『インビジブル』:2000、アメリカ

科学者のセバスチャン・ケインは、人間を透明にするという国家機密のプロジェクトでリーダーを務めている。研究は、透明化した動物を復元することが出来ずに停滞していた。自宅マンションに戻っても、進まない研究のことで頭を働かせる。たまに隣に住む美女の着替えを覗き見るが、いい所で、いつもカーテンが閉じられてしまう。
急に復元の方法を思い付いたセバスチャンは、元恋人で研究チームの一員でもあるリンダに連絡を入れた。セバスチャンは、チームの一員マットにも連絡するよう指示を出した。リンダはマットと付き合っているのだが、まだセバスチャンには話していなかった。
翌日、ラボに研究チームのメンバーが揃った。セバスチャン、リンダ、マット、サラ、カーター、フランク、ジャニスの7名だ。セバスチャンの指示で、透明化されているゴリラのイザベルに血清が注射された。すると、イザベルは透明状態から元の姿に戻った。
セバスチャン、リンダ、マットの3名は国防総省の委員会に出席し、研究の進行状況を説明する。だが、セバスチャンは委員会のクレイマー教授らに対して、まだ透明からの復元については結果が出ていないと虚偽の報告をする。
セバスチャンが虚偽の報告をしたのは、自分が実験台となって人体実験を行うつもりだったからだ。彼は透明になり、その状態で3日間、ラボの中で過ごすことになった。見張り役のサラが眠った隙に、セバスチャンは彼女の胸を揉んだ。
透明化してから4日目、セバスチャンの体に血清が注射された。だが、状態が不安定になって生命に危険が及んだため、再び透明状態に戻される。復元の方法が見つかるまで、セバスチャンは透明のままで過ごすことになってしまった。
苦しみを伴なう実験が続く中で、セバスチャンは次第に苛立ちを募らせていく。彼は勝手に外出し、隣に住む女性を襲った。一度はラボに戻ったセバスチャンだが、監視カメラに細工を施して外出し、リンダとマットがセックスしようとしている所を妨害する。
セバスチャンの行為に気付いたリンダとマットは、クレイマー教授に連絡を入れた。クレイマー教授は国防総省の面々に知らせようとするが、セバスチャンに殺されてしまう。セバスチャンはラボのシステムを操作してリンダ達を閉じ込め、抹殺しようとする…。

監督はポール・ヴァーホーヴェン、原案はゲイリー・スコット・トンプソン&アンドリュー・W・マーロウ、脚本はアンドリュー・W・ マーロウ、製作はダグラス・ウィック&アラン・マーシャル、共同製作はステシー・ランブレザー、製作総指揮はマリオン・ローゼンバーグ、 撮影はヨスト・ヴァカーノ、編集はマーク・ゴールドブラット、美術はアラン・キャメロン、衣装はエレン・ミロジニック、 シニア視覚効果監修はスコット・E・アンダーソン、音楽はジェリー・ゴールドスミス。
出演はエリザベス・シュー、ケヴィン・ベーコン、ジョシュ・ブローリン、ウィリアム・デヴェイン、キム・ディケンズ、グレッグ・ グランバーグ、ジョーイ・スロトニック、メアリー・ランドル、ローナ・ミトラ、パブロ・エスピノーザ、マーゴット・ローズ、ジミー・F・スキャッグス、ジェフリー・ジョージ・スカペロッタ、サラ ・ボウルズ、ケリー・スコット、スティーヴ・アルテス他。


透明人間になった科学者が暴走を始めるSFホラー。
リンダをエリザベス・シュー、セバスチャンをケヴィン・ベーコン、マットをジョシュ・ブローリン、サラをキム・ディケンズ、カーターをグレッグ・グランバーグ、フランクをジョーイ・スロトニック、ジャニスをメアリー・ランドル、クレイマーをウィリアム・デヴェイン、隣の女をローナ・ミトラが演じている。

さすがは悪趣味帝王ポール・ヴァーホーヴェン、やっぱり人間の醜悪な部分をバカバカしく見せてくれる。透明人間が性的欲望オンリーに走り、それから保身のために殺人行為に暴走していく。エロと暴力で、人間のイヤな所をアピールししてくれる。
そして、そんなヴァーホーヴェンがメガホンを執るのだから、もちろんシナリオも、そういうシロモノだ。「男が透明人間になった時に、まず何を考えるかと言ったら、そりゃあエロしか無いだろ、エロしか」と、身も蓋も無く、ぶっちゃけてしまうのだ。
透明になったセバスチャンが前半にやった行動といったら、サラの胸をはだけてオッパイを揉んだのと、リンダに「透明人間とセックスしようぜ」と迫ったのと、これぐらい。後半に入っても、すぐに隣の女を襲う。その後で殺人に走るが、たぶんリンダ達が委員会に知らせようとしなければ、この男、ずっとエロだけで突っ走っただろう。

感情移入できるようなキャラクターが1人も登場しない辺り、さすがヴァーホーヴェン。ケヴィン・ベーコンにしろエリザベス・シューにしろ、演じる役柄が「無名役者が演じても一向に構わないんじゃないか」という程度の薄い扱いなのも、さすがヴァーホーヴェン。透明人間になったことに対する苦悩なんて、これっぽっちも描かない潔さ。
有能な科学者が揃っているはずだが、みんなバカにしか見えないのも凄い。特殊なゴーグルを装着すれば透明になったセバスチャンを探知することが出来るのに、ずっと装着したままで捜索すればいいのに、すぐに外そうとするリンダ達。アホ丸出し。

ケヴィン・ベーコンに大きな負担を強いて(彼は特撮用の塗料を全身に塗って、透明になった後のセバスチャンも演じている)、特撮技術に高い金と時間を費やして、くだらないことを大胆にやってのける。エロ行為に走る部分だけを見れば、どう考えたってコメディーにしかならないような話だが、それがホラーになるんだから凄い。
終盤になってセバスチャンが殺人を続けるようになると、彼の肉体がモンスター化する。スチームを浴びても、消火器の噴射を受けても、火炎放射で全身を焼かれても、電気ショックを食らっても、元気たっぷりでリンダ達に襲い掛かる。いつの間にやら、透明なターミネーター状態だ。そして、話は普通のホラー映画になる。

ただ、ヴァーホーヴェンにしては、おとなしい。
さすがにコケてばかりで参っていたのか、あるいは上の方のチェックが厳しかったのか、食い足りない。もっと徹底的にエロと暴力に走って、グッチャグチャにしてほしかった。どうも隣人のレイプシーンがカットされているようだが、そこは最も重要と言ってもいいぐらいのシーンなのに。


第23回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪な総収益1億ドル以上の作品の脚本】部門
ノミネート:【最も意図しない滑稽な映画】部門
ノミネート:【最悪のグループ】部門[科学者の連中]

 

*ポンコツ映画愛護協会