『イントゥ・ザ・ブルー』:2005、アメリカ

バハマの海上を飛行していた輸送機は、嵐に見舞われて墜落した。ニュー・プロヴィデンス島では、トレジャー・ハンターを夢見ている ジャレッド・コールがダイビングのインストラクターをクビになった。「嵐の後は難破船が出る」と考えた彼は、宝探しをするためボロ船 のポンプを修理しようとする。そこへ、サメのハンドラーとして働く恋人のサムがやって来た。サムは「貴方と一緒なら幸せよ」と言うが、 ジャレッドはトレジャー・ハントで一攫千金を狙っていた。
サルベージ屋のベイツが、シーロビン号に乗って現れた。ジャレッドはベイツから「またウチで働けよ」と誘われるが、その場で断った。 ジャレッドはサムと共に空港へ行き、ニューヨークで弁護士をしている友人ブライスを迎えた。ブライスは、昨日の夜にナンパしたばかり のアマンダを連れていた。ブライスは弁護料として、島の豪邸とヨットを手に入れていた。
ジャレッド達はヨットに乗り、ダイビングに出掛けた。時計を海底に落としたジャレッドは、それを拾に行く。古いバラストを発見した彼 は、昔の沈没船が近くに沈んでいると確信した。4人で近くを捜索すると、金の剣など数点の物品が見つかった。さらに捜索を続けた彼ら は、沈んでいる飛行機を発見する。中を調べると死体があり、大量のコカインが積まれていた。包みの一つを船に持ち帰ったブライスと アマンダは、それを自分たちの物にしようと考える。だが、サムは反対し、ジャレッドが海に捨てた。
島に戻ったジャレッドは、ブライスたちと今後のことを話し合う。飛行機のことを警察に通報すれば、その地域は捜査対象になり、二度と 近づけなくなる。そうなれば、沈没船の捜索も不可能になる。沈没船を引き上げる権利を取得するためには、船の名前など確実な証拠が 求められる。サムは「死体があった。すぐに通報すべき」と言うが、ブライスとアマンダは宝探しを優先するよう主張する。
ジャレッドは「二度と無いチャンスだ」と、宝探しを優先したい意向をサムに告げた。サムは「権利を取得したら、すぐに通報する。それ までは飛行機に近付かない」という条件を付けて、ジャレッドたちに同調した。宝探しに必要な機材の購入に際しては、ブライスが金を出す ことを約束した。しかし、いざ機材の買い付けに行くと、ブライスは多額の借金を抱えていることを打ち明けた。
ジャレッドたちは海に潜り、沈没船を捜索した。だが、アマンダは密かに飛行機に近付き、船に戻れなくなる。ジャレッドが助けに行くと、 アマンダは「何も何も取っていない」と釈明した。ジャレッドは、沈没船がフランスの貿易商の所有していたゼフィア号だと確信した。 ゼフィア号を奪った海賊は、貿易商の娘と結婚した。海賊は彼女との愛を選び、船を沈めたのだ。
翌日、アマンダが船に残り、ジャレッド達は宝探しの作業を続けた。すると水上警察のロイたちが現れ、船を捜索した。柱を引き上げようと していたジャレッドたちは、それに気付いて水中で待機した。柱を落としてブライスが下敷きになるが、何とかジャレッドとサムが救出した。 ジャレッド達は柱を残したまま、船に戻った。ジャレッドもサムも、ロイとは親しい仲間だった。ロイは2人を見て「この船は大丈夫だ」 と告げ、水上警察は立ち去った。
夜、ジャレッドたちはナイトクラブへ出掛けた。ブライスはジャレッドと2人きりになり、「アマンダには分け前を渡さない」と口にした。 ブライスが去った後、ジャレッドはロイから「余所者がお前の事を聞き回っている」と教えられた。アマンダはオーナーのプリモと親しげ に話し、コカインを貰おうとしていた。それを見つけたブライスが突っ掛かると、プリモは「この女はヤクの代金を体で支払うそうだ」と、 ニヤニヤしながら言った。ブライスは殴り掛かってプリモの手下に取り押さえられ、ジャレッドが制止に入った。
翌日、ジャレッドとブライスは、自分たちを監視している余所者の船を見つけた。ジャレッドたちは海に潜り、その船に乗り込んだ。そこに いた2人を退散させたジャレッドは、彼らがベイツの一味だと察知した。ジャレッドはベイツの元へ行き、彼を問い詰める。だが、ベイツ はシラを切った。ジャレッドは「手を出すな」と怒るが、ベイツは軽く受け流した。
ブライスはジャレッドに、「宝探しの費用はコカインを売れば工面できる」と持ち掛けた。ジャレッドは迷いながらも賛同しなかったが、 ブライスは夜中にアマンダと2人で海に潜り、コカインの包みを1つ盗み出した。翌朝、彼らはプリモの元へ行き、それを売り捌こうと する。ジャレッドはブライスから電話で呼び出され、ある船に赴いた。そこにはプリモと手下がおり、ブライスとアマンダが捕まっていた。 ブライスたちが持ち込んだコカインは、プリモの取引相手であるレイエスの所有物だった。
レイエスはジャレッドに銃を突き付け、12時間以内に沈んでいるコカイン全てを回収するよう要求した。ジャレッドは回収に必要な機材の 購入費として、3万ドルを捻出するよう求めた。ジャレッドはコカイン回収目的で機材を購入し、沈没船を発見するつもりだ。話を聞いた サムは、悪党の言いなりになってコカインを回収することに激怒し、その作業に加わらないことを通告した。
ジャレッド、ブライス、アマンダの3人は海に潜り、沈没船を発見した。彼らはコカインを回収しようとするが、アマンダがイタチザメに 襲われた。アマンダは病院に担ぎ込まれ、サムも病院に駆け付けたが、命は助からなかった。病院を出たジャレッドたちは、プリモ一味の 襲撃を受けた。逃走したジャレッドはブライスにサムのことを任せ、一味の前に姿を見せた。
まだコカインの回収に意欲を見せるブライスに、サムは憤りを覚えた。彼女は車を降り、ロイに事情を説明した。ジャレッドは一味に 連行され、レイエスの船へ向かった。だが、船に入るとベイツ一味が侵入しており、レイエスとプリモが殺されていた。ジャレッドは海に 飛び込み、何とか脱出した。ブライスの元へ戻ったところで、ベイツから電話が掛かってきた。彼はサムを人質に取り、ジャレッドを 呼び出した。ロイもベイツとグルだったのだ。ベイツはロイを射殺してサムを拘束し、ジャレッドを待ち受けた…。

監督はジョン・ストックウェル、脚本はマット・ジョンソン、製作はデヴィッド・A・ゼロン、共同製作はブランドン・バーテル&リック ・ダラゴーDallago、製作協力はエリン・マスト、製作総指揮はルイス・G・フリードマン&ピーター・グーバー&マット・ルーバー& オリ・マーマー、撮影はシェーン・ハールバット、水中撮影はピート・ズッカリーニ、編集はニコラス・デ・トス&デニス・ヴァークラー 、美術はマイア・ジェイヴァン、衣装はリーサ・エヴァンス 音楽はポール・ハスリンジャー。
出演はポール・ウォーカー、ジェシカ・アルバ、スコット・カーン、アシュレイ・スコット、ジョシュ・ブローリン、ジェームズ・ フレイン、タイソン・ベックフォード、ドウェイン・アドウェイ、ジェイヴォン・フレイザー、クリス・タロア、ピーター・R.V. ボウレッグJr.、クリフォード・マッキントッシュ、アダム・コリンズ、ギル・モンティー、ダン・バラード、サマンサ・ラム、 アーサー・トンブソンJr.、ラモン・サンダース他。


メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)がソニーを中心とするコンソーシアムに買収されてから、初めて製作・配給した映画。
監督は『ブルークラッシュ』のジョン・ストックウェル。
ジャレッドをポール・ウォーカー、サムをジェシカ・アルバ、ブライスをスコット・カーン、アマンダをアシュレイ・スコット、ベイツを ジョシュ・ブローリン、レイエスをジェームズ・フレイン、プリモをタイソン・ベックフォード、ロイをドウェイン・アドウェイが演じて いる。

ベイツは後半に入ると平気で人殺しをやる極悪人なのだが、登場した時点では、ジャレッドは笑って軽口を交わしている。 なので、ベイツがそんなにイヤな野郎という印象を与えない。
彼と別れた後で「奴の金儲けに扱き使われてたまるか」と吐き捨てているが、だったら最初から面と向かって嫌悪感を剥き出しにして おけばいいのに。
愛想良く接するメリットが何も無い。

最初にジャレッドがベイツと会話を交わしてから、監視している船の連中を蹴散らしてベイツの元へ乗り込むシーンまで、ベイツはずっと 消えている。
正直、その存在をすっかり忘れていたぐらいだ。
後半に入ってレイエスとプリモを悪役のポジションに置くが(っていうか、 それ以前にブライスとアマンダが小悪党なんだが)、ではベイツはどういう役回りなのかと思っていたら、終盤に入って彼がラスボスと して登場する。しかもロイもグル。でもベイツがロイをあっさり始末。
もう悪党の配置や処理がグチャグチャ。

ジャレッドはレイエスたちに脅されるが、そこに緊張感は全く無い。
ジャレッドは「回収機材の金をくれ」と持ち掛けており、それを利用して宝探しをする。
「友達を助けるため」とか「殺すと脅迫されたから」とかじゃなく、自分のために行動するのだ。
そもそもレイエスは分け前を渡すことを示唆しているし、コカインを見つけたブライスとアマンダは「たんまり儲かる」と喜んでいる。

ブライスもアマンダも、自分たちの軽率な行動でジャレッドを巻き込んでいるのだが、全く悪びれる様子は無い。
そんなクソカップルの内、アマンダはさっさとサメに食われて死ぬ(そこで人食いザメを登場するのは、あまりにも安易だが)。
で、ブライスもさっさと始末してしまえばいいものを、なぜか終盤になって「ジャレッドに協力する善玉」にしてしまう。
今さら名誉挽回させても遅いっての。
それまでのツケは、もう取り戻せないぞ。

海でのあれこれだけじゃ物足りないだろうという判断なのか、陸でのカーチェイスまで用意して観客の機嫌を窺い、むしろ散漫な印象を 与えている。
「そんなことよりジェシカ・アルバの水着を見せたほうがナンボかマシだぞ」と野次の一つも飛ばしたくなる。
ゼフィア号の宝を渡すとジャレッドが持ち掛けてもベイツは存在そのものを信用しないし、ジャレッドはサムを助けようとするのかと 思いきや彼女を残したまま海に飛び込んでしまうし、サムは自力で脱出するし、終盤に入っても見事にデタラメ。

沈没船がフランスの貿易商の持ち物だったとか、その娘が海賊と結婚したとか、そんなことは後の展開にほとんど関与していない。
一応、ジャレッドが「海賊が愛のために船を捨てた」という話を思い出して自分の行動を考える箇所はあるものの、それも大して効果的 だとは思わない。
宝が海賊の物だろうが、17世紀の物だろうが、そんなことは、どうだっていい。
なぜなら、これはトレジャー・ハントをメインにした海洋アドベンチャー映画ではないからだ。

では、サスペンス・アクションがメインになるのかというと、それも違う。
確かに中盤以降にレイエスたちが関わってくると、その匂いが無いわけじゃない。
ただ、それもメインじゃない。
ジョン・ストックウェル監督が見せたいのは、海の青さと美しさ、それに尽きる。
しかし「海の美しさを見せる」というだけでは、メジャー映画として成立しない。それだと単なる環境ビデオになってしまう。
なので、宝探しとか、サスペンスとか、他の要素も一応は演出しているが、そこは適当に処理している。

だが、観客サイドからすると、海の美しさだけで満足するのは難しいものがある。
なので、その他の見所を挙げるとすれば、女性客ならポール・ウォーカーの水着姿、男性客ならジェシカ・アルバの水着姿ということに なるだろう。
っていうか一般的な客からすると、海の美しさより、そっちの方がセールスポイントとしての順位は上だろう。

そういう点から考えると、本作品のダメなところは、話が適当だとか、中身が薄いとか、そういうことじゃない。
どうせ製作総指揮にピーター・グーバーの名前を見つけた時点で、中身の面白さなんか期待しちゃいない。
この映画の何よりもダメな点は、ジェシカ・アルバの水着姿をマトモに拝める時間が思ったほど多くなかったことにある。
特に終盤に入ると、水着姿が全く出てこなくなるんだよな。

(観賞日:2009年6月3日)

 

*ポンコツ映画愛護協会