『アナと雪の女王2』:2019、アメリカ

幼い頃、エルサとアナが「魔法の森ごっこ」で遊んでいると、父のアグナル国王が「自分が一度だけ見た魔法の森とは違う」と指摘した。イドゥナ王妃は「話しても大丈夫?」と心配するが、アグナルは「いい機会だ」と娘たちに魔法の森のことを教えた。北の果てに大昔から、魔法に満ちた森があった。そこは強い力を持つ風、火、水、大地の精霊に守られた森であり、ノーサルドラという謎の人々が住んでいた。アグナルの父であるルナールはノーサルドラと友情を誓い合い、平和の印としてダムを建設した。
少年時代のアグナルはルナールに連れられ、ダムの完成式典に出席した。しかし突如としてノーサルドラの民がアレンデールの人々に襲い掛かり、ルナールは命を落とした。精霊は戦いに激怒し、激しく暴れた。意識を失ったアグナルは、不思議な声の主に救われた。精霊たちは姿を消し、森は霧に覆われて誰も外に出られなくなった。エルサとアナは父の話を聞いて、森が目を覚ますことを恐れた。イドゥナは「アートハランだけが知っている」と小さい頃に母が教えてくれた川の名前を教え、それを歌った子守唄を聴かせた。
現在、女王となったエルサは不思議な歌声を耳にするが、大臣は気付かない様子だった。アナ、オラフ、クリストフ、スヴェンと集まってジェスチャーゲームをしている時も、エルサは歌声を耳にした。彼女は「もう休む」と告げ、寝室へ下がった。クリストフはアナと2人になり、指輪を差し出してプロポーズしようとする。しかしアナは彼の行動に気付かず、姉を心配して寝室へ向かう。エルサはアナに歌声のことを話さず、「貴方がいてくれて嬉しい」と微笑んだ。
アナと一緒に執心したエルサは、不思議な歌声で目を覚ました。彼女は寝室を出て、声の持ち主を捜しに行く。しかしエルサの行動が4つの精霊を起こしてしまい、城下では強風が吹き荒れる。慌てて住民を崖の上へ避難させたエルサは、ずっと声が聞こえていたことをアナに打ち明けた。彼女が「私を呼んでるのは、いい人よ。魔法の力で感じるの」と話していると、パビーやバルダたちがやって来た。パビーはエルサとアナに精霊が怒っていると教え、「過ちを正して真実を突き止めないとアレンデールが危険だ」と警告した。
エルサは声の主を捜すため、魔法の森へ向かうことにした。アナ、オラフ、クリストフ、スヴェンも同行を申し入れ、一緒に向かう。その途中でクリストフはプロポーズしようとするが、言葉の選択を誤ってアナが引っ掛かってしまう。慌てて軌道修正しようとするクリストフだが、プロポーズできずに終わった。声を耳にしたエルサは、霧の壁を発見した。彼女が触れると壁は開き、精霊たちの石碑が出現する。強風に押されたエルサたちは魔法の森に入るが、壁は閉じてしまった。
クリストフはアナと2人になってプロポーズを試みるが、また言葉のミスが原因で伝えるには至らなかった。オラフは竜巻に飛ばされ、他の面々も次々に飲み込まれた。すぐにエルサ以外の面々は、竜巻から放り出された。取り残されたエルサは、森で起きた過去の出来事を目にした。エルサが魔法で竜巻を吹き飛ばすと、過去の記憶が氷の像として残った。竜巻を起こした風の精霊が戻ると、オラフはゲイルと名付けた。エルサとアナが氷の像を見ると、父がノーサルドラの民に助けられていた。
森に閉じ込められていたノーサルドラの民とアレンデール王国の兵隊が現れ、戦いを始めようとする。エルサは魔法で阻止し、オラフは事情を説明した。アナはアレンデール王国の隊長を見て、父の警護を担当していたマティアス中尉だと気付いた。エルサとアナは、両親が6年前に死んだことを彼に知らせた。火の精霊が森を燃やし始めたので、エルサは炎の中に残って魔法で次々に消火していく。火の精霊であるサラマンダーが小さなトカゲだと知った彼女は、優しく手を差し伸べた。サラマンダーは彼女に懐き、全ての火は消えた。
不思議な歌声が聞こえて来たので、エルサはサラマンダーに「どうしたらいいの?」と問い掛けた。するとサラマンダーは、北に向かって彼女を導こうとする。エルサが持っていたイドゥナのスカーフを見て、ノーサルドラの民は驚いた。それが由緒ある家に伝わる物だったからだ。先程の像を確認したエルサとアナは、父を助けたノーサルドラの民が母だと気付いた。ノーサルドラの民に受け入れられたエルサは、必ず森を自由にすると約束した。
エルサが北へ向かおうとすると、ノーサルドラの指導者であるイエレナはアース・ジャイアントが動き回っているので翌朝まで待つよう告げる。ノーサルドラのライダーはクリストフからアナのことで相談を受け、プロポーズの手助けを申し出た。エルサはノーサルドラのハニーマレンから、自然界の魔法と自分たちを繋ぐ第5の精霊がいることを聞かされた。アース・ジャイアントが近付いたため、一行は身を潜めた。エルサが不思議な声の元へ向かおうとすると、アナは同行を申し出た。クリストフとスヴェンがライダーと共に出掛けたことを知ったアナは、彼らを待たずに出発することにした。
プロポーズの練習をしていたクリストフは、アナがエルサと共に去ったことをイエレナから知らされた。エルサたちは両親を乗せてダーク・シーで難破したはずの船を発見し、中を調べた。筒に入っていた地図を見たエルサたちは、両親がアートハランを目指していたと知る。そこに過去の答えがあるはずだと確信したエルサは、アナとオラフを魔法で遠ざけて1人で向かうことにした。アナとオラフは川を流され、洞窟に辿り着いた。エルサは荒れる海に突入し、魔法を駆使してアートハランへ向かった…。

監督はクリス・バック&ジェニファー・リー、着想はハンス・クリスチャン・アンデルセン、原案はジェニファー・リー&クリス・バック&マーク・E・スミス&クリステン・アンダーソン=ロペス&ロバート・ロペス、脚本はジェニファー・リー、製作はピーター・デル・ヴェッチョ、製作総指揮はバイロン・ハワード、製作協力はニコール・P・ヒーロン、編集はジェフ・ドラヘイム、視覚効果監修はスティーヴ・ゴールドバーグ、ストーリー監督はマーク・E・スミス、プロダクション・デザイナーはマイケル・ジャイモ、共同プロダクション・デザイナーはリサ・キーン、オリジナル歌曲はクリステン・アンダーソン=ロペス&ロバート・ロペス、伴奏音楽作曲はクリストフ・ベック。
声の出演はクリステン・ベル、イディナ・メンゼル、ジョシュ・ギャッド、ジョナサン・グロフ、スターリング・K・ブラウン、エヴァン・レイチェル・ウッド、アルフレッド・モリーナ、マーサ・プリンプトン、ジェイソン・リッター、レイチェル・マシューズ、ジェレミー・シスト、キアラン・ハインズ、アラン・テュディック、ハドリー・ギャナウェイ、マッテア・コンフォルティー、オーロラ、マイア・ウィルソン、スティーヴン・ジョン・アンダーソン、ポール・ブリッジス他。


2013年の長編アニメーション映画『アナと雪の女王』の続編。
監督は前作に引き続き、クリス・バック&ジェニファー・リー。脚本も前作と同じくジェニファー・リーが担当。
アナ役のクリステン・ベル、エルサ役のイディナ・メンゼル、オラフ役のジョシュ・ギャッド、クリストフ役のジョナサン・グロフ、パビー役のキアラン・ハインズ、ウェーゼルトン役のアラン・テュディック、バルダ役のマイア・ウィルソン、カイ役のスティーヴン・ジョン・アンダーソンは、前作からの続投。
他に、マティアスの声をスターリング・K・ブラウン、イドゥナをエヴァン・レイチェル・ウッド、アグナルをアルフレッド・モリーナ、イエレナをマーサ・プリンプトン、ライダーをジェイソン・リッター、ハニーマレンをレイチェル・マシューズ、ルナードをジェレミー・シストが担当している。

就寝していたエルサが歌声を耳にして相手を捜しに行くシーンでは、主題歌の『Into the Unknown』を歌い上げる。単独で見れば、いい歌だと思う。個人的にはPanic! At the Discoバージョンの方が好きだけど、イディナ・メンゼルの歌唱も良い。
ただ、そのタイミングで歌が流れて来ても、あまり引き付けられない。
理由は簡単で、それが強引に話を進めてエルサを動かすための道具として使われているからだ。
その使い方が下手なので、意図が不細工に露呈しているからだ。

『Into the Unknown』の歌詞には、「あの声は求めてる、未知の旅へ踏み出せと」「本当はここにいてはいけないと、見つけに来いというのね」「みんなと違うと感じてきたの、だから心が望むの、未知の旅へ踏み出せと」とある。
それはエルサの心情であり、「ずっと心に秘めていた冒険心や、ここにいることへの疑問が一気に沸き出した」ってことを表現しているわけだ。
でも、そこまでに、エルサが「女王としての暮らしに疑問を抱く」とか「冒険心は捨てたはずだけど揺らぎがある」みたいな様子は皆無だった。
何の流れも無かったので、歌に入った時に「唐突だな」と感じてしまうのだ。

日本語吹き替え版の場合、主題歌には別の問題もある。
歌詞を知らずに聴くと、「未知」の部分を「道」に誤解する恐れがあるのだ。実際に話す時の「未知」のイントネーションと、メロディーが合っていないからだ。
もちろん、限られた文字数で翻訳する難しさはあるだろう。
ただ、そこはタイトルになっている『Into the Unknown』を表現する部分だ。その意味が正しく伝わらないのは、重大な問題だ。
それを考えても、前作の主題歌に比べて力が落ちると言わざるを得ない。

エルサは前作の経験を経て、納得した上で女王になったはずだ。
ところが今回、不思議な歌声を耳にした彼女は、すぐに「みんなと違うと感じてきたの、だから心が望むの、未知の旅へ踏み出せと」と歌う。
ずっと「ここにいるのは違う。冒険したいという気持ちを抑えていた。自分に嘘をついていた」ってことを言っているわけだ。
でも、そうなると前作を否定することに繋がらないか。前作で観客に与えた感動を台無しにすることに繋がらないか。

前作が大ヒットしたので、すぐに続編を作ろうとするのは分からんでもない。天下のディズニーであっても、続編で稼ぎたいってのは他の映画会社と同じなんだろう。
ただ、かつてディズニーは安易な続編を作って、何度も失敗してきた歴史があるはずでしょうに。
ピクサーの人間が中心に入るようになって、その教訓を忘れてしまったのか。
っていうかピクサーだって昔は安易に続編を作らない会社だったのに、ディズニーの傘下に入ってからは続編を安易に作っているんだよなあ。

風の精霊はエルサたちを竜巻に飲み込んで危険な目に遭わせたのに、すぐに「何の危険も無い可愛い存在」として扱われる。
火の精霊も同様で、大規模な火事を起こしたにも関わらず、直後に「可愛くて小さなトカゲ」としてエルサに可愛がられるようになる。
引き起こした現象に対して、エルサたちの対応が甘くないか。
「精霊たちに危害を加える気は無かった」とか、「エルサたちが精霊の土地に侵入したことに非があるから」みたいなことかもしれないけど、そこは引っ掛かるなあ。

エルサたちが魔法の森に入ると、アナ&クリストフが少し離れ、オラフははぐれる。
不自然さの残る展開だが、それは「クリストフがアナにプロポーズしようとするが、またも失敗に終わる」ってのを見せるのと、オラフに歌わせるのが目的だ。
ただ、クリストフのプロポーズ失敗に関しては、その直前にもやっているので、無くても別にいい。オラフのミュージカルシーンに関しては、あまりにも強引で邪魔になっている。コメディー・リリーフとしても、今回は邪魔な印象が強い。
ノーサルドラの民とアレンデール王国の兵隊に今までの経緯を説明するシーンも、コメディー・リリーフとしての仕事をしているだけなのだが、無駄に長くて邪魔なだけにしか思えない。

オラフだけでなく、実はアナとクリストフの存在意義も怪しいことになっている。
クリストフがアナにプロポーズしようとして何度も失敗に終わるってのも、何度か繰り返される内に「要らないなあ」という気持ちがどんどん強くなっていく。なぜかクリストフまでコメディー・リリーフみたいな扱いになっているけど、それなら要らない。
そもそも、アナとクリストフの恋愛が成就されるのは分かり切っているし、そこのロマンスは「どうでもいい」としか感じない。
クリストフが何度もプロポーズできずに終わっても、アナに置き去りにされて歌い出しても、どうでもいいとしか思えない。

今回は完全に「エルサが不思議な声を求めて冒険し、アレンデールを救うための物語」になっているので、アナにしろクリストフにしろ、単なる同行者に過ぎないのよね。
実の妹であるアナでさえ、存在意義は乏しいのだ。
しかも、アートハランを向かうと決めたエルサは単独行動を選ぶので、アナは同行者としての立場さえ失ってしまう。
アナにはオラフと共に洞窟を探検する仕事が与えられているけど、どうでもいいとしか思えないし。

アナとオラフによる洞窟の探検なんて、物語を進める上では何の意味も無い行為だ。
アナはエルサから魔法で情報を知らされるが、探検の最中じゃなくても全く支障は無い。
情報を知ったアナはアース・ジャイアントを起こしてダムを壊そうとするが、そこに洞窟探検の手順は必要としない。
洞窟のパートではアナとオラフの別れというイベントがあるけど、上手く流れを作り出せていないから心を揺さぶらないし。しかも、エルサが簡単に復活させちゃうし。

そもそも、エルサとアナは、最初から協力して問題の解決に当たろうと決めて別行動を取っていたわけではないのだ。
アナが洞窟でエルサからの情報を受け取って行動を起こすのは、成り行きに過ぎない。かなり無理をして、アナに仕事を割り振っている印象が強い。
「祖父の罪を知り、責任を果たす」という物語として捉えれば、アナにも存在意義はある。ただ、「贖罪の目的が無かったとしても、きっとエルサとアナは同じ行動を取っていたでしょ」と感じてしまうのよね。エルサもアナも、祖父の罪に対する苦悩や葛藤を示す様子は乏しいし。
「過ちを正すためにダムを破壊すればアレンデールが危険に陥る」ということに対する苦悩や葛藤も、ほぼ皆無に等しいし。

今回の作品では、「なぜアナは普通なのにエルサだけが魔法の力を持って生まれたのか」という疑問に対する答えを用意している。
しかし「疑問」と書いたが、そもそも前作を見た時に、「なぜエルサだけが特別な力を持っているのか」と疑問を抱いた人が、どれぐらい存在したのだろうか。
おとぎ話やメルヘンでは、「何だか良く分からないけど不思議なことが起きる」ってのは珍しくないことだ。そして多くの人は、「そういうものだ」ってことで何の疑問も抱かず受け入れるのだ。
それを考えると、「前作の謎を解明する」というのは、続編を作って稼ぐための口実にしか思えないのだ。

(観賞日:2022年6月17日)

 

*ポンコツ映画愛護協会