『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』:1994、アメリカ

サンフランシスコ。FM番組のスタッフをしているダニエルは、路地で出会った男ルイに、彼の部屋で話を聞く。まずダニエルが職業を尋ねると、ルイは自分がヴァンパイヤだと告げる。もちろん最初はルイの言葉を信じようとはしなかったダニエルだが、彼が目に見えないほどのスピードで瞬時に移動したことに驚き、話を聞くことにする。
ルイは自分が闇の世界に誕生した時のことから話を始める。それは1791年、アメリカ南部。24歳のルイは、ニューオーリンズ近郊に農園を持っていた。妻を難産で亡くした彼は自暴自棄となり、全てを失って妻の後を追いたいと考えていた。
そんな時、ルイはレスタトという名のヴァンパイアと出会う。ルイはレスタトから、永遠に続く世界を与えようかと告げられる。生まれ変わることを選んだルイは、レスタトの行った血の交換の儀式によってヴァンパイアとなった。
レスタトと違って、ルイは血を吸うために人を殺すことに拒否反応を示した。だが、ついに耐え切れなくなったルイは、メイドのイヴェットに噛み付いてしまう。彼女を死なせたルイは屋敷に火を付け、レスタトと共にニューオーリンズに向かった。
ニューオーリンズでも人間を殺すことにためらいを見せていたルイだが、母親を亡くした少女クローディアに噛み付いてしまう。レスタトは彼女に儀式を行い、ヴァンパイアの仲間にした。ルイとレスタトはクローディアに惜しみない愛情を注ぎ、彼女はヴァンパイヤとして何のためらいも無く人々に噛み付いて血を吸った。
だが、クローディアは30年が過ぎても大人にならない自分に、やがて苛立ちを感じるようになる。ルイから自分がヴァンパイヤになった経緯を聞かされたクローディアは、アヘンを飲ませて死亡した少年の血を吸わせ、レスタトを殺害する。ルイはレスタトの死体を捨て、クローディアと共にヨーロッパへ向かおうとする。
ルイ達が出掛けようとした時、まだ生きていたレスタトが襲い掛かってきた。ルイはレスタトに火を付け、クローディアを連れて逃げるようにヨーロッパへと向かった。旅を続けた2人は、やがてヴァンパイヤ劇場を主宰するアルマンと出会う…。

監督はニール・ジョーダン、原作&脚本はアン・ライス、製作はデヴィッド・ゲフィン&スティーヴン・ウーリー、共同製作はレドモンド・モリス、撮影はフィリップ・ルスロ、編集はミック・オーズリー&ヨーク・ヴァン・ウィーク、美術はダンテ・フェレッティ、衣装はサンディ・パウエル、ヴァンパイヤ・メイクアップ&効果はスタン・ウィンストン、音楽はエリオット・ゴールデンサール。
出演はトム・クルーズ、ブラッド・ピット、アントニオ・バンデラス、スティーヴン・レイ、クリスチャン・スレイター、キルスティン・ダンスト、ドミツィアーナ・ジョルダーノ、サンディ・ニュートン、インドラ・オーヴ、ローラ・マルサック、ヴァージニア・マッコラム、ジョン・マッコネル、マイク・シーリグ、ベリーナ・ローガン、ヘレン・マックローリー、ライラ・ヘイ・オーウェン他。


アン・ライスの『夜明けのヴァンパイア』を原作者自らの脚本で映画化した作品。
レスタトをトム・クルーズ、ルイをブラッド・ピット、アルマンをアントニオ・バンデラス、アルマンの仲間サンティアゴをスティーヴン・レイ、ダニエルをクリスチャン・スレイター、クローディアをキルスティン・ダンスト、イヴェットをサンディ・ニュートンが演じている。

ダニエルはインタヴューを終えた時、「それで終わりなのか」と告げ、物足りないといった態度を見せる。彼の態度はとても正直で、共感できる。
実際、「それで終わりか」と思える程度の内容しか、ルイは語っていないのだ。
長い時間を割いているが、語られる内容は薄い。
容量の多い原作を、削ぎ落とし作業が不充分だったにも関わらず強引に詰め込もうとしたせいなのか、エピソードは多いが1つ1つの内容は淡白になっている。

しかし、この作品にとって重要なのは、ストーリーやエピソードではない。
ゴシックの雰囲気、耽美の雰囲気、トム・クルーズ(ブラッド・ピットではなくトム・クルーズの名前が先に来ていることがポイント)、豪華な衣装やセット、そういうものを見せられればいいのであって、物語の充実度、面白さなんてものは、どうだっていいのだ。

セットは豪華だ。
衣装もきらびやかだ。
それを生かすためなのか、ヴァンパイヤ劇場の芝居のシーンなどは、特に意味があるとも思えないのだが、かなり長めに時間を割いて見せている。
たぶんストーリーよりも、豪華な作りを見せたかったのだろう。

耽美の世界が存分に映し出されている。
その中心にいるのが、エキセントリック吸血鬼レスタトを演じたトム・クルーズだ。
多くの女性達が、「トム様ぁ〜」とウットリすることだろう。
トム・クルーズが綺麗であることが、この作品にとって最も重要なのだ。
彼の美しさ、存在感を際立たせるためなのか、他の男には全く精彩が無い。
スティーヴン・レイはマヌケっぽいだけだし、バンデラスは含蓄ある男のように出てきた割には、拍子抜けするような形でフェードアウトする。

本来は主役のはずのブラピでさえ、冴えない役回りを演じさせられている。
表情に乏しく、ウンザリするほど面白味に欠けるキャラクターで、レスタトどころか、クローディアにさえ存在感で圧倒的に負けているという始末。
しかし、例え精彩を欠いているとはいえ、やはり多くの女性達にとって、ブラピは「麗しのブラピ様」なのである。「トム様」と「ブラピ様」が耽美の世界で共演しているのだから、やおい大好きの女性達にとっては、ヨダレがジュルジュルの作品だろう。

映画が終わった後、内容がすっかり飛んでしまい、「なんかゴシックの世界でトム・クルーズとブラッド・ピットがモーホーっぽい雰囲気になってたなあ」というボンヤリした感想しか浮かばなくても、ある意味、それは正しいのかもしれない。


第15回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞 :最低スクリーンカップル賞[トム・クルーズ&ブラッド・ピット]

 

*ポンコツ映画愛護協会