『愛を殺さないで』:1991、アメリカ

シンシア・ケロッグは、ジョン・ウッズ刑事とリンダ・ニーロン刑事の取り調べを受けていた。彼女の幼馴染み、ジョイス・ウバンスキーの夫ジェームズの他殺体が発見され、ジョイスが犯人として疑われているのだ。シンシアは今までの出来事を話し始める。
ジョイスとジェームズは、結婚式の当日からケンカをするほど仲が悪かった。ジェームズは麻薬に手を出しており、すぐに怒ってジョイスに暴力を振るっていた。ジョイスは「ジェームズをいつか殺してやる」と、口癖のように言っていた。
ある日の夜、ジェームズに首を絞められたジョイスは抵抗してカッターナイフで切り付け、彼を殺害してしまう。シンシアは行き掛かり上、ジョイスの証拠隠滅に協力することになったという。だが、ウッズ刑事はシンシアが真実を隠していると推察していた…。

監督はアラン・ルドルフ、脚本はウィリアム・ライリー&クロード・カーヴィン、製作はジョン・フィードラー&マーク・ターロフ、共同製作はデミ・ムーア、製作総指揮はテイラー・ハックフォード&スチュアート・ベンジャミン、撮影はエリオット・デイヴィス、編集はトム・ウォールズ、美術はハワード・カミングス、衣装はホープ・ハナフィン、音楽はマーク・アイシャム。
主演はデミ・ムーア、共演はグレン・ヘドリー、ブルース・ウィリス、ハーヴェイ・カイテル、ジョン・パンコウ、ビリー・ニール、ケリー・シナンテ、クリストファー・スコテラロ、カレン・シャロ、フランク・ヴィンセント、クリスタル・フィールド、マリアン・レオン、マーク・タンティロ、ドリス・マッカーシー他。


刺激的な要素を含んだサスペンスを、眠たくなるほど退屈なドラマに仕上げる天才、アラン・ルドルフ監督の作品。この監督、全く効果の無い場面でスローモーションを使うのが好きなようだ。なお、主演のデミ・ムーアが製作にも関わっている。

宣伝コピーには「結婚に裏切られた、幼なじみの女がふたり・・・。レイプ事件をきっかけに、恐ろしいドラマが始まった」とあるのだが、実際にはレイプ事件など起きない。ちなみに、この宣伝コピーを見ただけで映画のオチは分かってしまったりする。

取り調べ室の場面と過去の映像が、交互に映し出されるという流れが繰り返される。そこに一つでも別の場面を加えたりすれば、変化が生まれるのかもしれない。だが、淡々と同じテンポで繰り返されていく。
物語がピリっと締まることはなく、垂れ流しの状態でストーリーは進んで行く。

ジェームズが殺される場面は重要なポイントになるはずだが、衝撃度の薄い演出なので、そこにいるシンシアとジョイスの緊迫感は伝わってこない。伏線を張り巡らせることも無く、エピソードがラストに集約されることも無い。

回想シーンは起伏に乏しく、刺激が無い。時間の経過に変化を加えるといった工夫も無い。取り調べの中で、状況の変化が起こることもない。同じことを同じ調子で繰り返していると、人間というのは気持ちが散漫になってしまうものなのである。

取調室のシーンでは、ひたすらデミ・ムーア演じるシンシアが話し続けるだけ。ハーヴェイ・カイテル演じるウッズ刑事は事件の真相に迫ったり、ヒントから謎を解明することは無く、単なる聞き役として存在しているだけ。
まるで土曜ワイド劇場の終盤を引き伸ばしたみたいだ。

待ち受けているオチを効果的に見せるためには、それまでに事件の疑問点や真相を追究するためのヒントを、観客に提示しておく必要があるはずだ。それが無いから、淡々とした印象のままで終わってしまっている。
それにしてもハーヴェイ・カイテル、ホントに出てるだけ。勿体無い使われ方だなあ。

 

*ポンコツ映画愛護協会