『エディ&マーティンの逃走人生』:1999、アメリカ
ミシシッピー州刑務所では、昨夜の火事で亡くなった2人の囚人レイ・ギブソンとクロード・バンクスの葬儀が執り行われた。埋葬を命じられた若い囚人ジェイクとレオンは、療養所に入っている老いた囚人ウィリー・ロングから「レイとクロードが来たのは1932年だ」と聞かされる。ウィリーは、その頃からレイ&クロードとは囚人仲間として長く付き合ってきたのだ。
1932年、ハーレム。ギャングのスパンキーが営むクラブに、レイがやって来た。その店では、銀行への就職が決まったクロードが恋人デイジーを連れて来ていた。トイレに入ったクロードは、借金取りの2人組から50ドルの返済を迫られ、財布の有り金22ドルを奪われた。2人組が去った後、レイはクロードに近付いて財布を盗んだ。しかし、もちろん中身はカラッポだ。
スパンキーに恨みを買っているレイは、用心棒アイザックによって倉庫へ連行される。クラブの代金が払えなかったクロードも、倉庫に連れて来られた。レイの目の前で、クロードは逆さ吊りで水責めにされる。レイはスパンキーに「ミシシッピーから酒を仕入れてくる」と持ち掛け、クロードを運転手役に使うことで話を付けた。
トラックでミシシッピーへ向かう途中、レイとクロードはサーヴィス・ステーションに立ち寄った。白人専用だと気付いたレイは退散しようとするが、腹を空かせたクロードは執拗にパイを要求する。しかし店員ビリーの母からライフルを突き付けられ、結局は立ち去った。レイとクロードはスリムという男に会い、酒を仕入れた。もちろん、それは違法行為である。
2人は酒場へ繰り出し、クロードはシルヴィアという女に声を掛けられて2階へ行く。レイはウィンストンという男達とカードに興じるが、大勝負に負けて有り金だけでなく父の形見の時計まで失った。ウィンストンが酒場を去った後、レイはイカサマだったことに気付いた。そのウィンストンは店を出た後、白人保安官のパイクたちに取り囲まれ、因縁を付けられて殺害された。酒場を後にしたレイとクロードは、ウィンストンの死体を発見する。そこへ白人のビリー・ボブたちが現れ、レイとクロードを保安官事務所へ連行した。
レイとクロードはバーン判事から終身刑を宣告され、黒人ばかりがいるミシシッピー州刑務所へ護送された。白人の看守ディラードは、黒人の助手ホッピン・ボブを従えて厳しく囚人を監視している。ミシシッピー州刑務所で「ガンライン」という境界線が設定されており、そこを越えれば看守から銃撃を受けることになる。
レイとクロードは、多くの囚人と親しくなった。年長で落ち着いているウィリー、クロードを口説こうとするホモセクシャルのジャングル・レッグ、自分の親を毒殺したバンダナ男ビスケット、手紙で家族の死を伝えられても無表情のポーカー・フェイス、腹違いの妹を斧で惨殺したメガネ男レディオ、食事担当でコーンブレッドを作るクッキーといった面々だ。
ウィリーたちによると、クッキーが近くのグリーンヴィルという町まで辿り着いたことはあるが、この刑務所から脱獄して逃げ切った奴は1人もいないらしい。食事の最中、ゴールドマウスという巨漢の囚人が、クロードにコーンブレッドを渡すよう要求してきた。レイは反発するが、殴り合いになった末にノックアウトされた。
面会日になり、クロードは久しぶりにデイジーと会った。クロードはデイジーを通じて、従弟の弁護士メルヴィンに上訴を頼むことにした。デイジーから「友達のレイの分も上訴するのか」と確認されたクロードは、「あんな奴は友達じゃない。俺の分だけでいい」と告げた。一方、レイは森を抜けて脱獄する計画を立て、クロードに持ち掛ける。しかし、クロードは「俺達は仲間じゃない」と拒絶した。
やがてクロードの元に、メルヴィンからの手紙が届いた。しかし、そこには上訴が却下されたことだけでなく、デイジーがメルヴィンと婚約したことも書かれていた。クロードはレイに対し、一緒に脱獄しようと持ち掛ける。怒りを示したレイだが、その夜に2人は刑務所から脱走する。しかし、すぐにディラードたちに捕まり、1週間の穴蔵行きという罰が与えられた。
1944年、刑務所にはキャント・ゲット・ライトという口の利けない囚人が護送されてきた。ディラードから野球チームのキャプテンを任されたクロードは、軽い気持ちでキャント・ゲット・ライトを起用する。ところが、彼は天性の才能を持ったホームランバッターだった。そのキャント・ゲット・ライトは、アバナシー所長の娘メイ・ローズに欲情を覚えた。
黒人リーグのピッツバーグ・クロフォーズのスカウト担当者スタン・ブロッカーが、キャント・ゲット・ライトの噂を聞き付けて刑務所を訪れた。スカウトすることになれば、恩赦で釈放させることが可能らしい。レイとクロードは、キャント・ゲット・ライトをスカウトしてもらい、その育ての親として自分たちも釈放してもらおうとスタンに売り込みを掛ける。
キャント・ゲット・ライトのクロフォーズ加入が決定し、彼には恩赦が出された。しかし、レイとクロードに恩赦は出なかった。レイはクロードに、納屋の裏にある農薬散布用の飛行機を使った脱獄計画を話す。しかしクロードは拒絶し、2人は言葉も交わさない険悪な関係になった。レイは1人で脱獄を試みるが、飛行機が墜落して失敗に終わった。
1972年、レイとクロードはウィルキンス所長の邸宅に配置換えとなった。レイは庭師として、クロードはウィルキンスの世話係兼話し相手として、それぞれ働き始めた。ある時、ウィルキンスが次期所長を迎えにグリーンヴィルへ行くことになり、クロードは運転手を務めた。そこに新所長として現れたのは、かつて自分たちを捕まえたパイク保安官だった。やがてレイは、パイクが形見の時計を持っていることを知り、彼がウィンストンを殺害したことに気付く…。監督はテッド・デミ、脚本はロバート・ラムゼイ&マシュー・ストーン、製作はブライアン・グレイザー&エディー・マーフィー、共同製作はジェームズ・ウィテカー、製作総指揮はカレン・ケーラ&ジェームズ・D・ブルベイカー、撮影はジェフリー・シンプソン、編集はジェフリー・ウルフ、美術はダン・ビショップ、衣装はルーシー・コリガン、特殊メイクアップ効果はリック・ベイカー、音楽はワイクレフ・ジーン、音楽監修はアマンダ・シーア=デミ。
出演はエディー・マーフィー、マーティン・ローレンス、オッバ・ババトゥンデ、ネッド・ビーティー、バーニー・マック、ミゲル・A・ヌネスJr.、クラレンス・ウィリアムズ三世、ボキーム・ウッドバイン、バリー・シャバカ・ヘンリー、ブレント・ジェニングス、ガイ・トーリー、リサ・ニコール・カーソン、オニール・コンプトン、ポッピー・モンゴメリー、ネッド・ヴォーン、ニック・カサヴェテス、アンソニー・アンダーソン、ノア・エメリッヒ、スパンキー・ジョンソン、ヘヴィーD、R・リー・アーメイ他。
『ビューティフル・ガールズ』のテッド・デミが監督を務めた作品。
『Life エディ・マーフィの逃走人生』というタイトルでTV放送されることもある。
レイをエディー・マーフィー、クロードをマーティン・ローレンス、ウィリーをオッバ・ババトゥンデ、ウィルキンスをネッド・ビーティー、ジャングル・レッグをバーニー・マック、ビスケットをミゲル・A・ヌネスJr.、ウィンストンをクラレンス・ウィリアムズ三世、キャント・ゲット・ライトをボキーム・ウッドバインが演じている。
他に、ポーカーフェイスをバリー・シャバカ・ヘンリー、ホッピン・ボブをブレント・ジェニングス、レディオをガイ・トーリー、アバナシー所長をオニール・コンプトン、若い頃のパイクをネッド・ヴォーン、ディラードをニック・カサヴェテス、クッキーをアンソニー・アンダーソン、スタンをノア・エメリッヒ、スパンキーをリック・ジェームズ、ジェイクをヒップホップ・ミュージシャンのヘヴィーD、年を取ったパイクをR・リー・アーメイ、バーン判事を製作総指揮のジェームズ・D・ブルベイカーが演じている。序盤、白人専用のサーヴィス・ステーションに立ち寄るシーンは、物語を進めるという観点から見ると全く必要が無い。
では笑いを取るために設けられているシーンなのかというと、そのシーンを締める所にあるべき笑いが無い。
白人のパイクがウィンストンを殺すとか、レイとクロードを犯人に仕立て上げるという筋書きもあるし、差別の問題を持ち込みたかったのかな。
ただ、これって2人が黒人でなければいけない意味、黒人である必要性は、そんなに感じない話なんだけど。レイとクロードが刑務所に入るまでに、無駄に時間が掛かりすぎだと思う。もっとテンポ良く進めて、半分ぐらいの時間で処理できるし、そうすべきだ。
ようは理不尽な理由でムショに入れられるという部分だけが必要なわけで、それ以外にスパンキーのために働くとか金を盗まれるとか手間を掛けすぎだ。
なんなら、2人の詳しいキャラ紹介も刑務所に入ってからでいいぐらいだ。
例えば、レイが財布を盗んでクロードが追い掛け、そこで死体を発見するという入り方でもいいだろう。いや、いっそのこと、いきなり刑務所に護送される所から話を始めたっていいぐらいだ。
ウィリーの回想として物語が始まっているのに、そのウィリーがいる刑務所に舞台が移るまでに30分ぐらい掛かってる。なんか間が抜けた感じになっている。クラブで借金取りに囲まれてビビりまくっていたクロードだが、サーヴィス・ステーションでは白人専用と言われても食い下がり、カッカ来ている。
ちょっと性格設定が良く分からない。
曲がったことが大嫌いということなんだろうか。
でも、デイジーから結婚のことを言われて及び腰になってるから、ガチガチの堅物ってわけでもなさそうだ。レイから酒場へ行こうと誘われた時、クロードは早く帰ろうと言っている。
だったら、サーヴィス・ステーションに立ち寄る時も「道草を食わずに早く用事を済ませよう」と言った方がいいんじゃないのか。
寄り道はイヤだけど空腹には耐えかねたってことなのか。
で、レイから「お堅い奴だ」と言われた直後に、シルヴィアと簡単に肉体関係を持つ。なんかクロードのキャラがボンヤリしているもんだから、彼とレイのコンビネーションまで定まらない。クロードが真面目で堅物ということなら、それを生かしたコントラストも作れるだろうが、中途半端なのね。
一方のレイも、ビビビのネズミ男みたいに上手く立ち回ろうとするタイプかと思ったら、変なとこで意地を張って、いかにも強そうなゴールドマウスに反抗したりするし。レイの方がお調子者っぽいんだが、クロードの「自分だけ上訴を頼んでレイの脱獄計画には冷たい態度を示したくせに、上訴が却下されると当たり前のように計画に加わろうとする」という行動の方が調子がいい奴になってる。
例えば、その場その場で笑いを取りに行くためにキャラが変わるのなら、それは間違いだけど狙いとしては分かる。
ただ、笑いにも繋がってないのね。どうも笑いに対する貪欲な姿勢ってのが無くて、例えばキャント・ゲット・ライトだけが恩赦で出所するシーンでは、レイとクロードが普通にショックを受けて嘆いている。
2人の口ゲンカも笑いに繋がるものではなく、普通に言い争ってるだけ。
新所長パイクが犯人と気付くシーンの処理も、もちろん笑いは無い。普通にレイとクロードがパイクを撃とうとして揉めているところでパイクが拳銃を構えて、それを見たウィルキンスが射殺するというシリアスな処理になっている。ようするに、なんでもかんでも笑いにしようということじゃなくて、ペーソスで見せましょうってことなんだな。時代の変遷を示すために挿入される映像も、笑いではなくペーソスのためのモノだ。
で、この映画の最もダメな所は、ペーソスに傾きすぎたことだ。
ただでさえ、エディー・マーフィーが既に唄を忘れたカナリヤ状態になっているのに、その上にペーソス過剰になっちゃってんだから、そりゃあダメさ。
エディー・マーフィーとマーティン・ローレンスのコンビで、なんでそういうことをするかな。
暴走するぐらいでもいいのに。