『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』:2008、アメリカ

1957年、ネバダ州のアメリカ軍施設エリア51にアメリカ陸軍部隊がやって来た。兵器実験で立ち入り禁止区域になっていたため、検問の 担当者はそのことを伝えた。すると兵士たちはいきなり発砲し、施設に押し入った。実は、それはKGBの女諜報部員スパルコ大佐が 率いるソ連軍の連中だった。保管倉庫にやって来た一味は、車のトランクに詰め込んでいた考古学者インディアナ・ジョーンズと相棒の マックを外に出した。彼らはメキシコで発掘作業中に捕まっていた。
スパルコはジョーンズに、ある箱を探していることを告げた。中身はミイラ化した遺体だ。それは10年前にニューメキシコ州ロズウェルで 起きた事件で、アメリカ軍が入手した箱だ。ジョーンズは、そのミイラを調査したメンパーの一人だった。箱の捜索に手を貸すよう要求 されたジョーンズは、火薬を撒いた。遺体は強力な磁気を帯びており、火薬の中の金属が吸い寄せられるからだ。
ミイラの箱を発見したジョーンズは、隙を見て施設から逃走した。スパルコたちが追い掛けてくるが、ジョーンズは何とか振り切った。 ある町に辿り着いたジョーンズだが、そこは無人で幾つものマネキンが立っていた。直後、核実験のアナウンスが響いた。ジョーンズは 慌てて冷蔵庫に非難した。米軍基地で体を洗い流してもらったジョーンズは、ロス将軍から「スパルコはスターリンの下で超能力の研究を している。世界中で軍事利用できそうな超常的発掘物を集めている」と聞かされる。
FBIの連中は、ジョーンズがマックの相棒だったことから、コミュニストとしてスパルコに手助けしたのではないかと疑った。彼らは ジョーンズの勤務するマーシャル大学にまで押し掛け、ファイルを漁った。理事会は大学の学部長スタンフォース教授に対し、ジョーンズ を解雇するよう圧力を掛けた。スタンフォースは自分が辞職することで、ジョーンズの処分を無期限停職に軽減させた。
ジョーンズがニューヨークへ行くため電車に乗り込むとマットという青年がバイクが追い掛けてきた。彼はジョーンズに「オクスリーが 殺される」と告げた。オクスリー教授はジョーンズの旧友だ。ジョーンズはダイナーに移動し、彼と話すことにした。マットは父が戦死し 、母と共にオクスリーの世話になっていたのだという。半年前、ペルーにいたオクスリーから「ミッチェル・ヘッジスのクリスタル・ スカルを見つけた。今度こそ本物だ。これを持ってアケトーへ行く」という手紙が届いたのだと、マットは語った。
アケトーとは、アマゾンにあったと言われている失われた都のことだ。ジョーンズは存在を信じていないが、スカルはそこから盗まれた ものであり、神殿に戻した者がパワーを手にするという伝説がある。マットは「母が心配してオクスリーを捜しに行ったが捕まった。 オクスリーが隠したスカルの場所を教えないと2人とも殺される。母がアンタを呼べと言った」とジョーンズに語った。
マットは母親の名前がマリオンだと言うが、ジョーンズは「マリオンは大勢いたし」とピンと来ない様子を見せた。マットは「アンタなら スカルを探し出せると母が言っていた。2週間前、母は何とか逃げ出して、オクスリーの手紙を送ってきた」と告げる。KGBの連中が銃 を突き付けて脅して来たので、ジョーンズは乱闘騒ぎを起こして逃げ出し、マットのバイクに乗って逃げ出した。ジョーンズは、連中が オクスリーの手紙を解読させるため、わざとマットの母を逃がしたのだと悟った。
ジョーンズは手紙を解読し、クリスタル・スカルがナスカにあることを知った。彼はマットを連れてペルーへ飛び、まずはオクスリーが 収容されていたという病院へと足を向けた。オクスリーは錯乱した状態で、壁と床に絵を描いていたらしい。その絵を見たジョーンズは、 それがスペインのコンキスタドール、フランシスコ・デ・オレリャーナの墓を示していることに気付いた。
遺跡に辿り着いたジョーンズとマットは、襲ってきた原住民を追い払って中に入った。奥へ進むと、オレリャーナを含む数名のミイラが 安置されていた。オレリャーナのミイラの背後に、クリスタル・スカルが隠されていた。それを発見したはずのオクスリーが、なぜ元の 場所に戻したのかと、ジョーンズは疑問を抱いた。外へ出るとソ連軍が待ち受けており、ジョーンズたちは捕まった。
ジョーンズとマットは、ソ連軍のキャンプに連行された。スパルコはオクスリーを連れて来るが、彼は完全に錯乱状態だった。スパルコは 、アゲトーへ案内させるための通訳をジョーンズに要求した。スパルコは、スカルが宇宙人によって作られた物であり、アゲトーは超常的 な能力を持つ者の都だと信じていた。彼女はアゲトーで多くのスカルを手に入れ、強い超能力を得ようと企んでいた。
スパルコはジョーンズに、人質にしているマットの母マリオンの姿を見せた。その顔を見たジョーンズは、結婚直前で別れた元恋人の マリオンだと知った。ジョーンズはオクスリーが描いた絵文字を解読し、アゲトーへ向かうことになった。マリオンはジョーンズに、 マットが彼の息子だと伝えた。マットは、それまで父だと思っていたイギリス人が義父だと知ってショックを受けた。
ジャングルを進む中、ジョーンズたちはソ連軍の車を奪った。彼はスパルコたちと、オクスリーとクリスタル・スカルの奪い合いを展開 する。オクスリーとクリスタル・スカルを奪還したジョーンズたちは、軍隊アリの襲撃を逃れてアマゾン川へとジャンプした。3つの滝を 越えた一行は、アケトーへと向かう。しかし同行するマックが密かに落とした道標によって、スパルコたちも後を追って来た…。

監督はスティーヴン・スピルバーグ、原案はジョージ・ルーカス&ジェフ・ネイサンソン、脚本はデヴィッド・コープ、製作はフランク・ マーシャル、共同製作はデニス・L・スチュワート、製作協力はクリスティー・マコスコ・クリーガー、製作総指揮はジョージ・ルーカス &キャスリーン・ケネディー、撮影はヤヌス・カミンスキー、編集はマイケル・カーン、美術はガイ・ヘンドリックス・ディアス、衣装は メアリー・ゾフレス、視覚効果監修はパブロ・ヘルマン、音楽はジョン・ウィリアムズ。
出演はハリソン・フォード、ケイト・ブランシェット、カレン・アレン、シャイア・ラブーフ、レイ・ウィンストン、ジョン・ハート、 ジム・ブロードベント、イゴール・ジジキン、 ディミトリ・ディアチェンコ、イリア・ヴォロク、エマニュエル・トドロフ、パシャ・D・リチニコフ、アンドリュー・ディヴォフ、 ヴェニアミン・マンジュク、アラン・デイル、ジョエル・ストッファー他。


ハリソン・フォード、スティーヴン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカスのトリオが19年ぶりに結集して作られたシリーズ第4作。
前作からの続投はジョーンズ役のハリソン・フォードのみだが、1作目のヒロインだったマリオン役のカレン・アレンが再登場して いる。
スパルコをケイト・ブランシェット、マットをシャイア・ラブーフ、マックをレイ・ウィンストン、オクスリーをジョン・ハート、 スタンフォースをジム・ブロードベントが演じている。

冒頭のシークエンスでマックがジョーンズを裏切るが、そもそも「なんでマックみたいな奴と組んでいたのか」という風に思ってしまう 。いきなりの裏切りだから、「これまでは仲間だったのに」というところにピンと来ないし。
あと、ジョーンズが「一緒に共産主義者をスパイしていたのに」と言うが、彼が戦時中にOSSの諜報員として働いていたという設定にも 萎えるし。
大体、裏切るのであれば、なぜジョーンズが逃げ出そうとするまでは仲間のフリをしていたのか。倉庫に到着した時点や、メキシコで 捕まった時点で、なぜ仲間のフリを続けていたのか。そこで仲間の芝居を続けている必要性は全く無いはずでしょ。
で、そんな裏切り者のマックを、なぜか後半、またジョーンズは、なし崩し的に仲間に引き入れている。
なんでだよ。
サッパリ分からない。

核実験の時にジョーンズは冷蔵庫の中へと隠れているが、そんなモンじゃ普通は防ぎ切れない。しかも実験直後に爆心地で冷蔵庫から出て いるので、放射能の影響を受けまくりだ。米軍基地で体を洗い流しているが、その程度では無理だろう。
ただし、ジョーンズは年寄りになっても元気に暴れているので、ひょっとすると普通の人間ではないのかもしれないけどね。
そんな風に解釈するにしても(いや解釈しないけど)、もう一つの問題がある。
それは、その核実験が、後の展開に全く繋がらないってことだ。
ようするに、派手な爆破シーンが欲しいというだけの理由で、核実験をやらかしているのだ。
ホント、ハリウッドって核爆弾の扱いが軽いよなあ。
『トータル・フィアーズ』でも、核爆弾が爆発したのに、誰も被爆せずに平気な顔をしていたもんな。

ジョーンズが赤狩りの標的にされるという風に、筋書きに政治問題・社会情勢が強く関連してくるが、これは失敗だろう。
これまでのシリーズではナチが敵だったが、それは「たまたま宝を奪い合う敵がナチだった」という程度の意味合いであり、それほど 社会情勢は内容に影響を与えていなかった。
どうして今回に限って、そこを強めたんだろう。
プラスになる要素は無いように感じるんだが。

マットがジョーンズに「母がアンタを呼べと言った。アンタならスカルを探し出せると言っていた」と説明した時点で、大きな疑問が沸く 。
それは、「なぜ敵はオクスリーからスカルの場所を聞き出そうとしないのか」ということだ。
後になって「オスクリーは錯乱状態なので聞き出すことが出来ない」と判明するが、その時点で、そのことをジョーンズは知らないのだ。
だったら彼は、「どうしてオスクリーから聞き出さないのか」と疑問を抱くべきではないのか。

っていうか、オクスリーから聞き出せないにしても、敵の動きには納得いかない。彼らはジョーンズに手紙を送らせるため、マリオンを わざと逃がしている。
だけど、マリオンが手紙を持っていたのなら、それは身体検査で発見することが出来るはずだ。
そして、それを解読したいのであれば、ジョーンズを拉致し、手紙を見せて解読させればいいのだ。
ジョーンズの元に手紙が届いてから彼を脅しているが、そんな手順を踏む必要性は全く無いはずだ。

キャンプに連行されたジョーンズに、スパルコは何かの装置を付けてクリスタル・スカルを見つめさせているが、何をやっているのか良く 分からない。
その後でマリオンを人質にしていることを見せ、オクスリーからアゲトーの場所を聞き出すようジョーンズを脅しているが、 最初からそうすれば良かったんじゃないのか。
そのスカルを使った変な実験みたいなシーン、何の意味があるのかと。

今回は完全にトンデモ系の映画になっている。超能力とか宇宙人とか、考古学から大きく逸脱している。
そりゃあ古代文明を調査してすれば、神秘のパワーが絡んでくることは珍しくない。
だけど、超能力や宇宙人ってのはキツいなあ。
あと、ジョーンズが知恵を使ってピンチを脱出することが無くて、「困ったら敵を殴ればいい」って感じになっている。
もう少し頭も使おうよ。年を取って力が衰えているはずなのに、なんで昔よりも力押しの人間になってんだよ。

スクリプターがボンクラだったのか、みんな気を抜いて撮影していたのか、理由は不明だが、この映画はミスが非常に多い。
ミイラの箱は強い磁気を帯びており、ソ連軍のバールもサーベルもペンダントも吸い付けられるが、銃だけは全く吸い寄せられない。
ソ連軍の銃は全て木製なのか。
ダイナーのシーンでは、マットがーブルを叩いた衝撃でケチャップとマスタードのボトルが倒れたのに、カットが切り替わる と2つとも立っている。
またカットが切り替わると、ジョーンズは倒れているボトルを元に戻している。

マーシャル大学のブロディー学部長のブロンズ像に激突したKGBの車はフロントガラスを損傷するが、あっという間に元に戻って いる。
クリスタル・スカルを見つけたジョーンズは、ドクロの顔が自分の右手を向くように持っているのに、あるカットでは急に反対向きになる 。
ジョーンズとKGBはクリスタル・スカルを奪い合うが、あの大きさのドクロがクリスタルで出来ていたら、重すぎて片手で持ち運ぶ ことは無理だろう。
スパルコは体を登ってくるアリを膝で潰したはずなのに、ズボンは汚れが無くてキレイなままだ。

地理上のミスや生物学上のミスもある。
ジョーンズがナスカの地上絵へ向かう時に地図上ではクスコが示されているが、地上絵があるのはクスコよりも南方の盆地だ。
また、俯瞰の映像では3つの地上絵が接近しているが、実際にはもっと離れている。
ジョーンズが砂地獄に落ちた時にマットは捕まるロープ代わりに大蛇を差し出すが、実際にあんなことをやったら蛇の体が千切れるだろう。

ミステイクス・ドットコムによる調べでは、この作品は2008年に公開された映画の中で最も間違いが多かったらしい。
前述のポイント以外にも、歴史的な間違いがあったり(マットが乗るハーレーは1999年に初めて販売されたエンジンを積んでいる)、 見えてはいけない物が見えたり(ジョーンズがドクロを見つめる場面で、それを支えているチェーンが写る)、合計64ヶ所のミスが確認 されている。
第2位の『マンマ・ミーア!』が44ヶ所、第3位の『ダークナイト』が43ヶ所だから、タントツの1位である。

(観賞日:2010年10月26日)

 

*ポンコツ映画愛護協会