『アイ・アム・ナンバー4』:2011、アメリカ

森の奥で小屋に暮らしていた少年と守護者の男は、宇宙人のモガドリアンたちに襲われた。モガドリアンは少年を殺害し、ペンダントを奪った。モガドリアンが手に入れたペンダントは、これで3つになった。同じペンダントを持っている高校生のダニエルは、同級生のニコルと海で泳ぐ。しかし突如として脚に痛みが走り、閃光と共に焼印が押された。ナンバー3の死を悟ったダニエルは家に舞い戻り、守護者であるヘンリーにそのことを告げた。2人は家を捨て、街を出ることにした。
ロリエンという星がモガドリアンに滅ぼされた時、9人の子供が地球へ逃がされた。その内の1人が、ナンバー4であるダニエルだ。父親の記憶は無く、形見の箱はヘンリーが預かっている。時が来たら、ダニエルに渡されることになっている。彼が9歳の時にナンバー1が、12歳の時にナンバー2がモガドリアンに殺され、その度に住む場所を変えて来た。1人が殺される度に、ダニエルの脚には焼印が付く。ただし今回は今までと違っており、ナンバー3の姿がダニエルには見えた。
オハイオ州パラダイスに移り住んだヘンリーは、ダニエルにジョン・スミスという新しい身分証を用意した。新居の敷地に入って来た犬を見つけたジョンは、バーニー・コウザーと名付けて飼うことにした。ヘンリーはネットにアップされているジョンの写真を全て消去し、目立たないように暮らすよう釘を刺した。しかしジョンは、高校へ通うことを勝手に決めていた。転入手続きをしていたジョンは、サラという生徒が教師の居眠り写真を無断でウェブサイトに掲載し、叱られている様子を目撃した。サラは大して反省する様子も見せず、軽く受け流していた。サラはシムズ校長から、ジョンをロッカーに案内するよう指示された。ジョンはサラに強い興味を抱いた。
ロッカーを開けようとしたジョンは、取り巻きを引き連れたマークという男に声を掛けられた。マークはいじめっ子で、その標的となっているのは科学オタクのサムだった。マークたちはサムにボールを投げ付け、「よけろ、UFOだぞ」と笑った。ジョンがボールを投げると、キャッチしたマークの仲間が吹き飛ばされた。マークたちだけでなく、投げたジョンも驚いた。「UFOって?」とジョンに訊かれたサムは、「今に分かるさ。みんなが僕を避ける」と告げた。
モガドリアンはジョンが捨てた前の家を調べ、まだ彼が生きていることを見抜いた。ジョンは授業中に両手が光を放ったため、慌てて教室を抜け出した。熱を帯びる両手にジョンが焦っていると、そこへ駆け付けたヘンリーが「それはお前のレガシーだ。9人の子供たちだけが持つ。お前の両親は、かつてロリエンの勇者だった。そのパワーは遺伝だ。息を吸って集中し、パワーを操るんだ」と告げた。ジョンが気持ちを落ち着かせると、光は消えた。
ヘンリーはジョンに、「精神集中でパワーを操れるようになるまでは休学だ。厄介なことは避けたい。パワーは目立つから、抑制しろ」と述べた。ジョンは窓から家を抜け出し、森へ出掛けて自分の手に入れた特殊能力を試した。夜の街へ出たジョンは、店から出て来るサラを待ち受けて声を掛けた。サムが大人の男に怒鳴られている様子を見たジョンは、サラに「彼の父親?」と尋ねる。サラは「あれは継父よ」と教えた。ジョンはサラの家に招かれ、彼女の家族と一緒に夕食を取った。
サラはジョンに、早く街を出たいという気持ちを明かす。ジョンは「好きな場所で好きなことをすればいい。大切な人がいれば、場所は関係ない」と告げた。バーニーが来たので、ジョンは帰宅することにした。サラの家を出て行くジョンの姿を、マークが密かに観察していた。翌朝、登校したジョンは、サムから「マークが怒ってる。サラは彼のグループにいた」と聞かされた。ジョンとサムがロッカーを開けると、赤いインクが飛び散った。マークの仕業だった。ジョンは彼に掴み掛かるが、喧嘩を避けるために引き下がった。
サムはジョンに、本当の父親のがメキシコで古代宇宙飛行士の調査中に失踪したことを語る。事件があった時、サムは父親がUFOに拉致されたと訴えていた。サムはジョンに、父のマルコムが宇宙人を迎える準備をしていたことを話す。ヘンリーはネットでマルコムのことを知り、彼が経営していた製鋼所へ赴いた。製鋼所の地下室を調べると、そこにはペンダントと同じマークが刻まれていた。青く光る石を発見したヘンリーは家に持ち帰り、詳しく調べた。
ジョンはサラに誘われ、カーニバルに出掛けた。2人がアトラクションを楽しんでいると、マークと仲間たちが襲い掛かって来た。ジョンはパワーを使ってマークたちを倒し、拉致されたサラを奪還した。その様子を見ていたサムは、ジョンを呼び出して「君は何者だ?」と追求した。ジョンは「君の父親は正しい。他の惑星に生命体は存在する」と告げた。サムが「やっぱり父さんは宇宙人に拉致されたんだ」と口にすると、ジョンは「僕は異星人に追われている。危険だから秘密にしてくれ」と頼んだ。
翌日、マークの父である保安官のジェームズが、ジョンとヘンリーの家を訪ねて来た。マークと仲間たちが怪我を負っているのを見たが、何も話さないので聞き込みに来たのだ。その場にいたことを指摘されたジョンは、「サラとデート中で気付かなかった」と嘘をついた。ジェームズはジョンに疑いを抱くが、とりあえず立ち去った。ヘンリーはジョンがパワーを使ったことを悟り、荷造りをするよう命じた。「怪しまれたくない。これも問題だ」と言い、彼はUFOマニアのサイトにアップされている動画を見せる。それはジョンに3つ目の焼印が押された時の様子を撮影した映像だった。誰かが撮影し、そのサイトにアップしていたのだ。
サラと離れたくないジョンは、「行かない。僕は関係ない。僕の戦いじゃない」と街を出ることを拒絶した。ヘンリーが「大勢が犠牲になってお前を生かしたのは、甘い恋をさせるためじゃない」と説教しても、ジョンは「ここに残る」と告げる。ジョンはヘンリーをパワーで弾き飛ばし、家を出て行こうとする。ヘンリーはジョンに木片を投げてパワーを使わせ、タックルを浴びせて押さえ付けた。
ジョンが「奴らが僕を殺す理由は?」と尋ねると、ヘンリーは「奴らは植民地を作らず、破壊するだけだ。それを阻止できるのは、お前と残りの5人だけだ。女の子のために、貴重な命を捨てるな」と言う。ジョンが「彼女は特別だ。離れるなんて無理だ」と告げると、「彼女を愛するなら、戦う時期を待て。今は逃げよう。出発は一日延期する」とヘンリーは述べた。翌朝、ジョンが目を覚ますと、テーブルの上に形見の箱が置かれており、ヘンリーの姿が無かった。携帯電話が鳴ってジョンが出ると、「ヘンリーは預かった」という男の声がした。場所を指定されたジョンは、サムに車を出してもらってヘンリーの救出へ向かう…。

監督はD・J・カルーソー、原作はピタカス・ロア、脚本はアルフレッド・ガフ&マイルズ・ミラー&マーティー・ノクソン、製作はマイケル・ベイ、製作総指揮はデヴィッド・ヴァルデス&クリス・ベンダー&J・C・スピンク、共同製作総指揮はラングレイ・ペラー&マシュー・コーハン、製作協力はエミリー・バーガー、撮影はギレルモ・ナヴァロ、編集はジム・ペイジ&ヴィンス・フィリッポーネ、美術はトム・サウスウェル、衣装はマリー=シルヴィー・ドゥヴォー、音楽はトレヴァー・ラビン。
出演はアレックス・ペティファー、ティモシー・オリファント、テリーサ・パーマー、ダイアナ・アグロン、カラン・マッコーリフ、ケヴィン・デュランド、ジェイク・アベル、ギャレット・M・ブラウン、ブライアン・ハウ、ジェフ・ホッチェンドナー、パトリック・セベス、グレッグ・タウンリー、ルーベン・ラングドン、エミリー・ウィッカーシャム、モリー・マクギネス、アンドリュー・オーウェン、ソフィア・カルーソー、チャールズ・キャロル、L・デレク・レオニドフ、サブリナ・デ・マッテオ、クーパー・ソーントン、ジュディス・ホーグ、ジャック・ワルツ他。


作家のジェームズ・フレイとジョビー・ヒューズが「ピタカス・ロア」のペンネームで共同執筆したヤング・アダルト小説を基にした作品。
監督は『ディスタービア』『イーグル・アイ』のD・J・カルーソー。
ジョンを『アレックス・ライダー』のアレックス・ペティファー、ヘンリーをティモシー・オリファント、ナンバー6をテリーサ・パーマー、サラをダイアナ・アグロン、サムをカラン・マッコーリフ、モガドリアンの司令官をケヴィン・デュランド、マークをジェイク・アベル、シムズをギャレット・M・ブラウンが演じている。

一言で表現するならば、「TVシリーズのパイロット版」みたいな映画である。
しかも、これがパイロット版だとしたら、TVシリーズはキャンセルになる可能性が高い。そういう出来栄えである。
原作小説が6部作の構想でスタートしたため、その第1作を基にした本作品が、「長い物語の序盤」という形になってしまったという事情はあるんだろう。
しかし、この映画が最初から「全6作」と決定した上で製作されているならともかく、そうじゃないわけだから、この1本だけでも成立するように作るべきだよ。

この映画だけで考えると、話の盛り上がりに物足りなさを感じるし、中途半端な印象が否めない。
何しろ、「ナンバー9までいる」と明らかにされているのに、登場するのは4と6だけ。1から3までは既に死亡しているが、まだ残り4人が登場しないままだ。
ジョンとナンバー9だけに特別な力があるらしいが、どんな力なのかは分からないまま。モガドリアンは倒されないままだし、ジョンの父の形見である箱の中身は分からないまま。
「これからも戦いは続く」という形で終わってしまうのだ。
打ち切りになった漫画かよ。

諸々の問題を考慮すると、やはり原作から大幅に改変する必要があったのではないだろうか。
まず初めに、「子供が9人いる」というのを明らかにするのは避けるべきだ。それを明かした上で2人しか登場しないってのは、どう頑張っても物足りなさに繋がる。
だから「ジョンは自分がロリアン星人なのは知ってるけど、全部で9人ってのは知らない」という設定にでもすればいい。
あと、「序盤にナンバー3が殺され、既にナンバー1と2が殺されている」という設定も変えるべき。
そこは「冒頭でナンバー1が死亡し、そこで初めてジョンが焼印を体験し、ヘンリーからモガドリアンが自分たちを捜していることを知らされる」という形にすべきだ。

ナンバー6は前半、ジョンが捨てた家を燃やすシーンでチョロッとだけ登場するが、そんな程度では意味が薄い。彼女がジョンと絡むのは、もう残り時間も少なくなってからだ。「次回作から登場する主要キャストがゲストとして顔見世しました」という程度の扱いに留まっている。
しかし、この映画でマトモに登場するナンバーズがジョンの他に彼女しかいないことを考えると、もっと早い段階で2人を絡ませておきたいところだ。
それを考えると、前半からジョンと接触させて、その段階では素性を隠し、後になって「実はナンバーズ」ってのを明かす形にでもした方がいいんじゃないか。例えば物語の中盤辺りでナンバー2が殺されて、その時にナンバー6がジョンに素性を明かすとかね。
それと、数字もナンバー6じゃなくて、ナンバー3にしておくべき。そうじゃないと、ナンバー5が出て来ないことに不満が残るので。
ともかく、この映画で全員が登場しないのなら、9人いるってのは明かさない方がいい。

モガドリアンが9人の子供を殺すことに固執する理由も、ペンダントを集めている理由も最後まで分からない。
モガドリアンは数人しか登場しないが、それで全員なのか、地球担当が数人なのか、それとも地球にいるモガドリアンだけでも他に大勢いるのか、その辺りも全く分からない。
なぜモガドリアンが律儀にナンバー1から順番に殺していくのかも良く分からない。
ロリアンを滅ぼしたのなら、地球を滅亡させる力もあるはずだが、なぜそのための行動を取らず、長年に渡って9人の子供の捜索を続けているのかも分からない。

ジョンはヘンリーから時が来たら形見の箱を渡してもらうことになっているが、時が来る前にヘンリーが死んじゃうから、その設定は意味が無いものになっている。
それと、形見の箱の中身が何なのかは最後まで分からない。
マルコムは製鋼所の地下に焼印と同じマークを刻んでいるが、どこまでロリアンやモガドリアンについて知っていたのか、何をしようとしていたのかは良く分からない。
どうやって青い石を手に入れたのかも良く分からない。

パラダイスへ向かったジョンとヘンリーをトカゲが追い掛けており、それが犬に変身して飼われることになるのだが、そいつの正体や目的が何なのかは終盤まで分からない。
しかも終盤になって犬から怪物に変身し、ナンバー6が「ロリエンからジョンを追って来たキマイラの守護者」と説明するだけで終わりだ。
いやいや、そこだけ欲張り過ぎだろ。
なんでナンバーズとモガドリアンのバトルだけに絞らないのよ。怪物のバトルも盛り込まないと、インパクトが弱いという判断なのか。

そんなわけで、終盤に入るとジョン&ナンバー6とモガドリアンの戦いだけでなく、モガドリアンの怪物と変身したバーニーの戦いも描写される。
ただ、盛り上げる目的で用意したはずのバーニーとモガドリアンの怪物のバトルは、その結末に唖然とさせられる。
バーニーは窮地に陥るのだが、止めを刺そうとしたモガドリアンの怪物が足を滑らせてコケちゃうのだ。
すかさずバーニーが、噛み付いて退治する。つまり、モガドリアンの怪物は、見事なぐらいの自滅なのである。
その大逆転勝利は、まるで熱くなれないぞ。

ジョンはヘンリーから「目立つな」と言われたのに、勝手に高校へ通い始める。特殊能力を手に入れて「パワーは目立つから使うな」と言われた時には、森へ出掛けて能力を試す。マークたちをパワーでやっつけた時には、「やっちまった」と反省するのかと思いきや、その帰り道にパワーで街灯を破壊して浮かれている。サムに追及されると、あっさりと正体をバラす。
そんなバカな奴だから、モガドリアンに狙われても自業自得としか思えない。
彼が女に惚れるのも、学校に行きたがるのも、まだ若いんだから分からないでもない。
ただ、理解は出来るが、共感は誘わない。
その理由は、そこに苦悩も葛藤も痛みも悲しみも無いからだ。

たぶん「トワイライト」シリーズが当たったから、二匹目のドジョウを狙って本作品の企画が持ち上がったんじゃないかと思う。
主人公に全く共感できないとか、恋愛劇がチョーかったるいとか、そういうダメな部分が良く似ているし。
恋愛劇に関しても、「出会い→交流→ジョンが好意→サラも好意→妨害が入る→それにも負けずに互いの思いを確認し合う」ということを丁寧に時間を掛けて描いている余裕が無いもんだから、出会った直後にジョンが惚れて、次に出会うとサラが彼を自宅に招いている。
すげえ雑な処理になっている。

ジョンの持つ特殊能力は、かなり多岐に渡っている。
X−メンみたいに、1つの特殊能力がハッキリと決まっているわけではないんだよな。
掌の光で懐中電灯のように周囲を照らすことも出来るし、熱線で敵を攻撃することも出来るし、敵の攻撃を防ぐことも出来る。怪力もあるし、人間離れした跳躍力もあるし、驚異的なパルクールの能力もある。サイコキネシスの能力も、味方の体力を回復させる能力もある。
そうなると、その場に応じて都合良く色んな能力を発揮できちゃうんじゃないかと思ってしまうぞ。

なかなかモガドリアンの危機がジョンに迫って来るところに至らず、「恋した相手がいじめっ子の元カノなので意地悪される」というベタな学園ドラマを何の捻りも無くチープに薄っぺらく描いて時間を費やす。
ヘンリーが拉致されて、ようやくスリルが高まると思いきや、ここからの展開も呆れるぐらいに陳腐の連続。
まず、守護者であるヘンリーが簡単に拉致されているという時点で、いかがなものかと。
しかも、翌朝になって目覚めるまで、ジョンはヘンリーが拉致されたことに気付かない。

ヘンリーを拉致したのはモガドリアンなのかと思いきや、UFOサイトを管理しているイカれたオッサン。
しかも、そこが初登場。
そんで、ヘンリーの拉致をオッサンに命じたのがモガドリアンなのだが、ナンバー3の時は小屋に乗り込んで殺していたくせに、なぜ今回はヘンリーを拉致してジョンをおびき出す罠を仕掛けるのか、そんな手間を掛ける意味が不明。
ジョンの居場所が分かっているのなら、普通に家へ乗り込めばいいでしょうに。

っていうか、それって1つの惑星を滅ぼす力を持つ宇宙人の行動にしては、なんかセコいだろ。
その後には管理人を殺してジョンとサムに罪を被せ、テロリストとして警察に追われるように仕向けているんだけど、それもショボイなあ。もはや宇宙人である意味が無いぞ。
あと、終盤に一時的に青く光る石を手に入れ、まるでそれが目的だったかのような態度を示すんだけど、そりゃ変だろ。青い石はジョンが最初から持っていたわけじゃないんだから。
結局、見終わった時に残ったのは「ダイアナ・アグロンは可愛かったな」ということぐらいだ。

(観賞日:2014年8月14日)

 

*ポンコツ映画愛護協会