『遠距離恋愛 彼女の決断』:2010、アメリカ

ギャレットは恋人のエイミーが出来た彼女と思わせるために「誕生日プレゼントは要らない」と言ったのを鵜呑みにして、本当に彼女の誕生日プレゼントを用意しなかった。エイミーはデリカシーに欠ける彼の態度に幻滅し、別れを告げた。NYセンチネル新聞社で研修中のエリンは部長のヒューに原稿のダメ出しを受け、友人で同僚のブランディーと飲みに出掛けることにした。飲みに出掛けたギャレットは友人のダンとボックスから鈍感さを指摘されるが、まるで自覚が無かった。ダンたちは彼に、「いつも同じだ。お前は女に対して本気にならない。そこを見抜かれて捨てられて、ショックを受けたと愚痴る。それの繰り返しだ」と告げられた。
エリンはブランディーからナンパに誘われるが断り、アーケードゲームに没頭する。そこへギャレットか来て硬貨を置くが、彼女は「硬貨を置いても譲らないわよ」と無視する。ギャレットが画面に立ちはだかったため、エリンは最高点間近でゲームオーバーになった。エリンは腹を立てて去ろうとするが、ギャレットは何ヶ月も挑み続けた幻のゲーマー「アール」が彼女だと知って興奮した。彼は邪魔したことを謝罪し、ビールをおごらせてほしいと持ち掛けた。
酒場で2人1組のクイズ大会が始まり、エリンとギャレットはコンビで参加した。2人は得意分野の問題を正解し、ギャレットは自分がディーゼル・レコードの社員であること、エリンはNYセンチネルで働いていることを告げた。ギャレットはエリンを自分のアパートへ招き入れ、2人は映画の話題で盛り上がる。2人がキスをすると、ギャレットの同居人であるダンが隣室で音楽を流す。ギャレットはダンを注意するが、エリンは気にせず「好きなノリよ」と告げ、2人は再びキスをしてからベッドを共にした。
翌朝、ギャレットはエリンを誘ってダイナーへ行き、朝食を取りながら電話番号を教えてほしいと告げる。エリンは承諾するが、6週間でいなくなることを話す。夏期研修で新聞紙に来ているだけで、スタンフォード大学院の卒業が来年に控えているのだと彼女は説明した。「真剣に恋愛する気は無いから」とエリンが言うと、ギャレットは「誤解しないで。僕もまだ傷心の身だから」と告げた。ギャレットはエリンから電話番号を受け取り、ダイナーを後にした。
出社したギャレットは、上司のウィルから1枚のCDを聴かされ、ダサい曲だと感想を告げる。歌詞も3Zというバンド名も全てダサいと感じたギャレットだが、ウィルから担当を命じられた。「重役がウチの目玉に育てろと言ってる」と言われたギャレットは、自分が推薦したバンドについて尋ねる。ウィルは「あれは売れ筋じゃない。一発でも当てて実績を作れ。そうすれば企画も通る」と彼に告げた。一方、エリンは姉のコリーンとネットで話して「採用してもらえるよう売り込んだ?」と問われ、「新聞業界は不景気で社内はピリピリしてる。とても言い出せる雰囲気じゃないわ」と述べた。
姉から説教されたエリンは、ヒューに「採用に繋がる仕事を残したいんです。課題を出してもらえませんか」と申し入れた。するとヒューは、「グラント・ア・ドリーム基金の心温まる記事なら欲しい」と告げる。子供基金の記事は他の記者が嫌がる記事だと説明されるが、エリンは引き受けることにした。彼女はギャレットから電話で食事に誘われ、一緒に夕食を取る。翌日以降も、2人は公園や海へ出掛けてデートを楽しんだ。
研修の最終日を迎えたエリンは、ヒューに子供基金の記事の感想を尋ねた。掲載すると聞かされたエリンは感謝の言葉を述べ、「いい経験になりました」と告げる。いずれ自分も記者になれるチャンスがあるかと彼女が訊くと、ヒューは「年が明けたら連絡しなさい。ポストを探そう」と述べた。ギャレットはエリンを別れのディナーに誘い、レストランへ出掛けた。彼はワインを注文し、「知り合えて良かった。最高の6週間だった」とエリンに告げる。2人はギャレットの部屋へ行き、一夜を共にした。
翌朝、ギャレットはエリンを車で空港まで送り、ハグして見送る。しかし我慢できなくなった彼は空港に入ったエリンを追い、「やっぱり離れたくない」と言う。エリンが「私も別れたくないけど、前にも遠距離の経験がある。大学を辞めて彼を追い掛けた。全てを失って人生設計も遅れた」と語ると、ギャレットは「退学して来てくれとは言わない。会いたいだけだ。君を失いたくない」と述べた。「遠距離恋愛しよう。君に夢中だ」と彼が言うと、エリンは「私も夢中よ」と笑った。
エリンは住まわせてもらっているコリーンの家へ戻り、彼女の夫であるフィルや娘のマヤと再会する。ギャレットはエリンに「ハロウィンにニューヨークへ来ないか」と誘うメールを送るが、航空券が高すぎて無理だと断られた。2人はメールや電話でやり取りし、ギャレットはダン&ボックスと遊んでいる最中もメールに没頭した。ギャレットはダンとボックスから、エリンはコリーンから、相手が浮気している可能性もあると言われる。2人は互いの関係が今後も恋人同士だと確認し、安堵の気持ちになった。
11月、ギャレットは久々の再会を控え、食事を減らして体を引き締めようとする。ダンとボックスが日焼けしろと言うので、ギャレットは日焼けサロンへ行く。彼はニューヨークへ行き、エリンがアルバイトしているレストランにアポ無しで現れた。エリンは感激し、彼に抱き付いてキスをした。エリンはギャレットを家に連れ帰り、ダイニングで激しく求め合った。しかし物音で駆け付けたコリーンが電気を付け、食事中のフィルがダイニングにいたことも明らかになる。ギャレットは気まずそうに、フィルと挨拶を交わした。
エリンとギャレットはコリーンの家族、その兄であるロン&カレン夫妻と一緒に食事を取る。ギャレットがレコード会社の社員であることや、花束を持ってサプライズ訪問したことを聞き、カレンは羨ましそうな表情を浮かべた。女性陣が食卓を離れると、ロンはギャレットを睨んで「俺たちに文句でもあるのか。お前のせいで夫婦関係にヒビが入った。帰ったら女房の愚痴攻撃だ」と告げる。「俺たちは結婚という名の地獄にいる。毎日が戦いだ。花を抱えた訪問者とは違う」と彼が言うと、フィルも同調して「結婚しても着飾り続けることが出来るか?絶対に無理だ」と述べた。
エリンはギャレットと共に、ザ・ボクサー・リベリオンというバンドの演奏を聴きにクラブへ行く。ギャレットはボクサー・リベリオンを気に入っているが、どこの会社もリスクを嫌って契約しないのだとエリンに説明した。クラブにはエリンの同僚であるハーパーとデイモンが来ており、彼女はギャレットに紹介した。翌朝、ギャレットは荷物をまとめて空港へ行き、エリンは彼を見送った。帰宅したギャレットは、ダンとボックスに「エリンに愛の告白をした」と告げる。ボックスは「俺も遠距離の経験がある。幾ら相性が良くても溝が出来て行く。恋人に会えないのは拷問だ」と言うが、ダンは「運命の相手なら別さ」と軽く告げた。
クリスマスシーズンが訪れ、ギャレットは航空券をネット検索するが、高額で手が出なかった。彼はエリンに「この時期は値段が高すぎるからネットで会おう」とメールを送った。2人は互いにクリスマス・プレゼントを送り届け、ネットで会話しながら同時に開封した。1月、エリンはヒューに電話を掛け、採用について尋ねようとする。しかしヒューはエリンのことを全く覚えておらず、もちろん採用の件も冷たく断られた。
エリンはギャレットに電話で事情を説明し、苛立ちを吐露した。「ニューヨークの新聞社は他にもあるだろ」とギャレットは軽く言うが、エリンは絶望的だと告げる。彼女はデイモンに誘われて飲みに行き、悪酔いしてマッチョ男に喧嘩を吹っ掛けた。デイモンに店から運び出されたエリンは帰宅し、翌朝に目覚めてギャレットからの留守電が7件も入っているのを知った。エリンはギャレットに電話を掛けてデイモンと深酒したことを語り、何も無かったと釈明した。
大学へ赴いたエリンは教授から、「君らをサンフランシスコのクロニクル社に推薦しておいた」と告げられる。エリンが感謝しつつも「ニューヨークがいいんです」と言うと、教授は「向こうは厳しいぞ。まず望みは無い」と現実を告げる。エリンはクロニクル社の面接を受け、ギャレットはシスコ周辺の仕事を探すが見つからない。ギャレットはマイアミの彼氏と遠距離恋愛中である同僚のブリアナに、疲れと不満を解消するためのアドバイスを求めた。「テレフォン・セックスよ」と言われ、ギャレットは実践してみる。しかしエリンと想像が合致せず、失敗に終わった。4月、エリンはクロニクル社から連絡を受け、地方版の部署での採用が決定した…。

監督はナネット・バースタイン、脚本はジェフ・ラチューリップ、製作はアダム・シャンクマン&ジェニファー・ギブゴット&ギャレット・グラント、製作総指揮はデイヴ・ノイスタッター&リチャード・ブレナー&マイケル・ディスコ、撮影はエリック・スティールバーグ、編集はピーター・テッシュナー、美術はケヴィン・カヴァナー、衣装はキャサリン・マリー・トーマス、音楽はマイケル・ダナ、音楽監修はデイナ・サノ。
出演はドリュー・バリモア、ジャスティン・ロング、クリスティーナ・アップルゲイト、チャーリー・デイ、ジェイソン・サダイキス、ロン・リヴィングストン、ケリ・ガーナー、ロブ・リグル、ジム・ガフィガン、サラ・バーンズ、クリステン・シャール、ジューン・ダイアン・ラファエル、オリヴァー・ジャクソン=コーエン、ナタリー・モラレス、テリー・ビーヴァー、マット・セルヴィット、レイトン・ミースター、タフィー・クエステル、チャーリー・ヒューソン、テイラー・シュウェンケ、マイク・バービグラ、メレディス・ハグナー、ベニータ・ロブレド他。


『そんな彼なら捨てちゃえば?』のドリュー・バリモアとジャスティン・ロングが再び共演したロマンティック・コメディー。
この2人は『そんな彼なら捨てちゃえば?』の共演がきっかけで、2007年8月に交際をスタートさせたが、翌年の7月には破局した。その後、他の異性との交際を経て2009年3月にヨリを戻し、本作品で再共演している。つまり実生活でも恋人同士だった2人がカップルを演じているわけだが、後に再び破局している。
エリンをドリュー・バリモア、ギャレットをジャスティン・ロング、コリーンをクリスティーナ・アップルゲイト、ダンをチャーリー・デイ、ボックスをジェイソン・サダイキス、ウィルをロン・リヴィングストン、ブリアナをケリ・ガーナー、ロンをロブ・リグル、フィルをジム・ガフィガン、ハーパーをサラ・バーンズ、女性バーテンダーをクリステン・シャール、カレンをジューン・ダイアン・ラファエルが演じており、エイミー役でレイトン・ミースターが出演している。
監督のナネット・バースタインはドキュメンタリー作品で高い評価を受けてきた人物で、劇映画のメガホンは初めて。
脚本のジェフ・ラチューリップは、これがデビュー作。

「実際に付き合っているドリュー・バリモアとジャスティン・ロングが恋人役を演じています」というゴシップ的な部分だけが本作品の売りであり、その要素を排除すると何の見所も無くなってしまう。
誰もが良く知っている一般的な材料だけを組み合わせ、良く使われている調理道具を用いて、オーソドックスな調理方法を採用し、どのスーパーにも置いてあるような調味料で味付けし、基本に忠実な盛り付けで皿に乗せた料理という感じである。
ようするに、良く言えば「安心感があって大きく外さない料理」ってことになるが、悪く言えば「どの店でも置いてあるし、今まで何度も家庭で食べて来た料理と何の違いも無いし、わざわざこの店を選ぶほどの味や料理じゃないよね。そもそも店で食いたいと思うレベルの味でもないよね」ってことになる。
しかも、大きく外しているわけじゃないけど、実は味が薄くてお世辞にも美味しいとは言えないのだ。

オーソドックスやベタが全面的に悪いわけじゃなくて、ベタにはベタなりの良さがある。
でも、ベタをやるにしても、その質ってのは大切になるわけで。「質が高くないベタ」ってことになると、かなり厳しいでしょ。
また料理に例えちゃうけど、オムライスやカレーってのは良くあるメニューだけど、とても美味しいと感じたら、ちょっと距離があっても、その店まで食べに行きたいと思う人が多いわけよ。でも、家で食べるのと大して変わらなかったら、わざわざ遠出して、金を出してまで食べに行きたいと思う人は、たぶん少ないだろう。ただし、料理の味以外にも、「店の雰囲気」とか「店主の人間味」とか、それ以外にも「その店に行きたい」と思わせる要素ってのは幾つかあるので、味が全てではない。
で、すんげえ話がズレちゃってる気もするんだけど、ようするに本作品は、そういう他の要素も含めて、足を運びたいと思わせるモノが見当たらない店ってことよ。

最初に戻っちゃうけど、だから本作品の見所ってのは、「実際に付き合っているドリュー・バリモアとジャスティン・ロングが恋人役を演じています」という部分に尽きるわけだ。
そういうゴシップ的な感覚で鑑賞するか、もしくはゴシップ的な感覚を除外しても「ドリュー・バリモアの映画が見たい」とか「ジャスティン・ロングの映画が見たい」という気持ちのある人なら、もちろん見て損はしないだろう。
それ以外の人は、「世の中にはロマコメなんて山ほどあるし、わざわざコレを選ばなくてもいいんじゃないですか」ってことになる。
他のロマコメと比べて本作品が勝っている箇所は、何も見当たらない。

ギャレットは振られた夜にエリンを口説いてセックスし、エリンの方もナンパされて簡単に関係を持つ。どっちも軽い奴らという印象だ。
もちろん、「最初は軽いノリだったはずなのに、次第に真剣な気持ちが湧いて」という展開に持って行くためにも、最初は軽薄な付き合いという形にしてあるってのは理解できる。
ただ、「軽いノリで付き合い始める」ってのと「軽いノリで関係を持つ」ってのは、似て非なることだと思うのよね。
特にギャレットの方は振られた日に他の女と関係を持っているわけで、その軽薄さは好感が持てないわ。

これが例えば、「ヤケになって女を口説いたら、なぜか上手く行ったので流れに身を任せた」とか、「酒の勢いで関係を持ってしまった」とか、何かしらの言い訳が用意してあるなら、事情は変わって来る。でも、そういう要素は全く介入していない。
しかも、「軽いノリで付き合い始めたけど、それが本気に変化していく」という手順は重要なはずなのに、そこを雑に片付けている。
ダイナーで別れた後、夕食を取って軽く会話を交わす様子があって、そこからは「歌に乗せて2人のデートする様子をダイジェストで描く」という形にしてあるのだ。
開始から20分程度しか経過していないし、「ダイジェスト処理が早くねえか」と思ってしまう。

「エリンとギャレットがデートを繰り返しました」ってのを音楽に乗せたダイジェストで処理する箇所を入れるなら、「軽いノリだった2人が本気になっていることを認識する」など、何か関係性に変化が起きる出来事を経てからにした方がいいと思うんだよな。
そういう手順が無くて、いきなりダイジェスト処理が入るのよ。
しかも、そういうデートでの様子を見る限り、エリンとギャレットは最初から本気にしか見えない。何しろ、人目もはばからず、熱烈なキスをしているぐらいなのだ。
それが本気じゃなくて軽いノリだったら、軽いノリの概念が崩れちゃうよ。

「口では軽いノリと言っていたけど、実際は最初から本気だった」ってことなら、恋愛劇の組み立て方として1つの方法だと思うのよ。
だけど、この映画だと、「軽いノリと言ってたけど本気だった」ということを観客に伝えるための作業が無い。
「こっちからは本気にしか見えないが、本人たちは軽いノリだと自分に言い聞かせて交際している」という見せ方をしているわけでもないし。
あと、そもそも冒頭の出会いから関係を持つまでの描写を見る限り、「それで最初から本気だったと言われても説得力に欠けるわ」と思っちゃうし。

ともかく、エリンとギャレットが最初から何のブレも無く真剣交際しているようにしか見えないので、「だったらエリンの研修期間が終わった後のことを考えたり話し合ったりしろよ」と言いたくなる。
その話題に触れない理由がサッパり分からん。
「触れるのが怖いから避けている」ってことなら共感できたかもしれないけど、そういうわけでもなさそうだし。
いや、とにかく全く言及が無いので、どういう理由で話題にしないのかホントに分からんのよ。

デートの様子をダイジェストで描く箇所が終わると、もうエリンが「お別れまで2週間よ」と言っている。あっという間に1ヶ月が経過しちゃってるのだ。
そして次のシーンでは、もうエリンの研修最終日になっている。子供基金の記事も、いつの間にかエリンは書いたことになっている。
いやいや、粗すぎるだろ。
せめて交際開始から最初の数日ぐらいは、もう少し丁寧に描いた方がいいんじゃないかと。その中で、「軽いノリで付き合ってると言ってたけど本気になってる」とか、「本気になってるけど別れが近いから本気じゃないことにしておかないと」とか、そういう男女の心情の機微を描くべきじゃなかったかと。

エリンとギャレットの交際する様子を短くまとめているのは、2人が遠距離恋愛になってからの展開がメインだからだ。そのため、2人の距離が離れるまでの出来事に多くの時間を割くことが出来ないという事情があるわけだ。
だけど、そのせいで「空港で別れる時になって、2人が本気で愛していることを互いに語り、遠距離でもいいから交際を続けようと決める」という展開に重みが無くなってしまうという弊害が起きている。
ただし、その問題は、実は「いかにエリンとギャレットが本気で付き合っていたか」ってのをマジに描くよりも、むしろ真剣交際なんて全く感じさせないような軽いノリで徹底した方が解決できてしまう。
あえて「本気じゃなくて軽いノリなのよ」という風に描写しておいて、その上で「ずっと軽いノリのつもりだったけど、別れの時になって、やっぱり忘れられないとギャレットが感じ、彼女に気持ちを打ち明ける」という展開にした方が、そのギャップによって告白シーンに真剣さや説得力が生まれるのだ。
ただし、その場合でも、交際シーンを描いている段階で「本人に自覚症状は無いけど本気の匂いが見え隠れする」というネタ振りをしておく必要はあるけどね。

遠距離恋愛になってからのエリンとギャレットの恋愛劇が、どれぐらい充実した内容になっているのかというと、そんなに充実していない。
さすがにニューヨークでの交際期間よりは遥かに厚みが増すけど、どういう方針で進めようとしているのかが何となくボンヤリしている。
どうやら「仲間をからかったり忠告したりするダン&ボックス」「妹を心配するコリーン」というキャラを動かすことで、交際の障害を作ろうとしているようには見受けられる。
しかし、そいつらは障害として何の効力も発揮していない。それによってエリンとギャレットの交際に危機が訪れることも無ければ、「むしろ反対されることで愛が深まる」という逆作用に繋がることも無い。

ギャレットは初対面の印象でコリーンに嫌われるが、それはエリンとの交際に何の影響も与えない。
彼はロン&フィルから洒落た演出を攻撃されたり、「結婚しても同じことが続けられるか」と言われたりするが、それによってギャレットがエリンへの振る舞いを考え直すとか、2人の関係にヒビが入るとかってことは無い。
彼は親孝行でイケメンのハーパーに軽く嫉妬するが、その気持ちは瞬時に消滅してしまい、エリンとの関係にヒビを入れることは無い。

センチネルの採用がダメになったエリンはデイモンに口説かれるが、相手にしない。
店を出たところでキスの雰囲気っぽくなるが、そのまま家に帰っている。
エリンもギャレットも、決して間違いは起こさないし、「間違いを起こしそうになり、そのことがバレて誤解され、関係にヒビが入る」ってことも無い。
エリンがデイモンと深酒したことをギャレットが電話で聞かされるシーンはあるが、そこから2人の関係が悪化することは無い。

結局、周囲の人間が何を言おうと、どんな出来事が起きようと、エリンとギャレットの交際には何の影響も及ぼさないのだ。
2人の関係における障害は、「遠距離だから、なかなか会えなくて寂しい」という1つだけ。そこから全く広がりが無い。派生してのトラブルや障害が無い。
パターンから大きく外れるようなことはやっていないので、見ていて強い違和感や嫌悪感を抱かせるようなストレスは無い。ただし、良い意味での引っ掛かりも無い。
ノド越しが悪いとは感じないけど、飲みごたえも全く無い飲料みたいなモンだ。
それは具体的に例える飲料が見つからないぐらいで、もはや水ですらない。

エリンはサンフランシスコ、ギャレットはニューヨークに住んでいるので、どちらかが移動しないと遠距離恋愛は解消されない。
エリンはニューヨークでの仕事、ギャレットはシスコでの仕事が見つからない。エリンは序盤から「いずれ新聞社で働きたい」という強い願望を口にしており、シスコの新聞社に就職する。ギャレットは前半の内から、今の会社に不満を抱いていることを明らかにしている。
そうなると、おのずと解決方法は見えてくる。そして最終的には、「一度はエリンに同棲を持ち掛けて就職を断念させたギャレットが翻意し、自分が会社を辞めてLAを拠点とするバンドのマネージャーに転職する」ということで決着する(LAとシスコは近いので)。
まあ、「それしか無いよね」という着地である。
ただ、それしか無いのに今一つスッキリしないのは、「さんざん悩んでたけど、ギャレットがさっさと決断していれば、もっと早い段階で解決できた問題だよね」と言いたくなるからだ。
それとさ、この邦題は内容と全く合致してないでしょうに。最終的に決断したのはエリンじゃなくて、ギャレットなんだからさ。

(観賞日:2015年6月21日)

 

*ポンコツ映画愛護協会