『アイス・エイジ2』:2006、アメリカ

2万年前の地球では、様々な種類の動物たちが谷で遊んでいた。勝手にキャンプ場を作ったナマケモノのシドは、子供たちからバカに された。マンモスのマニーは「家族が仲良く暮らしました」で終わる御伽噺を聞かせるが、子供たちに「マニーの家族はどこにいるの?」 と問われると黙り込んでしまった。サーベルタイガーのディエゴが話し掛けると、マニーは沈んだ態度を示した。
アルマジロのものしりトニーは動物たちに、「大洪水が起きて世界が滅びる」と言い出した。マニーは「相手にするな」と呆れるが、崖の 上から周囲を眺めると、実際に氷が溶け始めていた。マニーは動物たちに、谷から避難するよう促した。そこへヒメコンドルが現れ、橋 まで行って船に乗れば助かることを教えた。氷の崖の一片が崩れる中、動物たちは橋のある谷へ向かって移動を開始した。
マニーは自分が最後のマンモスだということを痛感して落ち込み、シドやディエゴと離れて独りになった。一方、シドとディエゴは オポッサムの兄弟クラッシュとエディーの悪戯を受け、コケにされた。マニーはエリーというメスのマンモスに出会い、喜びに包まれた。 だが、エリーはクラッシュ&エディーの姉として暮らしており、自分がオポッサムだと信じ込んでいた。
マニーたちとエリー、クラッシュ、エディーは、一緒に船を目指すことになった。凍った湖を渡っている途中、氷が割れ始めた。水トカゲ が出現し、マニーたちに襲い掛かった。マニーは体を張ってエリーたちを守り、水トカゲを追い払った。しかしエリーは礼を言うどころか 、「マンモスって好き好んで危険に身をさらすから絶滅するのかもよ。逃げるが勝ちなのに」とバカにする態度を取った。
エリーに腹を立てたマニーだが、同じマンモスであることから、やはり気になってしまう。そんな中、ある場所に到着した時、エリーは 「ここに来たことがある」と言い出した。エリーは幼い頃にオポッサムと遭遇したことを思い出し、自分がマンモスだと気付いた。これに より、マニーとエリーの距離は縮まった。しかしマニーは下手な口説き方をしてしまい、エリーを怒らせてしまう。しかし一行が奈落に 落ちそうになった時、マニーとエリーは協力して仲間たちを助け、それがきっかけで仲直りした。
その夜、マニーたちが寝静まった頃、シドはミニナマケモノの群れによって連れ出された。群れから「火の王様」として崇められ、シドは 有頂天になった。だが、群れはシドを縛り上げ、溶岩の穴に近付けた。群れは「地の底から熱い溶岩が上昇して氷を溶かしており、それを 解決するには火の王様を生贄にするしか無い」と考えていたのだ。穴に落とされたシドだが、ラッキーな形で脱出した。
翌朝、氷が溶けて小川を作る中、マニーたちは再び橋を目指して歩き出した。やがて一行は、間欠泉が噴き出す場所にやって来た。マニー は「時間が無い。突っ切るぞ」と言うが、エリーは弟たちを連れて回り道を選んだ。マニーたちは間欠泉を突破し、他の動物たちと合流 した。エリーは岩の落下で生じた穴に閉じ込められてしまい、弟たちを脱出させた。クラッシュとエディーからエリーの危機を知らされ、 マニーたちは救出に向かう。だが、すぐ近くまで大洪水が迫りつつあった…。

監督はカルロス・サルダーニャ、原案はピーター・ゴールク&ジェリー・スワロー、脚本はピーター・ゴールク&ジェリー・スワロー& ジム・ヘクト、製作はロリー・フォート、製作総指揮はクリストファー・メレダンドリ&クリス・ウェッジ、編集はハリー・ヒットナー、 アート・ディレクターはトーマス・カードン、キャラクター・デザインはピーター・デセーヴ、音楽はジョン・パウエル。
声の出演はレイ・ロマーノ、ジョン・レグイザモ、デニス・リアリー、ショーン・ウィリアム・スコット、ジョシュ・ペック、クイーン・ ラティファ、ウィル・アーネット、ジェイ・レノ、クリス・ウェッジ、ピーター・アッカーマン、ケイトリン・ローズ・アンダーソン、 コナー・アンダーソン、ジョセフ・ボローニャ、ジャック・クロチッチア、ピーター・デセヴ、ニコール・デフェリス他。


20世紀フォックスがブルー・スカイ・スタジオと手を組んで2002年に製作した長編アニメーション映画『アイス・エイジ』の続編。
マニー(声優はレイ・ロマーノ)、シド(ジョン・レグイザモ)、ディエゴ(デニス・リアリー)という前作で結成されたトリオが再登場 。
今回からの初登場組は、クラッシュ(ショーン・ウィリアム・スコット)、エディー(ジョシュ・ペック)、エリー(クイーン・ ラティファ)、トニー(ジェイ・レノ)など。
日本語吹き替え版の声優は、マニーが山寺宏一、シドがお笑いコンビ“爆笑問題”の太田光、ディエゴが 竹中直人、エリーが優香、クラッシュが久本雅美、エディーがお笑いコンビ“オセロ”の中島知子、トニーが高田純次。

クラッシュとエディーは兄弟という設定なのだが、登場した時には、久本雅美と中島知子が吹き替え版の声優を担当しているので、姉妹 だと勘違いしてしまった。
いや、そりゃあ女性の声優が少年の声を担当するケースは良くあるから、「声優が女だからダメ」というわけではない。
ただ、特に久本雅美の声は、マチャミ以外の何者にも聞こえないので、それはヒジョーにキビしい。
ちなみに日本語版では2匹を「フクロネズミ」と訳しているが、これはオポッサムの別名。最近は、あまり聞かれない呼び方だ。

前作にしても、私はそれほど出来映えの良い映画だとは思わなかったが、今回は、さらにグッと質が落ちている。
前作では、当初は人間の赤ん坊を殺そうとする立場だったディエゴが、次第に思いやりや優しさに芽生えていくというドラマがあった。
しかし今回のディエゴは最初から凶暴さが皆無で、正直、まるで存在意義が無い。
シドも前作に比べると、かなりおとなしくなっている。

一方で、今回はマニーの比重が高まっている。
と言うよりも、完全にマニーだけがピンで主役を張る話だと言ってもいい。
孤独を抱えているのも、新しいキャラクターと深く関わるのも、ピンチで活躍するのも、全てマニーだ。
マニーさえいれば、シドもディエゴも別に要らないんじゃないかとさえ感じる。
シドとディエゴは、単なるマニーの同行者に過ぎなくなっている。

「マニーがエリーと出会い、ケンカもあったが最終的に仲良くなる」というのが今回の物語のメインであり、その物語においてシドと ディエゴは、ほとんど必要性が無い。
2匹が関与しなくても、マニーとエリーは勝手に仲良くなっている。
マニーがエリーに惚れることでシドやディエゴとの関係がギクシャクすることも無いし、それ以外の形で関係性に変化が生じることも無い。

前作では、普通なら仲良くなるはずのないマンモス、ナマケモノ、サーベルタイガーが、旅を通じて絆で結ばれていくというドラマが あった。
しかし今回は最初から仲良しであり、さらに深い絆で結ばれるというドラマも無い。
「何かのきっかけで不仲になるが仲直り」というドラマも無い。
そもそも、たまに口ゲンカをしたりすることはあっても、それが大きな破綻に繋がらないことは見え見えだ。
それは安心感には繋がるが、それ以上に「空気が緩み切っている」というマイナスになっている。

設定によれば、マニーは「自分が最後のマンモスだという孤独」、シドは「他の動物たちから尊敬されたい気持ち」、ディエゴは「水に 対する恐怖心」と、それぞれ心に何かを抱えている設定らしい。
だけど、マニーはともかく、シドの「他の動物たちから尊敬されたい気持ち」なんて全く表現できていない。
それにマニーの孤独と比較すると、まるで大した問題ではない。
また、ディエゴが水を怖がるという設定も、前半で触れた後、終盤に少し使われている程度で、ほとんど意味の無いものと化している。

メイン3匹の関係性に面白味が無く、まるで厚みが無いので、後は新しいキャラクターに期待するしかない。
だが、クラッシュ&エディーは、ただ騒がしいだけ。
しかも、こいつらがギャーギャーと騒ぐことによって、KYなお喋り野郎であるはずのシドの存在価値が薄れてしまう。
また、自分をオポッサムだと思い込んでいるエリーにも、まるでキャラとしての魅力を感じない。
「オポッサムだと思っていたがマンモスだと気付く」という彼女のストーリーも、ものすごく淡白に処理されている。

今回は、全編に渡ってマニーたちを狙っている明確な敵が存在しない。
一応、水トカゲというキャラクターが出てくるが、セリフが無いことも手伝って強い意志が感じられず、印象は薄い。「様々なピンチの中 の一つ」という程度の扱いになっている。
また、氷が溶けて世界が滅亡する危機だという印象も弱く、そのため、マニーたちの旅が目的意識の薄いダラダラとしたものに見えて しまう。緊張感は全く無い。
サスペンスじゃないから「常にスリリングであれ」とは言わないが、あまりにもダルダルすぎないか。

あと、スクラットがやたらと存在感をアピールしているが、それが「脇役として光っている」ということならともかく、まるで主役で あるかのように、何度も彼の行動がフィーチャーされる。
そんなにスクラットに愛着があるのなら、そいつを主役にして映画を作ればいいでしょうに。
もはやコメディー・リリーフというレベルを遥かに超えて、邪魔な出しゃばり野郎になっている。

(観賞日:2010年8月27日)

 

*ポンコツ映画愛護協会