『SFレーザーブラスト』:1978、アメリカ

右腕に強力な武器であるレーザーブラストを装備したヒューマノイドが、砂漠に現れた。傷を負ったヒューマノイドがよろめきながら逃げようとしていると、そこに宇宙船が飛来した。ヒューマノイドが身を隠していると、宇宙船から2人のトカゲ型異星人が降り立った。ヒューマノイドは不意打ちを掛けるが、反撃を食らってレーザーブラストを落としてしまう。異星人は光線銃を発射し、ヒューマノイドを消滅させた。黒焦げの跡にはペンダントが残された。異星人たちは宇宙船で飛び立った。
青年のビリー・ダンカンは、恋人であるキャシーの家を訪ねた。しかし玄関から出て来たキャシーの祖父ファーレイは彼を怒鳴り付け、「帰れ」と追い払った。パトカーでスピード違反の張り込みをしていた保安官補のアンガーは、ビリーの車を見つけて相棒のジープに追い掛けさせる。ピートはビリーの車を停止させ、違反切符を切った。ビリーがガソリンスタンドに立ち寄っていると、チャックとフロッギーが現れて馬鹿にする。挑発されたビリーは腹を立て、レースの誘いに応じた。
車で砂漠を訪れたビリーは、レーザーブラストを発見した。その威力を知ったビリーは、腕に装着して撃つ真似をする。ペンダントを見つけた彼は、それがレーザーブラストの操作に必要だと理解して首に掛けた。ビリーは周囲の物を撃ちまくり、大いに興奮した。トニー・クレイグという無愛想な男が車で町に現れ、ガソリンスタンド店員にモーテルの場所を尋ねた。キャシーはビリーの家を訪れてキスを交わし、彼の胸にある傷を気にする。ビリーはキャシーに誘われ、フラニーの誕生パーティーへ一緒に向かう。
異星人たちは上官からの通信で、ビリーがレーザーブラストを使って遊んでいることを知らされる。すぐに彼らは宇宙船を反転させ、地球へと針路を変えた。トニーは砂漠へ赴き、レーザーブラストが使われた形跡やヒューマノイドが死んだ痕跡を調べる。フラニーの誕生パーティーに参加したビリーは、プールサイドで寝そべる。フラニーは用意したケーキを誰も食べてくれないので落ち込んでしまい、キャシーは彼女を慰めた。
キャシーが着替えに行ったことをフラニーから聞いたビリーは、彼女を捜しに屋内へ入る。チャックとフロッギーがキャシーをレイプしようとしている現場を目撃したビリーは、彼らに飛び掛かる。キャシーが止めたので、ビリーは彼女を連れて去ろうとする。しかし背後からチャックたちに襲われ、キャシーが彼らをテニスのラケットで殴って追い払った。その日の夜遅く、ビリーはレーザーブラストを装備して外出し、チャックたちの車を破壊した。
次の日、アンガーとジープは保安官から、フラニーの家で起きた爆発について供述を取るよう命じられた。トニーが警察署を訪れて身分証を提示すると、生意気だった保安官の態度が一変した。「24時間以内に変わったことは無かったか」と問われた保安官は、「特には。爆発がありましたけど、ただの悪ふざけですよ」と言う。するとトニーは「その場にいた者を調べて、町を封鎖するんだ」と指示した。理由を尋ねる保安官に、トニーは「情報を外に漏らさないためだ」と告げた。
キャシーがビリーの家を訪れると、彼は爽やかな表情で現れた。胸の傷が昨日より大きくなっていたので、キャシーはメロン医師に診察してもらうよう勧めた。車の爆発についてキャシーが話すと、ビリーは驚いた様子で「誰がそんなことを?」と口にした。ビリーはメロンの診察を受けるが、傷に触れられても痛み無い。傷と言うより、それは硬いメダルのような状態になっていた。メロンは「良く分からないが、切除したい」と述べた。ビリーが了解したので、メロンは局部麻酔を掛け、メダルのような皮膚組織を切除した。
メロンは友人のマイクに電話を掛け、分析を依頼した。彼がマイクの元へ車を走らせていると、レーザーブラストを装備したビリーが道路に立っていたビリーはレーザーブラストを発射し、車を爆発炎上させた。翌朝、事件現場を調べたトニーは保安官に「メロン医師と会った者のリストを手配してくれ」と告げた。ビリーは警察署へ連行され、トニーと保安官の取り調べを受ける。保安官はビリーの傷を確認し、マイクに調査協力を要請する。皮膚組織を調べたマイクは、「地球上の物ではないし、生きている」と告げた…。

監督はマイケル・レイ、脚本はフラン・シャクト&フランク・レイ・ペリリ、製作はチャールズ・バンド、撮影はテリー・ボーウェン、編集はジョディー・コープラン、メイクアップ・デザインはスティーヴ・ニール、美術監督はパット・マクファッデン、ワードローブはジル・シェリダン&バーバラ・スコット、特殊効果はハリー・ウォルマン、アニメーション効果はデイヴ・アレン、音楽はジョエル・ゴールドスミス&リチャード・バンド。
出演はキム・ミルフォード、シェリル・スミス、ロディー・マクドウォール、ジャンニ・ルッソ、キーナン・ウィン、デニス・バークレイ、バリー・カトラー、ロン・マサク、マイク・ボーベンコ、エディー・ディーゼン、リック・ウォルターズ、サミー・ボウ、ジョアンナ・リパリ、ウェンディー・ワーンリ、マイケル・ブライアー、メリンダ・ワンダーリッチ、フラン・シャット、エリック・ジェンキンス、ジャネット・デイ他。


後にエンパイア・ピクチャーズを創設するB級映画界の悪名高き帝王、チャールズ・バンドが製作したSFホラー映画。テレビ東京で放映された時のタイトルは『SFエイリアン・スペース/燃える大都市の怪』。DVD化された際のタイトルは『レーザーブラスト』。
これが初監督となるマイケル・レイは、本作品以外には1969年の『Sinner's Blood』で第二班監督&製作&スタント・コーディネーターを務めたキャリアしか見当たらない。
ビリーをキム・ミルフォード、キャシーをシェリル・スミス、メロンをロディー・マクドウォール、トニーをジャンニ・ルッソ、ファーレイをキーナン・ウィン、アンガーをデニス・バークレイ、ジープをバリー・カトラー 、保安官をロン・マサク、チャックをマイク・ボーベンコ、フロッギーをエディー・ディーゼンが演じている。
ちなみに、音楽を共同で担当しているジョエル・ゴールドスミスはジェリー・ゴールドスミスの息子で、リチャード・バンドはチャールズ・バンドの弟だ。

話の方は最初から最後までデタラメであり、テンポも悪くてグダグダだ。
ビリーは母親がアカプルコへ頻繁に出掛けていることに不機嫌な様子を示すが、それが何を意味するシーンなのかは全く分からない。
ビリーのマザコンぶりを示しているのか、母親が奔放すぎる性格であることを示しているのか、そういうことはボンヤリしている。
そもそも、その描写が後の展開に繋がることは全く無いので、そういう意味でも何のために用意されているシーンなのかはサッパリ分からない。

ビリーはキャシーの家を訪ね、彼女の祖父に怒鳴られて追い払われる。
単純に「彼女の祖父から嫌われている」ということなのかと思っていたら、キャシーの祖父が「チェリー岬の黒人どもと同じだ。内緒にして。砂塵計画もだ。みんなでワシを除け者にしている」などとワケの分からないことを言い出す。
ってことは単純に嫌われているんじゃないのか、それにしても砂塵計画って何なのかと思っていたら、そこへキャシーが出て来て、どうやら祖父がボケているらしいってことが分かる。
で、キャシーの祖父がボケていることが何か後に繋がるのかというと、そんなことは全く無いので、そこでビリーが怒鳴られるシーンを用意した意味も良く分からなくなってしまう。

とどのつまり、ビリーがレーザーブラストを手に入れるまでのシーンは、「ビリーが冴えない青年であり、周囲の人間からバカにされている」ということを示すための時間だ。
だったら、もっとシンプルにそういうことを描写すればいいのに、なぜか母親がアカプルコへ出掛けるとか、ボケた老人に怒鳴られるとか、無意味に捻っている(というかズレている)描写を散りばめてしまう。
しかも、ファーレイやピートとのやり取りを見る限りは「反発心はあるけど気が弱くて抵抗しないヘタレ」なのかと思ったら、レースの挑発には腹を立てて簡単に乗っている。
その辺り、キャラクター造形が定まっていないと感じる。

ピートがビリーの車に目を付けて違反切符を切るという描写は、「アンガーは弱気で母親が金持ちのビリーをカモにしていて、点数稼ぎに利用している」ということを描写したいんだろう。
だけど、そもそもビリーがスピード違反を犯していることは事実だし、アンガーがビリーだけを特別扱いしているってことも伝わらない。
それと、そこでは「ビリーの切符を切った直後にアンガーが他の車とぶつかりそうになって事故を起こしてしまう」という描写もあったりして、何を描きたいシーンなのかがボンヤリしている。

ビリーはガソリンスタンドで挑発に乗ってレースに応じるのだが、そこからレースのシーンに入るのかと思ったら、一人で砂漠へ行ってしまう。
どういうことなのかサッパリ分からない。
で、そこでレーザーブラストを入手し、その威力や使い方も知るのだが、それは展開が早すぎると感じる。まだビリーのヘタレっぷり、いかに周囲の人間からバカにされているかというアピールが足りない。
その後でキャシーがビリーを訪ねる様子が描かれるが、それはレーザーブラスト入手のシーンと順番が逆だと感じるし。

ビリーはキャシーをレイプしようとしたチャックとフロッギーに飛び掛かり、テニスのラケットを手に取って威嚇する。キャシーが制止したので立ち去ろうとすると、背後から襲われる。
その辺り、ビリーのキャラ造形が中途半端だと感じる。
そこは「恋人をレイプしようとした連中に飛び掛かるが、全く歯が立たずにボコられる」とか、徹底して情けない奴として描いておくべきじゃないのか。
キャシーが制止しなけりゃ普通に勝てたんだから、「じゃあレーザーブラストなんて無くても復讐できるじゃねえか」ってことになるでしょ。

っていうか、そこも順番を逆にした方がいいんじゃないかと思うんだよなあ。
つまり、レーザーブラストを発見して威力や使い方を知る手順が早すぎるんじゃないかと。
それを考えると、最初のシーンから手を加えて、例えば「ヒューマノイドが異星人と戦って逃亡する」→「ビリーがヘタレ男であることを描写する」→「ヒューマノイドが退治され、残ったレーザーブラストをビリーが発見する」→「ビリーがチャックたちにやられて怒りや憎しみを募らせる」→「レーザーブラストの使い方を知り、復讐に乗り出す」という流れにでもした方が良かったんじゃないかと。

ビリーとレーザーブラストの関係性がボンヤリしていて、最初は「ビリーが仕返しのためにレーザーブラストを利用する」ということかと思っていたら、どうやら初めて使った時点で既に自意識が無い状態だったみたいなんだよな。
少なくともメロンを始末する行動に関しては、明らかにビリーの意識下で遂行されたものではない。ビリーがメロンを殺す理由は無いんだから。
ってことは、レーザーブラストがビリーの意識を乗っ取ったと解釈すべきなのかもしれないが、そこが不鮮明なんだよな。
「最初はビリーが道具としてレーザーブラストを利用していたが、次第に魂を乗っ取られる」ということにするのがいいんじゃないかと思うが、そうじゃなさそうだし。

あと、ビリーは自分が破壊行動を繰り返していることに対する自覚症状が、最後までゼロなんだよな。
「最初は無自覚だったが、次第に違和感を覚えて云々」という展開は無い。
事件が起きた時の記憶が無いとか、自分の周囲に奇妙な痕跡が残っているとか、そういうことから「自分の知らない自分が何かやらかしているのでは」と疑念を抱いたり、苦悩したりするという展開は全く用意されていない。
それも、この映画が薄っぺらい要因の一つになっている。

途中でトニーという謎の男が現れ、どうやら政府関係者らしいってことは何となく推測できるが、こいつがビリーやレーザーブラストについて調査しているという設定は、ほとんど意味が無い。
そこを削ったところで、物語の展開や映画の仕上がりには大した影響が無い。そんなことより、もっと他に厚みを持たせるべき箇所があるんじゃないかと思う。
それは普通に考えれば「周囲の人間がビリーを馬鹿にしたり痛め付けたりする様子」であったり「ビリーの変貌していく様子」であったり「ビリーを心配するキャシー」であったりするのかもしれないが、「そんなのどうでもいいから、もっとトカゲ型異星人を見せろよ」と言いたくなる人がいても、決して間違いではない。
っていうか、個人的には、そっちの意見に賛同する。

この映画と1974年のソフトコアSFパロディー映画『フレッシュ・ゴードン/SPACE WARS』は、一言で表現すれば同じ感想になる。
それは、「ストップモーション・アニメーションの部分だけは良く出来ているが、それ以外はクソみたいな映画」というものだ。
そして2つの作品には、後に『空の大怪獣Q』や『ニューヨーク東8番街の奇跡』に携わるデイヴ・アレン(デヴィッド・アレン)が参加しているという共通点がある。

何が言いたいかというと、ようするに、この映画は「デイヴ・アレンの仕事を堪能する」という目的が無ければ、どこにも観賞価値を見い出せない作品ってことだ。
デイヴ・アレンの仕事ってのは、トカゲ型宇宙人のことだ。そいつらが出て来るのはトータルで5分にも満たないし、いかにもレトロなクオリティーではあるが、特撮マニアなら楽しめるだろう。
貴方が特撮マニアでなければ、もはや観賞価値はゼロと言っても過言ではない。
なお、テレビ東京が放映した際、何をトチ狂ったのか、本作品の唯一の売りであるトカゲ型宇宙人の登場シーンを全カットするという暴挙に出たことは、マニアの間で有名な話である。

(観賞日:2014年4月15日)


1978年スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の主演男優】部門[キム・ミルフォード]

 

*ポンコツ映画愛護協会