『愛の果てに』:1993、イギリス&ドイツ

1955年、第二次世界大戦後のドイツ。連合軍の統治下にあるベルリンに、イギリス人技師レナード・マーカムがやって来た。彼はアメリカ人の諜報部員ボブ・グラスが指揮するチームに参加し、米英共同による対ソ連スパイ活動“黄金作戦”に加わることになった。
ボブ達は諜報基地からソ連占領地に向かって地下トンネルを掘っていた。そこにソ連軍のモスクワとの交信を傍聴するための電話線を取り付けるのがレナードの役目だ。さらに彼は、イギリス軍の主任科学者ジョン・マクナミーから、アメリカのエコー解読技術を探るよう秘密指令を受ける。
秘密活動を続ける中で、レナードはナイトクラブで知り合ったドイツ人女性マリアと恋に落ちる。ボブはマリアをスパイではないかと疑い、尋問する。スパイ疑惑は晴れたが、レナードはマリアにオットーという夫がいることを知らされる。
マリアは離婚届を提出したとレナードに告げる。レナードとマリアは和解し、そして婚約する。しかしオットーがマリアのアパートに上がり込み、軍の情報を教えなければ離婚届にサインをしないと脅す。激しい乱闘の末、マリアはオットーを殺してしまう…。

監督はジョン・シュレシンジャー、原作&脚本はイアン・マキューアン、製作はノーマ・ヘイマン&クリス・ジーファーニッヒ&ヴィーランド・シュルツ=カイル、製作総指揮はアン・ダビネット、撮影はディートリッヒ・ローマン、編集はリチャード・マーデン、美術はルチアーナ・アッリーギ、衣装はイングリッド・ゾーレ、音楽はジェラール・グーリエ。
出演はアンソニー・ホプキンス、イザベラ・ロッセリーニ、キャンベル・スコット、ロナルド・ニチュケ、ハート・ボックナー、ジェームズ・グラント、ジェレミー・シンデン、リチャード・ダーデン、コーリー・ジョンソン、リチャード・グッド、メレット・ベッカー他。


イアン・マキューアンの小説『イノセント』を彼自身の脚本で映画化した作品。
オープニングのクレジットではアンソニー・ホプキンスが最初に出てくるが、実際の主役はキャンベル・スコットである。ちなみに、ジョージ・C・スコットの息子である。
レナードをキャンベル・スコット、マリアをイザベラ・ロッセリーニ、ボブをアンソニー・ホプキンス、オットーをロナルド・ニチュケが演じている。
『カサブランカ』を意識したような作品だ。
イザベラ・ロッセリーニは、イングリッド・バーグマンの娘だし。

イギリス人のアンソニー・ホプキンスに、アメリカ人の諜報部員を演じさせている。
気品のカケラも無いアメリカ人を演じているのだが、どう考えてもミスキャストだろう。
で、キャンベル・スコットがイギリス人の役。
それって逆じゃないのか。

この物語の主軸はどこにあるんだろうか。
この展開だと、軍の活動や黄金作戦を描いた意味が、全く無いように思えるのだが。
色々と伏線らしきモノは用意している。
だが、それらの要素とは全く無関係な場所で事件が発生する。

実は隠された真相があって、殺人事件が諜報活動と絡んでくるという展開が待っているのかとも思ったが、最後まで無関係のままだった。
オットーの死体をバラバラに切断し、スーツケースに入れて運ぼうとするレナード。
死体を巡るサスペンスになってしまい、前振りの意味が消える。

特異な状況下での恋愛劇を描くという部分も、殺人&バラバラ死体のサスペンスに完全に負けている。ボブがマリアに惚れていたというのもほとんど描かれていないので、終盤の展開に不自然さを感じる。いきなりマリアがボブを信用するのも疑問だし。

野心的と思える演出が数多く見られるが、それらは全て上滑り。
どうにも冴えない作品を、ロッセリーニの魅力だけで乗り切るのは無理だったようだ。

 

*ポンコツ映画愛護協会