『おとなのワケあり恋愛講座』:2014、アメリカ&イギリス

リチャードは幼い息子のジェイクに、「分かってくれ、心から愛してる。本当に馬鹿なことをしてしまった」と言う。彼は「何から話せばいいのか。あれが始まりだったと思う」と告げ、幼少時代の出来事を語る。リチャードは幼い頃、父のゴードンが不倫相手とセックスしている現場を目撃した。ゴードンは大学でロマン主義について教えており、女子生徒たちの人気者だった。リチャードは父に憧れ、大学教授になった。彼もロマン主義の講義を受け持ち、父と同じように女子生徒たちから人気を集めていた。
リチャードは教え子のケイトと交際して半年が経過した頃、彼の父親と会うことになった。ホテルのバーへ赴いた彼は、ケイトからメールで「遅れるから先に注文しておいて」と頼まれる。オリヴィアという女性を目撃したリチャードは興味を抱き、口説きに掛かった。いい雰囲気になったところでキスしようとするが、そこへケイトが現れた。彼女は何も気付かず、オリヴィアに明るく挨拶する。そこで初めて、リチャードはオリヴィアがケイトの姉だと知った。
ケイトとオリヴィアの父は到着せず、3人で会食することになった。ケイトはリチャードに、父が隠れて二重生活を送っていたこと、姉妹の母親が異なることを語った。そのことを初めて知った時はショックを受けたが、ケイトとオリヴィアは「互いに隠し事をせず、正直に話そう」と約束して仲良くなったのだという。ケイトはリチャードに、オリヴィアがロマンス小説家のアランを担当する編集者であり、恋人同士でもあることを教えた。
オリヴィアはケイトがリチャードとの結婚を考えていると知り、教授と生徒という2人の関係を皮肉っぽい言葉で非難した。オリヴィアはリチャードを「節操の無い女たらし」と罵り、ケイトに「愛だと思っているでしょうけど、勘違いよ」と告げる。するとケイトは、妊娠していることを打ち明けた。突然の告白を受けたリチャードは喜ぶ態度を示すが、動揺を隠せなかった。会食の場を去るリチャードに、ケイトはロスへ引っ越す予定を語った。
リチャードはゴードンの元を訪れ、「なぜ母さんと結婚した?」と質問する。4度目の結婚生活を送るゴードンは、「お前の母親は楽しい人だった。他に何が必要だ?」と口にした。リチャードが結婚を考えていると知った彼は、「アメリカの女は、最初は楽しいかもしれんが、扱いづらくて身勝手で虚栄心が強い。間違っても手を出すな」と反対した。翌日、大学へ赴いたリチャードは、ケイトに「ロスへ付いて行くよ」と告げた。
渡米したリチャードとケイトの間には、ジェイクという男児が誕生した。2人はケイトの父が買った別荘に引っ越し、リチャードは大学で講師の仕事を始めた。すると英国時代と違い、生徒たちはロマン主義の講義に全く興味を示さなかった。職員のアンジェラはリチャードに、「この大学も変わるわ。それまではスラム街だと思って」と告げた。数年が経過した頃、ケイトは職場の同僚であるブライアンと浮気するようになっていた。リチャードは全く気付いていなかったが、ある出来事がきっかけでケイトはバレたと思い込んだ。
リチャードが自宅でオリヴィアからの電話を受けていると、ケイトが現れて不倫を告白した。オリヴィアはアランと結婚することを話すが、それどころではないのでケイトが電話を切った。ケイトはリチャードに、「結婚を決めた頃の私は若かった。貴方は良い父親だけど、私を愛してくれたのはブライアンだった」と言う。リチャードは憤慨し、「別れてもいいが、息子は手放さないぞ」と声を荒らげた。ケイトはリチャードが家から出て行くことを望んだが、彼は拒絶して留まった。
リチャードはミスティーという女と交際するが、長くは続かなかった。リチャードは仕事を得るため、ピゴット教授に申請を出して夜会に招待してもらう約束を取り付けた。ピゴットは彼に、夜会に出席する他の教授たちの機嫌を取るよう促した。オリヴィアはアランが女医を自宅に連れ込んでセックスしている現場を目撃し、激しい怒りをぶつけた。リチャードの元には、グリーンカード取得に関する最終警告の通知が届いた。その通知には、来週に面接を受けないと強制送還になると書かれていた。
リチャードはアンジェラを伴って夜会に出掛け、ピゴットから教授のヴェイルたちを紹介される。しかしヴェイルたちとの会話が面倒になったリチャードは夜会を早々に抜け出し、酔っ払い運転で捕まった。身柄の引き取りに出向いたケイトは、リチャードに悪態をついた。彼女はリチャードの代役としてジェイクを迎えに行く仕事を頼むため、オリヴィアを呼んだ。オリヴィアが「アランに捨てられた」と口にすると、リチャードは「僕も妻に捨てられたよ」と嫌味っぽく告げた。するとケイトは「もうウンザリよ。貴方とは暮らせない。この国に残るために夫婦のフリをしたいなら、勝手にどうぞ」と突き放した。
リチャードは弁護士のアーネストと会い、「これ以上の引き延ばしは無理だ。元奥さんが面接に来ないとマズいぞ」と忠告する。飲酒運転でリチャードが逮捕されたことを知った彼は、「最終決戦だ。瀬戸際だぞ。10回の断酒プログラムに参加しろ。とっとと済ませて元奥さんと面接を受け、仕事を見つけろ」と指示した。オリヴィアがジェイクを迎えに行こうとするので、リチャードは車に同乗した。保育園へ向かう途中、リチャードはオリヴィアが編集者のティムと親密になっていること、作家へ転身しようとしていることを知った。
オリヴィアは「男は後先考えずにセックスしてばかり」と悪態をつき、リチャードのことも非難した。保育園に到着してもオリヴィアの悪口は続き、下ネタを大声で喋り続けた。園長とジェイクがいることに気付き、慌ててオリヴィアは口をつぐんだ。園長はジェイクが下品な言葉ばかり使いたがることを話し、リチャードに「新生活の影響ですか?」と責めるような口調で告げた。リチャードはオリヴィアにジェイクを預け、断酒プログラムの集会に参加した。セラピストのウェンディーは、新顔のリチャードとシンディーを紹介して挨拶するよう促した。シンディーは真面目に挨拶するが、リチャードは不遜な態度を示した。
リチャードは集会の場でアーネストからの電話を受け、「アンタは捜査対象になった。潜入捜査官に監視される」と聞かされる。そこへウェンディーが男を連れて来たので、リチャードは潜入捜査官だと確信する。慌てて彼は、積極的にプログラムへ参加している態度を示す。オリヴィアからの電話を受けたリチャードはジェイクが泣き止まないことを知り、すぐに帰宅した。「怖い夢を見て目が覚めたら、パパもママもいなかった」とジェイクが泣くので、リチャードは優しい言葉で落ち着かせた。その様子を見たことで、オリヴィアのリチャードに対する印象は大きく変化した…。

監督はトム・ヴォーン、脚本はマシュー・ニューマン、製作はリチャード・バートン・ルイス&ボー・セント・クレア&ケヴィン・フレイクス&ラジ・ブリンダー・シン&レミントン・チェイス&グラント・クレイマー&サイモン・オレンジ、共同製作はガブリエル・ジェロウ=タバク&キース・アーノルド&マーク・ファサーノ、製作総指揮はピアース・ブロスナン&リサ・ウィルソン&マイルズ・ネステル&マイケル・R・ウィリアムズ&マシュー・ニューマン&ステパン・マーティローシアン&スチュアート・ブラウン&マイク・サリヴァン、共同製作総指揮はスリラム・ダス&スティーヴ・シャピロ、撮影はデヴィッド・タッターサル、美術はジョン・コリンズ、編集はマシュー・フリードマン、衣装はリジー・ガーディナー、音楽はスティーヴン・エンデルマン&デヴィッド・ニューマン。
出演はピアース・ブロスナン、サルマ・ハエック、ジェシカ・アルバ、マルコム・マクダウェル、ベン・マッケンジー、フレッド・メラメッド、アイヴァン・セルゲイ、ロンバルド・ボイアー、メリン・ダンジー、ダンカン・ジョイナー、リー・ガーリントン、ロバート・メイルハウス、マーリー・マトリン、ポール・レイ、エリック・パソジャ、リンジー・スポーラー、セス・モリス、テイラー・ジョン・スミス、アレックス・ズガンバーティー、ジュリアン・バーンズ、イミー・イム、デヴィッド・ソーシド他。


『ベガスの恋に勝つルール』『小さな命が呼ぶとき』のトム・ヴォーンが監督を務めた作品。
脚本のマシュー・ニューマンは、これが初の映画作品。
リチャードをピアース・ブロスナン、オリヴィアをサルマ・ハエック、ケイトをジェシカ・アルバ、ゴードンをマルコム・マクダウェル、ブライアンをベン・マッケンジー、ピゴットをフレッド・メラメッド、ティムをアイヴァン・セルゲイ、アーネストをロンバルド・ボイアー、アンジェラをメリン・ダンジー、ジェイクをダンカン・ジョイナー、ウェンディーをリー・ガーリントン、アランをロバート・メイルハウス、シンディーをマーリー・マトリンが演じている。

ザックリ言うならば、「好色な男女が浮気に走り、言い訳と自己弁護に終始し、まるで反省しないどころか不倫を正当化してしまう」という話である。
コメディー映画なので、深刻で重々しく不倫や浮気を表現せず、ライトなテイストでサラッと見せている。しかし、残念ながら全く笑えない。皮肉なことに、ライトなテイストが大きなマイナス要因になっている。
不倫する連中が罪の意識に乏しく、まるでブレーキが掛かっていない。
そして「ライトなテイスト」と書いたが、全員が単なる軽薄な連中でしかないのだ。

登場人物の誰一人として魅力的だとは思えず、感情移入も出来ない。
「不倫は重罪」と断言するほどガチガチのクリスチャンではないし(っていうか不倫しているクリスチャンなんて腐るほど存在するけど)、「浮気する奴は全てクズ」と嫌悪するような堅物でもない。
世の中には不倫や浮気を熱かった映画が多く存在しており、時には共感したり同情したりすることもある。
しかし、この映画に登場する連中に限って言えば、「どいつもこいつもクズばかり」という印象しか沸かない。

冒頭、リチャードはジェイクに対し、幼少時代に父親と浮気相手のセックス現場を見たことを明かしている。
そんなことを幼い息子に喋り、「その出来事が原因で女好きになった」という言い訳にしているんだから、カッコ悪いったらありゃしない。
リチャードは下品な言葉ばかり使うので、ジェイクに悪影響が出て園長に問題視されている。
だが、そのことを指摘されても反省したり、生活を改めようとしたりする様子は全く見られない。

リチャードもケイトも、結婚生活が破綻した後で「ジェイクの前では仲良くしよう」という意識は乏しい。ケイトはジェイクの前でも、平気でブライアンとラブラブな様子を見せる。
そもそもケイトは、「ジェイクがいるから」ってのが不倫のストッパーとして全く機能していない。
そして、リチャードもケイトも「ジェイクのために離婚を回避し、関係の修復に努力してみよう」という意識も全く見られない。
リチャードは「息子は手放さない」と強い口調で言うが、ジェイクへの思いやりが著しく欠けている。それはケイトも同様だ。

リチャードはオープニングから言い訳をしているが、ケイトも浮気がバレたと思い込んで告白する時、言い訳をしている。それどころか、しばらくするとリチャードを批判したり、悪態をついたりする。
そりゃあ、グリーンカード取得のために家へ留まるリチャードも、あまり男らしいとは言えないだろう。
ただ、そこには「ジェイクを手放したくないから、何とか永住権を取得したい」という理由があるわけで。
不倫相手を連れ込み、ジェイクの前で仲良くしているケイトも、相当のタマだと思うぞ。

アランはオリヴィアが病院で検査を受けているのに、その隣で「自分の小説が大ヒットした」と浮かれまくっている。オリヴィアの体を気にする様子など全く見せず、サインを頼まれてヘラヘラとOKしている。そして女医を家に連れ込み、ベッドでセックスする。
オリヴィアはアランに浮気された立場だが、そもそもホテルのバーでリチャードから口説かれた時、自分も浮気する気満々だったわけで。
そんで相手がケイトの恋人だと知った途端に「女たらし」と罵るが、どの口が言うのかって話だわな。
もちろんコメディーとしての描写なんだろうけど、まるで笑えないのよね。

「アメリカとイギリスの違い」ってのを要素として重視するのかと思っていたのだが、そうでもない印象だ。
ゴードンの「アメリカの女は、最初は楽しいかもしれんが、扱いづらくて身勝手で虚栄心が強い」という批評は、ケイトには当てはまっているけど、比較対象となる「イギリスの女」が登場しないもんだから、何とも言い難い。リチャードがアメリカで講義をした時に生徒が全く興味を示さないというシーンがあるが、それは単に「その大学の問題」としか思えないし。
なので、イギリス人のリチャードがアメリカ人のケイトと結婚して渡米するという展開は、「グリーンカード取得のためにリチャードが家を出て行こうとせず、結婚生活のフリを続けようとする」という部分以外では、ほとんど意味が無いモノと化している。
ひょっとすると、「国が違っても愛の形は同じ。っていうか色々あるよね」ってな感じで使おうとしているのかもしれない。
ただし、そうだとしても、単に「浮気者だらけの愉快じゃないコメディー」としか受け取れない。

リチャードは後半に入ると、オリヴィアがケイトの姉だと分かった状態なのに、やっぱり平気で口説いている。
しかもオリヴィアはティムと親密な関係にあるはずなのだが、そんなのお構いなしだ。
一方のオリヴィアにしても、これまた「ティムと親密」「ケイトの元旦那」という要素は何のブレーキにもならず、平気でリチャードとセックスする。
リチャードに関しては、グリーンカード取得の向けて大切な時期であり、オリヴィアとの関係がバレたらケイトの怒りを買うことは確実なのに、そういう意味での思慮深さにも欠けている。

終盤、ゴードンはリチャードを「くだらん理由で、つまらん人生を送った男」と評している。それはケイトと結婚して子供を作ったこと、オリヴィアと深い仲になったのを隠していること、その両方を含めての批評だ。
一方で自分のことは、「充実した人生を送り、誰にも文句など言わせない男」と評している。
後でリチャードが批判するシーンはあるものの、映画としてはゴードンを「充実した人生を送った男」として描いている。
だけど誰にも文句を言わせないってのは、周囲が甘やかしていただけであって。
ジョーンとの関係も破綻してしまい、つまり4度も離婚しているんだから、そりゃあゴードンは大いに問題がある男ってことになるでしょ。

リチャードは潜入捜査官だったシンディーに何も知らず大麻を勧めるという愚かな行動を取ってしまい、強制送還されてしまう。その際に彼はジェイクを抱き締め、別れが辛そうな様子を見せる。
もちろんジェイクもパパと離れるのを嫌がって泣くのだが、そこまでの描写を見る限り、リチャードと引き離すのは正解じゃないかと思えるんだよな。
最終的にリチャードはメキシコから不法入国してジェイクの元へ会いに来るんだけど、ちっとも応援できないわ。
恋愛方面に関しても同様で、当たり前の流れとしてオリヴィアとカップルになるんだけど、「勝手にやってれば」と冷めた気持ちしか沸かないわ。

(観賞日:2016年11月13日)

 

*ポンコツ映画愛護協会