『アイズ』:1978、アメリカ

ニューヨークの写真家ローラ・マーズは、暴力やセックスをテーマにした写真で話題を読んでいる。ソーホーで彼女の写真展が開かれるが、そこへ警察がやって来た。彼女の写真集を出版していた編集長ドリス・スペンサーが両目を潰されて殺されたというのだ。
ローラは殺害状況を聞いて驚いた。その直前、彼女はそれと全く同じ幻覚を見ていたのだ。数日後、街中で撮影をしていたローラの脳裏に、今度は親友エレーヌが殺される幻覚が浮かび上がる。慌ててエレーヌの元に向かうが、既に彼女は殺されていた。
ローラは自分の幻覚が予知夢だと考え、警察の事情聴取でそのことについて話す。ジョン・ネヴィル警部は彼女に未解決の殺人事件の現場写真を見せる。それらは全て、ローラの撮影した写真と同じ設定で殺害が行われていた。
それらの事件が起こり始めたのは2年前。実は、その頃からローラは暴力的な幻覚を見るようになり、そして暴力やセックスをテーマにした写真を撮るようになっていた。やがて彼女はまた幻覚を見るのだが、それは自分が誰かに命を狙われる幻覚だった…。

監督はアーヴィン・カーシュナー、原案はジョン・カーペンター、脚本はジョン・カーペンター&デヴィッド・ゼラグ・グッドマン、製作はジョン・ピータース、製作総指揮はジャック・H・ハリス、撮影はヴィクター・J・ケンパー、編集はマイケル・カーン、美術はジーン・キャラハン、衣装はセオン・V・アルドリッジ、音楽はアーティ・ケイン、主題歌はバーブラ・ストライサンド。
主演はフェイ・ダナウェイ、共演はトミー・リー・ジョーンズ、ブラッド・ドゥーリフ、ルネ・オーベルジョノワ、ラウル・ジュリア、フランク・アドニス、リサ・テイラー、ローズ・グリゴリオ、スティーヴ・マラチャック、メグ・マンディー、マリリン・メイヤース、ゲイリー・バイヤー、マイケル・タッカー他。


原案と脚本に名前のクレジットはあるが、ジョン・カーペンターの望んだ内容ではないらしい。
元々は、『ダーク・スター』で長編映画デビューを果たしたカーペンターがバーバラ・ストライザンドのために書いた脚本。それが無断で改ざんされ、主演もフェイ・ダナウェイに変更されたようだ。

まずフェイ・ダナウェイの顔のアップを映し、そして引いたカメラで部屋全体を映し出す。そこは両側の壁が全面鏡貼りになっているシンメトリーの部屋。
静かな緊張感を生み出すことに成功しており、これからの展開に期待を持たせる。

ところが、これが全く盛り上がらないサスペンスだった。
写真を撮影する場面で時間を稼ぎ、唐突に恋愛劇を盛り上げてローラとネヴィルのセックスシーンを挿入する。ハラハラすることはなく、ダラダラする話に付き合わされる。

それまでの展開を全く無視して、クライマックスでいきなり何の推理も何の伏線も無く、犯人の正体が判明。犯人は誰も聞いていないのに勝手にベラベラと喋り始め、犯行を自白する。
しかも、その動機も唐突だし不自然だしメチャクチャ。最初にローラを殺さない理由が不明。

なお、映画の中で使用される写真は、ヘルムート・ニュートンの撮影によるものである。

 

*ポンコツ映画愛護協会