『ある愛の詩』:1970、アメリカ
名門バレット家のオリヴァー四世はハーバート大学に通っている頃、図書館でアルバイトをしているジェニーと出会った。富豪の息子オリヴァーと庶民のジェニー、育った環境の全く違う2人だが、お互いに強く惹かれ合うものを感じる。
身分の違いに一度は別れを考えるジェニーだが、オリヴァーは結婚を申し込み、両親に会わせる。2人の関係に反対する父親は結婚すれば送金を中止すると告げるが、オリヴァーは父親と縁を切ってでも結婚しようと決意する。
オリヴァーとジェニーは式を上げた。ジェニーも教師の職を得て働き始め、法律学校に入学したオリヴァーも休みにはアルバイトに励んだ。やがてオリヴァーは卒業してニューヨークの法律事務所に勤めることに。だが、ジェニーが白血病に侵されていることが分かり…。監督はアーサー・ヒラー、脚本はエリック・シーガル、製作はハワード・G・ミンスキー、製作総指揮はデヴィッド・ゴールデン、撮影はディック・クラティナ、編集はロバート・C・ジョーンズ、美術はロバート・ガンドラック、衣装はアリス・マヌーガン・マーティン&パール・ソムナー、音楽はフランシス・レイ。
出演はアリー・マッグロウ、ライアン・オニール、ジョン・マーレイ、レイ・ミランド、ラッセル・ナイプ、キャサリン・バルフォア、シドニー・ウォーカー、ロバート・モディカ、ウォーカー・ダニエルズ、トム・リー・ジョーンズ(トミー・リー・ジョーンズ)、ジョン・メレンスキー、アンドリュー・ダンカン、シャーロッテ・フォード他。
問答無用、純愛映画の代表格。ジェニーをアリー・マッグロウ、オリヴァーをライアン・オニール、オリヴァーの父をレイ・ミランドが演じている。また、無名時代のトミー・リー・ジョーンズがトム・リー・ジョーンズの名前で出演している。
ハートウォーミングでロマンティックでリリカルな悲恋の物語、というのが表向きの評価である。ピアノの旋律が有名なフランシス・レイの音楽は、1970年度アカデミー賞作曲賞を受賞した。バッハやヘンデル、モーツァルトなどクラシック曲も挿入されている。
「愛とは決して後悔しないこと」という名台詞を生んだ大ヒット映画だ。美しく、悲しく、淡く、切ないラブストーリー。純愛の王道を描きながら、メロドラマになりすぎず、どこかクールに、そして鋭い感覚で若者の愛情劇を表現している、つもりなのだろう。
当時はまだ無名だったアリー・マッグロウとライアン・オニールを主役に起用したことで、新鮮さと清々しさを作品に注入した、ということなんだろう。たぶん
ロケーションが優れており、特に最初と最後に現れるセントラル・パークのスキー場が美しい、と言わねばならない。
「安っぽい純愛だねえ」などと言ってはいけないのである、たぶん。オリヴァーは富豪の息子だが、父親から決められた道を歩むことに抵抗している。
彼の目的は地位でも名誉でもなく、ただジェニーを愛すること。
彼に反抗心と純粋さがあるために、金持ちであることが嫌味にならずに済んでいる、と言うべきなのだろう、たぶん。結局、愚直な愛にハマれない私は、ひねくれた心の持ち主なのである。
これは誰が何と言おうとも、純愛の傑作なのである。たぶん。
なお、1978年にはジェニーが死んだ後のオリヴァーに焦点を当てた『続・ある愛の詩』という作品も作られている。2匹目のドジョウを狙うのは分からないではないが、この作品でそれをやっちゃイカンだろ。たぶんじゃなくて、絶対だ。