『オーシャン・オブ・ファイヤー』:2004、アメリカ&モロッコ

アメリカ西部。騎兵隊で速達便を運ぶ任務に就いているフランク・ホプキンスとマスタングの愛馬ヒダルゴは、長距離レースで無敵の強さ を誇っていた。あるレースに出場したフランクは、サラブレッドに乗るプレストン・ウェブに勝利した。レースの後、酒場に現れたウェブ はフランクを見つけると、「あんなマスタングなど、肥料用のクソをするぐらいしか使えない」とヒダルゴを扱き下ろす。フランクは「俺 のことは何を言ってもいいが、ヒダルゴの悪口は許さない」と彼を殴り倒した。
第七騎兵隊の兵卒アバーナシーがフランクに声を掛け、ウーンデッド・ニーで宿営中の指揮官ウィットサイド少佐に速達を届けてほしいと 依頼した。1890年12月29日、フランクはウーンデッド・ニーに速達を届けた。ウィットサイドが手紙を開くと、それはマイルズ将軍からの 「スー族の放棄を防ぐために至急対処せよ。彼らを武装解除して逃亡せぬよう封じ込めろ。抵抗した場合は鎮圧せよ」という通達だった。 フランクが宿営地に到着した時、スー族は先祖に祈りを捧げるゴースト・ダンスを踊り続けていた。
先住民との混血児であるフランクは、スー族の言葉を理解することが出来た。スー族の老女から声を掛けられたフランクだが、無視して 去った。その直後、第七騎兵隊による武装解除が始まった。だが、耳の聞こえないスー族のブラック・コヨーテは、意図を理解できずに 抵抗した。その弾みで、彼の持っていた銃が空に向けて発射される。その音をきっかけに、騎兵隊はスー族を次々に射殺する。ヒダルゴが 急に踵を返したため、フランクは宿営地へ戻った。そこには虐殺されたスー族の死体が転がっていた。
8ヶ月後、フランクは第七騎兵隊を称賛するウエスタン・ショーのメンバーとして各地を巡業していた。フランクは酒に溺れ、何の希望も 持たずに過ごしていた。移動中の列車でフランクが仲間のテキサス・ジャックたちとカードに興じていると、ショーに参加しているスー族 の族長イーグル・ホーンが「バッファロー・ビル・コーディー団長と話したいので通訳してほしい」と頼んできた。イーグルはフランクに 通訳してもらい、「政府は先住民のマスタングを全て殺す気だ。しかし買い取るだけの金も無い。助けてほしい」とコーディーに訴えた。 しかしコーディーは「マスタングは役割を終えた、望むならサラブレッドを進呈する」と言う。フランクはイーグルに、「彼は力になれる なら何でもすると言っている」と伝えた。
ある日のショーで、フランクは荒れるヒダルゴを乗りこなせずに振り落とされるという失態をやらかした。そのショーには、アラブの族長 シーク・リヤドの家臣であるアジズと使者のラスムッセンが見物に来ていた。2人はコーディーと会い、「リヤドの馬アル・ハタルは サハイバル・レースにおける世界最高のチャンピオン馬だ。このショーをパリで見た時に、彼は侮辱だと感じた。世界最高のレース馬と 騎手という触れ込みだったからだ。その肩書きを撤回せよ」と要求した。
ラスムッセンは「世界で最も過酷なレースを知らないだろう。千年以上の歴史を持つ3000マイルのレース、オーシャン・オブ・ファイヤー だ。アラビアの砂漠を走破し、ペルシャ湾岸からイラクを抜ける。シリア砂漠を越えてダマスカスまで行くレースだ」と語る。出場料は スペイン銀貨で1000ドルで、優勝者には大金が出る。ラスムッセンたちが来た目的は、フランクとヒダルゴをレースに招待するためだった 。しかしフランクは、まるで関心を示さなかった。
フランクはイーグルから、「我々の良き時代は終わった。このままショーで一生を終えるつもりか」と諭される。「ウーンデッド・ニーの 出来事を全て見た。速達を俺が届けた」と罪悪感を吐露するフランクに、彼は「今のままなら、お前は白人でも先住民でもない。ただの 負け犬だぞ」と説いた。フランクが参加する気になると、仲間のアニー・オークリーたちが出場料の1000ドルをカンパしてくれた。 フランクはサウジアラビアに向かう船の中で、ダヴェンポート少佐と彼の妻レディー・アンに会った。アンはフランクに、オーシャン・ オブ・ファイヤーには最高の血筋を持つアラブの馬が100頭出ることを説明する。その中の1頭であるカムリアは、アンの馬だった。かつて 彼女はベドウィン族と暮らし、アラビア語とクルト語に堪能なのだという。サウジアラビアに到着すると、ダヴェンポートは船に留まった 。スタート地点へ向かう途中、フランクは足を鎖で繋がれた奴隷たちを目撃した。
スタート地点のテントでは、リヤドは一人娘ジャジーラと話していた。彼はアル・ハタルの乗り手であるアルリー王子との結婚を促して いた。だが、ジャジーラは結婚を望んでいなかった。フランクやアンたちは、スタート地点に到着した。フランクはユセフという男から、 「大半の人間は半分までも辿り着けない。去年はイラクに入る前に40人が焼け死んだ」と話し掛けられる。彼が饒舌に語るので、フランク は疎ましがって追い払おうとした。するとユセフは、「私はリヤドのヤギの番人でしたが、乳を盗んだ罪に問われ、罰として貴方と馬の 世話係を命じられました」と述べた。
フランクはリヤドのテントに招かれる。テントの奥には顔をニカーブで隠したジャジーラの姿があった。リヤドはフランクに「私には息子 が6人いたが、4人を襲撃で失い、6年前のレースで1人を亡くした。最後の1人は流砂に飲まれた。つまらない娘が一人いるが、どうか 無視してくれ」と告げる。それから「未だかつてレースに外国人が参加したことは無い。レースの賞金は10万ドルを超えるが、私にとって 大事なのは名誉だ」と語った。
翌日、フランクは奴隷の少年を雇って水汲みを頼むが、逃げられてしまう。直後、彼はアンからお茶に誘われる。アンは立派なテントを 設営し、優雅に過ごしていた。彼女はカムリアが勝てばアル・ハタルの種付け権利を得られるが、負ければ優勝賞金の40パーセントを出す 約束になっているのだという。フランクがヒダルゴの元へ戻ると、少年が水を汲んでやって来た。戻る場所が無いのだという。
日曜、いよいよレース開始が迫る中、フランクの隣に来た白馬の騎手サクルは「西洋の異教徒のレース参加は冒涜だ。アラーの神は必ず 日没までに10人を焼き殺す。お前もその1人だ」と威嚇した。レース直前、参加者には、ルブ・アル・ハリの休憩ポイントに到着した者に 1日の休息が与えられることが説明された。スタートすると、アルリーが先頭に立った。他の騎手たちがスピードを上げる中、フランクは 「焦るな、行かせろ」とヒダルゴに告げてペースをキープした。しばらく進むと、予想通りに前の騎手たちがスピードを落とす。フランク は「やはりな、見栄で急いでいただけだ」と口にした。
砂漠を進む中、馬の怪我でリタイアする者も出た。フランクはアルリーに追い付き、日が落ちるとオアシスで休息する。アルリーは彼に 「引き返すなら今の内だぞ」と言う。翌日、兵士たちの守る井戸に到着したアルリーは金を渡し、指示を出した。後から来たフランクが水 を貰おうとすると、兵士は「井戸は空っぽだ」と嘘をついた。フランクは兵士たちを殴り倒し、井戸の水を奪って逃走した。
フランクは巨大な砂嵐が迫るのを目撃し、慌ててヒダルゴを走らせる。フランクは砂嵐に飲み込まれる寸前で砦に逃げ込み、通過するのを 待った。手に入れた水は、砂まみれで飲めなくなった。それでも彼はアルリーに追い付き、「次の井戸では買収額を上げるんだな」と言う 。フランクやアルリーたちはルブ・アル・ハリの休憩ポイントに到着するが、39人が脱落し、11人が砂嵐で行方不明となった。
リヤドのテントに甥のカティブが現れ、アル・ハタルの所有権を分けてほしいと持ち掛けた。しかしリヤドは「お前は略奪しか能が無い」 と拒否した。その夜、フランクのテントをジャジーラが訪れ、ナツメヤシやラクダのバターを与えて「イナゴを恐れないで。アラーの お恵みよ」とアドバイスした。フランクが「なぜ俺を助ける?」と訊くと、彼女は「アルリーが優勝すると、私は彼の5番目の妻になる。 彼の家の奴隷と同じよ。私は貴方の馬を信じる」と述べた。
フランクとジャジーラが話しているところを、アジズやリヤドの家来ジャファーたちが発見した。フランクは拘束され、ジャジーラは父 から叱責された。「彼と話がしたかっただけ。彼は私に指一本触れていない」と言う娘に、リヤドは「なぜ私を苦しめる?」と詰め寄る。 ジャジーラが「私の顔も知らない男の妻になれと?」と反発すると、リヤドは「顔を見た男は殺す。それが戒律だ」と告げた。
リヤドは家臣に命じ、フランクのペニスを切断しようとする。しかし西部に関する本が好きな彼は、フランクが口にしたワイルド・ビルの 言葉に興味を示して「ワイアット・アープやドク・ホリデイについて話してくれ」と促す。その時、テントの外で銃声がした。カティブが 手下を率いて襲撃して来たのだ。狙いはアル・ハタルの略奪だ。だが、アルリーはアル・ハタルに乗り、早々に逃げ出した。
ジャジーラがフランクの手錠を外しに来るが、カティブの手下に拉致された。アル・ハタルと交換する材料にするためだ。騒動の中で、 アジズはアラブ馬5大血統の繁殖について記した本を持ち出していた。目撃していたフランクは、カティブ一味が去った後でリヤドに報告 する。しかし翌朝、リヤドから詰問されたアジズは、「自分は本を守ろうとしたが奪われた」と主張する。リヤドは処刑しようとするが、 フランクが制止してアジズを拷問に掛けようとする。するとアジズは、ジャジーラが連れ去られた場所を白状した。
リヤドはフランクに、「日没までに娘を連れ戻せば罪を許す」と告げた。フランクはジャファーと共に、カティブ一味のいる砦へ向かう。 ジャファーはアル・ハタルの偽物を引き渡し、ジャジーラと交換した。すぐにカティブは馬が偽物だと気付き、ジャファーは「ジャジーラ 、逃げろ」と叫んで敵の相手を引き受ける。ジャジーラは逃亡の途中、本を奪還した。フランクは敵と戦いながら、ヒダルゴを呼び寄せる 。ジャジーラがヒダルゴに乗り、フランクも彼女の後ろに飛び乗った。ジャファーはアジズに撃たれるが、彼も道連れにした。
フランクとジャジーラは、砦のある町から脱出した。フランクはジャジーラに「私の顔を見て」と頼まれ、ニカーブを取った。「貴方は 本当の私を見てくれる気がする」と口にするジャジーラに、フランクは「君はとても綺麗だ」と告げる。フランクは日没までにジャジーラ を休憩ポイントへ連れ帰り、レース復帰が認められた。その夜、フランクはアンから「ここで棄権すれば賞金の30パーセントをあげる」と 持ち掛けられるが、取引を拒否する。翌朝、レースは再開される。アンの元にはカティブが現れ、報酬を要求した。アンはカムリアを優勝 させるため、カティブ一味を雇っていたのだ。アンはカティブに、アル・ハタルとヒダルゴの妨害工作を命じた…。

監督はジョー・ジョンストン、脚本はジョン・フスコ、製作はケイシー・シルヴァー、共同製作はパトリシア・カー、製作協力はクリス・ サルヴァテラ&ジュリー・ハンクス&ネイト・ブルックナー、製作総指揮はドン・ゼプフェル、撮影はシェリー・ジョンソン、編集は ロバート・ダルヴァ、美術はバリー・ロビソン、衣装はジェフリー・カークランド、視覚効果監修はティム・アレクサンダー、音楽は ジェームズ・ニュートン・ハワード。
出演はヴィゴ・モーテンセン、オマー・シャリフ、ルイーズ・ロンバード、サイード・タグマウイ、ピーター・メンサー、J・K・ シモンズ、ズレイカ・ロビンソン、アダム・アレクシ=モール、サイラス・カーソン、アドニ・マロピス、ハーシュ・ナイヤー、フロイド ・レッド・クロウ・ウェスターマン、エリザベス・バーリッジ、ヴィクター・タルマッジ、フランク・コリソン、ジェリー・ハーディン、 ジョシュア・ウルフ・コールマン、フランキー・ムワンギ、C・トーマス・ハウエル、スティーヴァン・リムカス、クリス・オーウェン、 マーシャル・マネシュ、フィリップ・サウンディング・シーデス、ジョージ・ジャーデス、トッド・キムゼイ他。


伝説の騎手フランク・ホプキンスと愛馬ヒダルゴの実話を基にした作品。
監督は『遠い空の向こうに』『ジュラシック・パーク III』のジョー・ジョンストン、脚本は『夢を生きた男/ザ・ベーブ』『サンダー ハート』のジョン・フスコ。
フランクをヴィゴ・モーテンセン、リヤドをオマー・シャリフ、アンをルイーズ・ロンバード、アルリーをサイード・タグマウイ、 ジャファーをピーター・メンサー、コーディーをJ・K・シモンズ、ジャジーラをズレイカ・ロビンソンが演じている。
他に、アジズをアダム・アレクシ=モール、カティーブをサイラス・カーソン、サカルをアドニ・マロピス、ユセフをハーシュ・ナイヤー 、イーグルをフロイド・レッド・クロウ・ウェスターマン、アニーをエリザベス・バーリッジ、ラスムッセンをヴィクター・タルマッジ、 ジャックをフランク・コリソンが演じている。アンクレジットだが、ダヴェンポートをマルコム・マクドウェルが演じている。

序盤の時点で、構成として失敗していると感じる。
フランクはスー族の虐殺を目撃し、その原因となる手紙を届けたことで心に傷を抱え、酒に溺れる日々を過ごす。
そんな中でオーシャン・オブ・ファイヤーに招待され、イーグル・ホーンの説得を受けて参加を決める。
で、もうレース参加を決めた段階で、ほぼ立ち直っていると言ってもいいんだよね。
その段階で、精神的な問題は解決されている。

そうなると、「心の傷から立ち直る」というドラマに関しては、それ以降の部分が要らないってことになってしまう。
そりゃ上手くない。
そこは、レースへの参加が決まった時点では、まだフランクが心の傷から立ち直れていないという形にしておくべきじゃないの。
そのためには、「フランクは乗り気ではないけど、何かの事情があって仕方なく参加せざるを得なくなる」とか、そういう形の方が いいよな。
自ら積極的にレース参加を決めるのは避けた方がいい。

あと、実はフランクの悩みの詳細が分かりにくいという問題もある。
彼は白人と先住民の混血なのだが、じゃあ混血じゃなかったら虐殺を目撃したことや原因を作ったことに対する苦悩は無かったのかと いうと、そうじゃないはずでしょ。
「彼が純潔の白人だったら、先住民が虐殺されたのを見ても全く心が痛まない」ということだとしたら、そりゃヒドい奴ってことに なる。
そうなると、虐殺を目撃したことや原因を作ったことでの苦悩に、混血であることの意味を関連付けているのは、得策とは思えないん だよな。

そもそも、フランクが「自分は白人でも先住民でもなく、宙ぶらりんの状態」ということで苦悩しているような様子は、あまり見られない 。
それと、混血であることを苦悩の軸にするのなら、「虐殺を目撃し、原因を作ったことへの苦悩」という部分は邪魔になる。
2つの苦悩を持ち込んで、上手く絡めることが出来ず、散漫になっている。
だったら、苦悩の中身は1つに絞った方がいいんじゃないか。

っていうか、実際のフランクが混血だったから仕方が無いってことかもしれんけど、混血という設定を持ち込んでいる意味が、あまり 感じられないんだよな。
フランクもヒダルゴも混血という部分に何か意味を持たせているのかと思ったら、そこは全く活用されていないし。
そもそも、原題は『Hidalgo』だけど、中身はフランクとヒダルゴの関係をメインにしていないよね。ヒダルゴはオマケみたいなモンだ。
そこの友情や絆のドラマを描いているわけではない。
ヒダルゴは、カーレースの映画における車のような扱いだ。

尺が無駄に長い。
レースがメインなのは当然だが、スタートは映画開始から42分後。
そりゃ引っ張り過ぎだよ。
そこまでに充実した人間ドラマがあるわけでもないし、必要なキャラ描写を済ませているわけでもないのよ。
アンの馬の乗り手はチラッと顔が出るだけだし、アルリーに至ってはスタート直前になってようやく顔が出る。
そこまでに、そいつらのキャラ描写はもっと必要なはずでしょ。レースでのライバルなんだし。特にアルリーなんて、ジャジーラとの関係 をもっと示しておくべき。
あと、ジャジーラがフランクをどう思っているかってのも、もう少しレース前の段階で描写が欲しいところだ。

始まって1時間ぐらい経過したところでカティブが初登場ってのは、キャラクターの出し入れとしてマズいでしょ。
最初はアルリーが悪玉かと思ったら、そりゃあ卑怯な手も使うけど、本物の悪玉じゃないのよね。
だったら、本物の悪玉であるカティブを最初の段階で登場させておくべきだよ。
奴隷の少年も、雇ったシーン以降は全く存在感が無くなるし、キャラクターの出し入れが上手くない。

フランクが拘束されてペニスを切断されそうになるとか、そういうレースと無関係なエピソードは邪魔なだけだ。
もっとレースに集中してほしい。レースを分断しても、何もいいことがない。
それと、そこで中途半端にコミカルな要素を入れているのも失敗だろう。
この映画にコミカルって要らないでしょ。入れるとしても、コメディー・リリーフに任せるべき。
なんせヴィゴ・モーテンセンがコメディー芝居に全く乗り切れていないからね。

ジャジーラの誘拐から奪還劇ってのが見せ場みたいになっているけど、レースの中に盛り上がりを用意すべきでしょ。
「レースの途中で誘拐事件が発生し、それを解決してからレースが再開される」という展開は、『キャノンボール2』でもリスペクトして いるのか。
で、フランクがジャジーラを奪還して脱出しても、すぐにレースが再開されるわけではない。
休憩ポイントにフランクが到着したのは映画開始から約56分後で、レースの再開は92分後。
ものすごく間隔が空いてしまう。

フランクがジャジーラを休憩ポイントに連れ戻るのが映画開始から約84分後なのだが。すぐにレースは再開されない。その夜から翌朝 までに、人間ドラマを挟んでいる。
ただ、そこに魅力が無くて、無駄にダラダラしているとしか思えない。
ようやくレースが再開しても、またカティブが絡んでくる。
肝心の、レースにおける「作為」の無いトラブルやピンチってのが砂嵐ぐらいしか見当たらないんだよな。

レース再開後、フランクが流砂の沼に引きずり込まれているサクルを助けてやる展開があるが、サクルなんてスタートの時にチラッと出て 来ただけで、それ以降は全く存在感が無かったので、「誰だっけ、こいつ?」と思ってしまった。そんなエピソードで時間を取るより、 もっと他に描きべき事柄があるんじゃないかと思ってしまった。
で、サクルはその場だけの登場かと思ったら、その後でフランクのピンチに駆け付けてカティブに殺されるという見せ場まで用意されて いる。アルリーやカムリアの騎手より、遥かに存在感をアピールしている。
だったら、もっと前半から目立たせておけよ。
レース再開後になって急に存在感をアピールするってのは、バランスが悪いよ。

序盤に描かれた「フランクが虐殺を目撃して心の傷を抱える」という部分と、彼がレースに参加したことが、上手く関連していない。
彼がフランクがレースに参加したことで、心の傷に関して、どういう答えを得ることが出来たのか。その答えは、どういう経緯で導き 出されたものなのか。それがサッパリ見えて来ない。
どうやら自分の血に誇りを持って生きようという気持ちになったらしいってことは、何となく見えてくる。ただし、レースの内容とは、 上手く関連していない。
あと、それは「混血に対する苦悩」からの脱却であって、「虐殺の原因を作った」という罪悪感からの脱却ではないよね。
つまり、「虐殺の目撃」というエピソードは、まるで必要性が無いのよ。「混血について悩んでいる」というところだけを描いておけば いいってことになるぞ。

(観賞日:2012年6月26日)

 

*ポンコツ映画愛護協会