かる」 と仲間に告げた。イエンが中国の実業家、ライナスが彼に秘書に成り済まし、ホテルに赴いた。アビゲイルはカジノ詐欺対策セミナーで 知り合ったFBI捜査官ロバート・コールドウェルに連絡し、身許の不確かな客が2名いるので調べて欲しいと頼んだ。
オーシャンズはダイヤモンドのケースを摩り替える方法を思い付くが、その部屋に入れるのはバンクとアビゲイルの2人だけだ。ダニーは ラスティーにアビゲイルを口説かせようとするが、ライナスが「俺が落とす」と立候補した。工場ではヴァージルとタークが薬品を混入し 、イカサマ用のダイスを製造した。カジノ・エキスポの会場では、フランクが新しいゲームをバンクに売り込んだ。ベネディクトが現れて 「その独占権を買いたい」と言うと、対抗意識を燃やしたバンクは「今夜からセンタールームに置く」と食い付いた。
大きな賭けをする客が2人も去ったため、バンクはアビゲイルに原因究明を指示した。バンクが入手困難なサムソンの黄金携帯を欲して いると知ったオーシャンズは、速達で送り届けた。グランド・オープニングの夜、ダニーはバンクと接触し、上得意の客を抱き込んだこと を認めた。バンクが「賢く儲けたいのなら客にカジノで遊ばせろ。客が負けた分の2割を渡す」と持ち掛けたので、ダニーはVIPルーム を使わせるという条件で取引を承諾した。
ライナスは媚薬を使い、アビゲイルを誘惑した。彼は「2人きりになりたい」と言い、ダイヤの部屋へ案内させた。FBI捜査官たちが カジノに現れ、シャッフルマシーンに細工していた容疑でリヴィングストンを逮捕した。バンクはシャッフルマシーンを全て交換する作業 を余儀なくされた。。彼はリヴィングストンが残した指紋を使い、仲間を割り出すよう部下に命じた。
バシャーはバンクに正体が知られるのを回避する作戦を思い付き、ダニーはヴァージルにハッキングを命じた。ラスティーはルーベンを カジノに連れて来た。バシャーはスタントショーに出演するライダーに成り済ましてバンクのオフィスへ行き、時間稼ぎをした。その間に ヴァージルがハッキングし、部下からバンクの部屋に送られた自分たちのデータを書き換えた。
オーシャンズは細工したスロットマシーンを使い、客に大当たりを出させた。ヴァージルとタークは地下で数秒の揺れを起こすが、カジノ の警備システムは作動したままだ。バンクはグレコのいるコンピュータ・ルームへ行き、システムを確認した。その時、彼の黄金携帯に 電話が入った。その携帯には、システムに影響を与えるマグネトロンが含まれていた。そのため、警備システムのサーバーが全て停止した 。再起動までの間に、オーシャンズは用意してあった仕掛けを使い、カジノのあちこちで客に大儲けさせる…。

監督はスティーヴン・ソダーバーグ、キャラクター創作はジョージ・クレイトン・ジョンソン&ジャック・ゴールデン・ラッセル、脚本は ブライアン・コッペルマン&デヴィッド・レヴィーン、製作はジェリー・ワイントローブ、製作協力はロビン・ル・シャヌー、製作総指揮はスーザン・イーキンス& グレゴリー・ジェイコブズ&フレデリック・W・ブロスト&ブルース・バーマン、撮影はピーター・アンドリュース、美術はフィリップ・ メッシーナ、編集はスティーヴン・ミリオン、衣装はルイーズ・フロッグリー、音楽はデヴィッド・ホームズ。
出演はジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、マット・デイモン、アル・パチーノ、エレン・バーキン、アンディー・ガルシア、ドン ・チードル、バーニー・マック、エリオット・グールド、カール・ライナー、エディー・イザード、デヴィッド・ペイマー、ケイシー・ アフレック、スコット・カーン、エディー・ジェイミソン、シャオボー・クィン、 ヴァンサン・カッセル、ジュリアン・サンズ、ボブ・エインスタイン、オルガ・ソスノフスカ、アンヘル・オクエンド、ジェリー・ ワイントローブ、スコット・L・シュウォーツ、オプラ・ウィンフリー、ドン・マクマナス他。


シナトラ一家の総出演した『オーシャンと十一人の仲間』をリメイクした2001年の映画『オーシャンズ11』から始まるシリーズ第3作。
ダニー役のジョージ・クルーニー、ラスティー役のブラッド・ピット、ライナス役のマット・デイモン、ベネディクト役 のアンディー・ガルシアバシャー役のドン・チードル、フランク役のバーニー・マック、ルーベン役のエリオット・グールド、ソール役の カール・ライナー、ヴァージル役のケイシー・アフレック、ターク役のスコット・カーン、リヴィングストン役のエディー・ジェイミソン 、イェン役のシャオボー・クィンは1作目からの続投。
ここに前作からの続投組であるネイゲル役のエディー・イザードを含めた面々が、今回の「オーシャンと十三人の仲間」ということに なる。

ブルーザー役のスコット・L・シュウォーツも、地味ながら1作目からの続投組。トゥルアー役のヴァンサン・カッセルは前作からの 続投。
今回のゲストはアビゲイル役のエレン・バーキン、バンク役のアル・パチーノ、グレコ役のジュリアン・サンズ、極秘審査員役の デヴィッド・ペイマーなど。
1作目と2作目に出演していたテス役のジュリア・ロバーツ、前作に出演していたイザベル役のキャサリン・ゼタ=ジョーンズは、今回は 登場しない。
なお、今回もスティーヴン・ソダーバーグは、ピーター・アンドリュースという別名義で撮影を担当している。

オーシャンズが集まった後、ルーベンがバンクに裏切られたシーンが回想として描かれる。
だが、そこではバンクが甘い話をルーベンに吹き込んで「いかにも良い目を見させます」という風に思わせている様子、ルーベンが成功に 浸っている時間が無いので、バンクの狡猾さや卑劣さがあまり伝わらない。単にルーベンがバカだったから騙されただけだという印象を 受けてしまう。
そうなると、オーシャンズがルーベンの仇討ちに乗り出しても、そこにスクリーン外の仲間して乗っていくことが難しい。テンションの 高まりが無い。そんなに面倒な手間や多額の予算を掛けてまで復讐するほどのことなのか、という感想になってしまう。
おまけに、バンクが金の支払いを拒否したら半年後に飛ぶんだが、そりゃダメだろ。そこで明確にオーシャンズ対バンクの構図を示した のであれば、すぐに復讐計画に取り掛かるべきだよ。
そこを淡白にするのは、スタイリッシュとは全く意味が違うぞ。

とにかくオーシャンズは、やたらと金を掛けている。
巨大な掘削機を購入して穴を掘っているが、そりゃ復讐のためだから収支は度外視ということなんだろうけど、計画が成功して金が手に 入っても儲けが少なくなるんじゃないかと思ってしまう。もう少し機械じゃなくて知恵に頼る手口は無かったのか。
なんか知恵を使うよりも、金に任せた計画という感じがするんだよな。
いや、もちろんそれ以外の部分で知恵も使っているんだよ。ただ、その知恵も、前半は金を奪うためじゃなくて格付けで5ダイヤモンドを 阻止するための計画において使われるものであり、それって、ようするにホテルへの嫌がらせだよな。
あと、今回のオーシャンズは、初顔がいないってのは大きな痛手だよな。
ネイゲルまでメンバーに入れちゃうってのは、スター不足だろう。

相変わらず、得意分野なんて無関係で、誰がどの仕事をやっても構わないという形。
唯一、イエンだけは軽業という特技があるために、彼にしか出来ない仕事を担当している。
それ以外は、誰でも変装を担当て、誰でも潜入を担当して、誰もが得意分野とは無関係な部分でも作業を担当している。
っていうか、もはやイエンの軽業以外、それぞれの得意分野の設定を忘れてしまったよ。

丁々発止のやり取りとか、計画を練ったり準備する段階での苦労とか、計画が破綻しそうになってのピンチとか、敵に見抜かれてさらに上 を行く高度な知能戦とか、そういうのは全く無い。
ダニーやラスティーは作戦をスラスラと説明し、計画はサクサクと進められていく。
それは「小気味良く」「テンポ良く」というものではなく、「抑揚が無く」「盛り上がりが無く」というものである。
話のテイストを考えた上で、意図的にスリルを抑制しているんだろうが、ずっとヌルくて締まりが無いのはツラい。

リヴィングストンが捕まるシーンは、それをピンチと見るべきなのか、それも作戦通りなのか、その辺りがボンヤリしている。
ダニーが「このままだと全員が捕まる」と言っているし、ヴァージルがハッキングしているから、間違いなく想定外のピンチだとは思うが 、しかし捕まったリヴィングストンはニヤついている。
そこで「こいつが裏切った」とは絶対に思わないし(オーシャンズが裏切るという展開は絶対に有り得ない)。
ってことは、リヴィングストンだけは思惑通りの行動だったということになる。

だけど、そこはピンチならオーシャンズ全員のピンチ、作戦通りなら全員の作戦通りということにしておくべきだよ。
仲間なのに一人だけ別の作戦を進めていた、意思疎通が無かったというのは、粋じゃないね。
あと、そこをピンチとして受け取るにしても、オーシャンズには余裕があるし、ピンチという印象は薄い。
まあ、危機感に乏しいのがシリーズの味だと言われれば、そうかもしれんが。

幾つもの作戦を並行して進めているのだが、それが「エピソードが充実している」「バラエティーに富んでいる」というプラスではなく、 「意識が散漫になる」「進行が無駄に分かりにくい」というマイナスにばかり作用している。
おまけにハラハラもワクワクも無いから、その作戦が成功して一気に客が儲け出しても「勝った」という爽快感が無い。
「バンクが得意の絶頂にあるところから一気に奈落の底へ突き落とされる」という落差も無ければ、激しく悔しがったり落胆したりという 様子も薄いし。

(観賞日:2010年5月3日)

 

*ポンコツ映画愛護協会